著者
中村 治 古川 彰 鳥越 皓之 松田 素二 西城戸 誠 土屋 雄一郎
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

水害現象を水害文化として長期的で経験論的かつ価値論的な視野からとらえることによって、総体としての日常生活世界の中で、水害被災当事者の生活の視点から捉え直し、生活再建や地域社会の再生のプロセスを環境社会学的に明らかにした。また、文書や写真などの水害記録を発掘し、聞き書きにより経験者の記憶を生活史として再構成しながら、これを災害教育としていかに次世代につなぎ水害文化の継承を図るか、その社会学的手法の開発に取り組んだ。
著者
西城戸 誠 大國 充彦 久保 ともえ 井上 博登
出版者
産炭地研究会(JAFCOF)
雑誌
JAFCOF釧路研究会リサーチ・ペーパー
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-107, 2015-06-28

本報告書は,2009〜2013 年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究A)『旧産炭地のネットワーキング型再生のための資料救出とアーカイブ構築』(課題番号・21243032 研究代表者・中澤秀雄),2014 年度~2018 年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究A)『東アジア産炭地の再定義: 産業収束過程の比較社会学による資源創造』(課題番号・26245059 研究代表者・中澤秀雄)の研究成果の一部
著者
西城戸 誠
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.9, pp.107-123, 2003-10-31

戦後日本の抗議イベントデータを用いて,戦後日本の環境問題に対する抗議活動(抗議型の環境運動)の動態とそれを規定する構造的な要因を計量的に分析した。その結果,環境問題に対する抗議活動は,1970年代半ばに穏健化し,1980年代にオルタナティブな要求をする活動が増加し,1990年代には「停滞」の様相を示したことなどが明らかになった。また,環境問題に対する抗議活動全体が興隆した時期(1964〜73年)と沈静化した時期(1974〜94年)において構造的要因の影響について分析した結果,1964〜73年では地方における政治的機会の閉鎖性と革新勢力との同盟といった要因が抗議活動の生起と関連していたが,1974年〜94年は政治的な要因との関連がほとんどなくなった。むしろ,1974年〜94年では,経済的な豊かさが抗議を生起させる条件になっていることが見いだせた。さらに1970年代半ば以降,日本の抗議型の環境運動は,欧米の抗議活動と異なり「運動社会」の様相は示していないことが明らかになった。
著者
西城戸 誠 角 一典
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.21-40, 2006-06-10 (Released:2009-11-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本稿の自的は,生活クラブ生協北海道の現状を確認し,生活クラブ生協で構築された理念と現実のギャップがどのようなものであるのかという点を,2002年に生活クラブ生協で実施された組合員調査と,インタビュー調査によって明らかにすることである。これまでの生活クラブ生協研究の多くは,生活クラブ生協自体が活発であった時代を対象としていた。本稿の研究は転換期を迎えた生活クラブ生協を対象とし,なぜ生活クラブ生協が「停滞」「沈滞」しているのかという問いに答えようと試みた。分析の結果,生活クラブ生協北海道が抱える理念と現実とのギャップを,消費材を通した「食の生協」としての生活クラブ生協を位置づけ,「生活クラブ生協らしさ」を体現していたさまざまな社会運動や班活動からは距離をおく組合員や,消費材を単なる一商品として認識してしまう組合員から見いだすことができた。そして,このギャップの拡大が生活クラブ生協の「停滞」「沈滞」をもたらしていることを示した。さらに,この組合員の意識・行動の差は,50代以上の組合員と40代の組合員の間にある可能性を示唆した。
著者
西城戸 誠
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
vol.24, pp.58-73, 2018

<p>本稿では,環境社会学と「社会運動」研究の接点を考察するために,環境社会学における動員論的な観点に基づく環境運動研究と,市民社会の中で未だ可視化されていない「敵対線」を引き直し,潜在化した抗議主体を浮き上がらせることを意図する運動研究との相違を整理した。また,環境社会学の環境運動研究に対する現場からの批判を踏まえつつ,実践に資する環境運動研究の方向性を見いだすために,公共社会学としての環境社会学の位置を確認した。そして,環境正義の議論を援用しながら「規範」に接続し,実践的な知見を析出するような環境運動研究の可能性を模索した。最後に,地域に資する再生可能エネルギー(コミュニティ・パワー)を事例に,コミュニティ・パワーを求める環境運動の「動員構造」の質的特徴と,運動の「成果」を環境正義との関連を考察し,地域に資する再生可能エネルギー事業や,それを担う運動体に対して,実践的な知見を提供する試みを行った。</p>
著者
西城戸 誠
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.119-136, 2003-06-20 (Released:2009-11-16)
参考文献数
11
被引用文献数
1

最近の社会運動研究において,人々の不満などの運動にかかわる認知的な側面の議論には,「文化的フレーミング」という概念が広く使われている。運動がどのようにすれば拡大するのかという実践的な関心を伴い,運動体とその指導者側が提示する「フレーム」の戦略的優位性についての議論が多くなされてきた。しかしながらこれらの議論は,フレームの受け手側の分析を欠いた議論であり,結果として動員された事象を対象とし,運動体とその指導者側の「効果的なフレーミング」の結果,支持者の動員が可能になったという説明をしている。本稿では,このようなトートロジカルな議論を回避するために,運動体側から投企されるフレームと,そのフレームの受け手の「文化的基盤」との「提携」という図式を用いる。北海道札幌市・江別市における都市近郊の環境運動を事例にして,投企されたフレームと,受け手の集合的記憶,組織文化,集合的アイデンティティといった運動の「文化的基盤」との関係を実証的に検証することによって,なぜ複数の人々が抗議活動に参加したのかという問いに対して文化的な説明を試みる。
著者
西城戸 誠
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.70-86, 1998

本稿では,戦後日本における環境問題とそれに対応する環境運動を,運動目標と組織構造,運動戦略を中心に整理しながら,政策提言型環境運動の特質を考察した。産業公害や大規模開発に伴う環境問題に対しては,制度的変革志向的な運動目標を掲げる政治志向型環境運動が対応し,その組織形態にはフォーマル性が認められた。生活公害のような環境問題に対しては,自己変革的な運動目標を掲げる共助志向型環境運動が対応し,基本的にその組織形態はインフォーマルな運動組織であった。そして地球環境問題に関しては,この問題の特質が生活公害の延長上にありながらもその構造の重層性のため,フォーマルな運動組織を持つ政策提言型環境運動が対応していることを示した。また環境運動が持つ政策提言性の質の程度が組織構造や運動戦略にも影響を及ぼしていることも示した。<BR>以上のように,環境問題の類型ごとの運動展開と運動の持つ政策提言性の質の変化に注目することによって,1990年代の日本の環境運動において,運動組織のフォーマル性をめざし,高度な専門性を所持した上で行政などに対案提示を行うような志向性が認められる。最後に,政策提言性の高さと動員戦略とのジレンマという政策提言型環境運動が抱えている諸問題を提示した。
著者
西城戸 誠
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.81-98, 2000-07

社会運動の組織的基盤などの動員構造に関する従来の研究は,既存の組織やネットワークの有無やその形態の議論に留まっているように思われる。そもそも運動に参加した諸集団のネットワークといった動員構造がどのように形成され,維持し変容していったのかという分析は萌芽的段階である。その問題点として,分析視角が単一の動員過程を想定し,運動と運動の問の中断状況や,先行運動による後続運動への「溢れ出し効果」を考慮に入れていないためであると考える。本稿の目的は,北海道札幌市における都市近郊の自然環境・住環境をめぐる4つのイッシューの運動を事例として,運動組織などの集団間ネットワークの形成・維持・変容を記述し,先行運動が後続運動への動員,ネットワークにどのような影響を与えてきたのかという点を分析する。また,運動間ネットワークの様相と動員過程の関係を仮説的に提示することを試みた。知見として,第一に運動の中断中に組織間ネットワークが形成されたこと,第二に先行運動が後続運動に戦略や動員のための運動ネットワークが供給されることが確認され,本稿の分析視角が有用であることが示唆された。また運動間ネットワークの様相と動員過程の関係についての仮説的な見解として,運動間ネットワークは動員に寄与するが,そのネットワークは日常的に機能しているものと運動が生起した時だけに機能するものがあることを指摘した。
著者
西城戸 誠
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.119-136, 2003-06-20

最近の社会運動研究において,人々の不満などの運動にかかわる認知的な側面の議論には,「文化的フレーミング」という概念が広く使われている。運動がどのようにすれば拡大するのかという実践的な関心を伴い,運動体とその指導者側が提示する「フレーム」の戦略的優位性についての議論が多くなされてきた。しかしながらこれらの議論は,フレームの受け手側の分析を欠いた議論であり,結果として動員された事象を対象とし,運動体とその指導者側の「効果的なフレーミング」の結果,支持者の動員が可能になったという説明をしている。<BR>本稿では,このようなトートロジカルな議論を回避するために,運動体側から投企されるフレームと,そのフレームの受け手の「文化的基盤」との「提携」という図式を用いる。北海道札幌市・江別市における都市近郊の環境運動を事例にして,投企されたフレームと,受け手の集合的記憶,組織文化,集合的アイデンティティといった運動の「文化的基盤」との関係を実証的に検証することによって,なぜ複数の人々が抗議活動に参加したのかという問いに対して文化的な説明を試みる。
著者
西城戸 誠
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究最終年度において、北海道浜頓別町、北海道石狩町、秋田県秋田市、潟上市、青森県鰺ケ沢町の市民風車立地点における市民活動、市民参加の調査と、2006年7月実施の石狩市民風車の出資者へのアンケート調査を踏まえて、現時点における市民風車事業・運動の成果と課題を考察した。その結果、市民風車事業・運動の社会的認知の上昇と、出資者が初期3風車の出資者に比べ、風車へのコミットメントを求める動機や経済的な点を重視する傾向が見いだせた。また市民風車事業・運動は、相対的に環境意識は高いが具体的な行動にまでは至らなかった人々に対して、具体的な貢献の窓口として機能している。また、それぞれの市民風車立地点の市民活動の実態は、風車の設立経緯や立地点での活動実績の違いによって異なったが、市民風車と出資者との関係性を構築する試みや、市民風車立地点における地域活動を活性化することの重要性とその困難さの一端が明らかになった。従来の研究のほとんどは市民風車事業・運動の出資者に対してのみ注目が当てられていたが、市民風車事業・運動が市民風車らしくなるためには、立地点を含んださまざまな市民活動、運動の存在が重要であることが明らかになった。一方、市民風車事業・運動のインキュベーター的な存在であった生活クラブ生協北海道に対する継続的な調査によって、生活クラブ生協の反・脱原発運動の展開と現状の課題について考察した。さらに、2006年に市民風車の出資を募集した大間・秋田・波崎・海上の4つの風車への出資者調査を実施し、現在、分析をしているところである。これらの調査研究を踏まえて、市民風車事業・運動の現段階と今後の可能性、課題を考察していく予定である。
著者
中澤 秀雄 嶋崎 尚子 玉野 和志 西城戸 誠 島西 智輝 木村 至聖 大國 充彦 澤口 恵一 新藤 慶 井上 博登 山本 薫子
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

世界(記憶)遺産という側面から、あるいはポスト3.11のエネルギー政策という観点から「石炭ルネサンス」と言うべき状況が生まれているが、これを先取りして我々産炭地研究会は、「炭鉱の普遍性に基づく産炭地研究・実践の国際的なネットワーキング」を展望しながらも、まずは資料の収集整理という基礎固め作業を継続してきた。夕張・釧路の個人宅から炭鉱関係資料をサルベージして整理目録化を進行させていることを筆頭に、多数の資料整理・目録化に成功した。ネットワーキングの面では、全国の博物館・元炭鉱マン・NPO等と関係を確立し、主要な全産炭地を訪問して資料整理・研究の面でも協働した。