著者
小松崎 俊彦 畑中 健介 岩田 佳雄
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.74, no.737, pp.75-82, 2008-01-25 (Released:2011-03-04)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

Recent advances in digital signal processors have facilitated the development of active noise control (ANC) technology where the various kinds of researches as well as applications have been studied. In general, the sound waves propagate spherically in three dimensional space. Simply constituting SISO system using ordinary loudspeaker as a control source may cause interfered sound field with both attenuated and amplified nodes exist. By placing number of microphones and control sources can improve the range of quiet zone and many researches have been dedicated to this end, yet still limitations on implementation and cost cannot be neglected. On the other hand, the recent development of high-directional loudspeakers based on new sound production theory known as 'parametric array effect' has allowed sound transmission to a narrow range of acoustic space like 'spotlight'. This peculiar characteristic can be implemented as one measure for improving active noise control scheme controlling acoustic field locally without adversely influencing vicinal space. In the present study, a new approach for active control of sound in free space is developed using high directional parametric loudspeaker as a control source. Experiments are performed for the active control of noise generated by single source located in space, where the noise is attenuated by a control source at error microphone which evaluates sound level. Both normal and the parametric loudspeakers are tested as control sources and results are compared based on measurement of interfered sound field around the evaluation point. It is known that the suggested ANC system can mitigate sound locally but cause less influence on sound field in circumferential space.
著者
畑中 健一郎 木村 浩巳
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<b>1.はじめに</b><br> 寒冷な気候を特徴とする長野県には、それを活かした伝統的な暮らしや産業が県内各地に存在する。これらの伝統は、地域の象徴となり、観光や地域興しの資源としても期待される一方、地域の気候に密接に関わるがゆえに地球温暖化に伴う気候変動の影響が危惧される。これら伝統を継承し、地域資源として活用していくには、気候変動に適切に対応していくことが重要である。<br> 天然寒天は、かつては農閑期の副業として各地で生産されていたが、現在は全国で数カ所のみである。角寒天に限れば茅野市を中心とする長野県諏訪地域が唯一の生産地であり、「寒天の里」をPRするなど地域の象徴となっている。天然寒天の生産は、冬期の冷涼な気候を利用して野外乾燥させる工程に特徴があり、気候変動の影響がもっとも心配される地場産業の一つである。本報では、諏訪地域の天然寒天生産を事例として、気候変動が地域の伝統産業へ及ぼす影響について調査した結果を報告する。<br><b>2.調査方法</b><br> 茅野市を中心とする諏訪地域の寒天生産者、寒天生産者の組合、茅野市役所等を対象に、ヒアリング調査、アンケート等を2012年~2014年にかけて実施した。その他文献調査等の結果と併せて報告する。<br><b>3.諏訪地域の天然寒天と気候条件</b><br> 諏訪地域の寒天生産は江戸時代末期に始まり、寒冷な気候を活かした風土産業として発展してきた。戦前に生産量のピークを迎え、1970年代以降に急減し、現在の生産者は諏訪地域全体で10者程までに減少している。諏訪地域の家庭では、法事などの際に寒天料理を食べる習慣があり、食文化としても寒天は定着している。また、茅野市では天然寒天の普及拡大を目指す産学官連携プロジェクトが推進されており、寒天には地域の特産品としての期待が寄せられている。学校でも地域学習の素材として活用されており、市民にも地域の伝統産業としての認識が定着している。天然寒天業は経済規模としては小さいが、地域の象徴としての役割は小さくない。<br> 寒天には天然寒天と工業寒天があり、天然寒天はさらに角寒天と糸寒天に分けられる。生産工程のうち、生天(ところ天)を乾燥させて寒天に仕上げる工程を天然の気候条件を利用して行うのが天然寒天である。夜間の低温と日中の晴天を利用して、凍結と融解を繰り返しながら約2週間かけて乾燥させる。角寒天の生産には最低気温が-5℃~-10℃程度まで下がることが望ましいとされる。<br><b>4.気候変動の影響</b><br> 現在、寒天を12月中旬から2月中旬にかけて生産する生産者が多いが、近年は暖冬の年が多くなり、生産可能な期間が徐々に短くなっている。茅野市の最寄りの諏訪の観測データをみると、1990年代以降の日最低気温の高温化の傾向が明瞭に表れている。とくに11月中旬から12月上旬と、2月中旬から3月上旬の高温化が顕著であり、生産期間の短縮と一致している。生産者もこれを敏感に感じており、春の訪れが早くなったこと、冬の訪れが遅くなったことは共通した認識である。また、2月の気温が読みにくくなっており、気象情報を頻繁に確認しながら作業計画を立てる生産者もいる。<br> 生産可能期間の短縮に対して生産量を維持しようとしても、干し場や人手確保の問題があり、規模を拡大するのは簡単ではない。やむを得ず生産量を減らさざるを得ない状況が見受けられる。また、極寒期でも低温の日が連続せず、品質低下を防ぐための作業が必要となっている。このように気温の上昇が生産コストの上昇を招いている。<br><b>5.生産継続に向けて</b><br> 天然寒天の生産継続のためには、気候変動以外にも需要の減少や、都市化の進行による干し場確保の困難化、後継者問題などさまざまな課題がある。これらの課題に対して気候変動がさらに追い打ちをかけている状況にあり、後継者候補がいても事業の継承をためらっている生産者も多い。しかし、天然寒天の生産継続は、地域の伝統産業、食文化の継承の問題とも重なり、地域の象徴をどう維持していくのかということにつながる。今後は、これまでの需要喚起の取り組みに加え、気候変動影響にどう適応していくのか、個々の経営体の問題だけでなく、地域の問題としての検討が必要である。
著者
栗林 正俊 富樫 均 浜田 崇 尾関 雅章 大和 広明 陸 斉 畑中 健一郎
出版者
長野県環境保全研究所
巻号頁・発行日
no.13, pp.47-53, 2017 (Released:2018-03-23)

長野県環境保全研究所では,気候変動影響調査と市民への環境学習の機会の提供を兼ねた講座とし,毎年8月に長野県内の6箇所(長野,上田,飯田,松本,伊那,大町)で,セミの抜け殻調査を1回ずつ実施している。本研究では,2012~2016年の5年間のデータから,セミの分布状況や年次変化を示し,各種セミの抜け殻数と気候条件の相関関係を基に年次変化の要因を考察した。この結果,エゾゼミは標高700m以上の涼しい調査地点で確認され,ニイニイゼミは標高700m未満の暖かい調査地点で確認された。松本会場ではエゾゼミが,長野会場ではニイニイゼミが,それぞれ減少傾向にあるが,長野,上田,松本の3会場ではミンミンゼミが増加傾向にあった。この3会場全てで,ミンミンゼミの抜け殻数は5月の月平均気温と有意な正の相関があった。今後も各地点での調査を継続すると共に,定点で時期を変えて複数回の調査を行い,調査のタイミングによるセミの抜け殻の種類の違いを評価することが課題である。
著者
三好 雅也 畑中 健徳 吉川 博輔 藤井 純子 馬渡 秀夫 小林 暉 内山田 朋弥 山本 博文
出版者
日本地学教育学会
雑誌
地学教育 (ISSN:00093831)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.57-69, 2019-02-28 (Released:2019-11-13)
参考文献数
19

恐竜渓谷ふくい勝山ジオパークの小学校における火山教室の実践結果と効果について報告する.火山教室は,火山活動と大地の形成に関する講義および七輪マグマ実験で構成される.実験において,児童は溶岩の温度(約1,000℃)を赤外放射温度計で実測し,砂山斜面を流れる溶岩が爪楊枝を燃やす様子を観察した.授業後アンケート調査結果は,児童が溶岩の高温を実感し,勝山の大地の成因と火山活動との関係について興味・関心を持ったことを示した.
著者
畑中 健一郎 陸 斉 富樫 均
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.197, 2007

<BR><B>1.はじめに</B><BR> 近年、里山の環境保全に対する関心が高まっているが、里山という言葉そのものにもさまざまな解釈があり、人により受け止め方にも違いがみられる。里山の環境保全をすすめるにあたっては、地域の人々が、里山に対して現在どういうかかわりをもち、また里山に対してどういう意識をもっているかを把握することが重要である。そこで本研究では、長野県民を対象に実施したアンケート調査をもとに、里山に対する住民の意識を明らかにすることを試みた。<BR><B>2.アンケート調査の方法</B><BR> アンケート調査は、2004年2月から3月にかけて、長野県内の84市町村(当時)の住民を対象に郵送により実施した。対象者は各市町村の選挙人名簿から層化3段無作為抽出により抽出し、有効回答数は1120人(有効回答率56%)であった。<BR> 調査項目は大きく分けて、(1)長野県の自然と自然保護に対する意識、(2)里山とのかかわり、(3)里山の生き物に対する意識、(4)地域の伝統行事や組織へのかかわり、(5)今後の里山利用と保全への意識、および回答者の属性である。<BR><B>3.調査結果の概要</B><BR>(1)長野県の自然と自然保護に対する意識<BR> 長野県の自然環境に「満足している」人の割合は66%で、市部よりも郡(町村)部で高い。また年齢別では、50代や60代の高年層よりも20代や30代の若年層で高い割合となっている。県内の自然保護対策については、「もっと推進するべき」が55%、「今のままでよい」が19%、「もっと緩和するべき」が5%であった。<BR>(2)里山とのかかわり<BR> 里山に「親近感を感じる」人の割合は87%と高く、市・郡部での違いはほとんどないが、里山とのかかわりの頻度が高い人の方が「親近感を感じる」割合が高くなっている。<BR>(3)里山の生き物に対する意識<BR> ツキノワグマ、サル、カモシカなどの中・大型動物が、最近、数を回復させはじめていることに対しては、「良いことだと思う」が33%、「困ったことだと思う」が31%、「なんともいえない」が36%と判断が分かれている。市部では「良いことだと思う」、郡部では「困ったことだと思う」の割合が高く、年代別では若年層より高年層で「困ったことだと思う」の割合が高くなっている。<BR>(4)地域の伝統行事や組織へのかかわり<BR> 最近の1年間に参加した行事としては、「初詣」が75%、「お盆の迎え火・送り火」が73%、「お祭り」が69%であった。また、残しておきたい行事としては、「お祭り」が89%でもっとも高い割合となっている。最近の1年間に日常生活の中で参加した組織や作業としては、「地域の共同作業」が62%、「寄合い」が53%であった。<BR>(5)今後の里山利用と保全への意識<BR> 里山で暮らすことを「魅力的だと感じる」人の割合は79%と高く、市・郡部での違いはほとんどないが、高年層ほど高い割合となっている。また、里山での活動に「関心がある」人の割合は63%で、女性より男性、若年層より高年層の方が高い割合となっている。関心がある活動としては、市部では「自然観察会等の実施、郡部では「農業に関連した作業」が多い。今後の里山の利用策としては、「地域住民の憩いの場・癒しの場」が69%、「生活物資を得る場」が41%、「野生生物の保護区」が27%と続いている。<BR><B>4.おわりに</B><BR> 里山に対しては多くの人が親近感を感じており、里山で暮らすことも魅力的だと感じている。しかし、市部と郡部、あるいは若年層と高年層での里山に対する認識の違いも明らかとなった。例えば、自然環境への満足度は郡部の方が高いが、中・大型動物の生息に対しては郡部の方が否定的な考えを持っている。また、若年層より高年層の方が里山により高い関心をもっている傾向もわかった。ただし、里山での活動内容としては、これまで営まれてきた農林業に関わる活動ばかりでなく、自然観察や憩いの場・癒しの場としての里山の利用など、関わり方に対するニーズも多様化している状況がうかがわれる。<BR>
著者
畑中 健二 Hatanaka Kenji
巻号頁・発行日
1994-02 (Released:2001-10-31)
著者
押野 武志 畑中 健二 土屋 忍 山崎 義光 野坂 昭雄 森岡 卓司 高橋 秀太郎 野口 哲也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本の1960年代において、文学概念の再編が社会的・思想的・政治的な諸言説と重層的に干渉し合いながら、どのように行われたのかを総合的に究明した。純文学/大衆文学、カルチャー/サブカルチャー、文学/政治、事実/虚構といった1960年代の文学をめぐる新たな境界の生成を1930年代前後の諸言説と対照させながら、60年代の文学が何を構造的に反復していたのかという、戦前と戦後を貫く近代日本の知的言説の歴史的特質も明らかにした。
著者
佐藤 伸宏 加藤 達彦 高橋 秀太郎 土屋 忍 野口 哲也 畑中 健二 森岡 卓司 山崎 義光
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

「小品」とは、明治時代の後半期に成立した短小な散文テクストであり、近代長篇小説の確立の傍らで、それとは異なる脱ジャンル的で多面的な性格を備えた特異な散文として、非常な隆盛を示すことになった。この「小品」に関して、先行研究の蓄積はほとんど皆無に等しい状況であったが、本研究では、雑誌メディアを対象とした文献調査をとおして「小品」という枠組みの成立と展開を跡付けるとともに、北原白秋や水野葉舟その他が生み出した「小品」の様式的特徴を明らかにすることによって、「小品」の性格と意義を解明した。
著者
矢田 豊 竝川 昌司 神田 大輔 畑中 健 大山 達也 長島 多聞 久保田 潤 高木 均 吉永 輝夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.523-529, 2012 (Released:2012-08-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

症例は56歳,男性.C型肝硬変に腹膜播種を伴う進行肝細胞癌(HCC)を併発し,ペグインターフェロンα併用5FU全身化学療法(PEG-IFN/5FU全身療法)を施行したところ,化学療法開始直後に出血性ショック状態となった.腹部CT検査で腹腔内出血を確認し,化学療法に伴う肝癌破裂と診断した.保存的加療にて軽快し,かつPEG-IFN/5FU全身療法によりHCCは腹膜播種巣を含め著明に縮小した.このため,PEG-IFN/5FU全身療法を計5コース施行したところ,同療法は奏功した.化学療法に伴うHCC破裂は化学療法が有効であるがゆえに生じる可能性があり,循環動態の安定が得られた後に,同療法を繰り返すことで著効が期待できる.腹膜播種を伴う進行HCCにPEG-IFN/5FU全身療法は考慮すべき治療法と考えられた.