- 著者
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除本 理史
- 出版者
- 北海道大学大学院経済学研究科
- 雑誌
- 經濟學研究 (ISSN:04516265)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.2, pp.85-95, 2014-01-24
福島原発事故はいまだ「収束」していない。汚染水の問題がクローズアップされ,抜本的な対策が求められている。事故の被害も継続している。深刻な事故被害の発生を受けて,宮本憲一や吉田文和ら,日本の公害研究の先駆者たちが,その蓄積を踏まえ,福島の事故について考察を行なっている。そこでは幅広い問題点や課題が網羅されており,大変貴重であるが,個別の論点に関する考察をさらに深めていくことが急務である。筆者は,宮本,吉田らの業績に学びつつ,水俣病や大気汚染などの公害被害補償について研究してきた。そして震災直後から,福島原発事故の被害実態と補償問題に関しても,共同研究者とともに調査・研究を進めてきた。本稿ではその成果の一部について,あらためて述べることにしたい。具体的には,責任と費用負担の問題や,「加害者主導」の枠組みのもとでの被害実態と補償の乖離などを取り上げ,最後に,戦後日本の公害問題の教訓から何を学ぶかについて考える。