- 著者
-
古田 和久
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.1, pp.21-36, 2018 (Released:2019-06-30)
- 参考文献数
- 36
- 被引用文献数
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本稿の目的は, 社会階層構造を吟味したうえで, 出身階層による進路選択の差異を分析し, 家族の保有資本量と構成による格差のメカニズムを探究することである. 2012年に実施された「高校生と母親調査, 2012」を用い, 家族の階層およびそれと高校生の進路希望との関係を分析した. 第1に, 出身家庭の資本構造を区別するため, 親の職業, 学歴, 世帯年収, 預貯金, 文化的所有財に潜在クラス分析を適用し, 5クラスのモデルを得た. それによれば, 家族の階層は経済資本と文化資本の量だけでなく, 資本構成によっても分化していた. 具体的には, 経済資本と文化資本の両方を豊富にもつ層ともたない層に加え, 一方の所有量は多いが他方は少ない2つの非対称な階層, および中間層の存在を確認した. 第2に, 出身階層による進路希望の格差は資本総量とともに, 資本構成によっても生じていた. 資本量が最も多い層と少ない層の間には進路希望の顕著な差異が観察されるのと同時に, 資本構成が非対称な2つの層を比較すれば, 経済資本よりも文化資本を多く所有する層において大学進学希望率が高かった. 第3に, 文化資本の効果は上層と中間層との間で確認された. 他方, 経済資本の効果が最も顕在化するのは, 文化資本の蓄積が少ない階層においてであった. これらの結果は, 多次元の社会階層構造を反映して, 各要因が組み合わされ教育機会の格差が複合的に生じていることを具体的に示すものである.