著者
増子 直樹 田中 哲朗
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2013-GI-30, no.3, pp.1-8, 2013-06-21

コンピュータゲームにおけるゲームプレイにおいて,定跡データベースを持つことは,対戦の多様性の確保,序盤の貧弱な評価関数の補完,思考時間の節約に役立つことが分かっているが,対戦実験によって強さを評価する以外の評価法がこれまで提案されていなかった.本稿では,データ構造が公開されている定跡データベースを擬似的に対戦させ,出現する局面の確率分布を求めることにより,多様性,強さなどの評価を行う手法を提案する.提案する手法をオープンソースの将棋プログラムに適用することにより,興味深い結果を得た.
著者
副田 俊介 田中 哲朗
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.79(2003-GI-010), pp.31-38, 2003-08-04

最中限は竹内郁雄によって提案された3人プレイヤのカードゲームである.本研究は最中限をプレイする強いプログラムを作ることを目的とする.最中限は提案されたばかりのゲームであるため,人間のプレイにおいても,有効な戦略は確立されていない.そこで,人間の知識を使わずに計算機を用いて最中限を分析することにより,有効な戦略を求めることを試みる.この目的のために,最中限をプレイするプログラムを自動対戦させる実験を行い,点数に注目して分析を行った.プログラムは途中まではランダムプレイ,最終ラウンドでは検索によって手を生成するものを用いた.このプログラムは最終ラウンドの検索では相手プレイヤがランダムプレイヤ,つまりどの手も等しい確率で選ぶプレイヤであると仮定して全幅検索を行っている.この実験の結果,最終ラウンドに入る時点で点数が最も高かったプレイヤのゲーム終了時の得点の期待値は -0.56,2番目のプレイヤは0.91,3番目のプレイヤは-0.54となり,最終ラウンドに入る時点で最も中間の位置にいるプレイヤが最も有利であるという経験則と,この条件の元では一致することが確かめられた.
著者
田中 哲朗 岩崎 英哉 長橋 賢児 和田 英一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.9, pp.2122-2131, 1995-09-15
被引用文献数
7

多くの漢字は偏や旁などの基本的な部品の組合せからできている。本論文では、このことを利用して、漢字を具体的な座標を含まない抽象的な組合せ情報で定義しておき、プログラムによって部品を組み合わせてフォントを生成する方法を提案する。各部品は組合せによって大きさが変化するので、通常は様々な大きさの部品を用意しないと組み合わせて使うことができない。しかし、線の太さを自由に変えることのできるスケルトンフォントを使えば、あるサイズでデザインした部品をサイズを変更して使うことができる。そこで、本研究では論文(1)で提案した複数書体に対応可能なスケルトンフォントの形式で部品のデザインを表現する。組合せの種類として、横方向、縦方向、片方の部品の空白部分に他方の部品を配置する嵌込みが考えられる。JIS X0208に含まれるすべての漢字をこの3種類の組合せで表現して、最初の2つの組合せを扱うだけでもある程度デザインコストを減らせるが、嵌込みを扱うと更に効果があることを確かめた。また、未知の漢字が現われた時に、既知の部品の組合せだけで表現できる可能性を、JIS X0212の漢字の何割がJIS X0208の漢字の部品で表現できるかによって見積もった。表現した漢字を表示、印刷するためには組合せアルゴリズムが重要である。そこで、一番容易な横方向の組合せを実現するために単純な方法をいくつか実装し、評価をおこなった。その中でもっとも良かった組合せアルゴリズムをもとに縦方向、嵌込みのプログラムを実装し、JIS X0208とJIS X0212のフォントセットを作成した。これが単純なアルゴリズムで作成されたものにもかかわらず、ある程度の品質に達していることを確かめた。
著者
田中 哲朗
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.194-201, 2020-11-06

「十六むさし」は約400 年前から遊ばれている日本の古いボードゲームである.このゲームは,二人用の二人零和有限確定完全情報ゲームの一つであるため,ゲーム中の各局面のゲーム値を計算することができる.本研究では,標準的な「十六むさし」と2 つのバリエーションを強解決した.
著者
伊藤 隆 田中 哲朗 胡振江 武市 正人
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2001論文集
巻号頁・発行日
vol.2001, no.14, pp.56-63, 2001-10-26

’しりとり’を完全情報ゲームとして数学的に定義した’しりとりゲーム’を考えると,グラフ上のゲームとしてモデル化することができる.これは完全情報ゲームであるため理論上は解けることになるが,問題のサイズが大きくなるにつれ全探索は困難となる.本論文では,しりとりゲームに関する解析を行い,ゲームを効率的に探索する手法を提案する.この手法は数理的解析,探索の効率化の二つの部分から成っており,数理的解析としてグラフのより簡単な形への変形を行っている.加えて,しりとりゲームにおける先手の勝率に関して実験,考察を行う.
著者
田中 哲朗
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
數學 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.93-102, 2013-01-25
参考文献数
9
著者
田中 哲朗
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2002論文集
巻号頁・発行日
vol.2002, no.17, pp.140-142, 2002-11-15

「しりとりゲーム」はしりとりを完全情報化して定義したゲームである.完全情報ゲームなので,使用可能な文字の種類,使用可能な単語の集合と開始文字を決めれば,勝敗は決定可能である.「しりとりゲーム」の勝敗に関してはグラフとして表現した時に勝敗が同じで辺の少ないグラフに簡約する方法,文字の種類をnとしたとき,n=3までは定数時間で勝敗を決定可能であることが分かっているが,nを増やしていったときに,効率的に勝敗を決定するアルゴリズムがあるかは分かっていなかった.本論文では,しりとりゲームの勝敗の決定問題が文字の種類nに対してNP困難であることを示した.これにより,文字の種類によらずに,しりとりゲームの勝敗を効率的に求めるプログラムを書くのが困難であることが分かる.
著者
柳井 啓司 田中 哲朗 武市 正人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.13, pp.55-60, 1996-01-26
参考文献数
8

関数型言語向きアーキテクチャを持つプロセッサを,1万ゲート相当のFPGAを用いて実現した.本プロセッサは通常命令を実行するノーマルモードと関数型言語実行のためのリダクションモードの2種類の実行モードを持つ.リダクションモードでの実行を使用頻度の高い5つコンビネータにとどめ,他のコンビネータをノーマルモードで実行するという方針で設計をした結果,少量のハードウェアの追加で製作でき,ノーマルモードのみの実行と比較して5倍程度の速度の向上が確認された.A processor for functional languages was implemented on a Field Programmable Gate Array (FPGA) with 10 thousand gates. This processor has two execution modes, "normal mode" for execution of normal instructions and "reduction mode" for reduction of combinators. The design of this processor is to execute five frequently used combinators in reduction mode and others in normal mode. Combination of normal mode and reduction mode enables the processor to execute functional programs about five times as fast as that only with normal mode.
著者
柳井 啓司 田中 哲朗 武市 正人
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.13(1995-ARC-116), pp.55-60, 1996-01-26

関数型言語向きアーキテクチャを持つプロセッサを,1万ゲート相当のFPGAを用いて実現した.本プロセッサは通常命令を実行するノーマルモードと関数型言語実行のためのリダクションモードの2種類の実行モードを持つ.リダクションモードでの実行を使用頻度の高い5つコンビネータにとどめ,他のコンビネータをノーマルモードで実行するという方針で設計をした結果,少量のハードウェアの追加で製作でき,ノーマルモードのみの実行と比較して5倍程度の速度の向上が確認された.
著者
滝瀬 竜司 田中 哲朗
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2544-2551, 2012-11-15

現在の将棋プログラムの多くは入玉が絡む局面の扱いを不得意としているが,トッププロに勝つためには,入玉が絡む局面を正しく扱い「自玉が入玉できそうなときは入玉を目指す」,「敵玉の入玉を正しく阻止する」将棋プログラムの作成が不可欠だと考えられる.本稿ではオープンソースの将棋プログラムBonanzaの評価関数を変更することにより入玉指向の将棋プログラムを作成する試みを行った.その結果,元のBonanzaの評価関数に「入玉ステップ数」という特徴を加えて学習した評価関数を用いることにより,勝率を落とさずに入玉率を大幅に上げることができた.Most of recent shogi programs are thought not to treat entering-king positions correctly. The goal of this paper is to make a shogi program that treats entering-king positions correctly. We have conducted a couple of experiments to create an entering-king oriented shogi program by modifying the evaluation function of an open source shogi program "Bonanza". We made an evaluation function which has a new feature "entering-king step" besides original features, and adjusted the weight parameter of this feature based on comparison of moves that appeared in a database of game records. As a result, we succeeded to raise the entering-king rate without decreasing the original winning rate.
著者
田中 哲朗
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.770-775, 2002-07-15

個人的には,ある程度以上のレベルに達した参加者ならば,CよりもC++やJavaの方がプログラミングコンテストでは有利ではないかと思っている.そこで,今回は過去3回で使われたCではなくC++ とSTLを利用して,なるべく手を抜いてプログラムを記述することを試みることにする.使用するSTLの要素に関しては必要に応じて簡単な説明を加えるので,STLの知識がなくても概略は理解できるだろう.
著者
滝瀬 竜司 田中 哲朗
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2012論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.6, pp.159-162, 2012-11-09

現在の将棋プログラムの多くは入玉が絡む局面の扱いを苦手としているが,トッププロに勝つためには,入玉が絡む局面を正しく扱い「自玉が入玉したら宣言勝ちを目指す」,「敵玉の入玉を正しく阻止する」将棋プログラムの作成が不可欠だと考えられる.本稿ではオープンソースの将棋プログラム bonanza 1) で入玉した局面から学習することにより入玉後評価関数を作成する試みをおこなった.その結果,入玉後評価関数を用いて元のbonanza と対戦させたところ,勝率を上げることができた.
著者
田中哲朗
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究会資料
巻号頁・発行日
vol.97, pp.127-132, 1997
被引用文献数
1

ここ数年の間に, メモリCPU間の広いバンド幅を利用して, 画像, 音声データを別プロセッサでなく, CPU内で処理するため, 専用の命令を持つプロセッサが現れてきた. これらのマルチメディア命令セットは, ごく小規模なSIMD命令として実現されている. そのため, 画像, 音声処理だけでなく, 複数要素に対し同一の操作を繰り返す文字列処理, 一部の記号処理操作の高速化も期待できる. 本研究ではインテル386アーキテクチャに加わったマルチメディア命令セットであるMMX命令を用いて文字列処理, 記号処理のプログラムを高速化するための技法を提案し, その評価をおこなった. その結果, チューニングが必要になるものの, 一部の文字列処理関数で、2倍以上の高速化が実現できることを確かめた. ただし, 記号処理に関しては良い結果は得られなかった.