著者
中村 治 嘉田 由紀子 古川 彰 鳥越 皓之 松田 素二 西城戸 誠 土屋 雄一郎
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

水害現象を水害文化として長期的で経験論的かつ価値論的な視野からとらえることによって、総体としての日常生活世界の中で、水害被災当事者の生活の視点から捉え直し、生活再建や地域社会の再生のプロセスを環境社会学的に明らかにした。また、文書や写真などの水害記録を発掘し、聞き書きにより経験者の記憶を生活史として再構成しながら、これを災害教育としていかに次世代につなぎ水害文化の継承を図るか、その社会学的手法の開発に取り組んだ。
著者
杉浦 和子 水野 一晴 松田 素二 木津 祐子 池田 巧
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

1.ストックホルムの民族学博物館に所蔵されている資料を調査した(杉浦、松田、水野、木津、池田、協力:Håkan Wahlquist氏(ヘディン財団))。ヘディンの原資料(スケッチ、新聞記事のスクラップブック、フィールドノート、地図の下図など)の閲覧と複写、撮影を行った。京都大学所蔵のヘディンの絵画模写作品の原画の所在を確認し、現存するものについては、記入されたメモの筆跡を照合した。模写60点のうち、49点の原画を確認できた。2.チベット調査を行った(池田)。ラサ、シガツェ、ギャンツェでヘディンが踏査したルートの確認とスケッチした地点と事物を比定し、写真を撮影した。地形や風俗、建物等の現況調査ならびに民族誌・チベット史等に関する文献資料を閲覧・収集した。チベット寺院内陣の様子、寺院の中庭、建物、衣装の装具、武器などで、ヘディンの描いたものと同じあるいは同種のものを確認できた。3.ヘディンの京都滞在期間中の交遊資料の調査を行い、鹿子木孟郎夫人の日記や知人名簿、新聞記事を収集した(木津、杉浦)。鹿子木夫人の明治41年の日記に、鹿子木がヘディンの歓迎行事で案内役を務めたこと、模写に画学生たちが鹿子木の自宅に来たことが記されていることを確認できた。また、近代学術史・京都洋画史・チベット史・探検史などの関係文献の収集と整理を行った(松田、水野、木津、池田、杉浦、協力:平野重光(元京都市立美術館学芸部長))。4.ヘディンとチベットにかかわるシンポジウムおよび企画展の日程や内容を検討し、準備を進めた(全員)。
著者
和崎 春日 上田 冨士子 坂井 信三 田中 重好 松田 素二 阿久津 昌三 三島 禎子 鈴木 裕之 若林 チヒロ 佐々木 重洋 田渕 六郎 松本 尚之 望月 克哉
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

「グローバル化時代における中下層アフリカ人の地球的移動と協力ネットワーク」現代社会において、グローバライゼーションを生きるのは、北側社会や特別なアフリカ人富裕層だけではなく、「普通の」アフリカ人たちが、親族ネットワーク等を駆使して、地球を広く縦横に生き抜いている姿が、本共同研究から析出された。その事実を基礎にした外交上の政策立案が必用になってくることを、本共同研究は明らかにした。
著者
松田 素二
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.247-270, 2004-09-30

20世紀の最後の10年間、自由は、現代世界における究極的価値としての地位を独占するようになった。「個人の自由」は、個々の社会的行為を支配する最終審級となったし、政治や経済の自由化は、武力介入さえ正当化できる「正義」となった。こうした状況の出現に対して、それを自由のアナキズムと批判して、何らかの歯止めをかけようとする動きが出てくるのもうなずける。無制限な自由の膨張に対する、もっとも強力な歯止めは、共同体からの規制であった。諸個人を共同体の文脈に位置づけ直して、自由の行き過ぎを規制し、社会の秩序を回復するという志向は、自由主義に対する共同体主義として定立されてきた。この二つの志向のあいだの論争は、1980年代以降、コミュニタリアン・リバタリアン論争として知られているが、本論の目的は、こうした論争における共同体の議論の不十分点を、人類学的思考で補うことにより、個人の自由と共同体という問題構制にに、新たな視角から光をあてることにある。これまでの共同体に関わる議論には三つの不十分点があった。第一には、生活論的視点がまったく欠如していた点であり、第二には、共同体を固定的な実体として自然化するか、もしくは、それと正反対にたんなる構築物として言説世界に還元してしまう平板な認識図式にとらわれていた点である。第三には、こうした個と共同体のアポリアを解決するため考案された創発的連帯モデルの限界に無理解だった点もあげられる。そこで本論においては、共同体の内外で生成される生活組織の多層で変異する態様を明らかにする。それを通して、共同体の外延(境界)をそのままにして、生活の必要に応じてうちから融通無碍に変質していく過程を、ナイロビにおける社会秩序の生成を題材にして分析することを試みる。
著者
松田 素二
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.23, pp.1-33, 1983-05-28 (Released:2010-04-30)
参考文献数
72

African urban studies of Anthropology have their origin in one ideal model, the dyachronic detribalization model. This model assumes that African urbanization can be regarded as a gradual process of detribalization in consequence of direct contacts with heterogeneous and powerful Western cultures. In the 1950's, members of the Rhodes-Livingstone School such as Gluckman, Mitchell and Epstein advocated a new approach for African urban studies on the basis of their field researches of copperbelt towns in Northern Rhodesia (now Zambia). They criticized the detribalization model and put forward the situational approach, which emphasized synchronic social relations. According to this approach, the social relations of African rural-urban migrants are in some situations based on their traditional tribal norms but in others are based on urban norms. The situational approach is a very useful one because it highlights the migrants' personal strategy in situational selections. It cannot, however, explain the retribalization phenomenon which prevails in the African metropolises today. Those urban migrants who come from rural areas do not break away from tribal social relations but on the contrary reorganize these tribal relations in order to live a stable life in the urban environment. The situational approach cannot explain the paradox of the retention of tribal relations in a strikingly urban context.This paper tries to resolve the problems of retribalization by analysing a re-organization process of social relations by the Maragoli migrants from Kerongo village, Western Kenya in Kangemi, a poor housing area in Nairobi. Kangemi, located in the northwest area of the city, is an urban colony for the Maragoli migrants. We can observe an actual re-organization process of various kinds of social relations there. In order to elucidate this process, this paper adopts the following procedures.1. Firstly, several social situations, where social relations are developed and organized, are chosen from the daily life of the migrants from Kerongo village in Kangemi. This paper extracts empirically eight situations, namely, (1) securing the first accomodation, (2) seeking permanent employment, (3) borrowing or lending money, (4) borrowing or lending daily goods, (5) drinking beer or local alcohol, (6) exchanging messages and information with their home village, Kerongo, (7) participating in church activities, (8) carrying the body of a migrant back to the home village and preparing and performing a ritual of “ilisyoma” in Nairobi.2. Secondly, the forms of re-organizing social relations in each situation are examined. The forms can be sorted into two types, network type and group type. According to the former type, whenever they confront difficulties in some situations of their daily life, the migrants set up a kind of association to deal with the difficulties. When they do not form an association but extend their personal social networks, this form is called the group type.3. Thirdly, the principles of re-organizing social relations are verified in each situation. The clan-lineage principle, the village-home-boy principle and the urban neighbourhood-locality principle are presented here. Thus, the migrants from Kerongo village living in Kangemi re-organize their social relations by using different forms and different principles in each situation.4. Although most parts of these re-organization processes can be presented as retribalization phenomena, this paper pays much more attention to a process organized by the home-boy principle. The study fourthly examines how the home-boy principle, which has been developed recently in town, is embedded and reinterpreted in a traditional and dominant ideology of unilineal descent. In order to provide the home-boy principle with legitimacy in the framework of the ideology of unilineality, the Kerongo villagers have adopted two stages
著者
宮本正興 松田素二編
出版者
講談社
巻号頁・発行日
1997
著者
関根 康正 野村 雅一 松本 博之 小田 亮 松田 素二 小馬 徹 野村 雅一 小田 亮 松田 素二 小馬 徹 KLEINSCHMIDT Harald 松本 博之 棚橋 訓 鈴木 裕之 GILL Thomas P. 加藤 政洋 島村 一平 玉置 育子 近森 高明
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

ストリートの人類学は、流動性を加速させるネオリベラリズムとトランスナショナリズムが進行する再帰的近代化の現代社会に資する人類学の対象と方法を探求したものである。現代の「管理社会」下ではホーム・イデオロギーを逸脱したストリート現象の場所は二重の隠蔽の下にあるので、画定しにくいがゆえにまずは正確な対象画定が重要になる。系譜学的にそれを掘り起こしたうえで、そのストリート現象についてシステム全体を勘案した体系的なエスノグラフィを書くことを試みた。この<周辺>を<境界>に読み替えるというネオリベラリズムを適切に脱却する人類学的な新地平を開拓した。
著者
永原 陽子 浅田 進史 網中 昭世 粟屋 利江 石川 博樹 今泉 裕美子 大久保 由理 愼 蒼宇 鈴木 茂 難波 ちづる 中野 聡 眞城 百華 溝辺 泰雄 飯島 みどり 松田 素二 上杉 妙子 丸山 淳子 小川 了 ジェッピー シャーミル サネ ピエール テケステ ネガシュ
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2011-04-06)

本研究は、20世紀の戦争において植民地と他の植民地との間を移動した人々(兵士・軍夫、軍に関連する労働者、「売春婦」等の女性)に着目し、とくに世紀転換期から第一次世界大戦期を中心に、これらの人々の移動のメカニズム、移動先での業務と生活の実態、様々な出自の人々との接触の内容、移動の経験が帰還後の出身地社会においてもった意味、などについて検討した。その結果、植民地の場における労働と戦争動員との連続性(「平時」と「戦時」の連続性)、兵士の動員と不可分の関係にある女性の自発的・強制的な移動の事実、さらに従来の研究の中心であった知識層の経験とは大きく異なる一般労働者・女性の経験が明らかになった。
著者
松田 素二
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.18, no.7, pp.7_62-7_66, 2013-07-01 (Released:2013-11-01)
参考文献数
3
著者
松田 素二
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.247-270, 2004-09-30 (Released:2017-09-27)
被引用文献数
1

20世紀の最後の10年間、自由は、現代世界における究極的価値としての地位を独占するようになった。「個人の自由」は、個々の社会的行為を支配する最終審級となったし、政治や経済の自由化は、武力介入さえ正当化できる「正義」となった。こうした状況の出現に対して、それを自由のアナキズムと批判して、何らかの歯止めをかけようとする動きが出てくるのもうなずける。無制限な自由の膨張に対する、もっとも強力な歯止めは、共同体からの規制であった。諸個人を共同体の文脈に位置づけ直して、自由の行き過ぎを規制し、社会の秩序を回復するという志向は、自由主義に対する共同体主義として定立されてきた。この二つの志向のあいだの論争は、1980年代以降、コミュニタリアン・リバタリアン論争として知られているが、本論の目的は、こうした論争における共同体の議論の不十分点を、人類学的思考で補うことにより、個人の自由と共同体という問題構制にに、新たな視角から光をあてることにある。これまでの共同体に関わる議論には三つの不十分点があった。第一には、生活論的視点がまったく欠如していた点であり、第二には、共同体を固定的な実体として自然化するか、もしくは、それと正反対にたんなる構築物として言説世界に還元してしまう平板な認識図式にとらわれていた点である。第三には、こうした個と共同体のアポリアを解決するため考案された創発的連帯モデルの限界に無理解だった点もあげられる。そこで本論においては、共同体の内外で生成される生活組織の多層で変異する態様を明らかにする。それを通して、共同体の外延(境界)をそのままにして、生活の必要に応じてうちから融通無碍に変質していく過程を、ナイロビにおける社会秩序の生成を題材にして分析することを試みる。
著者
太田 至 島田 周平 池野 旬 松田 素二 重田 眞義 栗本 英世 高橋 基樹 峯 陽一 遠藤 貢 荒木 美奈子 平野 美佐 山越 言 西崎 伸子 大山 修一 阿部 利洋 佐川 徹 伊藤 義将 海野 るみ 武内 進一 武内 進一 海野 るみ
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2011-06-18)

現代のアフリカ諸社会は、紛争によって疲弊した社会秩序をいかに再生させるのかという課題に直面している。本研究では、アフリカ社会には人々が紛争の予防や解決のために自ら創造・蓄積し運用してきた知識・制度・実践・価値観(=アフリカ潜在力)が存在すること、それは西欧やイスラーム世界などの外部社会との折衝・交渉のなかで不断に更新されていることを、現地調査をとおして実証的に明らかにした。本研究ではまた、「紛争解決や共生の実現のためには民主主義や人権思想の浸透がもっとも重要である」といった西欧中心的な考え方を脱却し、アフリカ潜在力は、人々の和解や社会修復の実現のために広く活用できることを解明した。
著者
松田 素二 鳥越 皓之 和崎 春日 古川 彰 中村 律子 藤倉 達郎 伊地知 紀子 川田 牧人 田原 範子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

現代人類学は、これまでの中立性と客観性を強調する立場から、対象への関与を承認する立場へと移行している。だが異文化のフィールドへの「関与」を正当化する論理は何なのだろうか。本研究は、生活人類学的視点を樹立してこの問いに答えようとする。そのために本研究は、日本・東アジア、東南アジア、南アジア、アフリカの 4 つの地域的クラスターと、自然・環境、社会・関係、文化・創造という三つの系を設定し、それぞれを専門とする研究者を配して「生活世界安定化のための便宜」を最優先とする視点による共同調査を実施した。
著者
小倉 充夫 井上 一明 島田 周平 青木 一能 遠藤 貢 松田 素二 児玉谷 史朗
出版者
津田塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999 (Released:1999-04-01)

冷戦の終焉とアパルトヘイト体制の崩壊は南部アフリカ地域に政治的、社会的、経済的変動をもたらし、民主化、経済自由化、地域協力の進展を促した。1990年代初頭において多くの人々はこの地域の将来に楽観的であった。しかし変革からおよそ10年後の今日、南部アフリカ諸国は失業率の上昇などの経済的苦難、犯罪や感染症の増加など深刻な問題を抱えている。構造調整政策の導入は経済危機を克服するために導入されたが、多くの都市住民の生活を一層困窮させることになった。こうした状況が人々の移動のあり方ばかりでなく、政治意識・政治行動にも影響を与え、農村社会を変化させた。これらの問題を各分担者等はそれぞれの研究領域と対象地域において調査しまとめた。具体的には、ザンビアにおける民主化と非政府組織、ジンバブエからザンビアへの移住農民の生活、ザンビア東部州からの移動と農村社会、ジンバブエにおける農村・都市間移動と反政府運動、植民地時代モザンビーク農村における人口移動、モザンビーク・南アフリカ間の労働移動、アパルトヘイト後の南アフリカにおける和解、ユダヤ人移民差別、中国人労働者導入問題などである。南部アフリカ諸国は南アフリカを中心として相互に密接な関係を発達させてきた。それはアパルトヘイト時代においても継続していた。したがってこの地域においては、一国的な分析は多くの場合限界があると同時に、歴史的な背景と変化のなかに位置づけて現状をとらえる必要がある。それ故、本研究では歴史的分析を重視し、その成果は報告書にも反映された。
著者
荻野 昌弘 古川 彰 松田 素二 山 泰幸 打樋 啓史 今井 信雄 亀井 伸孝
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

本研究は、太平洋戦争とその敗戦が戦後の日本社会およびアジア太平洋地域の形成に与えた影響における「負」の側面と、忌まわしい記憶として現在も残る戦争の記憶とを一括して「負」の遺産と捉え、調査研究することを目的としている。この目的のため、太平洋戦争時における日本国内および旧植民地、および中国大陸、太平洋諸地域など関連地域に関する調査を実施し、戦争に関する関連研究機関との協力関係の構築、図書館、博物館など資料の所在確認と基礎的データの収集に努めた。本研究の成果は次の三つの点にある。1戦後の日本社会の変容と太平洋戦争との関係-戦争が戦後の日本社会にいかなる影響を与えたのかという点に関して、空間利用という観点から分析した。具体的には、旧軍用地や戦争被害に遭った地域などがいかに変容したか、それが戦後日本の社会の構造変動にいかなる影響を及ぼしたかを考察した。このアプローチは、日本のみならず、太平洋戦争や第二次世界大戦に関係した地域,国家全体にも応用可能である。2戦争に関連した地域と観光開発-1のアプローチから、かつて戦場であった太平洋の地域を捉えると、その一部が、観光地になっていることが明らかとなった。かつての戦場は、いまや観光開発の対象であり、またグアムやサイパン、パラオのように、観光地としてしか認識されていない地域も存在する点に十分に留意する必要がある。3戦争が生み出した文化-太平洋戦争開戦から一年は、日本軍が勝利を収めていた。したがって、1942年の段階では、日本は一種の沸騰状態にあった。こうしたなか、思想や文化の領域においても,アメリカに対する勝利の事実抜きにしては、考えられなかったような新たな試みが生まれる。
著者
和崎 春日 松田 素二 鈴木 裕之 佐々木 重洋 田渕 六郎 松本 尚之 上田 冨士子 三島 禎子 若林 チヒロ 田中 重好 嶋田 義仁
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004 (Released:2004-04-01)

科研共同研究の最終年度にあたり、報告書に向けての総括的なまとめ討論をおこなった。とくに、日本における第1位人口をしめるナイジェリア人と第2位人口のガーナ人の生活動態については、この分野の熟成した研究を共同討論のなかから育てることができた。日本への来住ガーナ人のアフリカ-日本-アフリカという、今まであまり報告されていない新しい移民動態の理論化(若林ちひろ)や、日本に来住したナイジェリア人の大企業従業員になろうとするのではない、起業活動に向かう個人的・野心的なアントルプルヌーシップについての新規な理論化(川田薫)と、まったく情報のなかった、その日本における協力扶助と文化維持のアソシエーション活動の詳細な記述報告(松本尚之)、さらには、アフリカ-日本-アメリカという地球規模のネットワーク形成がナイジェリア人によってなされている動態を、アフリカ移民論のまったく新しい指摘として提示しえた。また、アフリカ人の芸能活動についても、ギニア、マリ、セネガルといった西アフリカ・グリオ音楽文化の「本場」とされる地域からの日本への来住アフリカ人の活動調査と、そのアフリカの母村での活動状況の調査の両方を行い、それをめぐる、やはり新規性に富む、日本ーアフリカ間の何層からもなる往来活動を抽出し、指摘・一般化することができた(鈴木裕之、菅野淑)。こうしたポジティブな活動側面のほかに、ネガティブなHIVをはじめとする病気の実情とそれにむけるホスト社会側からの協力の可能性についても重要な研究糸口を提案している(若林ちひろ)。1年後に『来住アフリカ人の相互扶助と日本人との共生に関する都市人類学的研究』と題して報告書を出版し、この共同研究の成果と今後の継続的発展について、アフリカ学会における集中発表でも熱い期待と高い評価を得た(2008年5月於・龍谷大学)。