著者
冨川 哲夫
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.92-96, 1972-12-01 (Released:2010-11-22)
参考文献数
9

This paper deals with the seasonal variation of body length of Sinodiaptomus volkanoni KIEFER, collected from small ponds near Miki City, Hyogo Prefecture, from August, 1967 to July, 1970. With regard to its body length, two different types could be found i. e., a small-sized group occurring in the warm season (autumn) and a large-sized group in the cold season. The seasonal changes in length of the head, thorax and abdomen were also found. The maximum percentage of head length to body length was met with in the warm season and the minimum in the cold season. On the contrary, the maximum percentage of abdomen length to body length was found in the cold season and the minimum in the warm season. However, the thorax length to body length, regarding its maximum percentage, was sporadic to some extent.In the specimens collected in winter it was observed that reddish orange oil drops were deposited in the body, but, as the season progressed, they gradually decreased and entirely disappeared in summer.
著者
佐伯 有常
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3-4, pp.118-124, 1956-11-30 (Released:2009-10-16)
参考文献数
2
被引用文献数
1

新しく造つたコンクリート池での魚の飼育は順調に行かないことが多い.これは “アク” が出るからだといわれている。即ち, セメント中の石灰その他のアルカリが原因 [1] と考えられるが, 筆者はモルタルブロツクの海水, 淡水等での浸漬試験をして, これについて吟味, 考察を行つた.コンクリートの “アク” についてモルタルブロックの浸漬試験により次の結果を得た.(1) コンクリートの “アク” はその固化に際し著量の炭酸を吸収すること。遊離アルカりの溶出することが原因と考えられる.(2) この結果pHの上昇, アルカリ度の低下, カルシウムの沈澱等がみられる.(3) コンクリート作製後1ヵ月で “アク” は少くなるが, その後カルシウムの溶出等があり, 水に殆ど影響を及ぼさなくなるのは数ヵ月後であろう.(4) “アク” の防禦法としてはアルミニウム塩や水ガラスでの洗滌塗布よりビニールペイントの塗布が有効であろう。
著者
石田 昭夫
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.349-358, 1997-12-01 (Released:2009-06-12)
参考文献数
7
被引用文献数
2 10

Eucyclops serrulatusとE.speratusに類似する1新種Eucyclios roseusを記載した。本種はヨーロッパからアジアに広く分布すると見られる。日本において混乱していたE.serrulatusとE.speratusの分類は本種の存在が知れたことで部分的に解決された。琉球列島から北海道までE.roseus,E.serrulatusおよびE.speratus-likespeciesが分布するが,E.speratus s.str.は出現しない。日本のsperatus-likespecies complexは幾つかのタクサに分けられ,その一つは主に日本の北半分に,他方は南半分に分布する。E.roseusとE.speratus-like species complexの日本における棲み場所は池,湖沼,河川の中・下流域で,E.serrulatusのそれは一般的に山地水体と泉流に限られる。
著者
Janet W. REID 石田 昭夫
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.133-144, 1996-06-01 (Released:2009-06-12)
参考文献数
13
被引用文献数
3

北米から得られたソコミジンコ,カントカンプタス科,Gulcamptus属の2新種を報告する。これまでG.uenoiMIURAとされていたアラスカの個体群は新種であることが判明したので,G.alas-kaensisと命名した。ヒューロン湖とアラスカから得られた雌のGulcamptus huronensis,n.sp.を記載した。雄は得られていない。Neomaraenobiotus FLOSSNERはGulcamptus MIURAの異名と考えられ,したがってN.laurentiacus FLOSSNERはGulcamptus属に移される。Gulcamptus属の記相を改める。Gulcamptusに属する種の分布は韓国,日本(北海道),カナダ(ユーコンとNorth West Territories)および合衆国(アラスカとヒューロン湖)に及ぶことになる。
著者
河合 幸一郎
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.161-171, 1991-07-27 (Released:2009-06-12)
参考文献数
9
被引用文献数
2 4

日本各地の種々の陸水域において採集した底質サンプルから得ら.れたNeobrillia(新属),Nano-cladius,Paracladopelma,Polypedilum及びTanytarsusの五属に属する7種のユスリカ新種について,雄成虫の形態を記載した。
著者
御勢 久右衛門
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3-4, pp.113-122_1, 1965-03-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
3
被引用文献数
1

1.吉野川水系(奈良県)の丹生川において,黒渕ダム湖築造前と完成後の水生昆虫群集について1954年4月3日と1960年4月2日に調査を行なつた.2.黒渕ダム湖築造前の丹生川の水生昆虫群集は,種数,個体数,現存量ともに多く(Hydropsyche ulmeri―Parastenopsyche sauteriが優占種),造網型係数が64~94%に達し,瀬における水生昆虫群集の極相にあると考えられる.ダム完成後(ながれダム湖)の水生昆虫群集は,ダム湖の影響のない城戸では,種数,個体数,現存量とも変りはない.ダム湖と化した黒渕では種数,個体数,現存量ともに少なく,そのうちでも底質が湖首部の石礫,湖中部の泥かぶりの礫砂,湖尾部の泥となるにつれて,底生動物の優占種はEcdyonurus yoshidae→Potamanthus kamonis→Limnodrilus sp.の移りゆきを示す,またその優占生活形は匍匐型→掘潜型となる.黒渕堰堤のすぐ下流では,種数,個体数,'現存量とも少なく,優占生活形は匍匐型となる.和田の優占生活形は遊泳―匍匐型.さらに下流の生子は種数,個体数,現存量が増加し,優占生活形は造網型となる.
著者
河合 幸一郎 佐々 学
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.15-24, 1985-01-30 (Released:2009-11-13)
参考文献数
28
被引用文献数
2 5

The distribution of the chironomid larvae in the Ohta River, Hiroshima Prefecture, was studied at 12 stations covering almost the entire length of the stream by the method in which male adults emerging from bottom samples were identified.As a result, a total of 97 species was recorded, at least 12 of which are regarded as new species.Seven of these new species belonging to 5 genera, i.e., Cricotopus, Microtendipes, Polypedilum, Rheotanytarsus and Tanytarsus were described. In addition, brief comments were made on the larval habitats of 3 of these species.
著者
大高 明史 山崎 千恵子 野原 精一 尾瀬アカシボ研究グループ
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.107-119, 2008 (Released:2009-09-10)
参考文献数
23

赤雪の一種であるアカシボ現象が知られている青森県の水田や山間休耕田,および高層湿原で,雪中に出現する無脊椎動物の群集構造や雪中での分布を調べた。雪に出現した動物は,表層や上層でわずかに見られる陸上動物と下層で優占する水生動物から構成されていた。冬期間の継続調査によると,水生動物の密度は雪がざらめ状になる積雪後期に水分含量の多い下層で高まり,特にアカシボ層では900 L-1を超える高密度での出現が観察された。雪中に見られる無脊椎動物群集は,カイアシ類や貧毛類,ユスリカ類やヌカカ類の幼虫が優占し,尾瀬ヶ原で知られている構成と類似していた。これらの動物はいずれも調査地の土壌中でも確認されることから,土壌動物に由来すると推測された。水を多量に含んだざらめ状の雪に出現する無脊椎動物には小型で細長い体型の水生種が多く,海浜や地下水などの間隙性動物との生態的な類似性が指摘される。弘前市の休耕田での継続観察から,融雪期に積雪下層あるいは土壌表面で起こるアカシボの生成に伴って,高密度の水生無脊椎動物群集が形成されることが推測された。
著者
小林 道頼
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.385-394, 1992-10-29 (Released:2009-06-12)
参考文献数
44

オオミジンコの血リンパ中のHb濃度と生息水の溶存O2量には逆相関の関係が見られる。低O2下でのHb合成は未成熟個体で高い。Hbの多い個体は少ない個体が遊泳できない程の低い酸素下でも長距離を遊泳できる。オオミジンコは02調節形の呼吸を示し,Hbの多い個体は少ない個体よりも低い臨界O2濃度を持っている。Hbの多い個体と少ない個体の生体内Hbが50%O2化するO2圧はそれぞれ15と35torrである。Hbの多い個体の精製HbのO2親和性は少ない個体のものよりも高い。等電点電気泳動法によりオオミジンコHbは少なくとも6種以上の成分に分離される。Hbの多い個体と少ない個体ではHb成分の量比が異なり,Hbの多い個体では,等電点の高い成分が増加している。オオミジンコはO2親和性の異なる多成分系Hbをもつことにより,広範なO2環境に適応することができるものと思われる。
著者
日下 譲 辻 治雄 玉利 祐三 西村 公男 藤原 儀直
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.93-99, 1984-04-30 (Released:2009-11-13)
参考文献数
5
被引用文献数
2

Chemical species of the shallow groundwaters collected from the Arima rhyolite strata around Sanda and Nishiwaki cities are studied. Since the chemical composition of the igneous effusive rock is reasonably representative of rocks of the continental crust, the water quality is important from the geochemical and environmental viewpoints. The concentrations of 28 chemical species, pH and ER are determined by conventional chemical and neutron activation analyses. By showing log-normal distribution character of the concentrations, the median value schematically obtained in the frequency distribution curve is proposed as most suitable as the chemical composition of groundwaters in the strata. It is also pointed out that the CO2 weathering process is the most dominant phenomenon controlling the water qualities.
著者
藤谷 俊仁
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.185-207, 2006-12-01 (Released:2008-03-21)
参考文献数
61
被引用文献数
1 2

コカゲロウ科の日本産7属について, 雄成虫と幼虫の属への図解表検索を作成した。対象とした属は, ミジカオフタバコカゲロウ属, シリナガコカゲロウ属, フタバコカゲロウ属, コカゲロウ属 (狭義), フトヒゲコカゲロウ属, トビイロコカゲロウ属, ヒゲトガリコカゲロウ属であった。各属の種組成, 各種の特徴, タイプ産地といった分類情報だけではなく, 種の分布域, ハビタットといった生態情報もまとめた。
著者
松崎 慎一郎 佐竹 潔 田中 敦 上野 隆平 中川 惠 野原 精一
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.25-34, 2014-09-04 (Released:2016-01-31)
参考文献数
28
被引用文献数
1 2

福島第一原子力発電所事故後に,霞ヶ浦(西浦)の沿岸帯に2定点を設けて,湖水の採水ならびに底生動物である巻貝(ヒメタニシ,Sinotaia quadrata histrica)と付着性二枚貝(カワヒバリガイ,Limnoperna fortunei)の採集を経時的に行い,それらの放射性セシウム137(137Cs)濃度(単位質量あたりの放射能;Bq kg-1)を測定した。これらのモニタリングデータから(2011年7月~2014年3月),貝類における137Csの濃度推移,濃縮係数ならびに生態学的半減期を明らかにした。湖水および貝類の137Cs濃度は定点間で差は認められず,経過日数とともに減少していった。両地点でも,カワヒバリガイよりも,ヒメタニシの137Cs濃度のほうが有意に高かった。濃縮係数を算出したところ,ヒメタニシのほうが2倍近く高かった。巻貝と二枚貝は,摂餌方法や餌資源が異なるため,137Csの移行・蓄積の程度が異なる可能性が示唆された。また生態学的半減期は,ヒメタニシで365~578日,カワヒバリガイで267~365日と推定され,過去の実験的研究で報告されている生物学的半減期よりもはるかに長かった。このことから,餌を通じた貝類への137Csの移行が続いていると考えられた。
著者
福原 晴夫 木村 直哉 永坂 正夫 野原 精一
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.171-188, 2021-09-25 (Released:2022-09-28)
参考文献数
100
被引用文献数
1

尾瀬ヶ原は標高約1400 mに位置し,長さ6 km,幅2 km,面積7.6 km2の本州最大の高層湿原である。尾瀬ヶ原では近年洪水の頻度が増し,池溏に氾濫水が流入する状況が起こっている。そこで,尾瀬ヶ原上田代の12池溏において,2019年10月に岸辺水生無脊椎動物のタモ網による時間単位採集を行い,洪水の影響を検討した。最近の洪水(2019年5月20 ~ 21日,累加雨量84 mm)による池溏の濁り状態の目視観察やドロ-ン映像,池溏の標高,魚類の侵入状況から,12池溏を洪水影響小(OFPool),洪水影響大(FFPool)に分けた。調査池溏には27分類群が出現した。OFPoolには25分類群,FFPoolには26分類群が出現し,差はなかった。各分類群の採集個体数の平均はミズダニ類を除いてFFPoolで少なく,総採集個体数(ササラダニ類を除く)とハエ目採集個体数で有意に少なかった。ササラダニ類もFFPoolで少ない傾向を示した。ハエ目の中ではユスリカ科の採集個体数が,特にモンユスリカ亜科の採集個体数がFFPoolで少なく,洪水は本亜科に大きな影響を与えたと推定される。生体量にはハエ目を除いて有意な差は認められなかった。キイロマツモムシ,ケヨソイカ属の一種,セトトビケラ属の一種 はFFPool での出現池溏が少なかった。氾濫水は池溏の岸辺を攪乱し,動物そのものの流失や動物の付着した枯葉や藻類,菌類の流失を引き起こし,岸辺水生無脊椎動物個体数を低下させた可能性がある。また洪水によって池溏に侵入した魚類の捕食圧の増加も個体数の低下を引き起こしている可能性がある。
著者
野崎 隆夫 小林 紀雄
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.287-293, 1987-10-30 (Released:2009-11-13)
参考文献数
13
被引用文献数
1

The life history of the caddisfly, Nothopsyche ruficollis (ULMER), was studied in a small stream on the Miura Peninsula of Kanagawa Prefecture, Japan, from October 1984 to September 1986. The species had a univoltine life cycle. Adults were present from late autumn to early winter and oviposited their egg-mass on the bank. The hatching time of eggs varied greatly, even within an egg-mass, and newly-hatched larvae remained within the gelation until early spring. They may get into the water with rain. There were five larval instars. Larval development occurred during the aquatic stages of the life cycle, from the first to the early fifth instars, present from early spring to early summer. Final instar larvae began to move on land in the early summer and aestivated from early summer to autumn and pupated in the late autumn. The wintering within the gelatinous egg-mass and summer aestivation observed in this species seems to be advantageous to avoid the unstable stream conditions of drought or flooding prevalence in summer and drought or freeze in winter. Although the main larval food was diatoms, vascular plant and animal materials were also found to be utilized as food by aquatic stages. No feeding was evident in terrestrial larvae.
著者
高村 健二
出版者
日本陸水學會
雑誌
陸水學雜誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.249-253, 2009-12-20
参考文献数
34
被引用文献数
2 7

固有種に富む琵琶湖の魚類相は,生物学的侵入や生息環境減少などによって脅かされる一方,固有種の他陸水域への放流により,生物学的侵入を生じるという矛盾した状態にある。関東地方河川では,琵琶湖産アユ放流に随伴した侵入により,琵琶湖由来と関東在来の2系統のオイカワが混在していることが,ミトコンドリアcytochrome b遺伝子分析によりわかった。湖産アユ放流は放流河川での翌年のアユ回帰へ貢献しないと報告されているため,放流の停止がアユ資源維持にも生物学的侵入の抑制にも望ましいと考えられた。琵琶湖魚類相を取り巻く矛盾した状態の解消には各々の地域環境に適応した在来生物の保全が鍵となるであろう。
著者
高村 健二
出版者
日本陸水學會
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.249-253, 2009 (Released:2011-03-28)

固有種に富む琵琶湖の魚類相は、生物学的侵入や生息環境減少などによって脅かされる一方、固有種の他陸水域への放流により、生物学的侵入を生じるという矛盾した状態にある。関東地方河川では、琵琶湖産アユ放流に随伴した侵入により、琵琶湖由来と関東在来の2系統のオイカワが混在していることが、ミトコンドリアcytochrome b遺伝子分析によりわかった。湖産アユ放流は放流河川での翌年のアユ回帰へ貢献しないと報告されているため、放流の停止がアユ資源維持にも生物学的侵入の抑制にも望ましいと考えられた。琵琶湖魚類相を取り巻く矛盾した状態の解消には各々の地域環境に適応した在来生物の保全が鍵となるであろう。
著者
篠原 隆一郎
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.19-31, 2020-02-25 (Released:2021-05-26)
参考文献数
86

富栄養化及び,藍藻類のブルーミングは依然として世界中で重要な問題となっている。近年,Geo-engineeringな手法を用いることで,湖沼保全方法の知見が増え,また,新しい分析手法が開発されたことで,細かいプロセスが明らかになってきた。本総説では最初に富栄養化対策について俯瞰的に議論し細かいプロセス研究の重要性を示したい。その後,無機態・有機態リンの循環について議論する。最後に,筆者自身が行っている今後の研究について議論したい。
著者
中井 克樹
出版者
日本陸水學會
雑誌
陸水學雜誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.277-280, 2009-12-20
被引用文献数
2 2

外来生物による生態系等への影響が顕在化するなか、2005年に「外来生物法」(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)が施行され、わが国においても外来生物に対する国レベルの方向性が示された。湖沼や河川など陸水学が主たるフィールドとする陸水域は、陸上域における島嶼とともに、外来生物による生態系への影響・被害を受けやすいことが経験的に知られており、外来生物法の規制対象となる「特定外来生物」にも、陸水域を生息・生育環境とする動植物が多く含まれている。この意味で、2008年10月に北海道大学で開催された日本陸水学会第73回大会において、外来生物問題をテーマとした公開シンポジウムが開催されたことは、非常に意義深いことである。このシンポジウムに先立ち、2006年度の日本生態学会大会第54回大会(2007年3月・愛媛大学)で自由集会「淡水産外来無脊椎動物の侵入実態と防除に向けた課題」が開催された。そこでの発表の多くは、陸水学会誌68巻3号に掲載され、陸水域における外来生物問題に関して、具体的な事例の紹介とともに、今後の課題に関しても言及されている。ここでは、こうした言及をふまえながら、陸水域における外来生物問題の課題について指摘したい。
著者
関根 一希 鶴田 大三郎 東城 幸治
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.253-260, 2007 (Released:2008-09-30)
参考文献数
24
被引用文献数
4 6

オオシロカゲロウは進化生態学的に興味深い昆虫であるが,比較的大・中規模とされる河川,かつ水深が深い中・下流域に棲息するため,生活史全般に渡る調査研究は困難とされてきた。本研究では,小規模な農業用水路・日野用水(東京都日野市)において本種が高密度で確認されたため,調査に適した棲息地として2005年の一年間,生活史を詳細に追究した。その結果,主たる孵化期間は2月下旬-3月下旬であり,羽化期間は8月30日-9月20日間(ピークは9月3日,4日)であることを確認した。また一方で,一年を通して孵化前卵が認められたが,これは休眠卵に適切な低温処理がなされず,春になっても休眠解除されなかったものであると考えられる。これらの卵は翌年(あるいは,それ以降の年)の春季に休眠が解除される可能性も考えられ,鰓脚類や一部の昆虫類などでみられるようなエッグバンク的機構が備わっている可能性も示唆された。