著者
永幡 肇
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1151-1154, 2007-11

食の安全安心は国内外を問わず社会の大きな関心事となっている。酪農学園大学の公開講座が「食の安全安心フォーラム」を主題に大阪府食の安全安心大阪府民会議との共催で2007年8月23日に大阪リバーサイドホテルを会場に開催された。講演会には、消費者はじめ流通関連、食品製造加工、行政および教育機関から参加者が集まり開催された。本稿は、乳および乳製品の消費者および一般市民向けに行なった「乳の生産農場から:良質・安全に向けた取り組み」と題しての講演の内容を紹介する。
著者
植木(永松) 美希
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.676-680, 2015-08

日本でもようやく放牧畜産基準認証が新しく動き出したので,本稿では,そのなかでも実際に放牧酪農牛乳認証第1号を取得した放牧パスちゃん牛乳を取り上げる。これは,動物福祉認証食品であるという点で価値があり評価できることは間違いないが,山形県酪農協同組合の子会社(株)飯豊ながめやま牧場(生産)-奥羽乳業協同組合(加工)-あいコープみやぎ・ふくしまの協同組合間提携による動物福祉に配慮した新しいフードチェーンの開発であるところにも大きな価値を見出せる。2. 株式会社飯豊ながめやま牧場 1) 牧場の概要と放牧酪農実践牧場認証の取得 飯豊ながめ山牧場は,山形県飯豊連峰の麓に位置する山形県酪農協同組合が2005年に100%出資して営業を開始した牧場である。当初はながめやま牧場と名乗っていたが,その後,飯豊市からも出資があったため,飯豊ながめやま牧場との名称になった。役員は11名,代表取締役は同山形県酪農協同組合の組合長が兼任しているほか全員が組合役員との兼任である。牧場の社員は牧場長1名他8名のスタッフで構成される。こちらは全員が非農家・酪農家出身の20代から30代の若い社員である。総面積約180haの広大な牧場であり,牛舎3棟,堆肥関連施設2棟,搾乳施設一式から構成される。
著者
植木(永松) 美希
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.855-860, 2015-10

本稿では放牧酪農牛乳認証第3号となる「よつ葉放牧生産者指定ノンホモ牛乳」を取り上げる。この牛乳は,高度経済成長期に子供達に安全安心な牛乳を飲ませたいという母親達の強い思いから始まったよつ葉牛乳の共同購入グループの運動の長年にわたる継続から誕生した牛乳である。共同購入は単なる商品購入の手段ではなく共同購入運動という日本で特に発達した消費者運動の1つの形態といえるだろう。筆者は今後の日本酪農の継続発展には消費者の酪農への理解と応援が極めて重要な鍵を握ると考えている。今回の放牧生産者指定ノンホモ牛乳は,本誌8月号で紹介した(株)飯豊ながめやま牧場とあいコープによる放牧パスちゃん牛乳と同様,酪農生産から牛乳消費までを一貫してマネジメントする新しいタイプの酪農乳業フードチェーンでもある。生産には北海道JA忠類管内の5戸の生産者が関わっている。北海道は日本の酪農の中心である。その酪農王国での取り組みという点からも注目できる事例であろう。認証取得第2号は同じく北海道内の個人酪農家である。個人の場合,放牧や放牧認証を活用した多様な経営の展開が実践されているので,また別の機会に是非取り上げたいと考えている。もちろん放牧を実践しながら認証を取得していない酪農家も多く存在するが,今後の日本の酪農経営の発展と多様性を考える上では,認証取得は大きな選択肢の1つとなるであろう。
著者
福井 豊
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.499-504, 2007-04
著者
加藤 直人
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.697-705, 2012 (Released:2013-10-08)
著者
李 世安
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.553-557, 2013-05

われわれ人間も動物の一種である。動物界の分類では,人は脊椎動物・哺乳綱・霊長目・真猿亜目に属して「ホモ・サピエンス(知恵のある人)」という学名が付けられている。考古学の発展によって証明されたことは,われわれ現代人を含む新人類の歴史は,スペインのアルタミラという所の洞穴にすばらしい動物の絵を残した「クロマニヨン人」の時(3万年前)からであった。人類進化の歴史をもっと先に糊ると,優れた石器と点火技術を持った「ネアンデルタール人」に代表される旧人類(10万年前),石を割って造った石器と棍棒および火を使う「北京原人」に代表される原人類(40万年前),アフリカに棲み,腐れ易い木の道具を使っていたと思われる頭骨の異なる「アウストラロピテクス」と「パラントロプス」の両者の代表する猿人類(200万年前),二本足で立つ,両手を使う「ラマピテクス」を代表する原猿人類(1500万年前),および四つん這いで歩いた原類人猿類(3000万年前)などがあった。人類は,この地球上に最も遅く出現したが,両手,両眼と大脳を使って自然を改変する唯一の動物である。人類の大脳の発達は,その使う道具に対する永遠に止まない改良と創造に表れる。これによって,今日の人の生活環境は,見渡すかぎりの空と樹木以外,すべて人工的なものになっていった。加えて,人と周辺の動物との関係もその影響下に置かれるようになっていった。
著者
中洞 正 雨田 章子
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.117-126, 2013-01

日本の酪農は大きな岐路に立たされている。それまでのある種神話化された牛乳滋養論の瓦解・大手メーカーの不祥事,BSE,穀物相場の高騰,牛乳否定本の相次ぐ発刊など戦後酪農の手法がことごとく否定されている観を否めない。戦後の酪農は日本農政の基幹となった農業基本法(1961年)において選択的拡大作目として米や果樹とともに生産の拡大と内外価格差の是正を目指した。モノカルチャーによる拡大政策は輸入飼料に過度に依存した工業型酪農の普及であった。これは生命産業といわれる酪農を自然から遊離した歪な業界にしてしまった。著者は山地を利用した放牧酪農を30年余に渡り実践してきた。これは戦後まもなく,植物学者の猶原恭爾博士が提唱した「山地酪農」が背景になった。しかし,工業的酪農の激流に押し流された山地酪農は1987年に乳業界が取り決めた脂肪分3,5基準によって崩壊してしまった。一方EUが先鞭を切った「家畜福祉」という概念はいみじくも山地酪農の手法と合致するという皮肉なこととなった。食の安全や家畜福祉,環境問題が百家争鳴のいまこそ虐待的飼育におかれてきた乳牛たちの思いを真摯に受け止め乳牛,酪農家,消費者それぞれが共通の幸せに基づいた新たな日本型酪農構築をしなければならない。幸いわが国には全ての動植物と共生を重んずる仏教的思想を先人達が継承してきた歴史がある。
著者
安井 喬
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.1074-1080, 2013 (Released:2014-05-12)
著者
横関 正直
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1163-1168, 2007-11

養鶏場のバイオセキュリティ。養鶏場の消毒を再点検する。もっと確実に、もっと効果的に。侵入防止・持ち込み防止の消毒。手による病原菌やウイルスの持ち込み防止。ヒトの手はあちこちに触れるので、汚染物質(病原菌やウイルス)を付着させやすいものである。そのために、食中毒や伝染病予防には、まず、手洗いというのが常識である。インフルエンザやSARSあるいは鳥インフルエンザも呼吸器感染症であるから、当然に感染経路は経気道的であるのだが、実際は経口的にも感染することが知られているからである。普通の風邪の場合はほとんどが経口的感染と言われる。
著者
阿部 亮
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 = Sustainable livestock production and human welfare (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.995-998, 2015-12

今回の酪肉近において飼料に関しては,「国産飼料生産基盤の確立」という項目の中で,次の6課題を掲げている。(1) 国産粗飼料の生産・利用の拡大,(2) 放牧活用の推進,(3) 飼料用米等国産飼料穀物の生産・利用の拡大,(4) エコフイードの生産・利用の促進,(5) 飼料の流通基盤の強化,(6) 肉用牛生産における肥育期間の短縮,である。本稿では国産飼料用穀類の利用に関して,飼料用米とイアコーンサイレージについて,生産利用と研究・技術開発の現状を見,今後を考えたい。飼料として国内で使われている穀類は,トウモロコシ,こうりゃん(マイロ),小麦,大裸麦,米,ライ麦,エンバク等である。ほとんどが輸入であるといってよい,平成26年度の飼料穀類の輸入量は約1,205万トンでその83%がトウモロコシである。この年のトウモロコシの輸入量は約996万トンであるが,その82%は米国からのものである。次に乳牛と肉用牛の配合飼料の中の穀類の配合割合(2015年6月)を見ると,乳牛用では50.3%,肉用牛用では60.4%と共に過半を穀類が占めており,穀類の中ではトウモロコシが乳牛用では83.5%,肉用牛用では64.9%とデンプン給与の主体を担っている。
著者
松尾 雄二
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.683-688, 2014-06

「魏志倭人伝」(3世紀末成立)には,「その地には牛馬虎豹羊鵲無し」とあり,当時,倭(日本)には羊はいないと記録される。その後,いろいろな文書に羊や山羊という漢字が存在するが,ヒツジ,ヤギ,カモシカ(カマシシ)などと分類できず,文書のみから正確に判断することが難しいため,本稿もヒツジとヤギなどの内容が混交している可能性がある。ここでは,文献(「文献名(翻訳者)」(成立年),「抜粋引用,引用中の()は注釈等」及び漢数字年月日は和暦,洋数字は西洋暦)からヒツジやヤギなどについてみる。
著者
秋葉 和温
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.775-780, 2013-07

私は媒介者検索のため,7月22日に久保田さんの家の離れにお邪魔した。幸いにも,久保田さんの離れを井野専務夫妻が借りておられて,私を泊めて下さるというのである。有り難いことであった。しかも,この離れの裏にはバタリー鶏舎があったので,この離れに血液塗抹や染色用具,携帯顕微鏡,接種用ヒナなどを置き,裏の鶏舎で作業して,その処理を,この離れの部屋の座り机の上ですることができたので,大変好都合であった。お邪魔して最初は,裏の鶏舎に入り,まず糞の状態を見る。緑色をした便を見つけたら,顔を上げて鶏冠の状態を見るのである。鶏冠が白っぽくなっていれば,その鶏は貧血しているのである。このようにして緑色便と貧血の見られる鶏を数羽,探し出して,血液塗抹をとった。離れに帰ってメタノール固定し,ギムザ染色をして顕微鏡で検査して,II期とV期の原虫が同時に見られるような鶏を選び出したのである。V期の原虫のみしか見られない鶏では,すぐ消失してしまうかもしれない,II期とV期の原虫が同時に見られるような鶏はV期の,すなわちガメトサイトの出始めであることを示していて,ニワトリヌカカに吸血させるのに好都合であったからである。
著者
川道 美枝子 川道 武男 山本 憲一 八尋 由佳 間 恭子 金田 正人 加藤 卓也
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.633-641, 2013-06

アライグマ(Procyon lotor)は北米原産の食肉目アライグマ科に属する中型の哺乳類である。日本での最初の野生化は,1962年岐阜県犬山市の施設で飼育されていた個体からと言われる(環境省,2011)。1970年代末に放映された連続テレビアニメ「あらいぐまラスカル」が人気を呼んだのも一因と考えられるが,ペットとして多数が北米から輸入されるようになった。その後,各地でのアライグマの拡大で,農作物の被害もあり,1994年に狩猟獣に指定され,有害駆除が容易となった。しかしながら,アライグマの拡大は進み,1998年には日本哺乳類学会が対策を求める決議を採択した(哺乳類保護管理専門委員会,1999)。アライグマが原産地で狂犬病を媒介することから,2000年に狂犬病予防法による動物検疫対象に指定されて輸入規制されるまでに(神山,2008),日本に多数が輸入されたが,輸入の実数は不明である。アライグマなどの侵略的外来生物の輸入や日本国内での増加を抑制するために2004年,「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(以降外来生物法とする)」が成立し,2005年に施行され,アライグマは輸入,販売,飼養,運搬が規制される特定外来生物に指定された。しかし,法律施行までにすでに日本各地にアライグマは広がっていた。狩猟統計によると(環境省HP),2004年には22道府県で3,287頭のアライグマ捕獲が記録されている。2010年には狩猟,有害駆除,外来生物法に基づく捕獲で24,091頭が捕獲された(狩猟統計)。2010年に全47都道府県に分布することが確認された(国立環境研究所侵入種データベース,2010)。アライグマのもたらす被害としては,自然生態系への被害,農作物や養魚への被害,民家や社寺などへの侵入による汚損・破壊の被害,病気の伝搬の可能性が挙げられる。日本各地に分布するアライグマは主にペット由来とみなされる。アライグマは成獣になると飼育困難になり,野外に放されたり,器用な手先を使って檻から逃走して,各地で野生化したと考えられる。外来生物法が施行されるまでは,捕獲されたアライグマを奥山放獣するようにという行政指導も行われた。また,有害駆除が農作物被害のみに対応している場合も多く,家屋侵入被害は駆除対象とされなかったため,市民による違法捕獲後に山などに放されるケースも多かったようである。そうした事情がアライグマの急速な拡大に拍車をかけたと考えられる。
著者
竹中 昭雄
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.35-40, 2010-01

日本の食料自給率はカロリーベースで41%と、食料の6割程度を海外に頼っている。家畜の飼料自給率についてはさらに低く、飼料用の穀物の9割以上は海外から輸入している。この数値はOECD加盟国中アイスランドをのぞいて最低水準であり、もちろん、食料安全保障上からも、「自国で消費する食料は国内で生産するべきだ」という理論は正しいが、日本国内ですべての食料を自給すると言うことは現実的には難しいと考えられることから、輸入に頼らざるを得ないが現状である。さらに、世界的規模で考えると、耕作地の劣化や砂漠化、途上国における人口の増加などから、世界的に食糧の需給は逼迫していると考えてよく、人類の英知を注ぎ開発途上地域を含めた地球上すべての耕作可能地域で効率的な食糧生産を行う必要に迫られている。この時、世界最高水準である日本の農業技術を開発途上地域における効率的な農業生産に活用することは、とりもなおさず日本における食糧安全保障につながるものであり、安心・安全な食糧輸入にも活用できることを意味する。国際農林水産業研究センター(JIRCAS)は開発途上地域における農林水産業の研究を包括的に行う我が国唯一の機関として「国際的な食料・環境問題の解決に向けた農林水産技術の研究開発」、「国際的な食料・農林水産業及び農山漁村に関する動向把握のための情報の収集・分析及び提供」を行うための国際共同研究を国際農業研究機関等との連携・協力の下で推進し、開発途上地域の農林水産技術の向上に貢献し最終的には日本の食の安心・安全を守ることにつなげようとしている。今般、地球温暖化は世界全体における大きな課題であり、農業は環境の上に成り立つ産業であるとともに、農業生産自体から発生する温室効果ガスをいかに抑制しながら効率的な生産を達成することができるのかが喫緊の課題であり、今後のJIRCASの新たな展開方向になるものと考えられる。
著者
奥村 純市
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.923-928, 2013-09

XVI. オーストリッチの肉料理(続き) 2 生で食べるオーストリッチ (続き) h. 生ハムとルッコラのピザ モモ肉を使って,生ハムを作る みんなでワイワイ楽しいパーティ,オードブルに,酒の肴に向いている。<モモ肉>断面の直径が5cm位 漬け込み用塩 適宜 ローズマリー,セージ,タイム 適宜 (図73)
著者
菅原 七郎
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.253-259, 2015-03

有袋類の発生は真獣類と比べて卵子の外囲構造(膜状構成),卵割の様式,卵管下降速度,着床,胎子形成と妊娠期間などの点で大きく異なり,有袋類の種保存と継代をする上での相対的に優位な繁殖戦略を持っていると考えられる。a) 卵子の形成と特性 有袋類のうちでキタオポッサム,フクロネコ,チャアンテキヌス,コアラなどで卵胞内での成長,成熟過程の組織学的研究が行なわれている。i) 卵子の成熟と排卵 上記の4種では第1卵母細胞は真獣類の卵子と同様に第一成熟分裂前期の複線期(卵核胞)で休止しており,第二成熟分裂の中期に至り排卵される。しかし,第2卵母細胞(M-II)からの卵胞細胞の消失時期が真獣類のそれとは全く異なり,排卵前か排卵直前に消失してしまう。