著者
遠藤 康男 粕谷 英樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.1031-1041, 1998-07-25
参考文献数
25
被引用文献数
5

音声における周期ごとのゆらぎは知覚される自然性, 声質を記述するのに重要である.この周期ごとのゆらぎを考慮した音声の分析・変換・合成システムを提案する.システムにおいてゆらぎは, 基本周期ゆらぎ(ジッタ), 実効値ゆらぎ(シマ), 周波数スペクトルゆらぎに分けられ, 自己回帰移動平均(ARMA)モデルで定式化される.このモデルはゆらぎの大きさだけでなくスペクトル特性も定量化する.周波数スペクトルは主成分スペクトル成分に変換され次元が大幅に縮小される.この主成分スペクトルに対しARMAをあてはめる.実験の結果以下のようなことが示された.(1)日本語母音/a/の周波数スペクトルは8個の主成分スペクトル成分で表される.(2)モデルはもとのゆらぎを再現できる.(3)原音声と再合成した母音信号は聴覚的にほとんど違いがない.このシステムはさまざまな音声の研究分野で有用である.
著者
本間 佑介 宇賀 大祐 菅谷 智明 阿部 洋太 遠藤 康裕 中澤 理恵 坂本 雅昭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1033, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】日本臨床スポーツ医学会は,1995年に少年野球による重篤な障害を防止する為の提言を行っている。少年野球において,選手自身の投球数や練習時間等の自己管理を徹底するのは困難であり,チームの監督・コーチや保護者に委ねる部分が多いと考える。本研究の目的は,少年野球チームの指導者に対し,投球障害予防に関連するアンケート調査を実施することで,指導者の障害予防に対する認識を明らかとすることである。【方法】2014年6月にT市の野球連盟学童部に所属した48チームの監督48名,コーチ89名の計137名に対し,集合調査法にてアンケート調査を実施した。アンケート内容は年齢,指導年数,少年野球指導者講習会参加の有無,予防教室の参加回数,野球経験の有無と経験年数,部員数,指導者数,1週間の練習日数・練習時間,投手数,1日の投球数,一人の投手が投げる連続試合数,年間試合数,ウォーミングアップ・クールダウンの実施状況・必要性,臨床スポーツ医学会による練習日数と練習時間の制限および投球制限についての認識,練習日数と練習時間の制限の必要性,投球障害予防教室の必要性,指導者の医学的知識の必要性とした。【結果】全回答者数131名(回収率95.6%)中,有効回答者数は101名(回収率77.1%)であった。内訳は監督30名,コーチ71名であった。対象者の平均年齢は41.3±5.6年指導年数は4.2±3.6年であった。部員数は,「15名以下」が36名(36%),「16名~30名以下」が65名(64%)であった。投手数は「3人」という回答が最も多く43名(42%)で,「1人」という回答は1名(1%)であった。92名(92%)の指導者に野球経験があり,そのうち高校野球経験者が64名(70%)であった。ウォーミングアップの実施率は101名(100%)で実施時間は30.1±12.3分であった。クールダウンの実施率は101名(99%)で実施時間は13.8±5.7分であった。1週間の練習日数は3.9±0.6日であった。練習時間は,平日2.3±0.8時間,休日6.2±1.4時間であった。練習日数と練習時間の制限の提言について,48名(48%)が知らなかったと回答した。練習日数と練習時間の制限の必要性は,7名(7%)が「必ず必要だと思う」,61名(60%)が「必要だと思う」,32名(32%)が「あまり必要ないと思う」,1名(1%)が「全く必要ないと思う」と回答した。投球数は,全体の60%が「51~100球」であった。投球制限の提言について94名(93%)が「知っている」と回答した。投球制限の必要性について,48名(48%)が「必ず必要だと思う」,51名(50%)が「必要だと思う」,2名(2%)が「あまり必要ないと思う」と回答した。指導者の医学的知識の必要性は,14名(14%)が「必ず必要だと思う」,83名(82%)が「必要だと思う」と回答した。【考察】船越ら(2001)は,小学生の1週間の練習日数の平均は4.6日であり,提言で推奨する1日の投球数50球未満を守っているのは20%程度と報告している。本研究において,1週間の練習日数は3.9±0.6日で,提言で推奨する週3日以内を上回る結果となった。練習時間は,平日2.3±0.8時間,休日6.2±1.4時間で,提言で推奨する1日2時間以内を上回る結果となった。現在,1日の練習時間や練習日数の管理は各チームに委ねているのが現状である。今回の結果を踏まえ,傷害予防の観点から1日の練習時間や練習日数について,野球連盟スタッフ主導のもと指導者が適切に管理する体制を構築し,指導者に啓発していく必要があると考える。投球制限の提言について94名(93%)が「知っている」と回答し,投球制限の必要性については殆どが必要性を感じていた。背景には,T市野球連盟学童部が大会にもよるが,投球制限やイニング制限を設けている為このような結果になったと考える。一方で,投球数について,61名(60%)が「51~100球」と規定数を超える傾向にあり,認識と実際の指導に乖離が認められた。具体的な投球内容等について詳細な聞き取り,分析が必要と考える。投球数については船越らの報告と同程度の結果であった。指導者の医学的知識の必要性について,9割以上の指導者が必要と回答している。指導者の多くは選手の父親であり,指導年数は4.2±3.6年であることから,一定期間で指導者が入れ替わることが予想される。以上より,指導者ライセンス制度の導入やメディカルスタッフとして理学療法士の介入の必要性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】少年野球指導者の投球障害に対する認識を把握し,理学療法士として障害予防の観点から指導者の投球障害に対する認識向上を図ることで,学童期の少年少女の健康・安全の一助となる。
著者
岡元 翔吾 齊藤 竜太 遠藤 康裕 阿部 洋太 菅谷 知明 宇賀 大祐 中澤 理恵 坂本 雅昭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1237, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】投球障害後のリハビリテーションでは,病態の中心である肩甲上腕関節への負担を最小限に抑えることが不可欠であり,肩甲胸郭関節や胸椎の動きを十分に引き出し良い投球フォームを獲得する練習として,シャドーピッチング(以下,シャドー)が頻用される。しかし,硬式球を用いた投球(以下,通常投球)時の肩甲胸郭関節と胸椎の角度については過去に報告されているが,シャドーに関しては明らかにされていない。本研究では,シャドー時の肩関節最大外旋位における肩甲上腕関節,肩甲骨および胸椎の角度を明らかにし,運動学的観点より通常投球との相違を検証することを目的とした。【方法】対象は投手経験のある健常男性13名(年齢24.9±4.8歳,身長173.9±4.3cm,体重72.1±7.3kg,投手経験11.2±5.2年)とした。測定条件は通常投球とタオルを用いたシャドーの2条件とし,いずれも全力動作とした。動作解析には三次元動作解析装置(VICON Motion Systems社製,VICON 612)を使用し,サンプリング周波数は250Hzとした。反射マーカーはC7,Th7,Th8,L1,胸骨上切痕,剣状突起に貼付した。また,投球側の肩峰,上腕遠位端背側面,前腕遠位端背側面に桧工作材を貼付し,その両端にも反射マーカーを貼付した。得られた三次元座標値から肩関節最大外旋位(以下,MER)時の肩関節外旋角度(肩全体の外旋角度),肩甲上腕関節外旋角度,肩甲骨後傾角度,胸椎伸展角度を算出した。また,非投球側足部接地(FP)~MERまでの時間と各関節の角度変化量を算出した。尚,各条件とも2回の動作の平均値を代表値とした。統計学的解析にはIBM SPSS Statistics ver. 22.0を使用し,対応のあるt検定を用い,有意水準は5%とした。【結果】肩関節最大外旋角度は,通常投球145.4±14.2°,シャドー136.4±16.8°と有意にシャドーが小さかった(p<0.01)。その際の肩甲上腕関節外旋角度は,通常投球98.4±16.7°,シャドー91.8±13.1°と有意にシャドーが小さかった(p<0.01)が,肩甲骨後傾角度と胸椎伸展角度は有意差を認めなかった。FP~MERの時間は,通常投球0.152±0.030秒,シャドー0.167±0.040秒と有意にシャドーが長かった(p<0.05)が,角度変化量は有意差を認めなかった。【結論】シャドーは通常投球に比して,MER時の肩甲骨後傾角度や胸椎伸展角度に差はないが,肩甲上腕関節外旋角度が小さくなったことから,関節窩-上腕骨頭間での回旋ストレスが軽減する可能性が示唆された。また通常投球では,重量のあるボールを使用する上,短時間に同程度の肩甲上腕関節での外旋運動を求められるため,上腕骨回旋ストレスが大きくなる可能性が考えられる。投球障害後のリハビリテーションにおいて,シャドーは肩甲胸郭関節や胸椎の動きが確保され障害部位への負担が少ない動作となることから,ボールを使った投球動作へ移行する前段階での練習方法として有用であると考える。
著者
遠藤 康男 粕谷 英樹
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.338-341, 1993-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

嗄声における基本周期 (周波数) , 振幅系列のゆらぎを定量化するために比較的良く用いられるさまざまなゆらぎパラメータについて比較検討を行った.パラメータとしてjitter/shimmer factor, 変動指数, ジッタ/シマーパラメータを用いた.これらのパラメータと熟練した耳鼻科医がGRBAS尺度に関して評定した聴覚的評点との関係という観点から比較検討を行った.喉頭癌, 声帯ポリープ, 反回神経麻痺患者が発声した持続母音の52例を用いた実験により, ジッタ/シマーパラメータが病的音声の聴覚的印象と最も対応が良いことを示した.
著者
遠藤 康夫 加倉井 和久 山田 和芳 笠谷 光男 神木 正史 小松原 武美 鈴木 孝 高木 滋
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1989

高温超伝導を示す銅酸化物及びこれらの物質と同じ結晶構造を示す同型異物質の主として磁性を中心に物性と結晶構造の相関を研究した。1.銅酸化物では超伝導発現と銅イオンの持つスピンの二次元的な反強磁性磁気相関との因果関係を徹底して調らべた。最も大事な收穫はキャリアーが正孔である場合は酸素サイドに広がったキャリアーのスピンの影響で磁気相関が滋常に大きく変化し、反強磁性的な磁気相関も壊されるのに対し、電子的キャリアーの場合では反強磁気性相関が残ることが実験的に証明された。これは電子相関と磁性との密接な関係を論ずる基礎となる。2.キャリアーの濃度が増えると、磁気相関距離が短くなり、電子相関の強さとキャリアー濃度及び反強磁性相互作用の間の対応がついた。3.超伝導発現と磁気相関の関係については、全く同じ結晶を使って、酸化の度合いを制御して超伝導転移を変化させることに成功し、その結果として反強磁性相関及びスピンの揺らぎが超伝導の発現と密接にからんでいることを見つけた。4.同形のNi酸化物で、酸化度の違いによって微妙に反強磁性構造が変化することを見つけた。この時は結晶構造も微妙に変化することも見つけている。その他にもUを含むアクチナイド化合物の電子相関の強い物質について、超伝導反強磁性電子相関の3つの因果関係を含む関係を含む研究に着手した。この研究には、1K以下の極低温で中性子散乱が必要なために希釈冷凍機の調整を行なって、測定実験が可能なところにこぎつけた。
著者
岡本 英三 有井 滋樹 内野 純一 遠藤 康夫 神代 正道 谷川 久一 幕内 雅敏 水本 龍二 水戸 廸郎 山田 龍作 有井 滋樹 大西 美佳 平石 保子
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.317-330, 1997-05-25
被引用文献数
30 27

全国649施設の協力により, 1992年1月1日より1993年12月31日までの2年間の原発性肝癌症例15, 782例 (臨床診断/組織診断の判明13, 991例) が日本肝癌研究会に登録された. 約96%は肝細胞癌, 約3%が胆管細胞癌であった. 追跡症例は9, 854例であった. 本報告においては, これら新規症例を170項目に及ぶ疫学, 臨床病理学的事項, 診断, 治療について解析し, その主たる点について述べた. 特別集計としては, 追跡症例を含めて, 肝細胞癌, 胆管細胞癌, 混合型肝癌の治療法別生存率, 及びlogistic modelによる肝細胞癌切除後の3年, 5年生存の予知因子の解析を行った.
著者
高田 春比古 根本 英二 中村 雅典 遠藤 康男
出版者
東北大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

報告者らはこれまでに、i)歯周病関連細菌のLPS,口腔レンサ球菌ならびにCandida albicansより調製した細胞壁画分を、細菌細胞壁ペプチドグリカンの要構造に当たる合成ムラミルジペプチド(MDP)を前投与したマウスに静脈注射すると、アナフィラキシー様ショック反応を惹起すること、ii)LPSによるショック反応の背景には血小板の末梢血から肺等への急激な移行と、臓器での凝集・崩壊、それに続発する急性の組織破壊が起こっており、MDPはこのような血小板反応を増強すること、iii)さらに、一連の反応の成立には、補体が必須であることを明らかにしてきた。本研究の当初の計画では、マンナンを主要構成多糖とするC.albicansの細胞壁がmannose-binding lectin(MBL)と結合して、所謂レクチン経路を介する補体活性化を起こす結果、血小板崩壊に続発するアナフィラキシー様反応が起こるとの作業仮説の実証を目指していた。しかし、研究の途上で、マンノースホモポリマー(MHP)を保有するKlebsiella O3(KO3)のLPSに極めて強力なショック誘導作用を認めたので、先ず、MHP保有LPSを供試する実験を実施した。即ち、横地高志教授(愛知医大)より、KO3の他、E.coli O8とO9(いずれもMHPよりなるO多糖を保有)さらに、O8およびO9合成酵素をコードする遺伝子をE.coli K12(O多糖欠くR変異株)に導入して得た遺伝子組替えLPSの分与を受けて、MHP保有LPSが例外無く強力なショック反応と血小板反応を惹起すること、さらに、松下操博士(福島医大)の協力を得て、MHP保有LPSはヒトMBLと結合して、血清中のC4を捉えて、補体系を活性化することを証明した。
著者
高田 春比古 根本 英二 中村 雅典 遠藤 康男
出版者
東北大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

先に申請者らは、歯周病に深く係わるとされるPorphyromonas gingivalis,Prevotella intermedia等の黒色色素産生菌(BPB)のリポ多糖(LPS)をマウスに静脈注射すると、通常のLPSでは報告のない全身アナフィラキシー様反応を惹起する事を見出した。さらに、この反応の背景には血小板の末梢血から肺・肝等への急激な移行と、臓器での凝集・崩壊、それに続発する急性の組織破壊が起こる事を明らかにした。これらの反応の機序解明を目指して、補体系との係わりに焦点を絞って研究した。研究にあたっては、アナフィラキシー様反応惹起能が強いKlebsiella 03(K03)のLPS(愛知医大・横地高志教授より分与を受けた)を主として供試した。その結果、1.先天的に補体因子C5を欠くDBA/2マウスやAKRマウスではアナフィラキシー様反応や血小板の崩壊が起こらない。2.C5抑制剤K-75 COOHを予め投与されたマウスやコブラ毒素を投与して補体を枯渇させたマウスでも、アナフィラキシー様反応や血小板崩壊が起こらない。3.補体活性化作用が弱いKO3変異株のLPSでは、血小板の一過性の肺・肝への移行はみられるが、やがて血液に戻り、アナフィラキシー様反応も認められない。これらの知見はLPSによって惹起される血小板-アナフィラキシー様反応には補体活性化が必須がであることを示唆している。報告者は、K03 LPSの0多糖部のマンノースホモポリマー(MHP)がレクチン経路(近年解明された第3の補体活性化経路)を介して補体を強力に活性化して、集積した血小板を崩壊させ、アナフィラキシー様反応を惹起するとの作業仮説を立てた。実際、4.Esherichia coli 0111:B4にMHP合成遺伝子を導入した変異株のLPS(横地教授より分与)では、親株のLPSに認められない強力な血小板反応とアナフィラキシー様反応惹起作用が認められた。今後、歯周局所でもBPB LPSによって、同様の機序による急性炎症が惹起されている可能性を探究する予定である。