著者
浅川 満彦
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.35-44, 1997-02

生物地理学的な調査研究の一環として, 日本列島産ハタネズミ亜科およびネズミ亜科(齧歯目:ネズミ科)の寄生線虫相をまとめた。これまでに, ヤチネズミ属Clethrionomys, ビロードネズミ属Eothenomys, ハタネズミ属Microtusおよびアカネズミ属Apodemusから記録されている寄生線虫類は16科24属36種であった。これらの内, 円虫目ヘリグモソームム科Heligmosomoides属について, 線虫類の種分化や地理的分布, 宿主である齧歯類の化石の記録, 日本列島の地史などを考慮にいれ, その生物地理学的解析を試みた。
著者
松立 大史 三好 康子 田村 典子 村田 浩一 丸山 総一 木村 順平 野上 貞雄 前田 喜四雄 福本 幸夫 赤迫 良一 浅川 満彦
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.63-67, 2003 (Released:2018-05-04)
参考文献数
10
被引用文献数
1 16

国内5郡県で採集されたタイワンリスCallosciurus erythraeus 24個体およびヌートリアMyocastor coypus 53固体について内部寄生蠕虫類の調査を行った。これら2種の外来哺乳類における本格的な寄生蠕虫調査は今回が初めてである。その結果,タイワンリスからはBrevistriata callosciuviおよびStorongyloides sp.が,またヌートリアからはStorongyloides myopotami. Calodium hepaticumおよびFasciola sp.がそれぞれ見つかった。Fasciola sp.がヌートリアに寄生していた例は日本において初めての報告である。Fasciola sp.とC.hepaticumは人獣共通寄生虫症の病原体なので留意すべきである。
著者
吉野 智生 山田(加藤) 智子 石田 守雄 長 雄一 遠藤 大二 浅川 満彦
出版者
北海道獣医師会
雑誌
北海道獣医師会雑誌 = Journal of the Hokkaido Veterinary Medical Association (ISSN:00183385)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.238-241, 2010-06

2005年から2010年にかけ、苫小牧市および別海町で発見されたオオハクチョウ3例について、酪農学園大学野生動物医学センターで剖検を行った。3例とも栄養状態は良好であり、外傷や外貌の汚れは認めなかった。内部所見としては暗赤色流動性の血液、心臓周辺を主とした各臓器および血管の鬱血、口腔および気管粘膜の溢血点、水・唾液などの液状成分により著しく膨化した食パンによる喉頭部閉塞が共通所見として認められた。喉頭閉塞では神経系の反射的心停止が知られることから、このような現象も今回の死因の一部と推察された。
著者
田中 祥菜 田口 勇輝 野田 亜矢子 野々上 範之 浅川 満彦
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.137-140, 2016-12-22 (Released:2017-06-09)
参考文献数
15
被引用文献数
3

広島市安佐動物公園で飼育繁殖され,死亡後,ホルマリン固定されたオオサンショウウオ(Andrias japonicus)の寄生虫検査を行ったところ,線虫類のSpiroxys sp.,Kathlaniidae gen. sp.,Physalopteroidea fam. gen. sp.,Capillariidae gen. sp.,吸虫類のLiolope copulansが検出された。また,同公園で飼育されていたオオサンショウウオの糞便中から原虫類Balantidium sp.およびEimeria spp.が見つかった。オオサンショウウオからこれら原虫類が検出されたのは初めてであった。今回検出された寄生虫に関して,飼育オオサンショウウオへの影響について論考した。。
著者
水尾 愛 大島 由子 今西 亮 北田 祐二 笠原 道子 橋崎 文隆 和田 晴太郎 松永 雅之 高井 進 大沼 学 翁長 武紀 萩原 克郎 真田 良典 浅川 満彦
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.77-80, 2009-03
参考文献数
16
被引用文献数
1

生体内の酸化ストレスを評価する一般的な生体指標である尿中8-hydroxyguanosine(以下,8-OHdG)量を国内飼育下の9頭のニシローランドゴリラにおいて定量した。検査対象個体に原虫感染が認められたが,臨床症状は観察されなかった。全個体の8-OHdG値(ng/mg creafinine)の範囲は4.3〜193.1,各個体の中央値の幅は6.8〜52.4であった。原虫陽性と陰性個体との8-OHdG値の比較を行い,有意差は認められなかった(>0.05)。
著者
西川 清文 森 昇子 白木 雪乃 佐藤 伸高 福井 大祐 長谷川 英男 浅川 満彦
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.27-29, 2014-03-31 (Released:2014-05-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

国内外来種化による寄生虫相の変遷を分析するため,2010年と 2011年に旭川市内で捕獲されたアズマヒキガエル Bufo japonicus formosusの蠕虫調査をした。その結果,このカエルで既報告の 3線虫種と 1鉤頭虫種が検出された。北海道における当該カエル種の調査はなく,新記録となったが,寄生蠕虫相は本州に生息していた時の状態をほぼ保持したまま定着していたことが判明した。
著者
浅川 満彦
出版者
日本生物科学者協会 (農文協)
雑誌
生物科学
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.124, 2011-02
著者
浅川 満彦 大沼 学 吉野 智生 相澤 空見子 佐々木 均 前田 秋彦 斉藤 美加 加藤 智子 盛田 徹 村田 浩一 桑名 貴
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 = The journal of veterinary epidemiology (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.25-26, 2008-07-20

極東ロシア地域からのウエストナイル熱ウイルスが日本に伝播することが懸念されており,その場合には,野鳥の大量死が発生することが想定されている。酪農学園大学野生動物医学センター(以下,WAMC)では,学外専門家との共同で野生鳥類の普通種を対象にウエストナイルウイルスの簡易診断キットVecTest(米国Medical Analysis Systems, Inc. 社 : 同ウイルスのモノクロ抗体応用)(以下,キット)応用の可能性とこの感染症に関連した調査を行っている。WAMC(担当 : 吉野・浅川)において口腔内スワブを採取し,このスワブをキット用サンプルとした。一部は脳,心臓,腎臓から抽出したRNAをリアルタイムPCR法(担当 : 大沼)および10%脳乳剤Vero細胞接種法によるウイルス分離法(担当 : 前田)による確定診断を実施した。これまでの実績としては658個体(20目123種)(傷病入院個体含む)(吉野ら,2008)が検査され,疑陽性を呈したスズメ(<I>Passer montanus</I>)一個体を除く,すべてが陰性結果を呈した。疑陽性を呈した個体については,同時期・同地域に由来する5個体のスズメと共に,前記確定診断により陰性を確定した。さらに,関連調査として北海道の野鳥(カモ類)および哺乳類(アライグマなど)血清中の抗フラビウイルス中和抗体価測定(担当 : 斉藤),キットを用いた酪農大構内のアカイエカを対象にした予備調査(担当 : 佐々木)および救護鳥類でのキットによる診断(担当 : 加藤,盛田)などを実施している。混合感染で症状を増悪化させる可能性がある原虫類については,血清分離後の血餅およびスライド塗沫標本による<I>Plasmodium</I>属などの分析(担当 : 村田)も予定され,サンプルの有効活用も計る。<BR>今回行ったモニタリング調査の結果も含め,信頼性が高いとされるキットを用いた検査であっても,疑陽性・陽性反応が出た時点における確定診断検査の体制をあらかじめ組み立てておくべきであろう。また,病原体の伝播と混合感染という病原体の生態現象を鑑みた場合,媒介昆虫や寄生虫を含む他の病原体なども対象とした調査としなければ,自然生態系に生息する野鳥の絶滅リスクの増大を予見することは困難である。よってWAMCではより広範囲な動物・病原体を対象とした調査研究を実施しているのでその概要についても触れたい。本研究は環境省地球環境研究総合推進費(F-062 : 渡り鳥によるウエストナイル熱および血液原虫の感染ルート解明とリスク評価に関する研究)および文部科学省科学研究費(18510205)の支援を受けて行われた。
著者
横山 祐子 稲葉 智之 浅川 満彦
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.83-93, 2003-09
被引用文献数
1

サル類の公衆衛生学的研究の一環として,東京都内動物商およびペットショップで死亡したサル類5科15属22種96個体について,寄生蠕虫類の調査を実施した。検査動物の属としてはLemur, Galago, Nycticebus, Perodicticus, Aotus, Saimri, Cebus, Cebuella, Callithrix, Saguinus, Leontidius, Macaca, Cercopithecus, Erythrocebus, および Miopithecusであった。その結果,45個体に何らかの寄生蠕虫類を認めた。特に,調べたリスザル12個体とタラポアン14個体すべてに蠕虫類が認められたが,いずれも愛玩動物として人気が高いので警戒が必要とされた。今回の調査では線虫13属,吸虫1属,鉤頭虫2属,すなわちPhysaloptera, Rictularia, Dipetalonema, Gongylonema, Streptopharagus, Enterobius, Lemuricola, Crenosomatidae gen., Primasubulura, Globocephalus, Strongyloides, Molineus, Trichuris, Dicrocoeliidae gen., Prosthenorchis, Nephridiacanthusが検出された。このほか舌虫類の若虫(おそらくProcephalus sp.およびArmillifer sp.)が見つかったが,条虫類は見つからなかった。ほとんどの蠕虫類が日本で初めての報告となった。