著者
秋山 栄一 三重野 優子 衛藤 宏 伊東 祐信 桑原 寛
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.199-209, 1998-08-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
27

中等度~高度肥満症に対し, 固形食化VLCDの栄養組成を, 従来の380kcal, たんぱく質40gから460kcal, たんぱく質55gに調整し, その差異が肥満の治療効果に及ぼす影響を検討した。対象は, 当院の入院管理下において380kcalの固形食化VLCD (超低エネルギー食) を摂取した男12人, 女32人, 計44人 (平均年齢46.1±2.5歳), 及び460kcalの固形食化VLCDを摂取した男12人, 女27人, 計39人 (平均年齢45.1±2.3歳) とした。380kcal または460kcalの固形食化VLCDを当院の肥満治療プログラムに従って実施した結果, 標準偏差が大きかったため, 体重は両群とも4週間後に, BMIは2週間後及び3週間後から, それぞれ有意に減少した。入院時と入院4週間後で比較した総コレステロール, LDL-コレステロール, 中性脂肪は, 両群とも有意に低下した。HDL-コレステロールは380kcal群で有意に低下したが, 460kcal群ではやや減少傾向を示すものの, 有意の差は認められなかった。動脈硬化指数 ((総コレステロール-HDL-コレステロール)/HDL-コレステロール) は460kcal群において明らかな改善がみられた。窒素バランスは380kcal群に比し, 460kcal群において有意に改善した。血清鉄は両群とも4週間後に有意に低下したが, 1,200kcal食に維持すると正常範囲に回復した。両群間で4週間後の体重減少速度に著明な差を認めなかったにもかかわらず, 血清脂質, 動脈硬化指数, 窒素バランスにおいては, 460kcal 群に良好な結果が得られた。以上の結果から, 1日460kcalの固形食化VLCDは, 380kcalに比し適正な栄養量と思われる。
著者
黒谷 佳代 新杉 知沙 三好 美紀 瀧本 秀美
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.Supplement, pp.S50-S59, 2020-12-01 (Released:2021-02-16)
参考文献数
31

【目的】 食育の推進に関連する法律,政策および活動について整理すること。【方法】 食育基本法,食育推進基本計画,都道府県および市町村における食育推進計画について情報をとりまとめた。【結果】 食育基本法は,国民が生涯にわたって健全な心身を培い,豊かな人間性を育むことができるようにすることを目的として,2005年に制定された。食育基本法では,5か年計画の食育推進基本計画の作成及び実施による食育推進を図ることが規定されている。2005年から2015年は,内閣府が食育の推進を図るための基本的な施策に関する企画,立案,総合調整の事務を担い,2016年以降は農林水産省が担当している。毎年,食育推進基本計画の推進状況について評価が行われている。第3次食育推進基本計画(2016~2020年度)では,21の目標値が設定され,共食や中学校における学校給食の実施,食品中の食塩や脂肪の低減に取り組む食品企業,伝統的な料理や作法等の継承,食品の安全性に関する項目が2019年現在達成されている。また,都道府県食育推進計画はすべての都道府県で作成,実施がされているものの,市町村の計画は未だ100%に達していない。【結論】食育基本法制定後,約15年間で食育推進計画によりいくつかの課題が改善したものの,朝食欠食などの課題が依然として続いている。COVID-19の影響で,人々の生活環境は急速に,そして劇的に変化した。国民の明るい未来の創出のために,食育推進に関わるすべての人々が食・健康課題への対応に尽力することが必要だろう。
著者
湯面 百希奈 土居 陽菜 髙山 祐美 能瀬 陽子 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.246-255, 2022-08-01 (Released:2022-09-17)
参考文献数
21

【目的】モンゴル国では,幼児のう蝕罹患率が9割以上と高い。そこで,同国幼児のう蝕予防用食育教材を開発し,現地幼稚園での実践と関係者による評価から,教材の利用可能性を検討することを目的とした。【方法】現地におけるアセスメントの結果より,優先課題を「う蝕予防のためのおやつの選び方と食べ方の知識が十分でないこと」に決定し,学習目標を「おやつの選び方・食べ方の知識習得」として,幼児向け演劇教材と保護者・教師向けハンドブック(モンゴル語)を開発した。公立A幼稚園5歳児クラス(52名)で単回の食育を行い,同日に園児の保護者と教師(13名)にハンドブックを配布した。教材の利用可能性(ニーズや幼児の理解度に合っているか,等)を検討するために,演劇教材では食育参観者7名(幼稚園教師,歯科医師等)に,ハンドブックでは幼稚園教師13名に質問紙調査を行った。また,録画映像の観察から食育実施時の園児の反応と参加度(学習への積極的態度)を評価した。【結果】演劇教材に対し,参観者の8割以上が教材名,内容共にニーズや幼児の理解度に合っていると評価し,今後も活用したいと回答した。ハンドブックに対しては,「保護者の役に立つ」「保護者へ配布したい」が共に84.6%と高かった。食育のまとめのクイズにほぼ全員の園児が回答し,参加度は良好と評価された。【結論】結果より,開発した教材は,現地関係者から一定の評価が得られたため,今後同国で利用できることが示唆された。
著者
北村 真理 中西 尋子 堀内 理恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.265-272, 2022-08-01 (Released:2022-09-17)
参考文献数
18

【目的】保育所から配付された印刷型,オンライン型の食育教材の家庭での活用状況を調べ,閲覧,活用に繋がる提供方法を検討する。【方法】A保育園に子どもが在籍する74家庭を対象とし,6種類の野菜の「含まれる栄養素」「保存方法」「新鮮さの見分け方」「レシピ」を紹介したオリジナルの食育教材をオンライン型と印刷型で配付した。介入期間は6週間とした。調査開始前にオリジナルの教材専用ホームページ(HP)へのアクセスに必要なQRコード,パスワードなどを記載した書面を園より配付し,閲覧をお願いした。1~3週目は前述のHPにオンライン型教材を1週間ごとに計3回アップした。4~6週目は印刷型教材を1週間ごとに計3回,園より配付した。介入終了後,配付した食育教材の活用状況についてのアンケート調査を実施した。【結果】教材の閲覧率は印刷型で93.7%,オンライン型で37.5%であった。印刷型教材の使用状況は理論値との間で有意な差がみられた。配付した食育教材の良かった点はオンライン型,印刷型ともに「閲覧のしやすさ」が一番多かった。印刷型教材の使いやすさは,紹介したすべての項目において,使いやすそう,使いやすかったと回答した人の割合が多く,理論値との間で有意な差がみられた。【結論】保育現場からの家庭向けに教材を作成し配付する際には,印刷型教材の利点を生かし提供することで,教材の閲覧率は高まると考えられた。
著者
信田 幸大 曽根 智子 衛藤 久美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.256-264, 2022-08-01 (Released:2022-09-17)
参考文献数
28

【目的】野菜摂取動機付けセミナー及び野菜飲料提供による環境サポートに加え,野菜摂取量推定装置による自己モニタリングを取り入れた栄養教育プログラムが,勤労者の野菜摂取量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】勤労者男女を対象に層別化無作為比較試験を実施した。解析対象者は145名(介入群74名,対照群71名,平均年齢42歳)であった。両群に,管理栄養士による野菜摂取動機付けセミナー及び野菜飲料提供による4週間の環境サポートを実施し,介入群のみに野菜摂取量推定装置の測定を試験開始から10週間実施した。介入前,環境サポート終了後,及び野菜摂取量推定装置の測定期間終了後に食物摂取頻度調査票を用いた野菜摂取量,及び野菜摂取に関する行動変容ステージを調査し,群内比較及び群間比較を行った。【結果】介入前と比較した野菜摂取量の変化量を群間で比較した結果,介入4週目では有意差は認められなかったが,介入10週目では対照群よりも介入群の方が,有意に変化量が大きかった。行動変容ステージは,介入群では介入前と比較して各期間で有意な前進が認められたが,群間差は認められなかった。【結論】動機付けセミナー及び環境サポートに加え,野菜摂取量推定装置による自己モニタリングを実施することで,環境サポート終了後も野菜摂取に関する行動変容ステージの前進が維持され,それに伴い野菜摂取量の減少も抑えられる可能性がある。
著者
江田 真純 河嵜 唯衣 赤松 利恵 藤原 葉子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.239-245, 2022-08-01 (Released:2022-09-17)
参考文献数
22

【目的】女子大学生の野菜摂取量増加に向けて,居住形態別に野菜摂取量,栄養素等摂取量を比較し,野菜摂取量と野菜摂取のセルフ・エフィカシー(以下,SE)の関連を検討すること。【方法】女子大学生218人を対象に行った簡易型自記式食事歴法質問票による野菜摂取量,栄養素等摂取量と,属性,野菜摂取のSEの回答を使用した。χ2 検定,Mann-WhitneyのU検定を用いて,居住形態別に属性,野菜,栄養素等摂取量を比較し,Spearmanの相関係数を用いて,野菜摂取量と野菜摂取のSEの関連を検討した。【結果】一人暮らしの者は80人(36.7%),家族・その他と同居の者は138人(63.3%)であった。一人暮らしの者は野菜,栄養素等摂取量のほとんどの項目で家族・その他と同居の者より摂取量が低かった(すべてp<0.05)。居住形態別にみた総野菜摂取量と野菜摂取のSEの関連は,一人暮らしの者では中程度の正の相関がみられ(rs=0.60,p<0.001),同居の者では弱い正の相関がみられた(rs=0.27,p=0.032)。【結論】一人暮らしの女子大学生の野菜摂取量と栄養素等摂取量は家族等と同居の者と比較し,低かった。また,野菜摂取のSEを高めることは,一人暮らしの者の野菜摂取量の向上に活用できる可能性が示唆された。
著者
山田 愼三 甲賀 正亥
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.172-178, 1954-08-20 (Released:2010-10-29)
参考文献数
2

The authors have invested during 5 years since April 1939-March 1944 into 1200-3800 pupils of Toyooka Aviation Academy about the seasonal fluctuation of principal food and the relation between the basal calorie, weight of body, temperature and moisture, that is:(1) The seasonal fluctuation of principal food (monthly meandeviation of principal food) indicates the wavy curve as follows:This curve is estimated to represent the normal appetite of healthy Japanese young men and we named it “Appetite curve”(2) The relation between the appetite curve and the temperature, moisture, temp. × moist is, the appetite decreases during summer when temperature and maisture ascend, and in winter it shows the contrary. The correlation the two is:Appetite curve & temp. γ=-0.91±0.0524Appetite curve & moist. γ=-0.80±0.0723Appetite curve & temp×moist. γ=-0.02±0.0313(3) The relation between the appetite curve and the weight of body is, the body weight decreases during summer when the principal food decreases and in winter it shows the two is:Appetite curve and weight of body. γ=+0.809±0.0693(4) The relation between the appetite curve and the basal calorie is:Both the principal food, the basal calorie are low in summer and high in winter. The rate of principal food is more remarkable than basal calorie.This fact shows the close connection between decrease of weight in summer and increase of weight in winter.(5) The above relation between the appetite curve and the weight of body, temperature, moisture, temp.×moist is as the following graph.
著者
鴨井 正樹 清水 能人 河内 光男 藤井 靖久 菊池 武久 水川 士郎 吉岡 薄夫 木畑 正義 三橋 正和
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.153-158, 1972-07-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
15
被引用文献数
5 5

The metabolism of orally administered maltitol was investigated and compared with clinical study, especially in two groups, one which exhibited diabetic type and the other non-diabetic type (contained intermediate type) in 50g glucose tolerance test.The following results were obtained. The variation curves of blood sugar, immunoreactive insulin, and non-esterified fatty acids levels effected by 50g maltitol tolerance test in both groups had been extremely lower than those effected by 50g glucose tolerance test.So, it was considered that maltitol per se had been hardly absorbable through intestinal wall, clinically as so with animal study. In the case of concurrent administration of 50g maltitol and 50g glucose, the absorption of glucose was inhibited, resulting in a lower increase of blood sugar level than in the case of an individual administration of 50g glucose.
著者
吉村 亮二 野村 秀一
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.194-200, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
25

【目的】脂質栄養において脂質の吸収,輸送過程とリポたんぱく質の機能を理解,学修することは,食事療法の計画,治療食品の選択,さらに脂質異常症や動脈硬化の病態理解などのために極めて重要である。そこで本研究では,長鎖脂肪酸を多く含有する大豆油と中鎖脂肪酸を多く含有するカプリル酸-カプリン酸トリグリセライド(CCT)を用いて脂質の吸収,輸送経路とリポたんぱく質の機能について考察,学修できる学生実験の条件を明らかにすることを目的とした。【方法】7週齢の雄性Wistarラットへ45%エネルギー脂肪含有高脂肪食を与え,摂食量,飼料組成及び大豆油の比重から大豆油摂取相当量(ml)を算出した。その摂取量を参考に 1 ml/100 g体重の割合で水道水,大豆油あるいはCCTを経口ゾンデにより摂取させ,3時間後に採血し,血漿を調製した。血漿の性状を確認し,トリグリセライド(TG)測定,セルロースアセテート膜電気泳動によるリポたんぱく質の検出を行った。【結果】水道水,CCT群の血漿は透明であったが,大豆油群は白濁した乳び血漿であった。大豆油群は血漿中TG濃度の上昇,およびリポたんぱく質のカイロミクロンの増加が確認されたが,CCT群では観察されなかった。【結論】本研究により,長鎖脂肪酸を多く含有する大豆油および中鎖脂肪酸を多く含有するCCTの吸収,輸送過程とリポたんぱく質の機能を目で見て学修できる実験条件が明らかとなった。
著者
新保 みさ 尾関 彩 草間 かおる 中澤 弥子 笠原 賀子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.177-184, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
10

【目的】本報告の目的は,管理栄養士養成課程におけるオンラインによる海外プログラムについて報告し,その評価を行うこととした。【活動内容】長野県立大学健康発達学部食健康学科の2年生30名に10日間のオンラインによる海外プログラムを実施した。研修先はニュージーランド(以下,NZ)で,プログラムの内容は英語,専門分野(Nutrition 1:NZの伝統菓子の講義・調理実演や調理実習,Nutrition 2:NZの管理栄養士とのセッション,Nutrition 3:栄養の基礎知識・NZの食文化や食生活指針等に関する講義),その他(学生交流など)などだった。プログラム終了後,目標達成度,国際的な視野の向上,NZの栄養・食の課題を説明できるか,海外プログラムの満足度を調査した。【活動成果】全日程に出席した者は27名(90%)だった。調査の回答者は26名(87%)で「海外の栄養士・管理栄養士の活動の現状を説明できる」という目標を達成できた・ほぼ達成できたと回答した者は23名(88%),オンラインによる海外プログラムに満足した・少し満足したと回答した者は23名(88%)だった。満足度に影響したことには現地の学生等との交流や調理実習や試食等の体験をあげた者が多かった。【今後の課題】今回実施したオンラインによる海外プログラムでは,機材や人員,時差,通信のトラブル等の課題があったが,プログラムの目標達成度や満足度は高かった。
著者
頓所 希望 赤松 利恵 小松 美穂乃
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.169-176, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
26

【目的】本研究は,飲食店における健康な食環境整備の推進を目指し,健康な食事は売れないと考える飲食店経営者の特徴および健康な食事提供に対する障壁と健康な食事に対する信念を検討した。【方法】2019年5月に外食事業者を対象にインターネット調査から得た387人のデータを用いた。健康な食事は「売れる」「売れない」の2群とし,対象者および店舗の属性の比較にはχ2 検定,健康な食事の提供に対する障壁と健康な食事に対する信念はMann-WhitneyのU検定,障壁と信念の関係はSpearmanの順位相関係数を用いて検討した(有意水準5%未満)。【結果】「売れる」群240人(62.0%),「売れない」群147人(38.0%)であった。「売れない」群は,「売れる」群に比べ,利用客の8割以上が勤務者の店舗(p=0.037),利用客に男性の方が多い店舗が多く(p=0.001),健康な食事提供は「商品単価が上がる」「味が落ちる」「作業効率が悪い」「ボリューム感がなくなる」と考える得点が高かった。健康な食事に対する信念は,「低エネルギー・低脂質・減塩」の得点が高かった(p<0.001)。【結論】健康な食事を売れないと考える飲食店経営者は,健康な食事に対して不合理な信念をもち,これらの信念は,各飲食店の顧客の特徴に影響されている可能性が示唆された。
著者
赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.185-193, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
18

【目的】飲食店と連携した食環境整備の推進を目指し,飲食店経営者を対象に,健康日本21の認知度および活用,目標「適切な量と質の食事をとる者の増加」に関する取組の実施状況を検討した。【方法】2019年5月インターネット調査会社のモニターである飲食店経営者412人を対象に,健康日本21の認知度および活用,健康日本21(第二次)の「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事をとる者の増加」「食塩摂取量の減少」「野菜と果物の摂取量の増加」の目標の取組の実施状況を調べた。実施状況は得点化し,Mann–WhitneyのU検定,Kruskal-Wallis検定を用い,対象者,店舗の属性,「健康日本21の認知度と活用」の回答で,得点を比較した。【結果】ハレの日の食事としての利用が多い店舗経営者25人を除いた387人(解析対象率93.9%)を対象とした。61.2%(237人)が健康日本21を「聞いたことがない」と回答し,これらの者の取組の実施状況の得点は低かった(p<0.001)。また,ファストフード店や小規模企業者の得点も低かった(各々p=0.002,p=0.007)。【結論】飲食店経営者の「健康日本21」の認知度は低く,認知度が低い飲食店経営者の店舗では,健康日本21(第二次)の目標に関する取組の実施も低かった。「健康日本21」の認知度を高め,外食産業と協働して進めていく方法の検討が必要である。
著者
新杉 知沙 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.210-217, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
26

【目的】新型コロナウイルス感染拡大の影響による行動制限が長引く昨今の状況に鑑み,非対面式で実施可能な,妊産婦の健康的な食生活を促すオンラインツールを用いた介入研究について文献を整理した。【方法】文献データベース(PubMed)上で公表された論文のうち,「妊婦,インターネット介入,食生活」により作成した検索式を用いて文献検索を行った。【結果】包含基準により文献の精査を行ったところ,最終的に4件を採択した。研究対象者は健康的な単胎妊婦や,妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群の既往歴のある女性であった。アウトカム指標により介入時期が異なり,妊娠中の体重増加量過剰割合の減少を目的とした研究では妊娠初期・中期に,産後の体重維持を目的とした研究では妊娠後期や産後に実施されていた。介入内容としては,健康的な生活習慣を促進することを目的とした個別のオンライン教育プログラム,公的機関等による情報提供,専門職からの食事指導,さらに参加者同士の交流が実施されていた。オンラインツールを用いた介入により,産後の体重減少,産後のウエスト周囲径の減少,健康な食事に対する自己効力感の向上がみられた。【結論】妊産婦を対象とした食生活に関するオンラインツールを用いた介入により母体転帰との関連が示唆された。一般向けにわかりやすく正確な情報が集約されたオンラインツールの拡充やそれらの効果検証を含めたさらなるエビデンスの蓄積が求められる。
著者
木村 宣哉 小林 道 杉村 留美子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.158-168, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
32
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,地域住民におけるヘルスリテラシーと食品群別摂取量及び栄養素等摂取量の関連を明らかにすることである。【方法】研究の参加者は,2018年7~8月に北海道江別市在住の20~74歳の成人である。ヘルスリテラシーは相互作用的・批判的ヘルスリテラシー尺度を用いた。食品群別摂取量及び栄養素等摂取量は,妥当性が確認された簡易型食事歴質問票(BDHQ)を用いて評価した。研究の対象として合計1,607名(男性708名,女性899名)が選ばれた。参加者はヘルスリテラシースコアに基づいて四分位群に分類した。ヘルスリテラシーと食品群別摂取量及び栄養素等摂取量との関連は,共分散分析(ANCOVA)によって確認した。【結果】ヘルスリテラシーの高い参加者は,低い参加者に比べて,その他の野菜類摂取量が高く,Na/K比が低い傾向がみられた。加えて,男性では,ヘルスリテラシーが高い者は低い者に比べて総エネルギーと銅の摂取量が高かった。女性では,ヘルスリテラシーが高い者は低い者に比べて緑黄色野菜類,嗜好飲料類,カリウム,カルシウム,マグネシウム,鉄,亜鉛,ビタミンB1,ビタミンB2,ナイアシン,ビタミンB6,葉酸,ビタミンCの摂取量が高かった。【結論】ヘルスリテラシーの高さは,野菜類や複数の栄養素等摂取量と関連があることが示された。地域住民のヘルスリテラシーを向上させることは,野菜類摂取量の増加につながる可能性が示された。
著者
木林 悦子 中出 麻紀子 諸岡 歩
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.149-157, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
33

【目的】バランスの良い食事,朝食習慣,野菜摂取を含む健康な食事の習慣に関わる要因を包括的に明らかにする。【方法】平成28年度ひょうご食生活実態調査に回答した20~40歳代の720名(男性46%)を対象とした。健康な食事を構成する変数として,バランスの良い食事が1日2回以上,朝食習慣,1日の野菜料理の皿数を設定し,これに関わる要因として,生活習慣病予防のための食態度(エネルギー摂取量の調整,塩分制限,脂肪摂取量の調整,糖分を取り過ぎない,野菜をたくさん食べる,果物を食べる),健康維持の姿勢(適正体重の心がけ,栄養成分表示の活用),外食頻度を用いた仮説モデルを立て,共分散構造分析を行った。【結果】本仮説モデルにおいて,許容範囲の適合度が得られた(χ2=153.015,df=86,GFI=0.967,AGFI=0.940,CFI=0.974,RMSEA=0.033,AIC=293.015)。健康な食事の習慣には,生活習慣病予防のための食態度からの直接的な影響が示されず,健康維持の姿勢を経由して影響を及ぼし,標準化総合効果は,男性が0.40,女性0.41であった。また,男性では,外食頻度から健康な食事への標準化推定値が-0.17(p=0.021)の有意な負のパスが示された。【結論】健康な食事の習慣には,生活習慣病予防のための食態度に健康維持の姿勢が介在し,加えて男性では,外食頻度が悪影響を及ぼす可能性が示唆された。
著者
井邉 有未 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.286-292, 2021-10-01 (Released:2021-11-24)
参考文献数
25

【目的】高校生や成人では,咀嚼習慣と肥満の関連が知られている。本研究では,小・中学生を対象に咀嚼習慣と肥満の関連について学年区分別に検討する。【方法】港区教育委員会が実施した小・中学生対象の食育に関するアンケート調査のデータを使用した。体格,咀嚼習慣について,男女,学年区分別にχ2 検定を行った後,痩身傾向・標準体重と肥満傾向の2群に分類し,男女別に肥満と咀嚼習慣について,χ2 検定,ロジスティック回帰分析を行った。【結果】解析対象は,平成30年1月現在港区の小・中学校に通う計8,704人だった(解析対象率95.0%)。ロジスティック回帰分析の結果,未調整のモデル1,学年で調整したモデル2,学年,身体活動,朝食頻度,夜遅い食事,就寝時間,スマートフォン使用時間で調整したモデル3で,噛まない子どもは,噛む子どもに比べ,痩身傾向・標準体重より肥満傾向である可能性が示された[モデル1:男子のオッズ比2.17(95%信頼区間1.69~2.78),女子2.06(1.34~3.20);モデル2:男子2.14(1.67~2.75),女子2.04(1.32~3.16);モデル3:男子1.94(1.50~2.52),女子1.89(1.20~2.98)]。【結論】小・中学生において,よく噛まずに食べる咀嚼習慣は,学年や肥満に関連する生活習慣で調整すると,男女とも肥満に関連していた。
著者
奥野 和子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.19-24, 1976-01-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
13
被引用文献数
3

A clear relationship between gross sugar consumption and the number of dental caries cases has been found out by many workers. However, this kind of information does not help the activities of dentists or nutritionists toward the prevention of dental caries. A practical strategy to this requires detail information on the amount of sugar consumption due to the specific food eaten by a given group.In this paper, Decayed, Missing, Filled Teeth (DMF) and sugar consumption are related through food and dental surveys of 1058 boys and 1597 girls belonging to different age groups in junior and senior high schools.Findings obtained are as follows:(1) The girls' mean DMF increases sharply and consistently with age. The mean DMF of boys does not increase so sharply as girls but comes to flat at an age of the first year of the senior high school.(2) In the same age group, the sugar intake of girls from soft drinks and sweets is much higher than that of the boys. This may be one of the main reasons why the mean DMF of girls is larger than that of boys. Therefore, dentists or nutritionists should take more efforts to improve food practice of girls.
著者
小谷 清子 高畑 彩友美 瀬古 千佳子 吉井 健悟 東 あかね
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.105-115, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
50

【目的】地域の若年期からの循環器病予防をめざして,乳児の父母の推定1日尿中食塩排泄量(以下,食塩排泄量)および尿中Na/K比を評価し,食習慣との関連を明らかにすること。【方法】2015年10月から1年間の,京都府内3市町の全ての乳児前期健診対象児393人の父369人,母386人,計755人を対象とした。早朝第1尿から食塩排泄量と尿中Na/K比を算出した。自記式食習慣調査は食物摂取頻度と減塩意識の13項目で,これらと食塩排泄量および尿中Na/K比との関連について,単変量解析と多変量解析を行った。解析対象は,父166人(年齢中央値34.0),母200人(同32.0),計366人(解析率48.5%)であった。【結果】食塩排泄量(g/日)(中央値)は父10.2,母9.9,尿中Na/K比(mEq比)(中央値)は父4.0,母3.9であった。多変量解析の結果,食塩排泄量と食物摂取頻度については有意な関連がなく,減塩意識ありとの関連は父のオッズ比0.83(95%信頼区間0.44~1.60),母のオッズ比0.55(0.28~1.09)であった。尿中Na/K比と食物摂取頻度については母において有意な関連は認めなかった。父において果物摂取と有意な正の関連を認めたが,その解釈は困難であった。【結論】乳児の父母の食塩排泄量と尿中Na/K比を評価し,これらと食物摂取頻度や減塩意識に有意な関連を認めなかった。
著者
小島 唯 村山 伸子 堀川 千嘉 田中 久子 森崎 菜穂
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.116-125, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1

【目的】新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言による学校休業を含む学校給食の実施有無と簡易給食の実施状況および簡易給食の提供内容の実態を把握する。【方法】全国の公立小学校および中学校から無作為抽出した479校を対象とした。2020年4~10月の学校給食実施状況を日ごとに回答,簡易給食期間の献立の提出を依頼した。【結果】解析対象校は205校であった(適格率42.8%)。簡易給食を1日以上実施していた学校は55校であった(実施率26.8%)。給食実施なし日数,簡易給食実施日数の中央値(25, 75パーセンタイル値)は各々50(43, 56)日,10(5, 16)日であった。緊急事態宣言の期間が長い地域で,給食実施なし日数が多かったが,簡易給食実施日数に差はみられなかった。解析対象献立は,延べ871日分であった。簡易給食実施初期の献立では調理された料理数が少なく,デザートなどの調理や配膳の不要な単品数が多く,主菜,副菜の出現頻度が低かった。【結論】新型コロナ感染拡大による学校給食の実施中断や簡易給食の実施により,子どもの食事状況に影響があった可能性が示唆された。簡易給食実施初期の献立では単品の提供が多く,簡易給食実施後期の献立では,主食・主菜・副菜を組み合わせた献立が提供されていた。