著者
藤本 憲一
出版者
武庫川女子大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

◎本年度研究報告本年度は、最終年度にあたり、大容量のDVDメディアを標準としたデータベース作成を試みた。年頭の計画書に記したとおり、成果の集約をはかった。1)ネットワーク家族の現在形として、「モバイル(携帯)」メディアの使用実態に関するフィールドワークを実施した。また、「携帯電話」と「携帯食(モバイル食・中食)」と呼ばれる、通信と食の領域に関するアンケート調査を実施した。そのなかで抽出された特異なサンプルについては、とくに再度ヒアリングをおこない、生活史的調査をおこなった。2)調査結果に基づき、以上のような考察をえた。・血縁家族を単位とした、家と家との結びつきは、家庭機能の外部化や、冠婚葬祭等コミュニティ行事・イベントの減少に比例して、質量ともにネットワーク力を低下させている。生活史調査によれば、家庭だけでなく、学校や職場等「準-家族的集団」も、ネットワーク力を低下させている。・家族成員は、それぞれ「携帯電話」と「携帯食(モバイル食・中食)」を通じて、家庭外での新しい非血縁コミュニティを形成しつつある。それは、友人というよりも家族に代わる親密な集団、いわば「ネットワーク家族」として機能しつつある。・空間距離学的にいえば、家族という物理的に近い同居集団よりも、「ネットワーク家族」という物理的には離れて暮らす非同居集団のほうが、「リアル」な親密性を獲得し、心理的な距離を縮めつつある。
著者
重田 眞義 高田 公理 堀 忠雄 豊田 由貴夫 福田 一彦 藤本 憲一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

これまで科学的側面に偏っていた人間の睡眠行動に関する研究を、人間の文化的行動=「睡眠文化」として考究する新しい学問的な視座の確立と普及につとめた。医学、心理学などの分野でおこなわれてきた最新の睡眠科学研究の成果をふまえながら、アジア、アフリカにおける睡眠文化の多様性とその地域間比較をおこなった。また、現代社会において、睡眠をめぐるさまざまな現象が人間の健全な生活に対する「障害」としてのみ問題化されている現実をふまえ、生物医療的観点に偏りがちな睡眠科学による知見を文化の観点から相対化してとらえなおす作用を備えた「睡眠文化」という視点を導入した。
著者
森谷 尅久 藤本 憲一 角野 幸博 平松 幸三
出版者
武庫川女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

家庭機能の外部化は、都市化と密接に関係する。都市への人口集中が、必然的に住宅価格を引き上げ、一家の居住面積を縮小した。結果的に家庭が果たしていたある部分が、外部化されていく。家庭機能の外部化が進行するということは、都市が拡大された家庭の役割を果たすことを意味する。家庭機能の外部化の進行は、経済発展と深く関わっている。戦後の急速な工業化社会の中で、第一次産業従事者が減り、代わりに第二次・第三次従事者が増大していった。まず食事機能の外部化を歴史的にみると古代から中世にかけては、花会の宴・歳賀の宴が盛んになっている。花会は梅・桃・桜・ハス・萩・菊の宴が主流であるが、遠出して野趣を味いながら一日を過ごすことも多くなった。その後、日本の宴会はいっぽうで確実に外部化が進み、多様化を示すとともに、また内在化も確実に定着しはじめている。現代の外食産業については、ファーストフードに代表されるが、その多様化も急速に進行中である。また宿泊機能の点ではなく、わが国におけるホテルの歴史は幕末の開港とともに始まった。神戸、横浜、長崎などの開港場には外国人の居留地が整備され、商用で訪れた外国人のための宿泊施設が、外国人の手によってつくられた。わが国のホテルは、外国人の旅行客をもてなす施設として誕生したため、一般には「洋風の宿泊施設」として理解されている。しかしその概念規程ははなはだ曖昧であり、このことは、ホテルの多様化をもたらしたと同時に、ホテルという用語の混乱を招く結果ともなった。さらに、ホスピタリティ機能の外部化について病院は、戦後、高度経済成長にともなう都市化の進行につれて、家庭で行えない療養の場として、急速に需要を延ばした。現代の日本人は、大多数が病院で生を受け、半数以上が病院で生を終える。病院は、日本人にとって実に身近な存在になっている。入院が驚くべき出来事ではなくなるにつれ、病院は家庭の延長としてとらえられるようにもなった。以上、本年度は食事・宿泊・ホスピタリティ(療養)の三つの家庭機能について、その外部化を考察した。
著者
野村 雅一 樫永 真佐夫 川島 昭夫 藤本 憲一 甲斐 健人 玉置 育子 川島 昭夫 藤本 憲一 甲斐 健人 玉置 育子 小森 宏美
出版者
京都外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

老後と呼び慣わされる人生の段階に至っても、青年・壮年期に形成された個々人のアイデンティティの連続性は保持される。それが若い世代のライフスタイルを受容する文化伝達の逆流現象が生じるゆえんである。認知症の患者には、錯誤により、女性は若い「娘」時代に、男性は職業的経歴の頂点だった壮年期の現実に回帰して生きることがよくある。人生の行程は直線ではなく、ループ状であることを病者が典型的に示唆している。
著者
別府 真琴 土居 貞幸 呉 教東 藤本 憲一 谷口 積三
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.2127-2132, 1988-08-01

肝門部胆管癌手術症例11例につき検討を行った.11例のうち5例は姑息的内瘻術に終ったが,予後は平均12.8カ月(最長26カ月)で治癒切除可能症例が含まれていたことが示唆された.また切除例は6例で,乳頭浸潤型1例を除き,5例が結節浸潤型ですべてV因子陽性でStage IIIまたはIVであった.V因子陽性5症例中,4例は左または右の片側浸潤で,3例に血管浸潤側肝葉切除を施行し,そのうち左尾状葉合併切除を伴う左葉切除術(治癒切除)を施行した症例は6年8カ月後再発なく健在である.残り1例はV_3(Arh)で肝門部切除術,右肝動脈切断を行ったが,肝不全で失った.そして結節浸潤型5例全例が,ly_<1〜3>,pn_<2〜3>で,n(+)は1例であった.