著者
吉村 大輔 吉村 理江 水谷 孝弘
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.469-477, 2023 (Released:2023-05-22)
参考文献数
27

Helicobacter pylori(Hp)の感染率の低下を反映し従来稀とされたHp未感染胃癌の増加が報告されている.自験例の解析ではHp未感染胃癌は(1)噴門部(食道胃接合部)腺癌,(2)胃底腺領域とくにU,M領域に好発する胃型形質の低異型度腺癌,(3)胃角前庭部の胃底腺と幽門腺境界領域に好発する印環細胞癌,(4)幽門腺領域に好発ししばしば腸型形質を呈する分化型腺癌,に分類可能であった.噴門部腺癌の多くが進行癌であったのに対して,その他の領域は大部分がESDによる治療が可能であった早期癌で,その進行が緩徐である可能性も示唆された.Hp未感染胃においては部位,腺領域ごとの癌の好発部位と形態および組織型の特徴をふまえた観察が効率的と考える.
著者
榎田 翼 若槻 尚斗 水谷 孝一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J96-A, no.5, pp.197-204, 2013-05-01

本論文は,金管楽器において吹鳴圧力に加え唇のアパチュアを変化させたときの吹鳴音高を計測することで,吹鳴圧力とアパチュアが吹鳴音の音高に与える影響を明らかにすることを目的とする.具体的にはアンブシュア可変機構を有する人工吹鳴装置を用いて,吹鳴圧力とアパチュアの大きさを制御しながら吹鳴音の計測を行った.結果として吹鳴圧力とアパチュアの相互関係により励起される吹鳴音の周波数が決定されることを確認した.また,アパチュアの大きさを徐々に大きくしていく場合と小さくしていく場合では吹鳴音の周波数が遷移するアパチュアの大きさが異なるという結果が得られた.更に,アパチュアを小さくすれば吹鳴音の周波数が高くなるという奏者の見解とは逆に,人工吹鳴においてアパチュアを大きくしたときに吹鳴音の周波数が高くなるという興味深い結果が得られた.
著者
田中 秀幸 永井 啓之亮 水谷 孝一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.148-155, 2000
参考文献数
8
被引用文献数
10

本研究の目的は, ピアノ1本弦の2次元的な振動を光学的に測定し, その性質を見出すことである。測定装置は単一のフォトトランジスタを用いた測定装置を2セット用意し, ピアノ弦の2次元振動の詳しい振る舞いを測定した。その結果, ハンマで垂直方向には叩かれた弦が水平方向の振動成分を持つのは, 駒からの寄与によるということが実験的に明らかにされた。また, 弦は2次元の回転運動をするが, その回転方向は周期的に入れ替わる。すなわち, 駒の与える境界条件によって, 垂直振動は水平振動よりもわずかに周波数が低くなる。更に, ピアノの1本弦から発生される音は従来言われているように2段減衰をするが, 調波成分によって, 減衰の仕方が大きく変わることが分かった。
著者
小倉 渓 水谷 孝一 若槻 尚斗
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.686-693, 2021-11-01 (Released:2021-12-01)
参考文献数
23

本論文では,大型擦弦楽器において特定の音高を演奏した際に生じるウルフトーンを技術的に抑圧するための指針を示すため,擦弦条件(弓の速度や圧力の組み合わせ)と発生範囲の関係を数値計算により求めることを目的とする。まず楽器の等価モデルを用いてウルフトーンを再現した後,弓の速度や圧力を網羅的に変化させウルフトーン発生状態マップを作成し,これと実験結果を比較することでモデルの妥当性を検証した。その結果,弓の速度変化によるウルフトーンの周期変化の傾向や,圧力を維持したまま弓の速度を減速することで抑圧されるといった傾向が実験結果と定性的に一致し,本モデルの妥当性が示された。
著者
江原 史朗 永井 啓之亮 水谷 孝一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.541-549, 2003-09-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
23
被引用文献数
1

これまでの研究で報告されている唇の2次元振動は,実際に奏者が吹鳴した際の唇の軌跡とシミュレーションの軌跡ではその軌跡の傾きに違いが認められる。本論文ではこの軌跡の違いに着目し,人口吹鳴実験と数値計算によるシミュレーションの二つの手法を用いて解析を行った。唇が厚くなるに従って上唇先端部の振動は右上がりの軌跡から右下がりの軌跡に変化することを実験とシミュレーションの両方で示した。同様に唇が厚くなるに従って発振周波数が低くなることを示した。また,唇の厚みが増すに従って周波数の高い振動モードが励起されなくなり,同じ唇の固有振動数で異なる振動モードが励起され易くなることをシミュレーションで示した。
著者
前田 祐佳 関根 正樹 田村 俊世 水谷 孝一
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.261-266, 2016-12-10 (Released:2017-03-17)
参考文献数
15
被引用文献数
3

This study evaluated the effect of pulse arrival time (PAT) on the difference between heart rate variability (HRV) and pulse rate variability (PRV). HRV is the degree of fluctuation in the time intervals between heart beats obtained from ECG, and is a global measure of autonomic nervous system (ANS) function. PRV is obtained from photoplethysmogram (PPG), and several researchers have attempted to use PRV instead of HRV for ANS monitoring, because measuring PPG is easier than measuring ECG. PPG reflects the change in blood volume ejected from the heart. Therefore, there is a strong correlation between the HRV and the PRV, and the PRV is regarded as an acceptable alternative to HRV at rest in ANS evaluation. In this study, we focused on the influence of change of body position on PRV, and we evaluated the effect of PAT on the difference between HRV and PRV. PAT is the sum of pulse transit time (PTT) and the pre-ejection period. Therefore, we used PAT to verify the difference between HRV and PRV. Seven healthy volunteers participated in this experiment. Their ECG and PPG were simultaneously recorded for 5 min before and 5 min after standing up from a chair. The results of the correlation coefficient indicated a strong correlation (r=0.9) between the HRV and the PRV in both sitting and standing positions. In contrast, the results of high-frequency spectral component showed a significant difference while standing, suggesting the influence of PAT on PRV. These results indicate that PRV is not identical to HRV, and that we should pay attention to use PRV instead of HRV for measuring ANS function.
著者
湯田坂 卓人 若槻 尚斗 水谷 孝一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.362-370, 2014-07-01 (Released:2017-06-02)

シンバルは薄板の幾何学的非線形性により打叩の強弱で音色が大きく変化するが,サンプリング音源を利用する電子楽器はこれを十分には再現できない。非線形性に起因するモード間エネルギー遷移を考慮して適切にモデル化しシンバル音を合成すれば,自然な音色変化が再現できると期待される。本研究では,シンバル音をリアルタイム合成する簡易な音響モデルを開発することを目的とし,非線形に起因する高次モードの発生及び各モードの減衰率を測定した。また,測定したパラメータを用いた音響モデルでシンバル音を合成した結果,エンベロープ等が実測波形とよく一致し,初期振幅に応じた音色変化を再現できることを確認した。
著者
川岸 卓司 松梨 夏季 水谷 孝一 若槻 尚斗
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設 = Journal of the Society of Agricultural Structures, Japan (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-7, 2014-03

養豚農家において,呼吸器感染症の豚を早期に発見し,その拡散を防止することは大変重要である。現在,呼吸器感染症の検査は,各種抗体検査などで陰陽性を判別しているが,所要時間や費用を鑑みると頻繁に検査を行うことは困難である。そこで,本稿では,マイクロフォンアレイを用いて豚の咳・くしゃみ音を自動的に検出し,その発生位置を特定するシステムを提案する。提案手法を評価するため,標準サンプルに同一種の離乳期豚で湿潤状況が陰性な咳・くしゃみ音を使用し,同様の環境である豚舎にて咳・くしゃみ音の検知を行い,その発生位置の特定を行った。その結果,豚のくしゃみ音は30kHz以上の周波数を含み,ハイパスフィルタを用いた手法により,識別率は99.9%,位置測定率は85.7%で特定が可能であった。また,咳音は10-20kHzの周波数を含み,バンドパスフィルタを用いた手法により,識別率は99.6%,位置測定率は75.0%で特定が可能であった。これらの実験により,本手法の有効性が確認された。
著者
櫻井 洋 藤田 広峰 水谷 孝明 相川 潔 澤田 典孝 藤本 克博 櫻井 恒久
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.639-647, 2020 (Released:2020-12-28)
参考文献数
23

ポリウレタン製AVGの開存成績とそれに関わる因子を後ろ向き検討した. 1次開存と2次開存の他に外科的修正術をアウトカムとした修正1次開存を定義した. 対象は2002年1月から2016年3月までの540例で, 1次開存率は1年35.7%, 2年20.0%, 5年7.5%, 修正1次開存率は1年78.8%, 2年70.4%, 5年55.7%, 2次開存率は1年92.6%, 2年86.0%, 5年74.3%であった. 次に年間平均PTA回数によりPTA未施行群215例, 低頻度群163例, 高頻度群162例に分けた. 低頻度群は高頻度群 (p=0.002) とPTA未施行群 (p=0.002) よりも2次開存率が有意に高かった. 多変量COX比例ハザードモデルで, 2次開存率のハザード比は吻合静脈径が大きいほど有意に低かった (HR=0.626, 95%CI: 0.482-0.813, p<0.001). 当院のポリウレタン製AVGの開存成績を報告したが, それはPTA回数やAVG作製の条件により異なる. 今後もより適正なAVG作製や管理方法の発展が望まれる.
著者
本間 弘幸 水谷 孝一 永井 啓之亮
雑誌
日本音響学会研究発表会講演論文集 (ISSN:13403168)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.2, pp.627-628, 1995-09-01
参考文献数
3
著者
田中 秀幸 永井 啓之亮 水谷 孝一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.148-155, 2000-03-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
1

本研究の目的は, ピアノ1本弦の2次元的な振動を光学的に測定し, その性質を見出すことである。測定装置は単一のフォトトランジスタを用いた測定装置を2セット用意し, ピアノ弦の2次元振動の詳しい振る舞いを測定した。その結果, ハンマで垂直方向には叩かれた弦が水平方向の振動成分を持つのは, 駒からの寄与によるということが実験的に明らかにされた。また, 弦は2次元の回転運動をするが, その回転方向は周期的に入れ替わる。すなわち, 駒の与える境界条件によって, 垂直振動は水平振動よりもわずかに周波数が低くなる。更に, ピアノの1本弦から発生される音は従来言われているように2段減衰をするが, 調波成分によって, 減衰の仕方が大きく変わることが分かった。
著者
味藤 未冴来 川岸 卓司 水谷 孝一 善甫 啓一 若槻 尚斗 竹前 喜洋 西藤 岳彦
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

豚呼吸器感染症は農家に甚大な損失を与える。豚は呼吸器感染症に感染している時にくしゃみ回数は増加する。しかしながら,くしゃみ回数の増加がインフルエンザによって引き起こされるかは検証されていない。これを検証するため,感染をコントロールした環境下で音信号・動画像の収録を行った。本稿では,収録した音信号に効率的なラベル割り当て支援システムの開発を目的とする。まず,音響イベントを検出するために,収録した信号に周波数フィルタを適用し,SN比に基づいて閾値判定した。その後,検出した音響イベントと動画像を観測者に同時に自動提示した。結果として,14日間の収録音に対し,3万サンプルの音響イベントが検出された。また,観測者は3000サンプルに対してラベル割り当てを行い,このうちくしゃみ音は67サンプル存在した。ラベル割り当ては,1時間あたり最大200サンプルの速さであり,本支援システムが割り当て作業の効率化をもたらした。