著者
神谷 康雄 松本 武司 上原 有恒 小宮山 博
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.859-869, 2011-08

中央政府から牧民レベルにまで踏み込んだ今回のゾド緊急調査の結果を要約すれば次のとおりである。ゾド被害が大きくなった要困は、①家畜頭数が急激に増加していた状況で2009年夏のガンで草地がダメージを受け、飼料が不足していたこと、②12月~2月まで異常な寒さが続き、さらに、これに追い打ちをかけるように4月に大雪が降ったこと、③政府は、ガンの状況をみて、乾草、補助飼料の準備の指令を出したが、政府の予算不足と家畜相場の下落による家畜の販売不振で牧民に資金が無く十分分な準備が出来なかったこと、④ウブルハンガイ県を例に取れば、オトル用地の確保、放牧地の緊急移動の計画は作成したが、ソムから牧民への的確な指令が行き届かなかったこと、⑤新規参入や若い層の牧民が増え、ゾドやガンに備える技量が不足していたことの5点に集約できる。ゾドの被害の主要因は寒冷など異常気象によるところが大きいが、その被害規模は、放牧地の適切な利用・管理による家畜の飼料の確保によってかなりの部分を軽減することができるであろう。現在、こうした自然災害を少しでも軽減し、モンゴル国の牧畜業の持続的発展を図るため、モンゴル国政府一丸となって対策に取り組んでいる。具体的な例としては、2010年5月に国会で承認された「モンゴル家畜国家プログラム」があげられる。これは、牧蓄業の市場経済の中における競争力を改善し、家畜の健康を図り、家畜の質を向上し、気候等のリスクを乗り越えられる牧畜業にすること、資産物の生産から販売の流通の流れを明確にすること等を内容とした畜産政策プログラムである。このプログラムの推進の柱は、①獣医や畜産技術者の行政サーどス能力向上を図ること、②国際市場でも競争力のある畜産物製品の生産・開発をすること、③牧畜業の主要な従事者である牧民を育成し、放牧地マネージメント能力の向上を図ることなどとなっている。
著者
藤田 優 名倉 義夫 武井 直樹
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.871-876, 2006-08
著者
ヴイルヘルム ヴィントホルスト ハンス 杉山 道雄 大島 俊三
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.1162-1168, 2009-12

輸出と貿易流通における動向分析。過去数十年において、USAは、大量なブロイラー肉の輸出量で、世界をリードする国であった。しかしながら、この状況は、ブラジルがUSAを追い越した。2004年に変わってしまった。それ以降、ブラジルの輸出業は単にその地位を維持できたのみならず、輸出量においてUSAの競争者との差をますます広げてきた。2007年、ブラジルはUSAよりも670,000tも多く輸出した。2008年には850,000tも多く輸出すると予測されている。このような展開にもかかわらず、ブラジルの家禽肉生産の部門別や地域別の様態に関する詳細な研究がほとんどないのは意外である。本報告はこのギャップを埋めようとするものである。
著者
冨田 健太郎
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.1137-1143, 2010-11

中米・力リブ諸国におけるマメ科牧草アラキスの活用事例。コスタリカにおけるアラキス+ブラキアリア間混作の効果および乳牛圃場でのアラキス確立について。コスタリカは、パナマのサバンナ地帯、コロンビアのジャノス東方平原およびブラジルのセラード地帯のように、広大な草原地帯を有しているのとは違って、中央山脈の高地において主にアラキスの研究が実践されている。前記した広大な平原地帯では肉牛の肉生産性を高めることが主目的であるが、ここコスタリカでは乳生産が主目的である。いずれにしても、タンパク生産が重要な課題であることは共通事項である。アラキスの有効性は理解できても、肝心な事項は牧草地においてこれを確立させることであろう。このことは、牧畜に関する技術協力に従事する者にとっても必須事項であり、多くの経験者の声を聞くこと、そして理解することが重要であると筆者は考えている。もちろん、良いことばかりではなく、そこには、他のイネ科植物や雑草類の侵入によるアラキスの妨害も存在するということで、無視できない要因である。本稿では、その一事例と同時にアラキス確立に関する有益な方法を紹介する。
著者
Windhorst Hans Wilhelm 杉山 道雄 大島 俊三
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.325-329, 2009-03

・2002年と2007年の間にEUの鶏卵生産は7.4百万tから7.2百万t、すなわち2.5%減少した。・この間に世界の鶏卵生産が急速に増加したので、世界生産量に占めるEUの生産量は12.4%から10.6%に減少した。・分析対象期間を通じて自給率はかなり安定していた。・2002年と2007年の間において鶏卵生産の上位7カ国の生産割合は72.8%から73.5%に増加した。・EU加盟国は優位な世界鶏卵貿易国であり、そのシェアは約60%である。・EUにおいてオランダとスペインが先進鶏卵輸出国である。フランスとドイツは最大の鶏卵輸入国である。・オランダは鶏卵製品の優位な輸出国であり、鶏卵製品の輸入に関してはドイツが一位である。・鶏卵生産および貿易の将来は、伝染性の強い鳥疾病の制御、飼料価格の動向および通常のケージ飼育の禁止の影響に依存している。
著者
柏原 孝夫
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.623-628, 2008-05

途上国で社会的存在意義の高まる熱帯動物資源。南米は21世紀の農業を支配する。南米産業の特色として全面積の1/4以上が牧野で占められ、家畜の80%以上は畜牛である。熱帯(亜熱帯)林に恵まれた南米は、21世紀において途上国全体の1/2の畜肉を賄うであろうと予測されている。柏原は家畜繁殖改善計画チームリーダー(JICA・高官専門家)としてパラグアイ駐在時に、南米の畜牛が放牧に適した体型であると知った。米国では数種のインド牛(ゼブ牛)を交配してブラーマンを開発し、体質強健、耐暑性、ダニ熱耐性、1日増体量にもすぐれた品種を作ったが、パラグアイではネロール(インド牛オンゴール種のブラジル名)の方が飼養頭数が多い。これは皮膚の弛緩が少ない(腹垂がない)方が、放牧によるダニ等の体表被害が少ないため、ブラーマンより広く普及していると考えられる。共進会において、ネロールの方がブラーマンよりも高値で取引されていることからも人気の程が分かる。当時、日本のプロジェクトとして「受精卵移植」が南米で有名であったが、ETで生まれたアンガスがブラジルでも注目されていた。
著者
ハンス ウイルヘルム・ウインフォルシュト 杉山 道雄 鷲見 孝子
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.642-646, 2008-06

世界の牛肉、豚肉などの食肉生産が2020年にむけて先進諸国から発展途上国へと立地変動するということをホフマンなどと唱えて世界畜産会議でCompetitiveness of East Asian Livestock Productionと題して発表した。鶏肉の2016年への展望については本誌4月号で紹介しているが豚肉について紹介したい。豚肉の世界食肉生産の中に占める割合は過去10年以上にわたって38%以上でかなり安定している。けれども地域環境動態の観点から分析を進めてみよう。第1は世界における豚肉生産の地域動向と第2は豚肉貿易の地域別動向の変化を分析し、その上で第3はこれからの10年後の2014年にそれら豚肉生産と貿易がどのように変化するかを分析してみよう。
著者
秋葉 和温
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.1037-1044, 2009-10

鶏のロイコチトゾーン症と小倉喜佐次郎獣医学博士との関係、そして知り得た日本統治下の台湾の獣医畜産事情。劉書彦:台湾総督府における農業研究体制に「適地化」展開過程-台北帝国大学理農学部を中心に-、東京:お茶の水女子大学大学院博士論文、甲447号。これはお茶の水女子大学の大学院生の学位授与・受賞歴の中の11番目に掲載されている。この文献は2005年9月15日、次の文献は2005年3月24日となっていて、順番が異なるのではと思われるが、後者の文献に、前者の文献が引用されていることから、この順番に配置することにしたのです。
著者
鈴木 啓一 ホーク エムディー・アズハウル
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.512-520, 2009-05

家畜に給与する飼料は畜産の生産コストの主要な部分を占めるため、飼料の利用効率を高める方向への改良は飼料コストを低減させことにつながる。飼料要求率は、増体当たりの飼料摂取量として表され、飼料摂取量や成長率との間に有意な遺伝と表型相関が認められるためこれまで伝統的に効率に対する重要な測定形質として使用されてきた。しかし、摂取量/増体量のような比形質に対して選抜を行うと、世代が進むにつれてその成分形質の相関反応に問題が生じる可能性がある。余剰飼料摂取量は実際の飼料摂取量と維持および生産に必要とする飼料摂取量との差に由来する形質である。牛と豚に関する余剰飼料摂取量の遺伝的変異は大きく選抜反応が期待できる。表現型余剰飼料摂取量は体重や増体量と独立した形質である。遺伝的余剰飼料摂取量も、成分形質である体重と増体量とは遺伝的に独立している。余剰飼料摂取量と一日平均飼料摂取量、飼料要求率との遺伝相関は、牛と豚で高く正の値である。余剰飼料摂取量は牛ではロース芯面積や枝肉重量と、豚ではロース面積や皮下脂肪厚とそれぞれ好ましい遺伝相関を示す。余剰飼料摂取量を減らす(余分な飼料摂取量を減らす)方向への選抜は、牛と豚の飼料効率と、経済的に重要な枝肉形質の大部分を改良することができる。それ故、余剰飼料摂取量は育種計画での飼料要求率に代わる選抜基準形質として利用することができるだろう。
著者
牧野内 生義
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.89-93, 2009-01

多様なニーズに応える学習メニュー。7ヶ所のキャンパスに12の学科があり、さらに新規就農向け研修や農業技術研修も行っている長野県農業大学校は、長野県の農業を支える一大教育研修拠点です。信州・長野県は、南北212km東西120kmと全国第4位の広さに加え、日本の屋根といわれる大山岳高原地帯にあって農耕地は標高260mから1,500mにまで及んでいてその差は1,200mを越します。このように非常に変化に富んだ自然条件の下で多様な農作物が栽培され、さらには内陸的な厳しくもメリハリの利いた気象(気温の日較差・年較差ともに大)は、美味しく充実した品位の高い農畜産物を産出しています。また、進取の気性に溢れる信州農業人は全国に先駆けて農業指導者の養成と基幹農業者の育成に取り組み、長野県農業大学校に96年の伝統を与えています。こうした事情を背景に、長野県農業大学校は長野市松代町を本拠地として総合農学科および専門技術科を置くほか、県内5ヶ所の農業関係試験場に実科および研究科のキャンパスを展開し、小諸市に研修部を置いています。
著者
冨田 健太郎
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1033-1042, 2010-10

中米力リブ諸国におけるマメ科牧草アラキスの活用事例。コスタリカにおける乳用子牛の成育にとってのタンパク銀行としてのアラキスおよび文献調査からの野外科学的方法の一考察。コスタリカでは、乳用牛の子牛肥育にかかるコストは牧畜経営支出の25%にも相当し、とくに、配合飼料のコストはバカにならず、全餌代の約66%にも達するという。これら配合飼料のほとんどが輸入一次産品であることから、外部からの投入資材に依存せざるを得ないということであり、実際の牧畜生産システムにおいては一つの限界要因となっているのである。そのため、生産者水準において、餌代を極カ抑えることが要求されるのは当然である。そこで、アラキスのような適用可能かつ高品質牧草類が、熱帯環境下の牧畜生産にとっては有益であるとして考慮されている。また、イネ科牧草類とこのマメ科牧草類の間混作は、牧畜生産にとって良好な挙動が認められ、肉ならびに乳生産にとっても適当な水準にまで増大させていることは明白である。
著者
冨田 健太郎
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.1045-1052, 2009-10

中米・カリブ諸国におけるマメ科牧草アラキス(Arachis pintoi)の活用事例。パナマのGualaca地区における2つの休閑期間でのイネ科牧草ディジタリア(Digitaria swazilandensis)とアラキスとの間混作。本稿から、しばらくパナマの事例を取り上げたいと思うが、その対象地域はCHIRIQUI県にあるパナマ農牧研究所(IDIAP)のGualaca畜産試験場での事例研究を紹介する。図1にGualaca地区の所在地を簡単に示しておく。首都パナマ・シティーから400km離れた場所にあり、CHIRIQUI県の県庁であるDavid市は、首都についで第二の都会である(カリブ海側のCOLON県の県庁であるColon市が第二の都市とも言われているが、治安の関係上、危険地帯となっているため、筆者を含め、多くのJICA関係者が訪問を禁じられている。それゆえ、ここは考えないことにする)。
著者
大島 正尚
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.p1338-1342, 1990-12
著者
西野 重雄
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.p596-600, 1987-05
著者
下平 乙夫
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.p973-978, 1985-08