著者
胡中 孟徳
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.245-264, 2017-07-28 (Released:2019-03-08)
参考文献数
25

本研究の目的は,中学生の生活時間類型を取り出して個人の時間の使い方を捉えるとともに,各類型の規定要因を探ることである。1980年代までの学歴社会に関心を寄せる研究は,受験競争が子どもの生活時間に与える影響に注目してきた。他方,2000年代以降は,学習時間の階層差には着目するものの,生活時間全体への目配りを欠いた研究が増えている。しかし,1日が24時間であるという基本的な条件を踏まえれば,学習時間が増えるほどその他の時間が減ることには注意せねばならない。本稿では,生活時間のトレードオフに留意して「放課後の生活時間調査2008」の分析を行う。分析においては,系列データの分析手法として知られる最適マッチング法を使用して,行為の長さや順序を含む24時間の使い方全体の情報を用いて類型化を行い,得られた8類型をもとに類型の規定要因を探った。分析の結果,学習時間を長くする余地が残っていると考えられる生活時間の中学生は全体から見て少数であること,親の学歴が高いと学習時間が長くなりやすいという先行研究の知見を支持する結果とともに,母親の地位は子どもの生活時間を「規則正しい」ものにするような影響も与えていることも明らかになった。以上の結果から,階層的地位の影響の仕方が父親と母親で異なること,可処分時間に限界がある以上,学習時間を「努力」の指標とみる見方に限界があることが示唆された。
著者
中村 高康 吉川 徹 三輪 哲 渡邊 勉 数土 直紀 小林 大祐 白波瀬 佐和子 有田 伸 平沢 和司 荒牧 草平 中澤 渉 吉田 崇 古田 和久 藤原 翔 多喜 弘文 日下田 岳史 須藤 康介 小川 和孝 野田 鈴子 元濱 奈穂子 胡中 孟徳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、社会階層の調査研究の視点と学校調査の研究の視点を融合し、従来の社会階層調査では検討できなかった教育・学校変数をふんだんに取り込んだ「教育・社会階層・社会移動全国調査(ESSM2013)を実施した。60.3%という高い回収率が得られたことにより良質の教育・社会階層データを得ることができた。これにより、これまで学校調査で部分的にしか確認されなかった教育体験の社会階層に対する効果や、社会階層が教育体験に及ぼす影響について、全国レベルのデータで検証を行なうことができた。