著者
吉田 秀夫 藤井 勝実 中村 和弘 深澤 順子 新海 佳苗 新井 祥子 園部 洋巳 田村 由美子 花岡 和明
出版者
JAPAN SOCIETY OF NINGEN DOCK
雑誌
健康医学 : 日本人間ドック学会誌 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.61-65, 2004-06
被引用文献数
1

長時間労働を行っている勤労者に対して,人間ドック受診時に記入される問診票を分析することによって,問診票の持つ意義とその活用について検討した。平成14年度に当健康管理センターを受診した男性勤労者4,275名(平均年齢48.5±9.0歳)を対象とした。残業を含めた一日の労働時間から,対象者を12時間以上,8~12時間,8時間以内の3群に分類した。問診票のなかから労働態様,生活形態,嗜好習慣,身体的及び精神的愁訴について18項目を選び,長時間労働者の特徴を解析した。一日12時間以上の勤労者は500名あり,他の2群に比べて,年齢が若く,対人業務が多く,最近の仕事内容の変化でつらくなったと感じている者が多く,一ヶ月あたりの休日数は少なかった(P<0.001)。生活形態では睡眠時間が少なく,定期的運動習慣が少なく,3度の食事がきちんと取れない,寝る前に食事をとる,今も喫煙しているなどの特徴が見られた(p<0.001)。また,自覚的愁訴では体全体がだるい,朝の出勤がつらい,職場での対人関係が悪い,困った時の相談相手がいない,日常生活が楽しく過ごせていないなどの問題を抱える者が多かった(p<0.007)。長時間勤労は脳・心血管疾患の危険因子であることが示されているが,長時間労働者では多くの問題点を抱えており,労働状態や日常生活の把握に,問診表がもつ意義の重要性が改めて示された。
著者
藤井 勝
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1. 日本の伝統的家族理念は、近世の家の理念に求められる。近世の家は家父長制的ではあるが、成員の対等性と和の理念によって支えられた。また公的役割を果たすべき存在として家は理念化されたが、それは永続性の希求という理念を強化した。近世の身分層ごとに家の理念は多様性でありつつも共通の特質をもった。町人層さえも家の理念を発展させたことは、近代以降の産業化・近代化にとって重要な意味をもった。さらに家の理念は、祖先信仰からも儒教倫理から適合的な思想や価値観を提供された。2. 近世の家の理念は近代に引き継がれた。「日本的」なシステムは、明治以降の近代化のなかで解体されたのではなく、むしろ継承・再編されたからである。たとえば近代の儒教はかなり硬直的・統制的となって家の変容を生み出すが、それも近代の政治経済的展開への適応的な再編であった。そして戦後の高度成長期にさえ、「日本型企業社会」のなかに再編された。現代こそ、「日本的」システムの、また家の理念の大きな変容期である。3. 以上の歴史的前提のもとに、現代社会の家族理念は存在する。第一に、現代の家族理念には、現代的な変容と伝統性の保持とが共存している。成員の情緒的感情的結合を重視する一方で、家族の継承性を求める理念は根強く存在している。都市的地域の祖先祭紀でも、夫婦家族に適合的な祭紀が広がる一方で、伝統的祭紀およびその観念を持続させる契機が孕まれている。伝統的な家族理念の解体による「現代家族」的理念の確立という直線的過程を、調査データからは展望できない。第二に、農村では過疎化要因が家族理念に影響を与えている。そのため農村は都市と比較して遅れている、あるいは伝統的な文化的・社会的特質をもつという一般的な仮説は必ずしも適用できない。親子居住をめぐる理念と実態の関係をみても、農村地域では親子同居についての家的理念があるにもかかわらず、結果としては高齢者夫婦(単身)世帯が増加し、そこに独特の家族理念が生ずるという現状がある。
著者
小畑 登紀夫 藤井 勝利 舩城 衛介 堤内 清志 大岡 朗 水津 真 金築 祐
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.33-37, 1999-02-20

ピラゾール環を骨格とする新しい系統の化合物を合成し, その殺ダニ活性と魚毒性を調べた.N-フェノキシエチルピラゾール-5-カルボキサミド誘導体(III)に, ナミハダニに対する高い活性が認められた.しかしながら, メダカに対する毒性も高いレベルにあった.そこでN-フェノキシエチルピラゾール-5-カルボキサミド誘導体(III)を基にして, ハダニと魚間の活性選択性を得るために, N-アシル-N-フェノキシエチルピラゾール-5-カルボキサミド誘導体(IV)へと導いた.生物試験の結果, N-アシル化誘導体(IV)のいくつかの化合物に, 高い殺ダニ活性を維持しながら, 魚毒性の低い化合物を見出した.この選択活性は, N-アシル化誘導体(IV)のなかでピラゾール環の4位が無置換で, 3位にtert-ブチル基が導入された時, 最も大きかった.
著者
藤井 勝 平井 晶子 SIRIRATH Adsakul YENJIT Thinkham 奥井 亜紗子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

東アジアにおける国際結婚は、「東アジア共同体」の構築を社会的に支える重要な要素となる。しかし現状では、この国際結婚は人権侵害、離婚、暴力など、さまざまな問題点を内包している。本研究は、日本人-タイ人の国際結婚を事例としながら調査研究を行うことによって、この国際結婚の多様な展開の姿を類型論にもとづいて明らかにすると共に、それぞれの類型(あるいは形態)における結婚、家族、地域社会などめぐる特質や問題点を解明した。これによって、今後の国際結婚の発展に資する研究成果を得ることができた。
著者
小田 良助 綿貫 宏光 藤井 勝仁 谷川 靖信
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.247-254, 1981-11-30

沖縄本島南部地区は, 近年著しく酪農が発達した。筆者らは昭和54年度の経営を対照に5市町村から36戸の中堅農家を選定し, その経営調査を行った。その要約は次の通りである。(1)成牛飼養頭数20&acd;40頭の農家が多く, 家族経営が殆んどで堅実な酪農経営であった。たゞ, 育成牛飼養頭数が成牛2&acd;3に対し1の比程度に飼われ, やゝ多い傾向が窺えた。(2)1頭当り年間産乳量は, 3000&acd;4500kgが大半を占めており, 5000kg以上は僅か5%にすぎなかった。これは沖縄の牛が資質が悪いことではなく, 夏期高温による夏バテによって泌乳能力が低下しているものと考えられる。従って暑熱対策を考え, 産乳量の増加を図ることである。(3)一般に乳飼率は高く40&acd;55%を示したものが, 調査36農家中15農家(42%)を数えた。このことは夏期高温により, 必然的に熱発散によるエネルギー消費補充が要求されることによって, 濃厚飼料の消費が多くなるものと考える。(4)労働時間は, 1日平均12時間を数えた。従って1人1時間当り労働報酬は1000円以下が約50%を数え, 低賃金であった。(5)粗飼料は, 沖縄県独特のネピアグラスが栽培され, 1頭平均5アールの小面積乍ら本草の多収穫栽培によって夏期は充分に粗飼料確保が可能である。しかし冬期粗飼料が不足するので, サイレージの利用を考えるべきである。
著者
藤井 勝 佐々木 衞 首藤 明和 小林 和美 魯 ゼウォン 奥井 亜紗子 高井 康弘 福田 恵 竹内 隆夫 橋本 泰子 樫永 真佐夫 長坂 格 日下 渉 黒柳 晴夫 北原 淳 橋本 卓 油井 清光 白鳥 義彦
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、東アジアの地方社会を「地方的世界」という観点から、地方社会の形成の論理、現代的な変化の特質、そして今後の発展の可能性や課題を明らかにした。東アジアの地方社会では村落と都市(町)は対立しているのではなく、歴史的文化的伝統の上に成り立つ両者の有機的な関係が形成されてきた。そして、それに立脚して「地方的世界」が存在してきた。したがって村落はもとより、地方都市(町)、そして両者の関係の繁栄や再生こそ、地方社会、延いては東アジア自身の豊かな発展に不可欠であることを明らかにした。