著者
小川 和孝
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.127-135, 2013-03-10

This paper aims to describe new directions of sociology for the studies of the labor market in Japan. For related studies, I review the following three research areas – (1) long-term employment custom and seniority-based wage system, (2) social security system, (3) transition from school to work. The problems are that theories on which the past researches relied don't adequately explain observed characteristics in the Japanese labor market, and they view individuals as either “oversocialized” or “undersocialized.” Then, I seek several directions to overcome them. The emphasis is placed on to focus on multiple outcomes of labor markets, matching processes between workers and employers, and institutional mechaniams and their changes.
著者
小川 和孝
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.225-244, 2017

<p> 本論文では,日本の教育政策に対する人々の選好に関して,公的支出の水準と支出の配分を,それぞれ区別して分析する。これによって,日本の公教育におけるマクロな特徴を支えている,ミクロな意識構造を明らかにする。<br> 2011年に東京都内で行われた質問紙調査をデータとして,(1)税金を増やしてでも教育への公的支出を拡大すべきか,(2)異なる教育段階間ではどこに資源を配分すべきか,(3)同一教育段階内では,エリート的・非エリート的学校のどちらに資源を配分すべきか,という3つの次元を従属変数とする。独立変数としては,人々の持つ利害と,平等性規範が影響するという仮説を立てる。具体的には,性別,年齢,学歴,世帯年収,政党支持,高校生以下の子どもの有無,就業の有無を用いる。<br> 第一に,公的支出の水準に関しては,学歴や世帯収入による選好の違いは見られず,政党支持と高校以下の子どもの有無が影響している。第二に,異なる教育段階間における支出では,高学歴者は低次の教育段階への配分を望み,また左派的な人々は高次の教育段階への配分を望む傾向にある。第三に,同一教育段階内における支出では,高学歴者や富裕な人々はエリート的な教育機関への配分を,また左派的な人々は非エリート的な教育機関への配分を,それぞれ支持している。これらの理論的な示唆として,高等教育への公的支出に伴う逆進性と,意識の次元に見られる社会的な閉鎖性について考察する。</p>
著者
小川 和孝
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.135-154, 2016-05-31 (Released:2017-06-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1

本論文では,高校生の持つ時間割引選好とリスク回避傾向が,教育期待へと与える影響について分析する。これによって,合理的選択理論における行為の前提となっている信念を,より明確化することを目的としている。 日本全国の高校2年生とその母親に対する調査をデータとして使用し,時間割引選好とリスク回避傾向が,高校卒業後の教育期待に与える影響を検証した。時間割引選好は,入職時点とその後の上昇度合いが異なっている賃金プロファイルのどれを好むかという選択から,またリスク回避傾向は仮想的な宝くじへの支払い意思額から尺度が構成される。 分析の結果から,これまで教育選択のモデルに明示的に取り込まれてこなかった信念は,既存の社会階層変数とは独立した効果を有していることが示された。時間割引選好は教育期待に対して有意に正の影響を有していた。これは将来の大きな利益をより重視する生徒ほど,より長い教育を望む傾向あることを示している。また,リスク回避傾向は教育期待に対して有意に負の影響を有していた。これはより損失に敏感な生徒ほど,より長い教育を望みにくいことを意味する。ただしリスク回避傾向については,モデルの選択によって頑健な結果とは言えなかった。これらの結果が教育選択におけるリスク回避仮説に対して持つ意義や,信念の役割を明らかにすることと機会の不平等における規範理論への発展との関連について議論した。
著者
小川 和孝
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.225-244, 2017-07-28 (Released:2019-03-08)
参考文献数
21

本論文では,日本の教育政策に対する人々の選好に関して,公的支出の水準と支出の配分を,それぞれ区別して分析する。これによって,日本の公教育におけるマクロな特徴を支えている,ミクロな意識構造を明らかにする。 2011年に東京都内で行われた質問紙調査をデータとして,(1)税金を増やしてでも教育への公的支出を拡大すべきか,(2)異なる教育段階間ではどこに資源を配分すべきか,(3)同一教育段階内では,エリート的・非エリート的学校のどちらに資源を配分すべきか,という3つの次元を従属変数とする。独立変数としては,人々の持つ利害と,平等性規範が影響するという仮説を立てる。具体的には,性別,年齢,学歴,世帯年収,政党支持,高校生以下の子どもの有無,就業の有無を用いる。 第一に,公的支出の水準に関しては,学歴や世帯収入による選好の違いは見られず,政党支持と高校以下の子どもの有無が影響している。第二に,異なる教育段階間における支出では,高学歴者は低次の教育段階への配分を望み,また左派的な人々は高次の教育段階への配分を望む傾向にある。第三に,同一教育段階内における支出では,高学歴者や富裕な人々はエリート的な教育機関への配分を,また左派的な人々は非エリート的な教育機関への配分を,それぞれ支持している。これらの理論的な示唆として,高等教育への公的支出に伴う逆進性と,意識の次元に見られる社会的な閉鎖性について考察する。
著者
小川 和孝
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

本研究の目的は、企業という組織レベルの要因を1つの社会制度と見なし、それを労働市場における社会的地位の格差の生成メカニズムとみなした実証研究を行うことである。本研究では、以下の2点を明らかにした。(1)企業規模は、内部労働市場における技能形成の機会を通じて、収入の蓄積的な格差を生み出している。(2)企業規模は、人々の収入の平均だけではなく、ばらつきに影響し、大企業に従事する人々における安定性をもたらしている。