著者
紀宮 清子 鹿野谷 幸栄 佐藤 佳子 安藤 達彦 柿澤 亮三
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-5, 1991 (Released:2008-12-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

While it is probable that Common kingfishers Alcedo atthis used to be found in central Tokyo, they have for long been found only in the outskirts of the city. However, recently they have appeared in many locations near the center of the city. We observed their breeding at the Akasaka Imperial Grounds in the center of Tokyo. In the first brood, four young were observed to fledge on May 20, and in the second, five young fledglings were confirmed on July 14 and 15. Some aspects of breeding behaviour of the parents are described.
著者
西村 昌彦
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.39-48, 1979-01-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

1.おもに1974-77年の間,京都府下の3地域においてカワセミとヤマセミの造巣場所を調査した。2.両種の巣場所と考えられる崖をおもに道路ぞいに捜し,発見したすべての崖および巣穴の測定•記載を行った。3.ヤマセミは川から1000m以上離れた崖もよく利用するが,カワセミの巣穴は大部分が500m以内に限られる。またヤマセミは高くかつ崖内の造巣層に障害物が少ない崖に造巣するが,カワセミはとくに選択の傾向を示さない。4.カワセミが営巣に不利と思われる崖にも造巣することについて,おもに行動圏の大きさの面から,ヤマセミと比較しながら説明を試みた。
著者
濱尾 章二
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-12, 2000-05-31 (Released:2008-11-10)
参考文献数
27
被引用文献数
7 7

一夫多妻を目指すオスにおいて,第2メスを誘引する行動が第1メスのメイトガードに影響するかどうかを,コヨシキリを材料にして1997年に埼玉県で調べた。メスの受精可能期にはその後の時期よりも,オスがメスの5m以内にいる時間が長く,またオスーメス間の距離も近かった。オスはメスの動きを追尾したが,メスはオスを追尾しなかった。オスによるなわばり侵入は,独身オスのなわばりよりも営巣メスがいるなわばりに対してよく起きていた。ある侵入オスは,つがいオスがいない時にそのなわばりの受精可能なメスに求愛した。これらのことはつがい外受精の起こる可能性を示唆している。オスの中には,つがいメスの産卵期にさえずりを再開して一夫多妻を目指すものがいたが,この場合さえずりを再開するとメイトガードをしなかった。さえずりを再開した3羽のオスのうち2羽は,初卵産下日にメイトガードをやめ,明らかに受精可能なメスが防衛されない状態に置かれた。これに対して,さえずりを再開せず一夫一妻のつがい関係を維持した3羽のオスは,受精可能期を通してメスをガードした。第2メスの誘引をはかることは,第1メスのメイトガードを制限する要因になっていると思われる。
著者
藤巻 裕蔵 戸田 敦夫 吉田 真二
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.67-69, 1979-01-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
7

日本鳥類目録第5版によると,繁殖期にハギマシコとギンザンマシコが記録されているのは,大雪山と利尻岳だけである。われわれは1975,1976両年の6,7月に日高山系と茅室岳と日高幌尻岳七ツ沼付近で鳥類調査を行ったが,その際ハギマシコとギンザンマシコを観察した。斉藤(1970)は「日高山脈学術調査報告書」に,日高山脈とその周辺の鳥類のリストを示し,その中にハギマシコをあげているが,年月日,場所を記していない。日高山脈における繁殖期のハギマシコとギンザンマシコのはっきりした観察例は,今回のわれわれの報告が最初のものと思われる。またギンザンマシコは,つがいで見られたところから,七ツ沼付近で繁殖している可能性がある。
著者
松岡 茂 阿部 卓
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5-6, pp.569-571, 1972-12-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
6

We observed several flocks of the ground linnet Leucosticte arctoa at high levels of Daisetsu Mountains, central part of Hokkaido, during the summers (August) of 1970 and 1971.Some of the individuals observed had a juvenile-like plumage pattern and one of them was being fed something by an adult male (Fig. 4).Though it was not proved that the individual was a juvenile fledged in this season, this may suggest the breeding of the species in this area.
著者
高木 昌興
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.30-38, 2002-10-25 (Released:2008-11-10)
参考文献数
21

アカモズの一亜種(Lanius cristatus superciliosus)は,北海道において過去30年間に急激に減少した。1992年から1996年までの5-7月の繁殖期に北海道で得られたアカモズの繁殖成績と雛の成長について報告する。調査期間中に合計41巣から情報を得た。平均巣立ち成功率は53.7%,平均一腹卵数は5.3卵,平均孵化雛数は5.1雛であった。巣立ちに成功した巣あたりの平均巣立ち雛数は4.4雛で,その巣立ち率は90.3%であった。繁殖失敗の主要因は卵,もしくは雛の捕食であった。カッコウによる托卵率は低く,アカモズは托卵されたカッコウの卵を選択的に除去するか,巣を放棄することで托卵を受け入れなかった。15巣75雛の体重とふ蹠長の成長をロジスティック曲線で近似させ,漸近体重27.1g,日あたり体重増加率0.4,体重増加の変曲点5.7日目,漸近ふ蹠長は24.9mm,日あたり伸長率は0.3,ふ蹠伸長の変曲点4.4日目の結果を得た。
著者
黒田 長久
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.384-387, 1966-06-30 (Released:2008-11-10)
被引用文献数
1

筆者は1965年度生態学会総会でカッコウ類のタカ斑擬態の意義について考察を述べた(動物学集報3月1966)。その際,タカ斑自体に相手を威圧する効果があることに言及した。この短報では,それをさらにほり下げてみたい。白地に黒の太い帯をなす猛禽斑は,猛禽類の翼や尾の下面で著しい。猛禽が獲物を捕える瞬間はこの翼尾の下面の斑を最大限に展開するので獲物をすくませ,捕えてからも翼を拡げるので(体のバランスをとるため),ますます相手を威圧して捕獲を容易にするだろう。タカ斑が困難な獲物を捕える種類でより著しく発達していることは,この想定を支持する。例えば,Falco, Accipiter, Spizaetus,とくに最強のStephanoetusやハーピーイーグルHarpiaに至り斑は最も大胆であり,ノスリ,トビなどネズミを主食とするものや魚食のウミワシ類や屍食のハゲワシなどでは斑は著しくない。但しイヌワシは例外だが,このグループは比較的弱いものを捕えるアシナガワシなどの小型種から進化したものと考えられる。この仮説は,タカ斑とそうでない模型で鳥類の反応を試せば実験的に証明ができよう。筆者が簡単な実験を行なったところでは,明らかではなかったが,組織的な実験を試みる必要がある。ハチクマはヂバチを食べる弱い種でありながら,タカ斑を示す(とくに尾)例外といえるが,これは他の猛禽とくに人型のクマタカの攻撃に対する予防的擬態であると考えうる。この両種は共に熱帯系の森林の鳥で,セレベスのクマタカSpizaetus lanceolatusとハチクマPernis celebensisは,幼鳥は幼鳥,成鳥は成鳥に極めて類似している。この鳥では,後者はその擬態によって種を維持できたとさえ考えられる(幼鳥と幼鳥,成鳥と成鳥の類似は,タカ類に多い幼鳥の白の多い型が両者にあり,擬態淘汰を経たのであろう)。猛禽がより弱い猛禽を他の鳥と同様に獲物として扱うことは,ワシミミズクやオオタカの食餌物に多くのタカやフクロウの類が含まれている例で明らかである。また,カッコウ類でもタカ斑はやはり翼や尾の下面にのみみられ,地上の仮親の巣を発見するのに威脅飛行を行なって親鳥を追い出す習性や産卵中仮親の攻撃を受けた時など翼尾を開き,その裏のタカ斑を展開する習性があり,籠鳥が人に対してこの動作をなしたことは昨年報じた。かようにみると,猛禽やカッコウ類のタカ斑は,共に相手を威圧する効果があり,それにより,前者では獲物の捕殺を容易にし,カッコウ類では仮親の巣に寄生産卵の成功率を高め,共に生存に有利なため淘汰進化したものと考えられる。そこで,機能的には捕食と寄生産卵の違いがあるが,その起原は鳥類の羽斑の一つの遺伝因子(タカ斑因子)が選択強化されたものに過ぎない。そして,それに似た斑は,例えば,キジ類の翼にもみられるが,この場合は保護色効果として発達した(山階鳥類研究所)。
著者
Goudie R. Ian Ryan Pierre C.
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-8, 1991
被引用文献数
11

1982年から88年にかけてニューファウンドランド沿岸で冬期に採集した5種の海鴨(ホンケワタガモ,ケワタガモ,クロガモ,コオリガモ,シノリガモ)の食性と消化器官(砂嚢重量,小腸•盲腸の長さ)を調査した。5種類ともほとんど動物質の餌を食べていたが,ホンケワタガモ,ケワタガモ,クロガモが貝類とウニ類を高い割合で食べていたのに対し,コオリガモとシノリガモは等脚類と端脚類を比較的多く食べていた。消化器官の計測値は体の大きさに関係なく,食性の違いによって種間での差異がみられた。
著者
浦本 昌紀 高野 伸二
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.2, no.14, pp.60-62, 1960
被引用文献数
1

The breeding success of Great Tit, <i>Parus major</i>, was investigated at Musashi Imperial Tomb Area in 1959. 80 nest-boxes were provided per 50 m-grid. The number of nests initiated were 26 and the nests at which the clutch completed were 10. The clutch sizes were somewhat larger in early than in late clutches, though not statistically significant. The nest from which the nestlings fledged was only one. This very low breeding success is remarkable.
著者
山階 芳麿
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.1, no.11, pp.427-430, 1957

The Musashi Imperial Tomb area, situated 40km. to the west of Tokyo has a good forest cover. It was planned to propagate useful small birds for the protection of this forest. Preliminary census of bird population has been begun to obtain data to be used in more detailed study with various instrumental devise now being planned. The results will be published as the study advances, which will be made by Y. Yamashina, N. Kuroda (Yamashina Museum of Birds), T. Udagawa, M. Seki (Forestry Station, Ministry of Agriculture and Forestry), T. Royama (Forestry Section, Faculty of Agriculture, Tokyo University), and M. Uramoto (Biological Inst., Faculty of Sci., The Tokyo Metropolitan University).
著者
カーター ハリーR. 長谷川 雅美 ブリット グスタフB.バン 小野 宏治 フリーズ ジョンN. 長谷川 博 植田 睦之 樋口 広芳 モイヤー ジャックT. チャン リーオチクボ フォレスト リーN.デ
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.61-87_1, 2002
被引用文献数
10

我々は伊豆諸島におけるカンムリウミスズメの繁殖や保全について、さまざまな資料を集めて検討した。1835年に種が記載された後、伊豆諸島では1877年にはじめて収集され,1901年に繁殖が初記載された。20世紀以後これまで,カンムリウミスズメは11の島々(鵜渡根島,新島,式根島,早島,神津島,恩馳島,祗苗島,三本岳,元根,小池根,鳥島)で繁殖が確認され,7つの島(大島,利島,地内島,三宅島,御蔵島,八丈島,八丈小島)では繁殖していないと思われた。一方,7つの島(銭洲,藺灘波島,青ヶ島,ベヨネーズ列岩,明神礁,スミス島,孀婦岩)では調査がおこなわれていない。個体群は鵜渡根島と三本岳の間,伊豆諸島北部を分布の中心としている。かつて伊豆諸島は本種の最も主要な繁殖地であると思われたが,20世紀半ば以降,個体群はつぎのような点から大きく減少してしまったと見ることができる。a)式根島や神津島ではすでに繁殖していないこと。b)三本岳ではいくつかの営巣環境が失われていること。c)20世紀初頭において鵜渡根島や早島,三本岳における卵採集者によって伝えられたような大規模な営巣はもはや認あられないこと。d)大島~新島間のフェリー航路からの観察で,カンムリウミスズメは1983~89年と比べて,1990~95年には出現頻度がより低下したこと。現在,伊豆諸島では計350-850つがいが繁殖していると思われる(カンムリウミスズメ全体の推定個体数4,000~10,000羽,あるいは2,000~5,000つがいのうちの7~43%に相当)。そのうち主要な繁殖地は祗苗島(100~300つがい),恩馳島(75~150つがい),三本岳(75~100つがい),そして小池根(20~30つがい)である。最近の推定はないものの,このほかに,100~300つがいがその他の島々(鵜渡根島,新島,早島,鳥島)で営巣しているものと思われる。保全上の問題はつぎのことがあげられる。人間の居住,過去におこなわれた卵の採取,離礁でのレクリエーションフィッシング(磯釣り),移入動物による捕食,三本岳における爆撃演習による繁殖場所消失,人間活動による繁殖地の破壊,火山噴火による営巣環境の消失,カラス類やヘビ,ハヤブサによる相対的に高レベルでの捕食,そして刺し網漁業による死亡である。カンムリウミスズメは日本周辺に分布が限られており,ウミスズメ類のなかではもっとも希少であることから,伊豆諸島においてはさらなる調査やモニタリング,そして保全上の問題に対する評価をおこなっていくことが急務である。
著者
飯嶋 良朗
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.175-176, 1983

Nine species of stragglers and rare birds were recorded from Taik, southern Tokachi district, Hokkaido, from September 1970 to May 1981. A single bird of <i>Accipiter gentilis albidus</i> was observed on February 10, 1981 at Hikata. A single bird of <i>Falco rusticolus</i> was seen from January 11 to February 20, 1980: January 11 at Kosei, January 20 at Shimo-taiki, February 1 at Memu and February 20 at Furubetsu. A single bird of <i>Falco columbarius</i> was observed on March 10, 1979 at Toyosato. A single bird of <i>Grus grus</i> was observed in September, 1970 at Bisei and November, 1971 at Seika. Two birds of <i>Grus monacha</i> was seen in late October at Nakajima, from 1972 to 1974, and a single bird of <i>G. monacha</i> was seen at Nakajima from April 29 to May 6, 1981. A single bird of <i>Grus canadensis</i> was seen from December 5 to 23, 1979 at Seika. Two species of <i>Grus</i> were seen in company with <i>Grus japonensis</i>. A single bird of <i>Tringa guttifer</i> was seen from September 21 to 23, 1980 at Kosei. A single bird of <i>Emberiza pusilla</i> was seen among a flock of <i>Acanthis flammea</i> from January 25 to 28, 1978 at Kaishin. A single bird of <i>Corvus monedula dauuricus</i> was seen from April 3 to 8, 1978: April 3 at Taiko and April 3 at the town of Taiki, and on March 13, 1980 at Takuhoku. These records are the first ones from Tokachi District.
著者
黒田 長久
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.221-223, 1965
被引用文献数
1

筆者は1965年6月,コマドリの調査を主目的として利尻島に2泊した。礼文島は船便と日程の関係で泊れなかった。両島は全島保護区であるので,北海道庁生物保護指導監斎藤春雄氏のお計らいと現地の方々の御好意により,島での飼育鳥から2羽の標本を得ることができた(1羽は偶然前日死亡のもの),また多くの籠鳥をみた。これらは何れも同一型の羽色(多少顔の濃淡はあるが)であった。この標本を山階鳥研の本州産標本及び飼育生鳥とも比較して,次のような点で明らかに区別できたので,和名リシリコマドリ,学名<i>Erithacus akahige rishiriensis</i>を与えることにした。<br>1.頭頂から上面,翼にかけ一様にオリーブ(緑色味)を帯び,本州産より赤味が弱い(オリーブ味は古い標本で多少失われるかもしれないが)。<br>2.従って上面の色は本州産より顔部の橙赤色とはっきり境され,額から顔部も本州産ほど濃赤色でなく,とくに上胸に至り明るい橙色となる。<br>3.この上胸の橙色は以下の青黒色とはっきり境し,この色も濃く鮮かである。<br>4.尾も本州産より多少薄く,脇も淡くオリーブを帯ぶ。<br>5.測定では差はない。<br>なお,1932年12月の利尻標本は上面はより赤味があるが,本州産に比すれば少しオリーブを帯び淡い(季節的な変化や古い標本でオリーブ色が失われる傾向があるかもしれないが)。また一般に胸の青黒色の羽は羽縁が淡灰色で,春はこれがすれて一様な青黒色となるらしい。しかし本州産標本からみて,個体(または年令)により羽毛全体に青黒色の少ないものもある。全般として,利尻のコマドリは羽色の対照が鮮かで,全体に赤色味の強い本州のコマドリよりも美しく,声も高く美しいように思った。なお,北海道の個体について今後調査する必要がある。<br>ここに,斎藤春雄氏をはじめ,御協力を得た東利尻町長小松為五郎氏,同主事山田重男氏,利尻町長小田桐清実氏,同建設課安田美樹穂氏,沓形愛鳥保護会の兼田広氏,田尻忠司氏ほかに感謝の意を表し,併せて,礼文島で飼育コマドリを拝見し得た礼文町長向瀬貫三郎氏にも同様御礼申し上げる。<br>リシリコマドリの生態,羽色,渡りについては,さらに将来調査したいと思っており,重ねて御援助を乞う次第である。
著者
川路 則友 白石 哲 林 宏
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.82-93, 1978

1974年7月から1976年12月まで原則として各月1回,有明海北部沿岸(福岡県山門郡大和町の大和干拓地周辺)においてセンサスを行った。確認された鳥類は25科99種であった。そのうちガンカモ科,チドリ科およびシギ科の3科の鳥類だけで47種(47.5%)を占めていた。そこで,この3科の鳥類について,それぞれの種類数および個体数の季節変動を調べた。<br>1.ガンカモ科に属する鳥類の総個体数は冬に最も多く確認されるが,種類数は春と秋に多かった。<br>2.チドリ科に属する鳥類の総個体数は春の渡り時よりも秋の渡り時において多かった。種類数は春と秋で大差はなかった。<br>3.シギ科鳥類の個体数では,春の渡り時の方が秋の渡り時よりも多かった。種類数は春と秋でそれほど差はなかった。<br>4.有明海北部におけるシギ&bull;チドリ類の観察記録を大阪湾,東京湾および宮城県蒲生におけるそれらと比較考察した。すなわち,有明海北部沿岸で確認されたシギ&bull;チドリ類35種のうち,観察例の少ない18種を除いた17種について,有明海北部沿岸における渡りの型と上に述べた3渡来地におけるそれらとを比較考察した。<br>5.上記3渡来地と同じ型を示す種として6種(メダイチドリ,ダイゼン,ツルシギ,アオアシシギ,キアシシギ,ソリハシシギ),異なる型を示すものとして11種(シロチドリ,ムナグロ,キョウジョシギ,トウネン,ハマシギ,オバシギ,タカブシギ,オグロシギ,オオソリハシシギ,ホウロクシギ,チュウシャクシギ)をあげた。これらの渡りの型からそれぞれの種の渡りの径路を考察した結果,小林(1959)が述べている3つの北上径路の他に,第4の径路として日本列島の南岸に沿って北上する径路もあると考えられた。また,南下の径路としては2つの径路が考えられた。<br>6.北上,南下のいずれにしても,有明海を通過するシギ&bull;チドリ類については,本州よりも中国大陸や朝鮮により深い関係を有する鳥類が多いことが推察された。
著者
岩佐 真宏 クリュコフ アレクセイ 柿澤 亮三 鈴木 仁
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.66-72, 2002-10-25 (Released:2008-11-10)
参考文献数
20
被引用文献数
6 6

アジア(ロシア•日本•ラオス)産ハシブトガラスの種内変異(地域変異)について,ミトコンドリア遺伝子チトクロームb(336塩基対)を用いて調査した。塩基配列を基に作成した近隣結合系統樹では,主に4つの地域変異グループ,1)ロシア極東地域-沿海州およびサハリン北部,2)サハリン南部および九州までの日本列島,3)奄美大島,4)ラオス,が得られた。この4つの遺伝子型によるグループは,既報の形態変異によるグループ(亜種分類)とほぼ一致していた。ハシブトガラスにおいては,海峡などによる地理的隔離•島嶼形成が遺伝子流入の妨げにはなっておらず,特に陸続きであるはずのサハリン北部•南部間で明瞭な異なる遺伝子型グループが観察されたことは,両者の個体群形成の歴史が,同じ島でありながら異なることを示唆するものであった。
著者
黒田 長久
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.83-112_2, 1961

Two, and four supplementary, chicks of the Grey Staring, <i>Sturnus cineraceus</i>, were handraised under close observation. The occurrence and development of their behaviours were carefully noted and over 50 kinds of behaviour and vocalization were recorded as classified in the introduction, and 34 of which were listed in Fig. 8, showing the days of occurrence after hatching. The ontogenetic analysis by behaviour system was made based on Kortlandt's method as shown in Figs. 3-7. Each behaviour was named and described in the text which are summarized as follows:<br>Without external stimulation, the gaping of early chicks (5-7 days) was gradually induced by hunger, 20 minutes after being fed 1g. of food, and advanced from: bill up-pointing &rarr; yawning &rarr; neck-stretching to gaping. Any sound, the door-closing, dog-bark, badgerigers' voice, became the stimulus for gaping. Touching the nest caused freezing but also gaping in hungry condition. The strong bursting sound caused freezing. Rising temperature induced, and decreasing one suppressed the gaping impulse.<br>At least by 12th day, the chicks had been imprinted by the author's voice and not reacted to high-pitch sounds. This was confirmed also after they were fledged.<br>Eyes opened on the 10th day but directed gaping was first noticed on the 13th day. The sight was best at 1-60cm., reacting also at 1m. and weakly at 2.5m. However, the lateral sight did not developed until the 15th day, when the hostile behaviours became developed.<br>The pecking action first appeared on the 13th day as a weak impulse with the upward-pointed bill in the absence of real object to peck, but they also pecked the tip of forcets 1cm. before the bill. Eating of food after such a peck and the mutual pecking of the bill were noticed from 13-15th days.<br>After the 20th day, the tongue-tip tasting particularly of small black particles became frequent. They liked to taste the sugar but hated the salt. The fledged young did not eat by themselves the pasted food in the container until at least 35th and 37th days, two weeks after leaving the nest.<br>Vomitting the stones of fruits (and hard objects) given by parents is an important physiology in the chicks. The cherry stones are vomitted about 1.20h. (once 50min.) after intake. Also in fledged young which may often eat inedible substance, the vomitting is of survival value (observed). The food-refusing was observed on the 13th day and the humility behaviour with False begging was noticed on the 17th day.<br>The Bill-opening, characteristic to the starlings, occurred on the 18th day as a weak innate impulse in the absence of definite object (there was a little cotton). From about the 20th day, various use of bill became developed (see list in the text) and the Bill-rubbing (or cleaning) behaviour was first noticed.<br>The foraging of fledged young is very inefficient, being much interested in shaking the feather, string or fallen leaves (a long string was half swallowed!) and could find little real food.<br>When the water was given on the 22nd day, they first pecked at it and then real drinking followed. Beside scooping the water, they also can suck it, with the vertically inserted bill (from the perch above the water).<br>Bathing was willingly done on the 26th and 22nd, but not 21st (same bird), day when they were first given water.<br>Panting in both naked chicks and fledged young was induced at 30&deg;C (or 29&deg;C) by heating them with electric light or in natural summer temperature, and the breathing increased to 26times/15sec. in 15 day solds, which breathed 14times/15sec. at 26&deg;C.<br>The Lateral heat (or Sun) bathing could be at once induced in 22 days olds by 60 wat electric light, but after a while panting occurred (perhaps at over 30&deg;C). The Back heat-bathing was reflectively performed when the bird was brought out to the sunshine.
著者
中村 一恵 田中 裕
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.108-112, 1976

1975年8月16日,北韓36度42分,東経142度14分の本州中部沖,約150kmの東方海上で,1羽の大型シロハラミズナギドリ一種が観察撮影された。筆者らは,これをKermadec Petrel <i>Pterodroma neglecta</i>の淡色型であろうと判定し,F.C.Kinsky氏に写真2枚を添えて報告し意見を求めたところ,氏から本種の淡色型に近い中間型の1羽に誤りない旨の返答を得た。<br>本種には,暗色型,淡色型,中間型の3型があり,海上では他の大型のシロハラミズナギドリ属数種と混同されるおそれが十分にある。とくに北太平洋北西部では,この海域に渡来する大型のハジロミズナギドリ<i>P.solandri</i>が<i>P.neglecta</i>暗色型に酷似するので,これら2種の野外識別が問題となる。<i>P.neglecta</i>の特徴は,どの体色型にも初列風切羽の白い内羽弁により形成される顕著な白または灰自色の三角班が翼下面先端にでることである。しかしこれは<i>P.solandri</i>の特徴でもあるので,<i>P.neglecta</i>暗色型と<i>P.solandri</i>の2種を野外で識別することは近距離以外ほとんど不可能になる。<br>基亜種はケルマデックとロードハウ諸島に繁殖する。本種の非繁殖期の渡りについてはほとんど知られていないが,1967年1月19日,ケルマデック諸島のNorth Meyer島でバンデングされた1羽が,1974年10月7日にフイリッピンのSan Marianoで回収されている。この1例と今回の観察記録は,本種に北太平洋北西部海域に達する長距離の渡りがあることを暗示するものであろう。<br>本種の和名は黒田長久氏(1973)<sup>***</sup>によりカワリシロハラミズナギドリと命名されている。<br>終りに,写真検討の労をとられ種の同定にご協力いただき,あわせて有益な情報をよせられたニュージーランド国立博物館のF.C.Kinsky氏,並びに調査にご協力いただいた東京大学海洋研究所白鳳丸乗組員各位に深く感謝の意を表する。
著者
細野 哲夫
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.533-549, 1975
被引用文献数
2

1.1962年4月から1973年12月までの間に,長野県長野市川中島北戸部附近でオナガと他の鳥類との相互関係について調査した。<br>2.北戸部附近に行動圏をもつ常行寺オナガ群の行動圏内に出現した鳥類は,27科53種である。そのうち,次の17種にオナガとの反応行動が観察された。オオミズナギドリ,ゴイサギ,コサギ,マガン,トビ,ノスリ,チョウゲンボウ,コアジサシ,キジバト,カッコウ,ヒヨドリ,アカモズ,スズメ,ムクドリ,コムクドリ,カケス,ハシボソガラス。<br>3.反応行動がみられた17種について代表的な事例を述べた。<br>4.反応行動をその発生状況と場面から,害的関係,食物関係,塒関係の三点に分け種別に第6表にまとめた。<br>5.害敵関係は,13種の間にみられた。その際の反応行動は,A,警戒的な音声の発声B,攻撃C,擬攻撃(mobbing)D,追撃飛翔E,逃避の五つにまとめられた。Aによる表現が最も多く観察された。<br>6.ゴイサギ,コサギなどの大型の水鳥類に鋭敏に反応した。捕食者的地位にないものになぜ反応するかは,明らかでない。<br>7.ノスリ,チョウゲンボウの飛翔しているものに反応を示し,停止しているものには,全く反応を示さないか,または,mobbingした。トビに対しては,主として低空の直線飛行にのみ反応を示し,その行動に前2種とは,別な評価を下していた。<br>8.カッコウに対する反応の頻度は低く,タカ類に似た羽色や形態が効果的に作用しているかどうか明確でない。<br>9.ハシボソガラスとは,警戒的な音声による反応が通年(第5表参照)みられたが,繁殖期には,攻撃,追撃飛翔などの烈しい行動が加わった。また,幼鳥や塒への通過鳥には反応行動は示さなかった。<br>10.食物関係としては,ムクドリ>オナガ>ヒヨドリという順位が成立していた。種間の食物争いは,食物の量や分散状況のみならず,鳥相互が,どの食物を選択するかによっても生ずる。<br>11.塒関係は,ムクドリとの間にみられた。ムクドリの個体数が増加することによって,オナガは,塒を移動した。
著者
Nagahisa Kuroda
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.189-211, 1962-12-31 (Released:2008-11-10)
参考文献数
9
被引用文献数
5 13

Cervical muscles in eleven Orders and nineteen species of birds were compared by semidiagramatical illustrations of the lateral view. The main series of cervical muscles studied was given the following nomenclature:1. Dorsal muscles1. Biventer muscle, M. biventer cervicalis2. Dorsal long cervical muscle, M. longus colli posticus (M. spinalis)a. Longitudinal part, pars longus b. Anterior part, pars anteriorc. Posterior part, pars posterior d. Inferior part, pars inferior3. Dorsal profound cervical muscle, M. profundus colli posticus4. Intercrestal muscle, M. intercristalisII. Lateral muscles1. Oblique cervical muscle, M. obliquus colli2. Lateral cervical muscle, M. colli lateralis (M. intertransversalis)III. Ventral muscles1. Ventral long cervical muscle, M. longus colli anticusa. Longitudinal part, pars longus b. Anterior part, pars anteriorc. Posterior part, pars posteriorThe development of these muscles is extremely variable both adaptively and possibly taxonomically and in some groups is very specialized. These complexities of the avian cervical muscle system are the natural result of their variety of uses of the neck in food-getting and other activities. The myology of this interesting and important part of avian body, however, has been curiously neglected and is open to future detailed comparative studies.