著者
宋 明見 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.221-230, 1996

韓国女性の伝統衣装である韓服の乾性及び蒸発熱抵抗を測定し、これに及ぼす風の影響を調査した.測定対象は, 下着一式, 麻, 絹一重, 絹, ポリエステルの4種のチマ・チョゴリとチマ・チョゴリの上に着る冬用のコート, ドルマギである.乾性及び蒸発熱抵抗の測定には, ドライ及び発汗状態のサーマルマネキンを使用した.主たる結果は次の通りである.<BR>1) 乾性熱抵抗についてはドルマギが最高値を, 続いて絹, ポリエステル, 絹一重のチマ・チョゴリの順となり, 麻が最小値を示した.乾性熱抵抗は, 布地の厚さとの間に0.80の高い相関係数を示すが, 有風下では, 絹とドルマギを除き, 通気性による著しい低下を示した.<BR>2) 蒸発熱抵抗は, ドルマギ以下乾性熱抵抗と同様の順位で布地の厚さとの間に無風化で0.88の有意な相関を示した.有風下では, 麻, ポリエステル, ドルマギで蒸発熱抵抗が低下した.<BR>3) 韓国の伝統服の乾性・蒸発熱抵抗は, その形態や構造によってではなく, 布地の厚さと通気性によって変化すること, これは日本の伝統服, 着物の結果と同様であることが示された.
著者
汪 清 閏間 正雄 本間 博 田村 照子 永井 伸夫
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.561-569, 2019-07-25 (Released:2019-07-25)
参考文献数
36

本研究の目的は,暑熱環境下(34℃,70%RH)で足部冷水浴が体温調節機能及び自律神経機能に及ぼす影響を検討することである.実験は健康な20 代女性15 名を対象に,15℃,15 分間の足部冷水浴を行い,舌下温,皮膚温,指尖部皮膚血流量,背部発汗量,及び心拍変動を測定した.その結果,舌下温は,冷水浴中から冷水浴後にかけて有意に低下した(p<0.01).冷水浴中各部位の皮膚温はコントロール群と比べ全て低値を示した.また,各部位の皮膚温は冷水浴前より低下し,その低下度は足背部>足趾部>下腿部>指尖部>胸部>大腿部>前額部>上腕部の順であった.冷水浴後,胸部,大腿部,足背部と足趾部皮膚温は回復したが,前額部,指尖部,下腿部は回復しなかった.平均皮膚温は冷水浴中に有意に低下し,冷水浴後は有意に上昇した.指尖部皮膚血流量及び背部発汗量は冷水浴中に減少したが,冷水後にやや増加した.RR 間隔とHF は冷水浴中から冷水浴後にかけて上昇し,副交感神経活動を促進,リラクゼーション効果を示した.
著者
山本 直佳 川端 博子 小柴 朋子 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.606-613, 2016

<p><tt>本研究は,がん治療の副作用である脱毛時に利用される医療用ウィッグの温熱特性を明らかにすることを目的とする.サーマルマネキンによる</tt>6 <tt>つのショートヘアスタイルのウィッグの熱抵抗を計測した.あわせて剃髪した</tt>10 <tt>名の男性被験者による夏季を想定した環境下でウィッグを着用し,快適感とウィッグ内温度と湿度を計測した.結果は以下の通りである.</tt> (1) <tt>顕熱抵抗値は</tt>0.06<tt>(℃・</tt>m²/W<tt>)前後で,ウィッグ間の差は少なかった.潜熱抵抗値は</tt>0.07<tt>(</tt>kPa<tt>・</tt>m²/W<tt>)前後で,人工毛の割合が多くなると高くなる傾向を示した. </tt>(2) <tt>発汗を想定した人工気候室での静止時の着用実験では,</tt>10 <tt>人中</tt>9 <tt>人が頭部に暑さを感じ,</tt>8 <tt>人が蒸れを感じていた.この間のウィッグ内温度は</tt>36.5<tt>℃,湿度は</tt>80<tt>%</tt>RH <tt>であった.</tt></p>
著者
高月 智志子 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.466-473, 1993-09-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
7

前報では, 和服の帯電性に及ぼす要因が, 新しく試作した歩行モデル装置を用いて検討された.これに続き, 本報では, 気温20℃, 30%RH, 気流0.2m/s以下の条件下における同様の着用実験が, 10名の健康な女子を対象として行われた.対象とした和服素材は, 絹, 未加工ポリエステル, 加工ポリエステルである.未加工ポリエステルの着物は, 対象中最高の帯電電位 (6.0kV) を示し, 一方, 加工ポリエステルは最低 (1.0kV以下) を, 絹はその中間の値を示した.結果は, 前報の装置実験の結果と高い相関を示したが, 着用実験における絹の帯電電位は装置実験の結果に比べて低下がみられた.その理由としては, 絹の吸湿性が非吸湿性のポリエステルより人体からの不感蒸散の吸収に有効に作用したためと考えられる.人体の帯電電位は, 0~0.075kVを示し, 和服への帯電位に比して著しく小さく, これは, 人体の静電容量が着物より大きいためと考えられた.107m歩行後の人体の帯電電位は, 着物の裾上10cmで測定された電位と高い負の相関 (r=-0.975) を示した.
著者
丸田 直美 田村 照子 有泉 知英子
出版者
人間-生活環境系会議
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.30, pp.105-108, 2006

時代とともに変化するファッションや昨年提案された地球温暖化対策としての「COOLBIZ」ファッションが人々の着衣量にどの程度影響をするのかを確認するために、2006年3月から2006年8月までの半年間、約10日間隔で東京都内の某交差点の横断歩道を渡る通行人の最外層の着衣を調べ、5年前(2001.6~2002,5)に同様の方法で調査したデータと比較した。その結果、女性の衣服の一部に今年度のファッショントレンドをみることができたが、春夏季の主要上衣衣服である長袖ジャケットと半袖シャツの着用率と日平均気温との関係は前調査結果とほぼ一致し、環境に対する人々の着衣行動には変化がみられなかった。着衣量もほとんど変化はみられなかったが、男性のビジネススーツの着用率やネクタイ全体の着用率が今年度わずかであるが夏季に減少していた。これらの結果より「COOLBIZ」運動はゆっくりではあるが普及していると思われた。
著者
神谷 法子 小柴 朋子 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>0A-0 </b><b> 寝衣が睡眠に及ぼす影響</b><b> </b><b>-寒冷環境下における睡眠―</b><b></b><b>○神谷<sup> </sup>法子<sup>1</sup>,小柴 朋子<sup>1</sup>,田村 照子<sup>1</sup></b><b></b>(<sup>1</sup>文化学園大)&nbsp;<b>目的</b> 寒冷環境下における寝衣の違いが睡眠の質へ及ぼす影響を明らかにし、より適切な寝衣について検討を行う。<b>方法</b> (1) 10~20才代男女450名を対象に、就寝時の寝具、着衣に関するアンケートを実施。(2) 終夜18℃55%一定に制御した人工気候室にて、半袖・半ズボン、下着のみ、スウェットの3種の着衣条件下で、午前0時より7時間睡眠中の、体動、布団内気候・衣服内気候、心拍、足指(親指) 皮膚温、睡眠満足度:OSA睡眠調査票を測定した。<b>結果</b> (1)アンケート結果から、冬は厚着をして寝る人が多く、52%がスウェット、パジャマ43%(フリース19%、襟なし14%、襟付10%)冬用ネグリジェ5%で、それ以外も長袖41%と長ズボン83%の着用者が多かった。(2)睡眠実験の結果、皮膚温は個人差があるものの、着衣条件による差はみられなかった。布団内気候、衣服内気候は共に下着のみ、半袖・半ズボンが厚着のスウェットよりも温度が高い傾向で、布団内は着衣に関わらず暖かさが保たれることが明らかとなった。スウェットの場合、腕まくりをしたり足を外に出すなど体動が多く、また夢みが多く、深い睡眠がとれていなかった。半袖・半ズボンでの睡眠は入眠までの時間が短く、睡眠時間が長く、目覚めが良い傾向を示し、3条件の中で最も良好であった。
著者
オ ヒキョン 田村 照子 廣川 妙子
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.335-341, 2013

In order to design suitable clothes for elderly women, we surveyed the body image consciousness, types of clothes that were purchased frequently, and clothing fit preference in women aged 60-89 years by questionnaire, and analysed the results by age group. When asked about their body image, more than half of them did not acknowledge any increase in bending of the back despite getting older. Recently purchasing and frequently wearing clothes is such as shirts and pants. However, this study revealed that they do not often purchase or wear skirts or dresses. Their preference when purchasing clothes is to highly value items that &ldquo;suit their somatotype&rdquo;, &ldquo;comfortable&rdquo; are appealing. Meanwhile, as a result of Primary Component Analysis in each age group, &ldquo;functional clothing that emphasizes auxiliary life activities&rdquo; in the first principal component shows a high amount of factor loading.
著者
有泉 知英子 佐藤 真理子 並木 理可 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, pp.279, 2010

【目的】世界には様々な民族服があり,各々の生活様式や気候に適応するよう工夫が凝らされている.本研究では下衣の形態に着目し,民族服3種の運動機能性及び温熱的快適性について検討を行った.<BR>【方法】被験者は平均年齢22歳の若年女子4名.実験衣はパンタロネス(グアテマラ),シャルワール(インド他),パー・チュンガベン(タイ),現代服としてストレートパンツ,計4種をシーチングで製作した.測定は運動機能性評価として衣服圧及び官能評価を,温熱的快適性評価として衣服内温湿度を計測した.1)衣服圧…静立・屈曲・あぐら姿勢で,前面(WL・MHL・HL・大腿中央・膝蓋骨中点),側面(MHL・HL・大腿中央),後面(WL・MHL・HL・大腿中央・膝蓋骨中点)の計12点を測定した.2)官能評価…動きやすさについて5段階評価を行った.3)衣服内温湿度…実験衣を着用し,28℃・50%RH環境下で安静5分→足踏み3分における腹部前突点・大腿前面中央・殿部後突点の計3点を測定した.<BR>【結果】衣服圧では,現代服の前面(大腿・膝蓋骨),側面(MHL・HL・大腿),後面(HL)が高い値を示した.現代服は民族服より総じてゆとりが少ないと考えられる.シャルワールは,屈曲時の膝蓋骨中点とHLを除くほとんどの部位で低い値を示し,官能評価においても有意に高い評価を得た.衣服内温湿度測定の結果,温度変化量において現代服は安静時の上昇(A)大,動作時の下降(B)小であった.3種の民族服はA小,B大であり,ゆとりが多いため動作によるポンピング効果が生じたと考えられる.本研究により,民族服の機能性を定量的に評価できる可能性が示唆された.
著者
佐藤 真理子 趙 羅衡 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

目的 民族衣装には,気候・風土に適応可能な素材の選択,姿勢・動作を含む生活様式を反映したデザインの工夫等,長い年月にわたり積み重ねられてきた知恵が詰まっている.本研究では,アジアにおける民族服の下衣に着目し,素材とデザインが温熱的快適性,運動機能性へ及ぼす影響について検討を行った.<br>方法 被験者は23&plusmn;1歳の若年女性5名,実験衣はシャルワール(インド),バジ(韓国),ストレートパンツ(現代服)の3種である.運動機能性評価としては,同一素材で製作した実験衣を着用し,9種の動作時(立位,椅座,正座,胡坐,立膝,横座り,体育座り,日本のお辞儀,韓国のお辞儀)における衣服圧測定と官能評価,温熱的快適性評価としては,各市販品(ポリエステル100%・重量約200gで統一.インド,韓国,東京で購入)による物性試験と衣服気候計測(27℃・50%RH環境下で立位安静&rarr;足踏み運動&rarr;座位安静)を行った.<br>結果 シャルワールは,通気性と透湿性に優れ,接触冷温感が高く,暑熱気候への適応性が示された.バジは,接触冷温感が低く,衣服内温度は高く,防寒機能に優れていると考えられる.現代服は,正座,胡坐,立膝,日本と韓国のお辞儀において,高い衣服圧を示し,床に座っての姿勢や動作の多い&ldquo;伝統的所作&rdquo;に適さない様子が明らかとなった.
著者
須田 理恵 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.165, 2007

<BR><B>目的</B> 2005年の京都議定書発効に端を発した環境省によるクールビズ・ウォームビズの呼びかけに対して,夏はより涼しく冬はより暖かい肌着の開発が進められている。本研究では近年の開発肌着について,素材の物性と肌触りの関係,およびこれに及ぼす環境温度条件の影響を検討した。<BR><B>方法</B> 対象肌着は,試料提供企業が2005年度市販用に開発した10種の素材を用いた同一サイズ・同一パターンのU首半袖シャツで,素材特性としては基本特性のほか,熱・水分特性(乾・湿時熱損失値,熱伝導率,熱コンダクタンス,接触冷温感,保温性,透湿性,吸湿性,吸水性)並びに力学特性(剛軟性,引っ張り,曲げ,せん断,表面摩擦,表面粗さ,圧縮特性)を測定した。肌触りについては,手触りと着用感を,環境温度22℃,28℃,34℃,いずれも湿度50%一定の条件下で,SD法を用いて評価した。被験者はMサイズ着用可能な女子学生16名である。<BR><B>結果</B> 手触りにおける快適感は,いずれの温度条件においても,共通して滑らかさ・柔らかさ・べたつき感という布地の表面的な風合いを示す官能量が高い相関を示し,物性値としては通気性,コース方向における表面粗さ変動(SMD)の寄与が大きいことが示された。一方,着用感における快適感については,環境温度の関与が見られ,22℃では,しなやかさ,28℃ではこれにゆるみ感が加わり,34℃では,さらに清涼感が加わることが示された。また,着用感と素材物性間の重回帰分析によると,22℃では,表面粗さと摩擦,28℃では,吸湿性が加わり,34℃では,引張り・圧縮などの力学特性の関与が認められた。
著者
佐藤 真理子 齋藤 紘野 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.124, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】日本舞踊の伝統的所作である「振(ふり)」は,日本舞踊特有の身体動作であり,舞踊表現の基本的要素として伝承されてきた.本研究では,「振」のポーズと動きにおいて,男舞と女舞の所作の違いが,和服と人体の関係性にいかなる影響を及ぼすか,明らかにすることを目的とした.【方法】被験者は現代日本舞踊T流師範を持つ22歳の女性2名.着装条件は通常の稽古時と同様,浴衣・半幅帯・足袋・下着(キャミソール・スパッツ・和装用ブラジャー・ショーツ).測定動作は,(1)「束(そく)」;両足を揃えてまっすぐに立つ,(2)「座り」;片膝を付いて座る,(3)「入れ込み」;片足の爪先の前に反対の足を入れ込んで置く,(4)「姿見」;袖を胸に当て自分の姿を見る,(5)「振り返り」;片方の肩を引いて振り返る,(6)「かけ回り」;片足を軸足にかけるようにして身体の向きを変える,(7)「すり足」;足をするように前に出し歩く,の7種の「振」とし,男舞と女舞で踊り分けた.測定項目は,(1)~(5)の静止時の衣服圧と重心動揺,及び(1)~(7)の動作時の筋電とした.【結果】重心動揺では,「姿見」において女舞の総軌跡長の値が大であった.女舞は,男舞に比べ腰を落とし膝を曲げるため,姿勢の保持が難しいと考えられる.筋放電量では,男舞で前脛骨筋と大腿直筋,女舞で腓腹筋と大腿二頭筋の値が大であり,女舞で脚部の背面の筋をより使う傾向が明らかとなった.衣服圧では,女舞の所作において,身体をねじる,腰を落とす等,女らしさを強調する曲線的な動きをとるため,総じて値の大きい傾向が示された.
著者
オ ヒキョン 田村 照子 廣川 妙子
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.E1-E1, 2013 (Released:2013-05-16)

訂正日本感性工学会論文誌Vol.12, No.2, p.335-341 (2013) において内容に誤りがございましたので、以下の通り訂正いたします。論文タイトル(誤) 高齢女性の衣服設計に向けた衣生活調(正) 高齢女性の衣服設計に向けた衣生活調査著者名(誤) HeeKyoung OH, Tamura TERUKO and Taeko HIROKAWA(正) HeeKyoung OH, Teruko TAMURA and Taeko HIROKAWA
著者
田村 照子 小柴 朋子
出版者
文化女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

湿潤感は着衣の快適性研究において極めて重要である。本研究の目的は着衣による湿潤感の感知構造を探り、湿潤感の中枢・自律神経系への影響を探ることにある。主たる結果は以下のようである。1)全身の湿潤感を左右する重要な要因としては、湿度そのものよりも湿度によって影響を受ける皮膚蒸散量並びに人体-環境間の体熱平衡から求められる蒸発放熱量であることが明らかになった。2)カプセル又はポリエチレンフィルムを用いた閉塞性の局所湿潤負荷装置による実験の結果、人体の局所湿潤感を左右する要因は、皮膚からの水分蒸発に伴う皮膚温変化と皮膚水分に対する触感量の複合であることが示された。3)衣服内湿度の生理影響を調査するために、異なるサイズの孔を穿ったポリエチレンフィルムを用いて実験衣服を製作、その物性値及び熱・蒸発熱抵抗をKES法並びに発汗サーマルマネキンを用いて評価した。穿孔の有無、穿孔サイズにより衣服内湿度および皮膚濡れ状態に差を生じたので、これを以下の実験に供した。4)心電図R-R間隔のパワースペクトル分析により自律神経の活動レベルを測定した結果、衣服内の湿度が高いほど副交感神経活動の指標HF/(HF+LF)が低下し、交感神経活動の指標LF/HFは上昇した。5)国際10-20法による13部位の脳電図並びに脳波CNVを測定した結果、衣服内湿度が上昇するにつれて脳波のα波含有率、β波含有率ともに少なく、CNVでは振幅の抑制が認められた。6)衣服内湿度の内分泌反応への影響を調べた結果、衣服内湿度が高いほど唾液中のストレスホルモンといわれるコルチゾール、分泌型IgAともに増加し、尿中アドレナリン分泌量が低下する結果となった。以上の結果は、すべて衣服内の湿度上昇が心理的不快感のみならず、自律神経活動、内分泌反応、中枢神経活動のいずれにも負の負荷を与えることが生理学的に示唆された。本研究成果の一部は平成12年9th国際環境工学会(ドイツ)において発表した。
著者
田村 照子 富澤 美和
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.671-677, 1993-08-15
被引用文献数
4

発汗マネキンの定常制御系が輸血用装置の応用によって開発され,このマネキンを用いて,穿孔フィルム衣服が衣服の蒸発熱抵抗に及ぼす影響が検討された.制御系はよく作動し,マネキン各部表面の温度を2時間以上にわたって一定に保つことができた.マネキンは,また,全身を被覆するポリエチレンフィルムに開けられた孔のサイズを変化させることによって濡れ率1.0〜0.06まで変えることができた.フィルム衣服の実験結果は,妥当かつ再現性のあるものであった.即ち,衣服の蒸発熱抵抗は,被覆面積に従って増加し,反対にフィルム内孔のサイズが大きくなるにつれて,低下した.これにより,新しく開発された発汗マネキンは,快適性に関わりの深い衣服を通しての水分移動性の評価に有効であるとの結論が得られた.