著者
小澤 正直
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.349-353, 2009-05-05

伏見先生は,"studies on the Foundation of Quantum Mechanics.I"(1937年)と題された論文において,現在,オーソモジュラー法則と呼ばれている,量子論理で普遍的に成立する基本的論理法則を発見された.これは,1960年代になって,当初,フォン・ノイマンによって基本的論理法則として提唱され,研究が進められたモジュラー法則に取って代わり,現在に至るまで量子論理研究の中心課題とされている.本稿では,バーコフとフォン・ノイマンが発見した量子論理の意義,モジュラー法則からオーソモジュラー法則への転換の背景,及び,この分野の発展と現状を概説する.
著者
花村 榮一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.688-696, 2005

1900年プランクは, 古典物理学では説明できない溶鉱炉中の光エネルギーの波長分布の謎を, 光量子仮説を導入して解決した.これが量子力学の誕生である.1905年この光の粒子性(光子)を用いて, アインシュタインは光電効果を説明した.光が波動と粒子の二面性を持つという非日常性は, ハイゼンベルグの不確定性原理で理解できた.しかし, 青色の1光子が赤色の2光子に分割されるパラメトリック過程で発生する2光子の量子もつれ合い(強い相関)は, 2つの光子を遠く離しても存在し続ける.このもう一つの非日常性を1935年アインシュタインらは指摘した.これも, 量子力学特有の非局所性として理解され, 最近は量子コンピューターと量子通信に使われようとしている.レーザー光の発明は光学と工学に革命をもたらし, 金属加工に用いられる一方で, 人類は10<SUP>-9</SUP>Kのオーダーの超低温まで原子系を冷却できるようになった.その結果, 原子系はボーズ・アインシュタイン凝縮やフェルミ凝縮を示して, 波動として振舞う.この百年の歩みはアインシュタインに負うところが大きかったが, 最近は日本からの寄与も大きくなりつつある.これらを概観する.
著者
綿引 芳之
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.251-255, 2010-04-05

最近提案された因果力学的単体分割を紹介する.これは従来の力学的単体分割を改良した新しい量子重力理論で,従来の力学的単体分割で曖昧に扱われていた因果性の問題を真面目に受け止め,過去と未来の定義可能な時空,つまり,因果性を持つ時空だけを扱った点に大きな特徴がある.特に,宇宙の分離と融合を認めた2次元時空の因果力学的単体分割は,弦の場の理論や行列模型によって表現することができ,それゆえ,数学的解析が可能な理論となる.
著者
竹内 外史
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, 1996-03-05
著者
宮原 ひろ子
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.340-346, 2015-05-05

2008年12月,太陽活動が約200年ぶりとも言われた太陽活動の低下を見せた.通常11年の周期で増減する太陽活動のリズムが乱れ,太陽表面での磁場活動や太陽総放射量が観測史上最低のレベルに達した.2009年1月に開始した第24太陽活動周期は2013年に極大を迎えたが,太陽表面の磁場活動の指標となる太陽黒点の数は,2001年の極大期の半分程度に低下した.太陽活動は今後どうなるのだろうか.17世紀の半ばから70年間にわたって発生した太陽活動の異常低下(マウンダー極小期)は再来するのだろうか.人工衛星による太陽観測と,樹木や氷床コアなどを使った長期的な太陽活動変動の復元の両面から研究が進められている.また,もしマウンダー極小期が再来するとすれば地球環境にどのような影響が出るのかも,社会にとって重要な問題である.こちらについては,気象観測と古気候学的な手法による研究から検証が進められている.太陽活動が地球に影響する経路はいくつか考えられる.日射量変動の影響,太陽紫外線の成層圏への影響,太陽宇宙線の中間圏への影響,そして銀河宇宙線の影響である.銀河宇宙線が気候に影響するプロセスは未解明な点が多いが,大気成分のイオン化を通じて雲活動に作用していると考えられている.1997年に銀河宇宙線と低層雲の被覆率に相関が見られるという驚くべき発表がなされて以来,その相関の検証や,チャンバー実験による物理プロセスの研究が進められている.地球に飛来する銀河宇宙線のフラックスは,宇宙線をシールドする太陽圏磁場や地磁気の強度などによって決まる.太陽圏とは,太陽表面から吹き出すプラズマと磁場の風(太陽風)が到達する領域のことである.太陽風は,太陽から約80天文単位(AU)のところで星間物質との相互作用により亜音速に減速し,最終的には太陽から120AUあたりにまで達していると考えられている.また,太陽圏の周辺の宇宙環境が変わっても,地球に飛来する宇宙線量は変化する.銀河宇宙線量の変動は本当に気候変動に影響するのだろうか.それについて1つの手がかりを与えているのは上述のマウンダー極小期である.太陽黒点が70年間にわたって消失している間,太陽圏環境が変化し,宇宙線フラックスが特異なパターンで変動していたことが明らかになったのである.その頃,地球は小氷期と呼ばれる寒冷化を経験しているが,実はその間,地球の気候は特徴的なパターンで変動を続けた.最近の研究で,その変動パターンが宇宙線の変動によって説明可能であることが示された.太陽圏を満たす磁場の大規模構造の変動によって宇宙線の変動パターンが決まり,そしてそれが気候変動を駆動する一要因になっている可能性が高いことが示されたのである.そのほか,地球史上のイベントと宇宙環境の変動に,強い相関関係があることも明らかになりつつある.地磁気強度と気候にも相関関係が見つかっている.宇宙線が雲活動に影響するプロセスは研究途上であるが,宇宙線は地球の変動に重大な役割を果たしている可能性が高い.地球は,大気,海洋,生物圏などのサブシステムから成る多圏複合システムで,それ自身複雑な内部振動を持つが,その気候システムを,太陽圏システムというさらに大きなくくりでとらえ直す必要性があることを示唆している.さらに言えば,太陽圏周辺の磁場環境あるいは放射線環境を含めた銀河系システムというさらに大きな視点での議論が必要であることも意味している.地球,太陽,太陽圏,宇宙線の物理を有機的に結び付け,地球史上の様々な未解明の変動を宇宙という視点でとらえ直すことで,その原因を究明することを目指しているのが「宇宙気候学」である.
著者
酒井 英行 齋藤 孝明
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.33-37, 2009-01-05

量子論の際立った特徴の一つに量子相関(もつれ合い,絡み合い)がある.アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼン(EPR)は,古典的描像に基づく局所実在論の観点からこの量子相関に基づいた量子論の不完全性を議論した.この古典描像と量子描像の対立は,いわゆるEPRパラドックスとして知られるものであるが,当初実験的な検証は不可能だと考えられていた.しかし約30年後にベルは,局所実在論による相関に関して不等式が成立することを発見し,このパラドックスが実験的に検証できることを指摘した.我々は,強い相互作用をするフェルミ粒子系である陽子対についてスピン偏極相関の高精度測定に初めて成功し,量子論に特有な非局所性を確認した.本稿ではその内容について述べるとともに,1980年代に行われたアスペらによる光子対による実験との違いについても簡単に紹介する.
著者
中務 孝 江幡 修一郎
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.243-247, 2012-04-05

金属を極低温まで冷やすと電気抵抗が無くなる超伝導現象は,電子対が凝縮することで引き起こされる量子現象として有名である.重い原子核中の陽子・中性子も,対凝縮によって超流動性を示すことが知られている.超流動核に光子を吸収させたり他の原子核を衝突させると,原子核の形状や対ギャップに様々な変化が誘起されると考えられるが,このような核反応を核子自由度から記述する数値計算は,計算量が膨大で実用性に乏しいと考えられていた.最近開発された「正準基底時間依存平均場理論」は,この計算量を大幅に削減することに成功し,重い原子核の複雑な反応メカニズムの解明に向けた重要な一歩になると期待される.
著者
香取 秀俊
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.754-758, 2002-10-05

現在の時間標準であるマイクロ波を基準とした光周波数の直接計測技術が確立した.この結果,クロック周波数が5桁高くより高い安定度が期待できる光領域の時間標準の実現や,それらの原子時計の時間揺らぎの評価が現実的な意義をもつようになった.本稿では,従来の単一イオントラップ光周波数標準と中性原子光周波数標準の特長を同時に実現可能な「光格子時計」のアイディアを,1次元光格子中のストロンチウム原子の分光実験を交えて紹介する.
著者
永山 国昭
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.582-585, 1992-07-05
著者
長崎 誠三
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.176-181, 1971-03-05