著者
吉井 甫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.81-88, 1941 (Released:2009-04-03)
参考文献数
14
被引用文献数
4

1) 各種稻品種の有する葉片の強靱度・珪酸竝びに窒素含量を比較し,その結果を各品種の稻熱病抵抗性との間に何等かの相關的關係を見出さんとした。2) 本實驗に於て供用した稻の品種はカマイラズ・旭・晩神力・銀坊主・龜治・愛國・眞珠1號・戰捷の8品種であつた。3) これらの品種を春日井液の窒素を3倍にせるものによつて水耕し,その穗孕期直前の葉片を材料として稻熱病發病程度・強靱度(貫穿抵抗)・珪酸竝びに窒素含量を求めたのである。4) 葉片の強靱度・珪酸及び窒素の測定方法は前報文(12, 14)の通りである。發病程度を調査するに當つては,先づPiricularia oryzaeを噴霧接種し,その抵抗性の強弱を發病比數によつて求めると同時に,野外に於てポット栽培をなせる同じ品種の稻に自然發生せる稻熱病につき,その發病程度を目測によつて求めた。5) 實驗の結果によれば,稻熱病に對する稻の品種的抵抗性の強弱は,各品種の稻葉片の示す夫々の強靱度・珪酸含量・窒素含量或は後兩者の含有量に於けるSiO2/Nの比の何れとも相關的の關係がないのである。即ち品種間抵抗性はかかる物理的或は化學的の計量の外にありと云はざるを得ない。
著者
窪田 昌春 我孫子 和雄 石井 正義
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.437-440, 1996-08-25
被引用文献数
2

In October 1994, sprouting inhibition of anemone (Anemone coronaria L.) tuber was found at Tsu city. One species of Rhizopus was isolated from the affected tuber. The morphological characteristics and optimum temperature of mycelial growth of the fungus closely fit the C.M.I. descriptions of Rhizopus oryzae Went et Prinsen Geerligs. The pathogenicity of this isolate to anemone tubers was confirmed and the disease was named tuber rot. This is the first report of tuber rot of anemone caused by R. oryzae in Japan.
著者
芹沢 拙夫 市川 健 瀧川 雄一 露無 慎二 後藤 正夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.427-436, 1989-10-25
被引用文献数
3

1984年ころより, 静岡県においてキウイフルーツ(Actinidia Chinensis)に新しい細菌病の発生が認められた。本病の病徴は大きく二つの相に分けられた。一つは冬季から春先にかけて発生するもので, 樹幹や枝に亀裂を生じ, 赤褐色の隘出物が認められる。同時に, 外観は健全な腋芽や葉痕, 剪定痕, 枝の分岐点などに白色ないし赤褐色の細菌菌泥の隘出も認められる。第二は晩春から初夏にかけてで, 新たに展開した葉にまず水浸状斑を形成し, やがて拡大して大きさ2〜3mmの褐色の角斑となり黄色のハローを伴う。同時に, 新梢には亀裂を生じて潰瘍状を呈し, やがて先端は萎凋枯死する。花芽にも感染が認められ, 枯死あるいは花腐れ症状を呈する。葉や新梢, 花等の病斑上にも白色の菌泥が認められる。これらの病組織および菌泥より分離を行ったところ, つねに一定の白色細菌が得られた。分離細菌は有傷接種, 無傷接種ともにキウイフルーツおよびサルナシ(A.arguta)に対して強い病原性を有しており, 自然感染の病徴を再現した。葉位別にキウイフルーツ葉の感受性を調べたところ, 成熟直前のものが最も感受性が高く, より若いものや完全に成熟したものでは感受性が低下した。気象条件と本病の発生について考察した結果, 低温, 強風, 降雨が発病を助長しているものと思われた。薬剤による防除効果を検討した結果, ストマイ剤, カスガマイシン剤, 銅剤のいずれも有効であった。本病の病名をキウイフルーツかいよう病(bacterial canker of kiwifruit)としたい。
著者
GNANAMANICKAM S.S. MEW T.W.
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.380-385, 1992-07-25
被引用文献数
4

いもち病は熱帯地方の畑栽培稲作の大きな障害である。本報告は, 薬剤に代わる病害防除法として蛍光性Pseudomonas細菌の利用を示唆した。本細菌はいもち病菌分生胞子の発芽を抑制する。FeCl_3 を培地に加えても効力が減退しないので, 抑制の機作はシデロフォア形成によるものではなく, 抗いもち病菌性抗生物質の生産によるものと思われる。本細菌液へのイネ種子の浸漬および立毛苗への細菌の散布によって葉いもち病, 穂首いもち病を軽減することができる。
著者
Kyeremeh Ampaabeng Gyedu 菊本 敏雄 荘 敦尭 郡司 祐一 高原 吉幸
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.171-176, 1999-04-25
被引用文献数
1

銅剤の減農薬に資するため, 銅剤との併用可能な銅耐性微生物農薬の開発を目的として開発中の3菌株を親菌株として用いた。軟腐病菌の鑑別と選択性を加味した変法PDA培地を考案した。供試菌の懸濁液(1O^10 cfu/ml) l mlをペトリ皿にとり, 硫酸銅加用変法PDA培地(1.3〜3.l mM)を流し込み, 硫酸銅耐性の自然突然変異菌を分離した。この操作を硫酸銅の濃度を上げながら3回繰り返し, 3.8〜6.3 mMの硫酸銅加用PDA培地に生育する菌株を分離することができた。銅耐性は分離操作を繰り返すごとに漸増した。これらの硫酸銅耐性菌株のバクテリオシン活性を確認したのち, 銅水和剤, ジチアノン・銅水和剤, および有機銅水和剤に対する耐性を調べた。そして前記の操作を繰り返し銅剤耐性菌の分離を試みた。ジチアノン・銅水和剤, および銅水和剤(水酸化第二銅)耐性菌を分離することはできなかったが銅水和剤(塩基性硫酸銅)では500倍, 有機銅水和剤では250倍の希釈になるよう調整したPDA培地に生育する耐性菌が分離できた。この有機銅水和剤耐性菌とその親菌株を用い, 有機銅水和剤の600, 1200および1800倍の水溶液中における生存率を比較した結果, 生存率は明らかに耐性菌の方で高くなった。
著者
久能 均 黒田 克利 豊田 和弘 山岡 直人 小林 一成
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.57-60, 1991-01-25
被引用文献数
2

Erysiphe graminis の分生胞子をオオムギ子葉鞘細胞に接種した(一次菌)。さらに同一細胞上に, 別の子葉鞘上で発芽させた同菌の発芽胞子を細針で移植接種した(二次菌)。ー次菌が二次菌よりも0〜5時間早く侵入を開始すると二次菌の吸器形成率は約80%, またこの時間差が6時間以上になると約93%に上昇した。針移植した対照区の吸器形成率は約63%であったので,ー次菌の侵入によって誘導される受容性は同じ菌の二次菌にも有効であると結論された。この受容性は一次菌が吸器形成に成功した細胞でのみ誘導された。一細胞で誘導された受容性は, 一次菌が侵入を開始してから少なくとも9.5時間までには隣接細胞に移行しなかった。
著者
福田 健二 鈴木 和夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.625-628, 1988-12-25
被引用文献数
2

材線虫病による年越し枯れのアカマツについて, 病徴の進展に伴う材部の電気抵抗値および葉の水分生理特性の変化について検討を加えた。材部の電気抵抗値は, 秋から冬にかけてはほとんどが正常な値を示したが, 感染翌年の春〜初夏にかけて180kΩ未満の値をとるものが多く, 春季の村内におけるミクロフロラの変化が示唆された。P-V曲線から得られた葉の水分生理特性は, 桔死直前の春〜初夏まで正常な季節変化を示して, 細胞壁弾性率(ε)には変化が認められなかった。
著者
原田 幸雄 今泉 誠子 田中 博 根岸 秀明 藤森 嶺 山田 昌雄 本蔵 良三 三浦 喜夫
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.766-768, 1992-12-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
5
被引用文献数
3 2

1989年,宮城県名取市の休耕田において,茎が橙色の斑点を示すクログワイを発見した。橙色の病斑部から病原菌が分離され,胞子の形態,培地上のコロニーの形状から,Nimbya scirpicola (Fuckel) Simmonsと同定された。本菌は分離宿主のクログワイとタマガヤツリに対してのみ病原性を示し,イネを含むいくつかの主要栽培植物に対しては病原性を示さなかった。なお,クログワイから本菌が病原菌として分離されたのは日本で最初である。
著者
森 義忠
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.92-97, 1968 (Released:2010-03-08)
参考文献数
9

前報(1962, 1966, 1967)で筆者はホッブべと病の一次発生源として根株中の越年菌糸の重要性と,このような潜在菌糸の主原因は秋感染によつておこることを強調した。もし,秋感染が潜在菌糸の主な根源,つまり春発生するふしづまり芽条の主因であるとすれば,秋の殺菌剤散布はふしづまり芽条発生を防ぐことになる。このことは古里ホップ試験場での諸実験の結果からある程度確認されている。本試験はこの結果にもとついて,大面積にわたる圃場試験として計画され,ふしづまり芽条防除のため殺菌剤の秋散布の効果試験がA, BとCの3地区で行なわれた.Aは長野県の平坦部,一方BとCは山間部が選定された。圃場試験でも当場の実験と同じ結果が再現され,球果収穫後の殺菌剤の秋散布が一次感染の除去に重要であることを示唆し,それがまた一次の“ふしづまり”芽条の減少に効果的であることを示した。
著者
梅本 清作
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.212-218, 1991-04-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
5 6

ニホンナシ黒星病菌分生子をナシ葉へ接種した後の葉の濡れ時間および温度と発病程度との関係について検討した。9時間濡れ状態に保持した場合,15°Cでわずかに発病し,12時間以上では5∼25°Cで発病し,20°Cで最も多発したが15°Cもそれに近い発病であった。一方,30°Cでは36時間濡れ状態に保持した場合および5∼25°Cで6時間以内の濡れ保持時間では発病しなかった。これらの結果は,Millsがリンゴ黒星病で得た結果と酷似し,素寒天培地上における温度別分生子および子のう胞子の発芽状況および20°Cで濡れ状態に保持した場合のナシ葉上における分生子の発芽・侵入行動ともよく一致した。また,分生子と子のう胞子のナシ葉に対する病原性はほぼ同一であることが確認されたので,以上の結果は子のう胞子による感染場面にも適用できると考えられた。
著者
井手 洋一 古田 明子
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.1-8, 2023-02-25 (Released:2023-03-08)
参考文献数
38

タマネギべと病の薬剤防除の精度向上を目的として,ブームスプレーヤの噴霧高さが薬液付着や防除効果に及ぼす影響について検討した.葉先の30 cm上方から散布した場合の薬液付着は,葉身中央部,葉身抽出部ともに良好であったが,葉先とほぼ同じ高さから散布した場合は,葉身中央部付近の薬液付着が劣った.また,べと病に対する防除効果も葉先とほぼ同じ高さから散布した場合は劣った.今後は,本試験で得られた噴霧高さと薬液付着,べと病に対する防除効果の関係性をもとに,適切な薬剤散布技術に関する指導を行う必要がある.
著者
山崎 睦子 松岡 弘明 矢野 和孝 森田 泰彰 植松 清次 竹内 繁治 有江 力
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.299-303, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
22

In 1997, Phytophthora rot caused serious losses to ginger (Zingiber officinale Rosc.) production in Kochi Prefecture, Japan. In the field in early summer and autumn, water-soaked rot on basal pseudostems and brown rot on rhizomes were first observed, then plants developed stem blight. The disease also developed on rhizomes stored at 15°C in the dark. A Phytophthora sp. was consistently isolated from the symptomatic lesions and caused the same symptoms after inoculation with the isolates. The identical Phytophthora sp. was then reisolated. White stellate colonies grew on PDA at a minimum temperature of 10°C, optimum of 23°C and maximum of 30°C. Sporangia were ovoid, ellipsoid, globose and distorted (variable) with one or two apices, noncaducous, 30–90 × 20–50 (average 50.0–56.1 × 25.0–32.6) μm, with a length to breadth ratio of 1.5–1.7:1. Nucleotide sequence of the r-DNA ITS regions agreed well with those of Phytophthora citrophthora (R. E. Smith and E. H. Smith) Leonian previously reported. Based on these results, the isolate was identified as P. citrophthora. This report is the first of a disease of ginger caused by P. citrophthora, and we propose the name “Phytophthora rot” for the disease.