著者
鑄方 末彦 吉田 政治
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2-3, pp.141-149, 1940 (Released:2009-04-03)
被引用文献数
9 9

(1) The present paper deals with the study carried out by the writers on a new fungus which causes an anthracnose disease of jute.(2) The jute anthracnose affects the stems, leaves and pods of this crop and its presence in Kumamoto and Shizuoka Prefecture was first observed in 1938. In the next year it has been found in Aichi Prefecture.(3) The causal organism has been isolated and its pathogenicity has been proved by inoculation experiments. The incubation period is about three days.(4) As the fungus seems to be new to science, the name Colletotrichum Corchorum is proposed and a brief technical description is given, as follows:Colletotrichum Corchorum IKATA et TANAKA nov. sp.Lesions on stems, leaves and pods, brown to black, not sunken, definite in outline. Acervuli black, superficial, scattered; stroma patelliform, 100-350μ in diameter by 25-50μ high; setae several to abundant, originating from margin of stroma, yellowish brown to black and becoming lighter toward the apex, 2 to 5 septate, 36-117 μ long by 3.6-5.0 μ wide. Conidiophores simple, hyaline, arising from stroma, 15-35 μ long by 3-4 μ wide; conidia abundant, non-septate, hyaline, curved, bluntly tapered, oblong-fusoid to falcate-fusoid, 12-25×3.6-6.0μ, with 16-22×4μ as the most common size.HAB: Parasitic on stems, pods and leaves of Corchorus capsularis L.(5) The optimum temperature for growth of the fungus is 30°C.(6) The disease is seed-borne, the fungus mycelium exists in the seed and spores are adhering on the external part of seeds.
著者
廣岡 卓 石井 英夫
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.80, no.100, pp.S172-S178, 2014
被引用文献数
1

病害防除において,総合的病害虫管理(IPM)の基幹になるのは薬剤防除である。薬剤防除の歴史は,1800年代に使用が開始された石灰硫黄合剤やボルドー液を端緒に,病原菌の多くの生化学的作用点を阻害し保護的作用が主体の殺菌剤,いわゆる多作用点阻害剤で始まる。1960年代になり,病原菌の特異的な部位を阻害することによって病害防除効果を発揮する特異作用点阻害剤が導入された。特異作用点阻害剤は,浸透移行性があり予防および治療効果を併せ持つことが多いことから防除適期が広く,半世紀の間に殺菌剤の主流となった(Knight et al.,1997; Morton and Staub,2008)。殺菌剤は,企業の研究開発プロセスを経て最終化され,各国の農薬登録を取得した後に初めて農業生産者に使用される。ここでは,半世紀にわたる薬剤防除の動向を述べるとともに,(i) 殺菌剤市場,(ii) 作用機構による殺菌剤の分類,(iii) 薬剤防除の実例として,日本におけるイネいもち病および薬剤防除を取巻く諸問題,欧州におけるムギ病害,ブラジルにおけるダイズ病害,(iv)日本における殺菌剤耐性問題とその対策,について考察した。
著者
成田 武四 平塚 保之
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.147-153, 1959
被引用文献数
10

1) 1956年夏, 北海道各地に発生したトウモロコシの斑点性病害は従来未報告の不完全菌の寄生によることを認め, 正式にトウモロコシ褐斑病と命名した。<br>2) 本病は1956年以降発生が認められ, その分布は11支庁管内におよんでいるが, 日高, 胆振, 石狩, 渡島など北海道の西南部に発生が多く, 7, 8月寡照多湿のときに蔓延が著しい。<br>3) 本病はトウモロコシの葉片, 葉鞘, 苞葉, ときに茎などに径1∼3mm, ほぼ円形の病斑をつくるが, 病斑はしばしば癒合して大形となり, また径1mm以内の微細斑点として密集する。周縁褐色または紫褐色, 中央灰白色で, 周囲に淡黄色の暈が存在する。<br>4) 本病病原菌はトウモロコシの各変種, フリントコーン, デントコーン, スイートコーン, ワッキシーコーン, ポップコーンなどをおかすが, トウモロコシ以外のイネ科植物16種, マメ科植物2種には寄生しなかつた。<br>5) 本病病原菌の形態, 性質は <i>Kabatiella</i> 属の特徴と合致し, 本菌と既知の <i>Kabatiella</i> 属の菌種とを比較した結果, 本菌を新種と認め, <i>Kabatiella zeae</i> Narita et Y. Hiratsuka としてその標徴を記載した。
著者
廣岡 卓 石井 英夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.80, no.100th_Anniversary, pp.S172-S178, 2014 (Released:2014-12-27)
参考文献数
28
被引用文献数
1
著者
児玉 基一朗 赤木 靖典 髙尾 和実 難波 栄二 山本 幹博 秋光 和也 柘植 尚志
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.207-216, 2014

地球上に存在する糸状菌の大多数は,分解者として腐生的生活を送っている。その一方で,特定の糸状菌が生物学的に大きなコストをかけて植物寄生能力を進化させてきた要因は,宿主植物というニッチを占有することの利点にある。病原糸状菌の感染様式は,栄養関係の樹立に生細胞との相互作用を必要とする活物寄生菌(biotroph)から,感染成立過程において植物細胞を激しく加害し死に至らしめる殺生菌(necrotroph)まで多岐にわたる。その他,共生菌,あるいは感染過程の少なくとも一部において生細胞との相互作用が重要であるとされる中間型の寄生菌(hemibiotroph)なども存在する。このように多種多様な寄生様式のいずれも,相互作用における進化のほぼ最終的な形態として具象化されているのか,それとも単に理想的な最終型に収斂する過程の途上に現れた一つにすぎないのか,議論の分かれるところである。
著者
岡崎 博
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.314-320, 1975
被引用文献数
1 2

コロジオン膜被覆スライドガラス上に<i>Fusarium oxysporum</i> f. <i>raphani</i>の厚膜胞子懸濁液を滴下してその発芽率を調べた。厚膜胞子はpH4.0&sim;7.0の範囲では90%前後の高い発芽率を示した。厚膜胞子は,塩類溶液中の密度が2&times;10<sup>4</sup>個/ml以下のときは90%以上の発芽率を示したが,9&times;10<sup>5</sup>個/ml以上になると発芽率は1%以下に低下した。厚膜胞子の密度が高いときに生じる発芽率の低下は塩類溶液にグルコースを添加すると回復し,その添加効果は0.1mM以上であらわれた。<br>気相の酸素濃度が5%以下になると,塩類溶液中における厚膜胞子の発芽は減少しはじめた。この酸素の影響は培地にグルコースを添加すると緩和された。しかし気相を窒素で完全に置換すると,厚膜胞子の発芽率は培地中のグルコースの有無にかかわらず著しく低下した。<br><i>Fusarium oxysporum</i> f. <i>raphani</i>の菌糸懸濁液を入れたペトリ皿の気相で厚膜胞子の発芽試験を行うとき,発芽培地として塩類溶液を用いると,発芽は著しく阻害された。一方,この発芽阻害はグルコースを添加した塩類溶液を用いると認められず,飢餓培養した菌糸を用いると増大し,菌糸懸濁液にグルコースを添加すると消失した。<br>以上の結果をもとに<i>Fusarium oxysporum</i> f. <i>raphani</i>の菌糸が産生する揮発性物質,およびそれらの産生におよぼす炭素源の濃度について論じた。
著者
土崎 常男 與良 清 明日山 秀文
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.237-242, 1970
被引用文献数
5

1. ササゲおよびアズキにおいて,種子伝染性ウイルスと非種子伝染性ウイルスを用い,ウイルスの種子伝染と配偶子感染との関係を調べた。<br>2. 花粉伝染と胚のう伝染は種子伝染の起こるアズキ・モザイク・ウイルス(AzMV)とアズキ,ササゲ・モザイク・ウイルス(CAMV)とササゲの組合せでだけ起こり,種子伝染の起こらないキュウリ・モザイク・ウイルス-アズキ,CAMV-アズキ,サブクロ-バ・モットル・ウイルス-ササゲの組合せでは起こらなかった。<br>3. ササゲを親植物とした場合,種子伝染の起こるvirus-hostの組合せの場合だけ,検定植物への汁液接種により花粉からウイルスが検出された。しかし葯,子房からは,種子伝染しないvirus-hostの組合せでもウイルスが検出されることが,ササゲ,アズキのいずれを親植物としたときにも認められた。<br>4. 各種ウイルスに感染したアズキ,ササゲの雌しべ,雄しべ,花弁,葉につき,ウイルス濃度を比較した。一般に雌しべ,雄しべのウイルス濃度が花弁,葉より低い傾向がみられたが,種子伝染の有無とはとくに関係はなかった。次にCAMVに感染したササゲ,アズキの葯,子房のウイルス濃度を比較した。葯ではササゲの方がアズキよりもウイルス濃度が高かったが,子房ではその逆で,種子伝染の有無と葯,子房のウイルス濃度の間にとくに関係は認められなかった。<br>5. CAMV-ササゲ,AzMV-アズキの組合せで,開花期にウイルスを接種し,開花日別に分けて種子を集め,種子伝染の有無を調べた。その結果,ともに接種日から約20日以後に開花し,結実した種子だけに種子伝染が起こった。一方,CAMV-ササゲの組合せで接種後一定間隔の期日ごとに花粉,葯,子房,花弁からのウイルスの検出を試みた。子房,花弁では接種4日後から,葯では接種10日後から,花粉では接種17日後からウイルスが検出され,種子伝染にはウイルスの配偶子感染が必要であることが示された。
著者
挟間 渉 森田 鈴美 加藤 徳弘
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.p243-248, 1993-06
被引用文献数
2

キュウリの代表的なブルームレス台木として使用されている'スーパー雲竜'と, 従来から使用されブルームの発生が多い台木の'新土佐1号'を供試して, 褐斑病の発病推移を比較検討した。この結果, 褐斑病の発生は, ブルームレス台木への接ぎ木により著しく増加する傾向が認められた。この傾向は特にビニールハウス栽培において顕著であった。台木の違いによる葉中無機成分含有率を比較したところ, 必須元素の含有率に差異は認められなかったが, ブルームレス台木接ぎ木区のキュウリ葉ではケイ酸含有量がきわめて少なかった。さらに, ケイ酸無施用で栽培したキュウリは, ブルームレス台木栽培の場合と同様, 褐斑病に対する侵入阻止および病斑拡大阻止作用が低下する傾向が認められた。これらの結果から, ブルームレス台木への接ぎ木キュウリにおけるケイ酸の吸収阻害と褐斑病に対する病害抵抗性の低下との関連が示唆された。
著者
宮本 雄一
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.207-212, 1959
被引用文献数
1

1) 低温下 (0&sim;2&deg;C) で乾燥し, 無酸素下 (5&sim;10&deg;C) で貯蔵した, 病葉中のコムギ縞萎縮病ウイルス (WYMV) およびオオムギ縞萎縮病ウイルス (BYMV) はともに, 2年後においてもかなり強い感染力を示した。<br>2) 前報より引続き行つた実験の結果, 病土から分離濃縮された粘土部分 (<2&mu;) 粒子の病原性の強いことが, 播種試験および摩擦接種試験により, 再確認された。これらの粘土部分の粒子中には線虫類を全く認めず, また特記すべき頻度であらわれる糸状菌または細菌類を認めなかつた。さらにこの粘土フラクション中には, 根毛と判別できる植物の組織を認めなかつた。<br>3) 罹病植物汁液を粘土鉱物およびその他の土壌に吸着させ, 比較的高温下 (10&sim;15&deg;C) で貯蔵した結果, WYMVおよびBYMVはともに, 約8カ月後の次のシーズンまでわずかながらその病原性を維持した。<br>4) 以上の諸事実とこれまでの実験結果から, ムギ萎縮病ウイルスの土壌伝播機作を説明するためには, 必ずしも特定の微生物的媒介者あるいは罹病植物の残根の存在を必要とせず, 蛋白質を吸着し保護すると考えられる粘土部分の土壌粒子 (無機および有機のコロイドを含む) がこれらのウイルスを吸着して伝播者の役割を果しているものと考える。
著者
吉田 克志 大口 富三
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.76-82, 1999-02-25
参考文献数
18

ダイコン,アブラナおよびブロッコリーの子葉に熱処理を行い,病原性の異なる<i>P. parasitica</i> Pers. ex Fr.のダイコン(<i>Rs</i>),アブラナ(<i>Bc</i>),ブロッコリー(<i>Bo</i>)およびナズナ(<i>Cb</i>)分離菌4種類の分離菌を交差接種した。子葉に47.5&sim;50&deg;Cで30秒間熱処理を行って非親和性菌を接種した場合,アブラナ科蔬菜の3分離菌ではわずかながら,分生子形成が認められたが,Cb菌では分生子形成は認められなかった。感染部位の蛍光顕微鏡観察により,アブラナ科蔬菜の3分離菌を非親和性菌として接種した熱処理子葉では吸器形成細胞死や吸器の被覆化など植物の抵抗反応が顕著に抑制されていた。一方,<i>Cb</i>菌接種の場合には,熱誘導性の感受性は接種48時間に失われ,顕著な抵抗反応の回復が観察された。以上の結果から,<i>Rs</i>菌,<i>Bc</i>菌および<i>Bo</i>菌と<i>Cb</i>菌に対する植物の抵抗反応に著しい差異があることが確認され,これらの分離菌の病原性の差異が明らかになった。また,べと病菌の感染には植物の抵抗反応の抑制が必要であり,これは吸器の形成および発育によって制御されると考えられる。
著者
吉田 克志 大口 富三
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.315-322, 1998-08-25
参考文献数
22
被引用文献数
1

湿室ペトリ皿中のアブラナ科蔬菜子葉にダイコン,アブラナ,ブロッコリーおよびナズナから分離した<i>P. parasitica</i>を交差接種し,感染部位を組織化学的に観察することにより,その病原性を調査した。各分離菌は宿主植物と同属同種の植物上で盛んに分生子を形成したが(親和性),他種の子葉では分生子形成が認められなかった(非親和性)。交差接種を行った子葉感染部位をアルカリアニリンブルー蛍光観察法により調査すると非親和性の場合には,宿主の抵抗反応として,付着器形成以降の組織への侵入阻害,パピラによる吸器形成の阻害,シースによる吸器被覆化および吸器が形成された宿主細胞の壊死が観察され,べと病菌の生育は接種後48時間以内に停止した。これらの結果,べと病菌は段階的に発現する植物の抵抗反応をすべて抑制した場合に分生子形成に至ることが示唆された。また,Cb菌では供試したすべての植物種の子葉で他の分離菌に比較して強い抵抗反応が観察され,特に,パピラによって吸器形成が阻害される場合が多かった。RsおよびCb菌感染部位を組織化学的染色法を用いて観察したところ,吸器にはシースおよび吸器頸部にカロースの反応が認められた。パピラにはカロース,ポリフェノールの顕著な蓄積が認められたが,自家蛍光は弱く,また,べと病菌感染部位の宿主細胞壁の木化は観察されなかった。
著者
CHANG C.J. YONCE C.E. GARDNER D.
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.354-359, 1987-07-25

オキシテトラサイクリンの注入によるスモモ葉焼病 (仮称) のスモモの葉焼病はオキシテトラサイクリン (OTC) の樹幹注入により抑制された。作業にはコード無ドリル, 28/163cmドリル刃, 金ヅチおよび OTC カプセルを必要とした。4月下旬又は5月上旬に1回目, 10月中旬に2回目の注入が最も効果的であった。それぞれ 0.16g の OTC を含む 4ml の溶液の入ったカプセル2個分を各時期に各樹に注入し, 対照樹にはキャリア液のみをそれぞれ注入した。1984年4月, 1985年5月および1986年5月にそれぞれ1回目, 3回目および5回目の注入を行ない, 1984, 1985および1986年の各8月に調査した結果, OTC による発病抑制はそれぞれ61.5-100%, 73.3-100%および76.9-100%であった。1984年10月に2回目の注入を行なった樹では翌年5月には対照樹に比べて小枝の枯死が格段に少なかった。
著者
久米 龍一 新川 求 川口 章 八隅 慶一郎 益子 道生 白石 友紀
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.110-112, 1997
被引用文献数
3

イネいもち病に対して高い防除活性を示すSSF-126は,イネいもち病菌(<i>Pyricularia oryzae</i>)のスライドグラス上での分生胞子発芽やセロファン膜侵入を1.0ppm以上の濃度においても完全には阻害せず,また,メラニン合成阻害も示さなかった。しかし,イネ体磨砕物の共存下では発芽を顕著に阻害した。以上の結果とこれまでの報告から,(1) SSF-126は侵入したイネいもち病菌の呼吸を阻害するが, (2)いもち病菌体にシアン耐性呼吸鎖が誘導される。しかし, (3)イネ体中のフラボノイド化合物によってこの誘導過程が阻害され,その結果いもち病菌は侵入後蔓延出来ず発病に至らないと推定した。これは本剤がいもち病菌のイネ体侵入後に活性を発現するというこれまでの知見をよく説明しており,新規制御剤開発の指標となる機構の一つと考えられた。
著者
岡山 健夫 平山 喜彦 西崎 仁博
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.155-161, 2007 (Released:2007-09-06)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

イチゴ炭疽病のベノミル耐性菌を対象に選択培地を考案し,潜在感染部位および生存部位を調査した.PSA培地を用い,炭疽病菌の生育を比較的阻害せず他の糸状菌の生育を抑制する薬剤としてベノミル50 ppm,トリフルミゾール30 ppmを選択し,細菌の生育抑制のためにオキシガル100 ppmとストレプトマイシン硫酸塩50 ppmを添加して選択培地を作製した.この選択培地は選択性が高く,潜在感染株や枯死株の小葉,葉柄,葉柄基部,根冠部からは高率に炭疽病菌が分離され,鉢土からも分離できた.潜在感染株では,外側葉位の小葉や葉柄,葉柄基部から炭疽病菌が高率に分離され,内側の葉位になるほど検出率が低下したが,最も新しい内部の小葉からも分離された.炭疽病菌の灌注接種株には汚斑症状は見られず,小葉が褪色して萎凋した.105~106胞子/mlの灌注接種株は,全株が萎凋または枯死し,102胞子/ml以下の接種株も低率ながら萎凋症状を呈した.灌注接種株の根から炭疽病菌が高率に分離され,葉柄,小葉の順に検出率が低下し,根または地際部からの侵入感染が示唆された.炭疽病菌は,分生子懸濁液を灌注したピートモス・バーミキュライトやオガクズ,砂などの培養土から1ヶ月以上経過後も検出された.以上のことから,本菌はイチゴの葉,葉柄,葉柄基部,根冠部に潜在感染し,イチゴが植えられていない育苗用土で長期間生存することが明らかになった.