著者
馬路 泰蔵
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.129-138, 1988 (Released:2010-04-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1

下宿している大学生男女各13人の3週間の食生活について, 自炊の仕方を中心に調査し, 以下の結果を得た。1) 男性は女性より自炊回数が少なく, 欠食・外食回数が多かった。この食事方法の男女差は, 主として朝食における差によるもので, 欠食はそのほとんどが朝食に現れた。また, 2/3以上の食事が自炊される時は, 欠食がほとんど現れなかった。したがって, 欠食の解消には自炊が必要なことが示された。2) 自炊を多く行うには, 調理能力が高く, 多種類の食品を用いて料理を自分で作れることが必要であると示唆された。3) 自炊回数は, 1食当たりの食品数との相関が強かったが, 食品組み合わせが良好になることとの関係はやや弱かった。4) 自炊回数の少ない対象者は, 非調理の料理または炒め物のような調理の簡便な料理に頼りがちであった。5) 基本調味料および混合・変形器具の所有数は自炊回数との関係が強いことから, 自炊の頻度が調味料や器具の所有に影響することが示された。6) 自炊が少なく, 欠食・外食が多い場合には, 嗜好飲料器具の所有数が多かった。この結果は, 自炊の少ない下宿学生は嗜好飲料で満足を得ようとする意向が強いことを示唆するものである。
著者
小松 美穂乃 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.171-178, 2020-08-01 (Released:2020-09-26)
参考文献数
29

【目的】栄養成分表示の正しい活用を目指し,数値計算が必要な栄養成分表示の読み取り問題を用い,表示理解も含めて栄養成分表示の活用状況を分類し,その特徴を検討する。【方法】2014年2月に消費者庁が実施した「栄養成分表示に関する消費者庁読み取り等調査」に回答した20歳以上の男女6,000人のデータを用いた。栄養成分表示の参考状況等の回答に不備がなかった者4,623人を解析対象者とし,活用状況を3群(「参考・理解群」「参考・非理解群」「非参考群」)に分類した。3群の属性をχ2 検定,食物選択動機を多項ロジスティック回帰分析(属性で調整)により比較した。【結果】「参考・理解群」は1,889人(40.9%),「参考・非理解群」は1,105人(23.9%),「非参考群」は1,629人(35.2%)であった。表示を参考にしているが,正しく読み取れなかった「参考・非理解群」には,女性,60歳以上,低学歴の者が多く,食物選択動機では「参考・理解群」と比べて,低カロリー(オッズ比(95%信頼区間):1.33(1.14~1.56))を重視し,おいしさ(0.47(0.32~0.68))を重視していなかった。【結論】数的思考力が高い日本でも,栄養成分表示の読み取りは課題であった。今後,栄養成分表示の理解度の詳細を把握すると共に,表示を読み取るスキルの向上やおいしさ等,食の全体的な価値への関心を高める教育が必要であると示唆された。
著者
湯面(山本) 百希奈 是兼 有葵 高木 絢加 新屋 奈美 落合 なるみ 能瀬 陽子 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.152-162, 2020-08-01 (Released:2020-09-26)
参考文献数
13

【目的】フィリピン共和国では,2016年の教育改革でカリキュラムに健康(栄養の内容を含む)が追加されたが,指導案や教材に乏しく栄養の授業は十分に行われていない。そこで同国の栄養の授業推進に資することを目的として,日本の栄養教諭課程学生3名が中心となり同国内関係者と協力して現地小学校で栄養の授業を実践した。【方法】PDCAサイクルに基づき実施した。①Plan:アセスメントで文献調査とフィリピン共和国ボホール州タグビララン市現地調査を行い,栄養課題抽出後「栄養バランスの是正」を優先課題に決定し,学習指導案と教材を英語で作成した。関係者と現地で協議し修正とスタッフ研修を行った。②Do:同市立A小学校2年生1クラス(32名)で,3G FOODS(3食品群)でバランスを学ぶ栄養の授業を単回実施した。③Check(経過・影響評価):授業終了時に,児童の授業満足度と理解度を質問紙とワークシートで調べた。同時に,授業参観者(現地教師・JICA隊員等)による授業評価(現地のカリキュラムや児童への適合度)を実施した。④Act:評価結果を関係者と共有した。【結果】児童の授業満足度(楽しかった)は100%,理解度(ワークシートの問題への正答率)は91%と高かった。授業参観者による授業評価では,授業,内容ともに同国の教育カリキュラムや児童の理解度等のレベルに適していると評価され,今後活用したいとの意見も得られた。【結論】結果より,フィリピン共和国の栄養の授業推進につながる実践ができたと考えられる。
著者
駿藤 晶子 山本 妙子 吉岡 有紀子 硲野 佐也香 石田 裕美 村山 伸子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.143-151, 2020-08-01 (Released:2020-09-26)
参考文献数
17

【目的】本研究は,日本において,世帯収入と小学生の子を持つ保護者の食料品へのアクセスも含めた食生活状況との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】東日本4県の4地域(6市村)の19小学校に在籍する小学5年生(10~11歳)の保護者のうち,同意が得られた1,231名を対象に質問紙調査を実施し,そのうち920名を解析の対象者とした。世帯収入が貧困基準以下の群(低収入群)とそれ以外の群(低収入以外群)に分け,朝食を食べる頻度,家庭での食品の使用頻度,子どもの食事に関する項目,食料品の入手や買い物に関する項目,時間的なゆとりの実感,地域での子育てに関する項目と世帯収入との関連について,χ2 検定またはFisherの正確確率検定を用いて検討し,その後,各項目を目的変数とし,説明変数は世帯収入として二項ロジスティック回帰分析を行った。【結果】多変量解析の結果,低収入群は低収入以外群に比べて,子どもの健康維持に適した食事の量とバランスがわからないといった食知識がない者,経済的な理由もしくは買い物が不便であるという理由で生鮮食品や必要とする食物の入手が困難になる者,時間的なゆとりを感じていない者が多かった。【結論】小学生の子を持つ保護者は,世帯収入が貧困基準以下であると,子どもの健康維持に関する食知識がない者,経済的な理由もしくは買い物が不便なために食料品の入手が困難である者,時間的ゆとり感がない者が多いことが明らかになった。
著者
布川 美穂 佐藤 靖子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.163-170, 2020-08-01 (Released:2020-09-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1

【目的】中学生を対象に牛乳に関する短時間教育を実施し,知識理解と牛乳飲用意志向上を含む意識変容を検討した。【方法】2017年8月から9月,中学1年生561名を対象に学校給食の牛乳に関する3分間の短時間教育(以降 3分教育)を実施した。3分教育は給食の時間等に誰でも簡単にできる口頭伝授の方法を用いた。その後,自記式質問紙にて学校給食牛乳に関する知識と意識調査を行い,7項目の質問項目では男女別のデータをχ2 検定,自由記述ではKJ法を用いて検討した。【結果】3分教育を受け,男子89.3%,女子93.5%の生徒が学校給食の牛乳に対して新しい知識を得ることができ,男子90.4%,女子93.8%の生徒が今後の教育を希望すると回答した。今後も毎日飲用したいと回答した生徒は,男子85.6%,女子73.5%であった。【結論】中学1年生に実施した3分教育においては,給食の牛乳に対する新たな知識を伝えることが可能であったが,今後も毎日飲用したいという意志向上の効果は把握できなかった。しかし,3分教育の継続希望が多かった結果より,継続的な教育の実施と,牛乳飲用意志向上を含む意識変容との関係性を検討していく必要が考えられた。
著者
石田 裕美 菊池 正一
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.139-145, 1991 (Released:2010-04-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

成人女子8人 (21~25歳) を対象に, 強制選択3滴法と一対比較強制選択全口腔法を用いて, 塩化ナトリウム水溶液の検知閾値と認知閾値の測定を行い, 測定方法間の比較及び閾値の時刻による変動を検討した。1) 滴下法による測定の幾何平均値 (標準偏差) は, 検知閾値10.3(2.8)mmol/l, 認知閾値28.6(1.9)mmol/l, 全口腔法によるものは, 検知閾値4.9(2.5)mmol/l, 認知閾値16.0(1.7)mmol/lとなり, 両閾値とも全口腔法のほうが有意に低値を示した。2) 滴下法, 全口腔法ともに閾値の時刻による変動は認められなかった。3) 閾値の個人差が認められ, 測定方法間の Spearman の順位相関係数は, 検知閾値rs=0.92(p<0.01), 認知閾値rs=0.90(p<0.01)と有意であった。また測定方法間に, 検知閾値, 認知閾値共通の回帰式y=1.0x-0.3が得られた (x, 滴下法; y, 全口腔法, ともに対数変換値)。4) 方法別にみた両閾値の変動係数に有意差は認められなかった。
著者
宮崎 栄子 韓 立坤 奥田 拓道
出版者
日本栄養改善学会
雑誌
榮養學雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.183-187, 2003-06-01
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
青木 伸雄
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.65-72, 1988
被引用文献数
1
著者
山城 美琴 瀬古 千佳子 小谷 清子 和田 小依里 吉本 優子 東 あかね
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.102-111, 2020-06-01 (Released:2020-07-17)
参考文献数
34
被引用文献数
1

【目的】学童期からの循環器病予防のために,小学6年生を対象に果物摂取の増加をめざしたクラスター割付比較対照試験を実施し,果物の摂取に関する自記式質問調査(以下,果物調査)と尿中ナトリウム/カリウム(以下,尿中Na/K)比で評価すること。【方法】地域の保健,教育担当者と大学が連携して食育プログラムを企画した。2017年7月に京都府船井郡京丹波町の小学校全5校の6年生104人(介入群:男子21人,女子27人 対照群:男子31人,女子25人)を,食育を行う介入群2校(48人)と対照群3校(56人)に割り付けた。介入群には45分の食育を各校1回実施した。果物調査は,食育前後,尿中Na/K比測定は食育2か月後に実施した。【結果】食育前の介入群と対照群の比較では,男子の行動変容段階の分布以外は有意差を認めなかった。食育後の介入群と対照群の比較では,果物摂取の週4日以上が,男子31.6%,11.8%(p<0.001),女子26.9%,0.0%(p=0.018),行動変容段階の維持期が,男子20.0%,6.3%(p=0.012),女子7.7%,0.0%であった(p=0.031)。尿中Na/K比は男女とも群間差がなかった。【結論】影響評価の果物摂取頻度と行動変容段階は改善したが,成果評価の尿中Na/K比には差を認めなかった。今後,食育内容の充実が望まれる。
著者
玉浦 有紀 赤松 利恵 藤原 恵子 西村 一弘 柄澤 美季 酒井 雅司
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.89-101, 2020-06-01 (Released:2020-07-17)
参考文献数
21

【目的】高齢者の社会的フレイル改善で重要視される「社会参加」に焦点を充て,参加状況とその背景にある実態(課題・ニーズ)を把握する。【方法】都内1地域の集合住宅839世帯を対象に,自己記入式質問紙調査を実施した。質問紙では,世帯構成(属性),社会参加状況,日常生活動作(activities of daily living: ADL),社会的フレイル状況(ソーシャルサポート)の評価に加え,これらの回答理由と現状改善に向けた要望を自由記述で求めた。解析は,65歳以上が居住する世帯の社会参加状況で,ADLやソーシャルサポートに相違があるかをχ2 検定,又はFisherの正確確率検定で検討した。また,社会参加に関する課題・ニーズを,自由記述の回答から,質的記述的検討で整理した。【結果】世帯構成を含む回答を得た281世帯(有効回答率33.5%)の内,65歳以上が居住する世帯は224世帯(79.7%)であった。社会参加状況(地域の組織・活動との関わり)で,「関わりたいが関われない」「関わりたくない」と回答した世帯(37.0%)は,ADLやソーシャルサポートで,不安や課題を有する割合が高かった。これらの世帯では,「体の不調(体調)」や「加齢に伴う体力・気力低下,不安」など身体的フレイルを疑う状況がうかがえた。【結論】社会的フレイル状況の改善には,身体的フレイルの存在も踏まえた評価と介入が望まれる。
著者
松本 麻衣 岡田 知佳 岡田 恵美子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.121-130, 2020-06-01 (Released:2020-07-17)
参考文献数
22

【目的】都道府県健康増進計画は健康増進法に基づき定められている。2018年に健康日本21(第二次)の中間評価が実施され,結果が公表された。しかし,都道府県の健康増進計画の目標項目及び中間評価の状況については不明である。そこで,各都道府県の健康増進計画の目標設定状況,中間評価の結果,中間評価後の目標設定状況についてまとめることとした。【方法】各都道府県の健康増進計画及びその中間評価に関する情報は,各自治体のホームページから,2019年5月31日までに公表されている情報を入手した。【結果】42都道府県において中間評価の結果が公表されていた。健康日本21(第二次)で設定されている項目の中で「食塩摂取量の減少」,「野菜と果物摂取量の増加」,「睡眠による休養を十分にとれていない者の割合の減少」,「成人の喫煙率の減少」の4項目は,全都道府県で設定されていた。また,44都道府県で独自の目標項目を設定していた。中間評価において,健康日本21(第二次)で設定されている目標項目のうち半数以上の都道府県で改善がみられた項目数は24項目であった。また,中間評価後に目標設定を変更していない都道府県が多かった。【結論】各都道府県において,現状及び実現可能性を踏まえた上で,計画を実施し取り組んでいた。今後も,都道府県ごとに課題に対する目標項目の設定及び目標値達成に向けたモニタリングが実施されることが期待される。
著者
木林 悦子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.112-120, 2020-06-01 (Released:2020-07-17)
参考文献数
35

【目的】中学生の朝食欠食者における食生活改善への準備性からみた変容ステージと食事摂取状況の特徴について明らかにすること。【方法】兵庫県の公立中学校(2校)に在籍する2年生325名を対象とした。朝食欠食者は,「朝食を毎日食べる」の質問に対し,二者択一で回答させ,変容ステージは,Transtheoretical Modelに基づいた5段階の選択肢から決定した。食事摂取状況には,半定量食物摂取頻度調査票を用いた。朝食欠食と変容ステージの関連は,従属変数を朝食欠食の有無,独立変数を変容ステージ,性別と家族構成を調整因子として二項ロジスティック回帰分析を行った。【結果】朝食欠食者の変容ステージが前熟考期の割合は45.2%であった。食事摂取状況では,朝食欠食者において,男子では脂肪エネルギー比率が高く(p=0.017),女子ではカルシウム摂取量が低くなり(p=0.013),朝食欠食の有無との間に有意な関連が認められた。二項ロジスティック回帰分析をした結果,前熟考期における朝食欠食のオッズ比(95%信頼区間)は,準備・実行・維持期を基準として,2.61(1.02~6.71)と有意に高かった。【結論】中学2年生の朝食欠食者において,男子では脂肪エネルギー比率が高く,女子ではカルシウム摂取量が低いことが示唆された。また,食生活改善への準備性からみた変容ステージが前熟考期であることと朝食欠食には関連があることも示唆された。
著者
佐々木 敏 柳堀 朗子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.327-338, 1998-12-01 (Released:2010-11-26)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

Cardiovascular disease, which progresses by many risk factors with their interactions, has different causes at an individual level. The strategy required against it is also different among the subjects. An assessment of a patient's lifestyle in detail and strategy focused on the specific problems should, therefors, be performed. However, the methods to assess lifestyle in detail and to use the results for patient education have not yet fully been established for the health education programs carred out in Japan. A health education program against hypercholesterolemia, which is one of the cardiovascular risk factors, also has the same problem. A self-administered diet history questionnaire (DHQ) was used to assess dietary habits, especialy nutrient intake, at an individual level and the results applied for brief dietar ycounselling, in addition to conventional group-education during a 4 -month health education program performed in Hikone city, Shiga prefecture, Japan. A control group with only con-ventional group-education was established for comparison. After the program had been completed, statistically significant favorable changes in the intake level of saturated fatty acids, P/S rati, and Keys score were apparent for only the case group. The cholesterol intake level also declined, although no statistically significant difference was apparent between the groups. There was no significant change in any other nutrients in both groups. The results indicate that an individual dietary assessment and brief counselling based on DHQ might be effective for dietary modification with a community-based health education program in which group-education has normally been used.
著者
大野 公子 野澤 美樹 伊藤 早苗 佐藤 理恵子 石田 裕美 上西 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.57-65, 2020

<p>【目的】中学1年生女子における鉄欠乏を横断的に把握し,鉄欠乏のリスク因子を明らかにして,鉄欠乏の予防に役立てることを目的とした。</p><p>【方法】我々は,都内にある私立中高一貫校において,身体組成,血液検査等を継続して実施している。本研究の解析対象者は2012~2017年度に入学した中学1年生女子715名のうち,本研究で使用する全てのデータに不備のない493名である。調査項目は,身体組成,血液検査結果,食物摂取頻度調査,日常生活に関するアンケートとした。なお血清フェリチン 12 ng/m<i>l</i>未満を鉄欠乏群, 12 ng/m<i>l</i>以上を正常群として解析を行い,二項ロジスティック回帰分析を用いて鉄欠乏のリスク因子を検討した。</p><p>【結果】正常群に比べ,鉄欠乏群は肥満度,体脂肪率,体脂肪量,初経発来者率が有意に高値で,初経後経過月数が有意に長かった(<i>p</i><0.05)。正常群に比べ,鉄欠乏群は魚や肉を昼食に「食べない」と回答した者の割合が有意に高く,自分の体型に「満足している」と回答した者の割合が有意に低かった(<i>p</i><0.05)。初経発来してない者に比べ,発来している者は鉄欠乏のリスクが9.44倍高く,魚や肉を昼食に「食べない」者に比べ,「普通に食べる」「たっぷり食べる」者は鉄欠乏のリスクが0.28倍,0.09倍それぞれ低かった(<i>p</i><0.05)。</p><p>【結論】中学1年生女子の鉄欠乏を予防するためには,体外への鉄損失量を食事で補うことが必要であり,鉄欠乏のリスクは,昼食に肉や魚を食べる者において低いことが示唆された。</p>
著者
小切間 美保 中西 朋子 林 芙美 大久保 公美 北島 幸枝 掃部 美咲 鈴木 志保子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.Supplement, pp.S70-S77, 2019-12-01 (Released:2020-03-25)
参考文献数
10

【目的】多様な職域に所属している管理栄養士が,現在の仕事で必要と考える資質・能力について調査し,職域別,年代別の分析をもとに,求められる資質・能力について検討した。【方法】2017年7月に公益社団法人日本栄養士会会員で,年代5区分における8分野・領域の管理栄養士取得者203名を対象とした。調査は,現在の仕事で求められる資質・能力(19項目)の重要度について5段階で評価を依頼し,それぞれを点数化した。因子分析を行い,得られた因子の下位尺度得点を用いて,医療,行政,食育・教育,高齢者福祉,給食,企業,フリーランスの7職域別に比較した。また,年代別の検討も行った。【結果】因子分析により4因子が得られ,各因子の下位尺度得点は「職業意識」4.8点,「課題対応力」4.7点,「組織運営力」4.0点,「研究力」3.3点の順であった。職域別の特徴では,「課題対応力」が食育・教育に比べ企業,行政,給食で高かった。また,フリーランスは最も低い値であった。給食では,「組織運営力」の重要性が高かった。年代別の特徴では,50,60歳代で「課題対応力」「研究力」が他の年代より高く,「組織運営力」は,40歳代以下より50歳代で高い値を示した。【結論】管理栄養士の職域別,年代別に,必要な資質・能力の重要性が示され,管理栄養士に必要な資質・能力は,職域や年代によって特徴があることが示唆された。