著者
西田 睦
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.1269-1274, 1985-08-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
23
被引用文献数
21 47

Genetic differentiation in a sample of Ayu (Plecoglossus altivelis) from the Ryukyu Islands and in two samples, an amphidromous population of Kyushu and a landlocked population of Lake Biwa, from the Japan Islands was studied by examining the variation in 28 genetic loci by starch gel electrophoresis. Allele substitutions were observed at virtually 4 loci in the populations of the Japan and Ryukyu Islands. The mean genetic distance between the populations of these two regions was 0.19, which far exceeds the range of distance commonly observed between conspecific populations. Within the Japan Islands, the genetic distance between the amphidromous population of Kyushu and landlocked population of Lake Biwa was much smaller, being 0.02, even though considerable differences in allele frequencies were observed at two loci. These results, along with geological evidence, indicate that Ayu in the Ryukyu Islands has existed as a genetically unique stock isolated from that of the Japan Islands since the middle Pleistocene.
著者
佐藤 行人 西田 睦
出版者
日本魚學振興會
雑誌
魚類學雜誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.89-109, 2009-11 (Released:2011-03-28)
著者
江本 慎 蒲池 浩文 田原 宗徳 神山 俊哉 松下 通明 西田 睦 藤堂 省
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.1589-1595, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
18

背景:胆嚢の隆起性病変はしばしば診断に難渋する.今回われわれは胆嚢腺筋症(adenomyomatosis:ADM)に合併した胆嚢隆起性病変の質的診断に造影超音波検査が有効であった症例を経験したので報告する.症例:58歳,男性.2009年2月,職場の健診で腹部超音波にて胆嚢腫瘍を指摘され当科紹介となった.血液検査ではCEAが8.3ng/mlと上昇していた.体外式ultrasonography(US)では乳頭状隆起性病変を指摘でき,肝床部浸潤を疑う所見であったが,CT,MRIでは隆起性病変の良悪性の鑑別は困難であった.Positron emission CT(PET-CT)では隆起性病変に異常集積を認めなかった.腹部造影超音波検査では乳頭状隆起性病変に強くdiffuseな造影効果を認め,ADMに合併した胆嚢癌と考えられた.悪性を否定できず,同年3月に開腹拡大胆嚢切除術を施行した.肉眼所見では分節型ADMと乳頭状の胆嚢癌を認めた.病理診断ではtub1>pap. s(-),ss,pHinf0,pBilf0,pPV0,pA0,pN0,pBM0,pHM0,pEM0,int,INFβ,pn0,ly1,v0,pT2,pN0,fStageIIであった.結語:胆嚢の隆起性病変の診断に造影超音波検査は有用な検査となりうる.治療に際し検査所見から総合的に判断することが重要と考えられる.
著者
塚本 勝巳 西田 睦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.集団構造の解析:同一年度に台湾,中国(丹東),種子島,宮城に接岸したシラスウナギ各50個体,計200個体について,ミトコンドリアDNA調節領域(約600bP)の塩基配列を決定し,集団解析を行った結果,明瞭に分化した集団の存在は認められなかった。また,産卵親魚集団の遺伝的組成をより正確に反映している可能性のあるレプトケファルスを5回にわたる調査航海で採集し,これらについて同様の解析を行った結果,産卵時期の異なったレプトケファルス集団間に有意な遺伝的分化の徴候は得られなかった。また,核DNAレベルの詳細な比較を行うために,AFLP分析を宮城,神奈川,種子島で採集した計30個体のシラスについて行ったが,やはり明瞭な地理的分化は認められなかった。今後核DNAの遺伝的変異をさらに調べるための準備として,マイクロサテライトマーカーの単離も進めた。2.耳石解析:国内5地点で,シラス接岸時期の前・中・後期に採集したシラス計150尾について,耳石日周輪の解析を行った。ウナギの接岸日齢は約6ヶ月で,産卵期は4〜11月,産卵ピークは7月にあることがわかった。また,産卵期の早期に生またものは,遅生まれの群に比較して成長がよく,若齢でより低緯度の河口に,早期に接岸することが明らかになった。日本周辺の沿岸域と東シナ海で採集した下リウナギの耳石ストロンチウム濃度をEPMA分析で調べたところ,約75%が淡水に遡上しない個体で占められており,ウナギ資源の再生産に寄与するものの大部分は,河川に遡上しない個体が今えているものと推察された。3.結論:現在のところ東アジアのウナギ資源は巨大な単一集団と考えるのがよく,また河口域がウナギの重要な生息域であると再認識されたので,ウナギ資源の保全のためには,まず河口の汚染を改善すること,河口の親ウナギ漁業の制限,さらには東アジア4ヶ国全体でシラス漁業の国際管理を行うことが重要である。
著者
馬渕 浩司 瀬能 宏 武島 弘彦 中井 克樹 西田 睦
出版者
日本魚學振興會
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-12, 2010-04-26

琵琶湖に生息するコイの中には、ユーラシア大陸のコイとはミトコンドリア(mt)DNAの塩基配列で明瞭に異なる個体が存在することが、2005年に明らかにされた。これらの個体が保有するmtDNAは、当初は琵琶湖固有のハプロタイプと考えられたが、その後の研究で、近縁あるいは同じハプロタイプが国内の他の水域からも発見され、現在では、日本在来のハプロタイプ(在来型ハプロタイプ)の一つであると考えられている。在来型ハプロタイプの存在は、「日本のコイはすべて中国から移殖したものである」としたJordan and Fowlerへの強力な反証であり、古琵琶湖層からの咽頭歯化石の発見や、縄文遺跡からの咽頭歯の出土と併せて、日本には有史以前から在来のコイが分布し、現在もそれに由来するコイが生息することの明白な証拠となっている。本研究では、琵琶湖内における在来系統の分布状況を知る第一歩として、湖内の各所から採集された750個体以上のコイについてmtDNAの型判別を行い、各生息場所における在来型、導入型ハプロタイプの出現頻度を調べた。また、2004年に猛威をふるったKHVの在来系統への影響を評価するため、蔓延時に湖岸で斃死していた100個体を超えるコイのmtDNA型判別も行い、上の結果と比較した。
著者
酒井 治己 高橋 洋 松浦 啓一 西田 睦 山野上 祐介 土井 啓行
出版者
独立行政法人水産大学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ミトコンドリアDNA全塩基配列に基づき、フグ目の硬骨魚種中での系統類縁関係,フグ目内系統類縁関係,及びトラフグ属内系統類縁関係を明らかにした。さらに,AFLP解析によりトラフグ属主要9種の雑種解析を行なった。トラフグとカラスフグを除く各種は明瞭に識別でき、さらに複数マーカーによって雑種の判別も可能で、解析したほとんどの雑種個体(47個体中46個体)が雑種第一代であった。種判別の可能なAFLPマーカーに基づき、それを特異的に増幅するプライマー開発に向けて研究を継続中である。
著者
塚本 勝巳 西田 睦 竹井 祥郎 木暮 一啓 渡邊 良郎 小池 勲夫
出版者
東京大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2000

5年間の研究活動により,次の研究成果を得た.【総括班】海と陸の物理・化学的環境特性と生物の生活史特性を比較することにより,陸の生命について得られた従来の生命観とは異なる「海の生命観」を考察した.【生命史班】魚類全体の大規模分子系統樹を構築した.DNAデータの時間較正を行い,条鰭類の根幹を構成する主要な系統間の分岐年代を解明した.深海化学合成生物群集の主要な固有動物群について,生態学的調査と分子系統学的解析によって,それらの進化過程の全貌を明らかにした.【機能系班】心房性ナトリウム利尿ペプチドが新しいウナギの海水適応ホルモンであることを生理実験で証明すると共に,その分子進化を明らかにした.アコヤ貝の貝殻形成に関わる新規基質タンパク質を同定し、そのアミノ酸およびcDNA配列を決定すると共に,その発現部位を明らかにした.ワムシの個体数変動過程に密接に関わる遺伝子を同定し,高感度定量法を確立して個体数変動に伴う遺伝子発現パターンの変動を明らかにした.【連鎖系班】海洋生態系の生物・非生物粒子の分布,動態を定量的に解明するための高精度解析系を整備した.非生物態有機物と微小生物群集の鉛直分布を明らかにすると共に,それらの相互の動的平衡メカニズムを解明した.植物プランクトンの色素組成,動物プランクトンの微細構造,細菌群集の系統群別の増殖特性の解明を通じ,海洋生物のミク仁な連鎖過程を解明した.【変動系班】高緯度水域において海洋生物資源が大きく変動する理由は,初期生活史パラメタの変動がその後の大きな加入量変動を引き起こしているためと明らかになった.化学物質による海洋汚染は海洋動物の生理や繁殖機能に障害を与えており,汚染の国際監視体制を構築することが重要であると指摘した.非定常性,複雑性,不確実性という特性を持つ海洋生物資源は,MSY理論に代わって順応的理論で管理されるべきであると結論した.
著者
古丸 明 堀 寿子 柳瀬 泰宏 尾之内 健次 加藤 武 石橋 亮 河村 功一 小林 正裕 西田 睦
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.621-629, 2010 (Released:2010-10-11)
参考文献数
16
被引用文献数
4 6

シジミ属(Corbicula)の種判別を目的とし,日本,中国,朝鮮半島産 4 種(C. japonica, C. fluminea, C. largillierti, C. leana)と不明種 (C. sp.) mtDNA16S rDNA の配列(437 bp)を比較した。ヤマトシジミ C. japonica と淡水産シジミ類間の塩基置換率は平均 5.98%(5.26-6.41%)で判別は容易であった。日本産と朝鮮半島産ヤマトシジミ間の置換率は低かった(0-1.14%)が,ハプロタイプ頻度の相違から産地判別は可能であった。