著者
小林 道
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.126-133, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
21
被引用文献数
1

【目的】地域住民を対象として,中食の利用頻度と食品群別摂取量及び栄養素等摂取量の関連を明らかにすることを目的とした。【方法】2018年7月~8月に,北海道江別市に在住する20~74歳の成人を対象として,自記式質問紙調査を行った。食品群別摂取量及び栄養素等摂取量は,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)により評価した。最終的な解析対象者は1,469名(男性:625名,女性:844名)であった。中食の利用頻度と食品群別摂取量及び栄養素等摂取量との関連は,共分散分析を用いて検討した。【結果】男性では,中食の利用頻度が週1回未満の群と比較して,週2回以上の群で,緑黄色野菜類,その他の野菜類,食物繊維,カリウム,カルシウム,マグネシウム,葉酸,ビタミンCの摂取量が有意に低く,女性では,これらの食品群と栄養素等に加えて,豆類,卵類,動物性たんぱく質,動物性脂質,鉄,亜鉛,銅,ビタミンA,ビタミンB1,ビタミンB2,ナイアシン,ビタミンB6 の摂取量が有意に低かった。男女ともに中食の利用頻度が週2回以上の群では,ナトリウム・カリウム比(Na/K比)が有意に高かった。【結論】中食の利用頻度が週2回以上の群では,野菜類摂取量が低く,それに伴って食物繊維及び複数のビタミンなどの摂取量が低値を示し,Na/K比が高まる可能性を認めた。中食の利用頻度が高い場合には,Na/K比を低くするために野菜類摂取量の増加に留意する必要性が考えられた。
著者
小山 彰子 横山 弥枝
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.151-161, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
54

【目的】特別養護老人ホームにて経腸栄養製品を摂取している高齢者における自然排便の促しを検索した。【方法】胃瘻から経腸栄養製品を摂取している高齢者12名(男性1名,女性11名,平均年齢84.3歳)を対象に,シンバイオティクスによる排便状況や医療処置等の調査を行った。調査前の排便回数によって,低群(<3回),中群(≥3~<8回),高群(≥8回)に分類し,一般線形モデルの分散分析を用いて,排便回数,排便日数,便性状,排便量,医療処置回数の経時変化の分析を行った。また,対象者特性の便秘への影響度を数量化Ⅱ類により算出した。【結果】低群の排便回数は2.22回から4.08回(p=0.041 for trend),排便日数は1.98日から3.62日(p=0.015 for trend),医療処置回数は8.50回から0.50回(p=0.007 for trend),高群の排便回数は9.04回から6.88回(p=0.032 for trend),排便日数は6.24日から4.67日(p=0.009 for trend)となった。高群では排便回数は9.04回から6.88回(p=0.032 for trend),排便日数は6.24日から4.67日(p=0.009 for trend)となった。便性状と排便量に変化はなかった。対象者特性である胃瘻期間および食物繊維摂取量と便秘との関連は認められなかった。【結論】胃瘻から経腸栄養製品を摂取している高齢者の自然排便におけるシンバイオティクスの作用傾向は確認されたが,本調査は実践活動報告であることから,今後は無作為化比較試験等での検証が求められる。
著者
鈴木 志保子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.275-282, 2012 (Released:2012-12-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1

スポーツや健康の維持・増進の現場における栄養管理は,栄養ケア・マネジメントと比較し,マネジメントの目的,期間,対象者,行動計画の有無,評価項目が異なることから,栄養ケア・マネジメントの流れのとおりに実施することができない。そこで,スポーツ栄養マネジメントを構築した。スポーツ栄養マネジメントは,目的と期間を定め,スクリーニングにより対象者を抽出し,対象者への個人サポート(個人マネジメント)を実施し,対象者全員の個人サポートの成果とともにマネジメントの評価を行うという流れである。個人サポートは,アセスメント,個人目標の設定,サポート計画立案,サポート計画の実施,モニタリング,個人評価の流れとなる。スポーツ栄養マネジメントは,2008年に北京で開催されたオリンピックにおいてソフトボール日本女子代表チームが金メダルに輝いたことから,質の高い効果的な栄養管理の実施が可能であることが評価され,スポーツや健康の維持・増進の現場における栄養管理システムとして導入されるようになった。
著者
赤堀 摩弥 藤浪 正子 川田 典子 佐藤 圭子 小嶋 由美 中村 美詠子 尾島 俊之
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.34-43, 2018

【目的】静岡県は他自治体と比較して脳血管疾患死亡率が高く,食塩摂取量も多い。そこで,脳血管疾患対策の1つとして,5年で5%の減塩を目指す「減塩55プログラム」に取り組むこととし,県民の食塩摂取状況の把握ができるチェック票を開発,減塩推進活動に活用することを目指した。<br>【方法】静岡県保健所栄養士のヒアリングによる質的データ,静岡県民102人を対象とした24時間蓄尿データより推定した食塩排泄量及び食物摂取頻度調査票(短縮版)データ等に基づいて,チェック票を開発,さらに,特に減塩をすすめたい働き盛り世代を対象としたリーフレット「ふじのくに お塩のとりかたチェック」を作成した。<br>【結果】チェック票合計点と推定食塩排泄量の間には,有意な正の相関(Pearson相関係数0.402)がみられた。チェック票より3段階にランク付けした場合,各群の平均推定食塩排泄量はおのおの 6.8 g,8.7 g,12.2 gであった。リーフレットは70,000部以上が希望のあった県内の健康保険組合,事業所,医療機関,県栄養士会,薬局,教育機関,保育所等に配布され,県内全ての市町,健康福祉センターで活用されている。<br>【結論】本チェック票は食塩摂取の簡易なスクリーニング・ツールとして使いやすいものとなったため,現在静岡県内の健康教室,イベント等さまざまな場面で活用されている。今後も本チェック票を活用し,静岡県における減塩対策を進めていく予定である。
著者
吉川 賢太郎 撫井 賀代 福本 紘一 島田 豊治
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.161-164, 2004

市販梅酒 (アルコール14%, 糖20%, エキス分30%含有) 100m<i>l</i>を毎日6カ月間継続飲用させた10人(43.5±15.2歳) を被験者とし, 梅酒飲用による健康人の血中脂と血圧に及ぼす効果についての予備的研究を行った。毎月1回, 身長, 体重, 血圧, 検尿 (尿蛋白質, 尿糖, ウロビリノーゲン, ケトン体) 測定を行った。原則として空腹時採血し, 血清総コレステロール, HDL-コレステロール, 血糖値, ヘモグロビンA<sub>1C</sub>, ヘモグロビン量, アルブミンを測定した。またBMI, 動脈硬化指数は計算によって求めた。<br>その結果, HDL-コレステロールは飲用前値59.0mg/d<i>l</i>であったが, 飲用2カ月後から有意に増加し, 6カ月後に64.1mg/d<i>l</i>になった。また動脈硬化指数は飲用前値2.54で, 飲用2カ月後から有意に低下し, その後一定値を維持した。収縮期血圧は前値132.8mmHgであったが, 6カ月後に128.7mmHgと低下傾向を示した。拡張期血圧は飲用前値88.0mmHgであったが6カ月後に80.2mmHgと有意に低下した。血糖値は6カ月間に変化は認められず, ほぼ一定の87~89mg/d<i>l</i>を維持した。ヘモグロビンA<sub>1C</sub>は血糖値と同様に有意の変化は認められず, 6カ月間ほぼ一定の4.8~4.9%であった。その他の検査に有意な変動は認められなかった。
著者
宮崎 滋
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-10, 2007-02-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
6
被引用文献数
3 3

The Clinical Guidelines for the Treatment of Obesity published in January 2006 by Japan Society for Study of Obesity are reviewed in respect of the standard treatment, management and prevention of obesity and metabolic syndrome, and the relationship between these disorders.
著者
戸張 千夏 高増 雅子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.76-89, 2021-04-01 (Released:2021-05-15)
参考文献数
28

【目的】本研究では,マレーシアにおける大学生の食生活や飲料摂取状況の現状を把握し,その特徴について明らかにすることを目的とした。【方法】マレー半島のトレンガヌ州にあるマラ工科大学ドゥングン校,スランゴール州にあるマラ工科大学プンチャックアラム校の学生632名を対象とし,2019年3月~4月に食生活調査及び飲料摂取調査を実施した。食生活調査について,アンケート回答をスコア化し,群間の差(男女間,大学間)にはMann-Whitney のU検定を用いた。飲料摂取調査については,項目ごとに結果を集計し,χ2検定を行った。【結果】食生活調査では,対象者全体で,運動と健康との関わりや食生活の大切さについては理解しているが,砂糖摂取量に関する知識は乏しいことが分かった。砂糖摂取に関するセルフ・エフィカシーが低い傾向がみられた。また,朝食の欠食が昼食や夕食よりも多かった。女性は,砂糖摂取についての意識や栄養教育ワークショップへの関心も高く,男性は,運動について興味を持ち積極的に行っている傾向がみられた。飲料摂取調査では対象者全体で,水の摂取頻度が高かった。また,紅茶(コンデンスミルク入り,砂糖入り),麦芽飲料などのsugar-sweetened beverage(SSB)の摂取頻度が高い一方で,砂糖なしの紅茶やコーヒーの摂取頻度が低かった。女性は,男性より砂糖なしの飲料の摂取頻度が低かった。【結論】対象大学生における砂糖摂取量及びSSBの摂取頻度に係る課題が明らかになった。
著者
佐藤 安貴 正木 慎也 梅本 萌李 山本 浩貴 小山田 正人
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.90-102, 2021-04-01 (Released:2021-05-15)
参考文献数
35

【目的】摂食障害は,若年女子に好発する難治性の疾患で,治療の優先事項は栄養改善である。摂食障害の10~20%に自閉スペクトラム症が合併し,合併例は予後不良例が多く,治療では自閉スペクトラム症の特性に着目した対応が必要となる。摂食障害を発症し入院した自閉スペクトラム症女児2症例に,チーム医療の一環として自閉スペクトラム症の特性に着目した栄養指導を実施したので,報告する。【方法】対象は,摂食障害治療を目的に精神科病院へ入院した自閉スペクトラム症の15歳女児2名である。症例1は,体重管理の厳しい審美系スポーツの選手で,過剰な運動と食事制限から低体重となり入院した。症例2は,ストレス時に拒食反応を示す病態で,拒食による急激な体重減少で入院した。管理栄養士は,自閉スペクトラム症の特性に着目し,1)褒めて労う,2)視覚情報の利用,3)具体的説明の繰り返しを基本に栄養指導を行った。【結果】症例1は,1週間毎に増加する食事を全量摂取するとともに,活動量を減少させることにより,目標体重を達成した。症例2は,拒食が消失し目標体重を達成した。【結論】摂食障害と自閉スペクトラム症合併2症例において,自閉スペクトラム症の特性に着目した1)褒めて労う,2)視覚情報の利用,3)具体的説明の繰り返しを基本とした栄養指導の有用性が示唆された。
著者
木林 悦子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.53-63, 2021-04-01 (Released:2021-05-15)
参考文献数
30
被引用文献数
1

【目的】高校3年間の追跡調査により,食生活改善への準備性からみたセルフエフィカシーと行動変容ステージの学年比較及び関連を明らかにする。【方法】兵庫県A高等学校の2012年度入学生320名のうち,家庭教科専門科目選択者を除き,2014年の3年まで継続して回答が得られた225名を対象とした。セルフエフィカシーは,食生活改善ができるか否かを5件法より得た。セルフエフィカシーと行動変容ステージの学年比較はFriedman 検定,3年におけるこれらの関連は共分散構造分析後,セルフエフィカシーの信頼性を検討するために開発した12項目のセルフエフィカシー尺度を従属変数,性別を調整因子とした二項ロジスティック回帰分析をした。【結果】高校3年間で男子はセルフエフィカシーの「やや改善できると思う」及び「改善できる」者が減少し,行動変容ステージの前熟考期が増加したが,女子ではいずれも学年別に有意差はなかった。共分散構造分析では,セルフエフィカシーから行動変容ステージへの有意な正のパスが示された。ロジスティック回帰分析の結果,準備・実行・維持期を基準として,前熟考期におけるセルフエフィカシー低得点群のオッズ比が有意に高かった。【結論】高校3年間で,食生活改善への準備性からみたセルフエフィカシーと行動変容ステージの伴った,男子における低下と女子の変化なしの実態が明らかとなった。食生活を改善させるには,セルフエフィカシーを高める教育支援の充実が望まれる。
著者
吉野 芳夫 久安 早苗
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.155-164, 1987-08-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
56
被引用文献数
7 2
著者
河原 聡 田丸 靜香 窄野 昌信 福田 亘博 池田 郁男
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-7, 2004-02-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
33

Conjugated linoleic acid (CLA) is the collective name for a group of geometric and positional isomers of octadecadienoic acid (18: 2) with conjugated double bonds. Interest in CLA has increased in the past decade as a result of its potential beneficial health effects on experimental animals. We summarize in this review the occurrence in food, biological effects and typical human consumption of CLA. We also review the efficacy and some problems of CLA supplementation as a weight loss agent, and the findings from animal studies and in vitro studies. Since CLA is biologically produced by the rumen bacteria of ruminant animals, ruminant meat and milk contain relatively higher amounts of CLA. The predominant isomers in those foods are 9-cis, 11-trans CLA. On the other hand, chemically synthesized CLA products which are commercially available in the US generally contain equal amounts of 9-cis, 11-trans and 10-trans, 12-cis CLA. The CLA isomers have been shown in animal models to protect against chemically induced cancer and atherosclerosis, and to reduce body fat. Although CLA appears to reduce fat mass in rodents such as mice and rats, we need more evidence to clarify the fat-reducing effect and safety of CLA in humans.
著者
佐中 孜
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.109-114, 2011 (Released:2011-07-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

CKD(Chronic Kidney Disease;慢性腎臓病)治療には(1)CKDの原因となる腎臓病(原疾患)治療,(2)食事療法,(3)アンジオテンシンII受容体拮抗薬,(アンジオテンシン変換酵素阻害薬,(4)経口吸着薬,(5)合併症治療(虚血性心疾患,高血圧,脂質代謝異常症(高脂血症),貧血など)による集学的治療など5つの基本戦略がある. これらのうち,食事療法のもつ意義は次のようにまとめられる。 1 生活習慣が関与している場合は,これを是正することにより原疾患の治療につながる。 2 たんぱく質の過剰摂取はたんぱく尿の悪化を招くので,その是正が必要である。 3 食塩の過剰摂取は高血圧,動脈硬化,更には糸球体細動脈硬化の原因になるので,食塩の過剰摂取の是正は不可欠となる。 4 糸球体に続く尿細管で起きている有機酸の過剰負荷をとることはCKDの進展抑制をもたらす。 5 アンモニア,リンの体内蓄積を抑制するための食事療法は有用と期待される。 6 CKDにおける鉄欠乏性貧血,ビタミンB12,葉酸欠乏による貧血を治療することにより,進展を阻止することが期待される。 7 高尿酸血症を伴うCKDにはプリン体の摂取の適正化が必要である。 8 脂質代謝異常症(高脂血症)も悪化要因になるので,食事療法は不可欠となる。
著者
今本 美幸 栗原 伸公 熊谷 聡子 土江 節子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.322-327, 2010 (Released:2010-11-29)
参考文献数
12

【目的】管理栄養士が行う栄養教育では,対象者が理解しやすく的確な内容が伝えられる「言葉」が必要である。このうち「控える」という言葉は,対象者に塩分や動物性脂肪など摂取の減量を指示する言葉であるが,その方法や量などの明確な指示はしていないと考える。そこで我々はアンケート調査を行い,日本の兵庫県で働く管理栄養士が用いる「控える」という言葉の概念を明らかにするため,栄養指導における言葉の効果を調べた。【方法】我々は控える対象としてエネルギー,甘いもの,アルコール,動物性脂肪,塩分の5項目を選び,「控える」という言葉の指導者側の意識を調査した。【結果】管理栄養士は50%以上が栄養教育において「控える」という言葉を使用していた。管理栄養士は,対象者が行うと期待する控える方法や量に個人差があった。また管理栄養士の勤務年数3年未満,3年以上20年未満,20年以上の3群による経験年数別の比較では,塩分で差があった。【結論】「控える」という言葉はとても不明瞭であり,この言葉のみで対象者が食生活改善できるとは限らない。管理栄養士は「控える」という言葉を単独ではなく,可能な限り具体的な言葉とともに用いることが必要である。(オンラインのみ掲載)
著者
佐藤 ななえ 吉池 信男
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.253-262, 2010 (Released:2010-10-26)
参考文献数
28
被引用文献数
10 10

【目的】この研究の目的は,小児の咀嚼行動特性や,それに関連すると考えられる因子について,実験食を食べた際の咀嚼回数及び食事に要した時間を評価指標として用いて検討することである。【設定及び対象】2つの幼稚園の61名の園児(5-6歳)を対象とする横断研究である。【方法】本研究では,日常的な幼稚園昼食を実験食とする,小児用簡易咀嚼回数計を用いた, 咀嚼回数(回)及び食事に要した時間(分)の測定,デンタルプレスケールを用いた咬合力測定及び対象児の咀嚼行動に関する保護者への質問紙調査を行い,咀嚼行動に関連すると考えられる因子について検討した。その際,食事に要した時間の影響を考慮した,食事時間調整咀嚼回数(以下「調整咀嚼回数」と称す)を残差法により算出し,咀嚼行動の個人間差を表わす新たな指標として検討に用いた。【結果】調整咀嚼回数との関連では,肥満度についてのみ有意な負の相関(r=-0.28;p=0.041)が示された。一方,食事に要した時間との関連では,身長(r=-0.31;p=0.018),体重(r=-0.30;p=0.026),肥満度(r=-0.27;p=0.047)に有意な負の相関が示された。重回帰分析(ステップワイズ法)の結果,「材料やおやつはよく噛んで食べることを考えて選んでいる」という保護者の行動が調整咀嚼回数に関連していることが明らかとなった。食事に要した時間では,保護者による児の判断,「すぐに飲み込まず,いつまでも口の中に入れていることがある」に有意な正の相関(r=0.35;p=0.010)が,同様に「よく噛まずに食べている」に有意な負の相関(r=-0.33;p=0.011)が示された。咬合力との間に有意となる関連はみられなかった。【結論】実験食を用いた本研究においては,肥満傾向であるほど食事時間が短かく,噛む回数が少ないこと,小柄であるほど噛む回数が多く,食事に時間を要することが明らかとなった。その他,「材料やおやつはよく噛んで食べることを考えて選んでいる」という保護者の関わりが,児の咀嚼行動に関連していた。実験食において測定した調整咀嚼回数により,肥満度及び他の因子との間の関連を明らかにすることができたことは,関連研究及び小児の咀嚼行動に着目した食育実践のエビデンス構築に役立つであろう。(オンラインのみ掲載)
著者
梶本 五郎
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.183-186, 1962-11-30 (Released:2010-10-29)
参考文献数
3

1. 市販の各種揚げ物について, 衣と内容物とに分け, 水分, 蛋白質, 脂質, 糖質, 灰分を定量し成分表を作成した。2. 分析によつて求められるカロリーと現行法のカロリーの値と比較した。
著者
吉田 心 佐藤 慎太郎 川俣 恵利華 川俣 幸一
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.27-36, 2021-02-01 (Released:2021-04-05)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,保護者自身への食塩摂取意識と子どもへ向けられる意識との関係を明らかとし,効果的な食育活動に繋がる保護者側の因子を探ることであった。【方法】対象は宮城県の子育て広場に通う103人の幼児とその保護者であった(親の平均年齢34.6歳,子どもの平均年齢2.7歳)。親自身の食塩量に関する意識を問う14項目,それと対になる子どもへの食塩量に関する意識を問う14項目のアンケート調査を実施した。結果は単純集計後,二項ロジスティック回帰分析を実施するために因子分析にて総合数値を求めた。【結果】子どもへの食塩量の意識と,親自身の食塩量の意識を比較したところ,14項目中12項目で意識の違いが見られた。因子分析後に実施した保護者と子どもの年齢,保護者の性別,アンケート13項目とで調整した二項ロジスティック回帰分析の結果では,味の付いたご飯,ルーのかかったご飯,スナック菓子の食塩量について有意な回帰式が得られた(それぞれp=0.024,p=0.044,p=0.011)。【結論】子どもへ向けられる食塩摂取量の意識と親自身の食塩摂取量の意識については全ての項目で有意な正の相関を示し,殆どの項目で子どもに向けられた意識の方が親自身の意識よりも有意に高かった。また多変量解析の結果,子育てのための食塩指導を親向けに開催する場合,味の付いたご飯,ルーのかかったご飯,スナック菓子の食塩量について指導することが,効果的な食育活動の一つとなることが示唆された。
著者
赤松 利恵 串田 修 高橋 希 黒谷 佳代 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.37-45, 2021-02-01 (Released:2021-04-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1

【目的】「健康な食事・食環境」認証制度における外食・中食部門の応募促進と継続支援に向けて,スマートミールの提供状況と事業者が抱える課題を整理すること。【方法】2018年度に認証され,2020年更新対象となった外食55,中食24計79事業者を対象とした。2020年1~2月,Webフォームを用いて,更新意向の他に,スマートミールの提供状況と課題をたずねた。他に,認証時の情報から,応募部門,認証回,店舗の場所,星の数の情報を用いた。量的データの結果は,度数分布で示し,自由記述の回答は,コード化の後,類似する内容をまとめ,カテゴリ化した。【結果】79事業者を解析対象とした(解析対象率100%)。70.9%(n=56)の事業者が,更新すると回答した。項目に回答した49の更新事業者の63.3%(n=31)が【メニューに対する肯定的な評価】など,顧客からの反応が「あった」と回答した。また,71.4%(n=35)の事業者が認証前後の売上げに「変化なし」と回答したが,81.6%(n=40)の事業者が認証のメリットがあったと回答した。40.8%(n=20)の事業者が【メニューに関する課題】などを感じていた。【結論】外食・中食事業者の認証制度への応募促進と認証継続の支援には,メニュー開発やコスト削減に関する課題と,スマートミールの認知度向上など普及啓発に関する課題の解決が必要だと示唆された。
著者
頓所 希望 赤松 利恵 齋木 美果 小松 美穂乃 井邉 有未 渡邉 紗矢
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.46-52, 2021-02-01 (Released:2021-04-05)
参考文献数
26

【目的】外食産業の食品ロスは食品産業で最も多く,およそ半分が食べ残しである。本研究は,健康的な食環境整備と食べ残し削減の取組を促進するため,外食事業者の食べ残し記録の取組状況と提供量や食べ残しに対する態度を検討した。【方法】2019年5月に実施した外食事業者を対象としたインターネット調査で得た398人のデータを利用した。「食べ残し記録」の取組は「計測・記録」群,「目測・記録」群,「目測のみ」群,「把握なし」群の4群とした。属性,食べ残しの有無,食品ロス削減の取組状況,提供量と食べ残しに対する態度を「食べ残し記録」の取組4群で比較した。態度は,「提供量は食べる量に影響する」などの7項目を質問し,「肯定」「否定」の2群とした。各質問項目の群別比較は,χ2 検定を用いた(有意水準5%未満)。【結果】「計測・記録」群11人(2.8%),「目測・記録」群52人(13.1%),「目測のみ」群232人(58.3%),「把握なし」群103人(25.9%)であった。4群間で属性などを比較した結果,「計測・記録」群は,従事年数が長く(p=0.009),食品ロス削減の取組を行い(p<0.001),量より味を重視する態度をもっていた。【結論】食べ残しを計測し記録している外食事業者は5%未満であり,その事業者は従事年数が長く,食品ロス削減の取組を行っており,適量提供に対して望ましい態度をもつことが示唆された。