著者
横尾 俊成
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.65-79, 2019-06-30 (Released:2019-07-10)
参考文献数
16

本稿は,渋谷区の「同性パートナーシップ条例」から波及した札幌市の「札幌市パートナーシップ宣誓制度」を事例に,その導入過程における「フレーム伝播」と呼ぶべき現象を捉え,現代の日本において,地方自治体の新政策の波及にSNSを用いた社会運動がどのような影響を持ち得るのかを実証的に分析するものである。札幌市の制度の特徴は,首長からの発案ではなく,社会運動からの提案の結果つくられた点にある。札幌市でみられた社会運動は,組織による資源動員,さらにSNSを活用した「フレーム増幅」と「フレームブリッジ」の組み合わせからなる「フレーム伝播」を経て,市長や職員,議員の判断に影響を与えた。また,世田谷区での運動のキーパーソンは,制度の波及を意識した区議会議員,札幌市のキーパーソンは,渋谷区や世田谷区の事例に学び,行政にアプローチしたLGBT当事者であり,どちらもSNSの影響力を意識していた。新政策の波及に住民による運動が影響を与えた背景には,SNSやそれが生み出すネットワークによって,住民が多くの人の共感を生み出す発信力と受信力を持ったことが大きい。人々は,投稿によって社会的な認知をつくり出し,行政などに対して多数の賛同者の姿を見せられるようになったのである。
著者
加納 光樹 横尾 俊博 河野 博
出版者
The Japanese-French Oceanographic Society
雑誌
La mer (ISSN:05031540)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1-2, pp.1-10, 2018 (Released:2021-05-19)

2003 年6 月上旬に多摩川河口干潟域(河口から0-4 km)のタイドプール55 か所(面積0.6-6.4 m²)で,魚類群集の空間的な変動を調査した。調査期間中に2 科11 種計1,838 個体が採集された。採集個体は体長50 mm 以下で,大半がハゼ科の稚魚と成魚であった。採集個体数が最も多かったのはマハゼで全採集個体数の52.2% を占め,次いで,マサゴハゼ(24.6%),エドハゼ(12.7%),ビリンゴ(7.0%),ボラ(1.0%),ヒメハゼ(0.9%),アベハゼ(0.7%),ヒモハゼ(0.5%)であった。これらのうち,ビリンゴとボラを除く底生性ハゼ類6 種の生息密度は,河口域上部,中部,下部の間で異なっていた。各タイドプールにおける優占種の密度に基づく正準相関分析によって,魚類群集構造の時空間的変動は,アナジャコ類巣穴の密度,底質の中央粒径,塩分,干潮時の汀線からの高さ,水温,プール面積,水深とよく関連付けられることが明らかとなった。
著者
横尾 俊成
出版者
学校法人 関西学院大学先端社会研究所
雑誌
関西学院大学先端社会研究所紀要 (ISSN:18837042)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-16, 2019 (Released:2019-07-10)

本稿は、渋谷区の「同性パートナーシップ条例」の制定過程を事例に、地方自治体の政策転換における、SNSを用いた社会運動のフレーミング効果を実証的に分析するものである。この条例の制定過程において、活動家の影響を受けて議員がつくり出したフレームと活動家によるフレーム形成、さらに、議員が設定したフレームに従って行われたTwitterでのハッシュタグを用いた運動とインターネット署名運動は、区長や行政職員、議員の判断に影響を与えた。またその際、SNSには、運動への動員効果よりむしろ、議員などに対して新たな解釈の枠組みをつくり出すフレーミング効果が認められた。その結果、議会の最大会派が条例に好意的でなかったにも関わらず、政治的対立が回避され、区長のイニシアティブで条例が制定されるというスムーズな政策転換が可能となった。本稿の検証により、フレームの設定とその拡散が、当事者や潜在的な賛同者の存在を可視化しつつ、自治体の政策過程に影響を与えることが立証された。
著者
金 基孫 作花 済夫 幸塚 広光 横尾 俊信
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
日本セラミックス協会学術論文誌 : Nippon Seramikkusu Kyokai gakujutsu ronbunshi (ISSN:18821022)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1162, pp.841-846, 1992-06-01
被引用文献数
5

Using oxide glasses of compositions xNa_2O・(100-x) SiO_2(x=20-50 in mol) and 40Na_2O・(60-y)SiO_2・yAl_2O_3(y=5, 10 in mol) as base glass, Na-Si-O-N and Na-Al-Si-O-N oxynitride glasses were prepared by melting powder mixture of oxide glass and Si_3N_4 or AlN, and the effects of the base oxide glass composition on the glass forming ability, the amount of incorporated nitrogen and the chemical durability of oxynitride glasses were studied. It was found in Na-Si-O-N glasses that the lower Na_2O content is favorable for the formation of nitrided glass, giving larger glass forming regions. Retained nitrogen content decreased with increasing Na_2O content in Na-Si-O-N glasses and with increasing Al_2O_3 content in Na-Al-Si-O-N glasses. Chemical durabilily of Na-Si-O-N glass in-creased with increasing of nitrogen content for any Na_2O content of the base glass. For Na-Al-Si-O-N system, however, nitrogen incorporation increased or decreased chemical durability, depending on the Al_2O_3 content and nitrogen content in the glasses or had no appreciable effect.
著者
田中 一義 大澤 映二 千々和 一豊 吉田 孝紀 横尾 俊信 伊藤 彰浩
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は海外調査研究として、現地・ロシア連邦カレリア共和国のオネガ湖北西部付近の下部原生界Karelian Super Group中のシュンガイト鉱石産出地Shungaほかにおいて採取した鉱石試料の分析を行うものである。一般にこの鉱石群は黒色、細粒かつ緻密な岩石で、最大98wt%もの炭質物を含む。平成16年度は前年度に引き続いて、約20億年前(先カンブリア時代)に堆積した炭素富裕鉱物層中でフラーレン分子が存在していることを確認したType Iシュンガイト(75-98wt%C)に加えて、上記オネガ北岸地域および西北地域Shunga, Zazhogino, Maksovoで産出される、Ludicovian Groupでの低炭素含有鉱石(タイプII-V;10-75wt%C)の産状と周辺の岩石層の研究の纏めを行った。Karelian Super Groupは層序的下位より、Jatulian, Ludicovian, Kalevian, Vepsianの各グループに区分されている。Ludicovian Groupの玄武岩のSm-Nd年代は1.98Gaである。16年度に得られた結論として、低炭素含有シュンガイトは初生的に有機物に富む硅質な堆積岩を起原とすると考えられ、Type IIIシュンガイト(20-35wt%C)などの中程度の炭素含有量を示すものは、初生的に炭素質な堆積岩と火山岩類の反応によって富化された結果による可能性がある。Type I-II(35-98wt%C)シュンガイトは何らかの状況で濃集した炭質物が流体として再移動した結果の産物と考えることができる。しかしながら、堆積物中に本来存在した炭質物の起源や、火山岩類を伴わない大量のType III-IV (10-35wt%C)シュンガイトの起原は現時点では不明であり、なお調査を要すると考えている。さらに12月3日京都大学において、海外共同研究者のナタリアN.ロシュコワ博士を招いて西側諸国としては初のシュンガイトシンポジウムを開催し、化学的・鉱物的・地質学的な各視点からの活発な討論を行った。
著者
横尾 俊成
出版者
学校法人 関西学院大学先端社会研究所
雑誌
関西学院大学先端社会研究所紀要 (ISSN:18837042)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-16, 2019

本稿は、渋谷区の「同性パートナーシップ条例」の制定過程を事例に、地方自治体の政策転換における、SNSを用いた社会運動のフレーミング効果を実証的に分析するものである。この条例の制定過程において、活動家の影響を受けて議員がつくり出したフレームと活動家によるフレーム形成、さらに、議員が設定したフレームに従って行われたTwitterでのハッシュタグを用いた運動とインターネット署名運動は、区長や行政職員、議員の判断に影響を与えた。またその際、SNSには、運動への動員効果よりむしろ、議員などに対して新たな解釈の枠組みをつくり出すフレーミング効果が認められた。その結果、議会の最大会派が条例に好意的でなかったにも関わらず、政治的対立が回避され、区長のイニシアティブで条例が制定されるというスムーズな政策転換が可能となった。本稿の検証により、フレームの設定とその拡散が、当事者や潜在的な賛同者の存在を可視化しつつ、自治体の政策過程に影響を与えることが立証された。
著者
横尾 俊輔 柳澤 秀吉 村上 存 大富 浩一 穂坂 倫佳
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.C19, 2010 (Released:2010-06-15)

製品音は感性品質を向上させる重要な設計要素である.静音化が十分なレベルに達した製品群においては,製品音を感性品質として捉えた音のデザインが注目されている. これまでの筆者らの研究から,製品音に含まれる適度なピーク成分(トーン)の存在が快音に寄与する知見が得られ,新しい感性品質指標の存在が示唆されている.そこで,本研究では,ピーク成分を含む製品の定常音について,和声学にもとづいた音の調和性を向上させることで,音質評価が向上することを被験者による感性評価実験の結果から明らかにする.これにより,製品音の快音化において調和性が一つの評価指標となることを示す.また,この調和性を説明する特徴量の候補として,和音性モデルの特徴量及びトーナリティを提案し,それらと対応する評価語,及び調和感・不快感に関する定量化を行う.さらに,不快感と調和感,及び協和感には強い関係があり,協和感を上昇させる不協和度を低く設定することが音質評価における不快感の軽減につながることを示す.