著者
永田 武 Takesi Nagata
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.27-44, 1982-02

南緯30°以南に在る地磁気観測所20点における地球磁場3成分(X, Y, Z) の1960年から1975年に至る15年間の永年変化を解析する。1960~1965,1965~1970,および19701975の3期間を通してZ>150nT/年に達する大きな永年変化が緯度70°~85°S, 経度20°W~60°Eの範囲に拡っている(図1a, b, c)。この南極域における大きなZの分布は地球磁場双極子能率の減少の影響と同双極子の北方移動の影響の重なりの結果に基づく部分が過半を占めている。北極域においては上記2現象の影響が互いに打ち消し合うので異常に大きな地球磁場永年変化は見られない。全地球面観測結果から求められた地球磁場双極子の2現象に基づく永年変化成分を観測値から差引いて求められた残余地球磁場永年変化(ΔX, ΔY, ΔZ)は, 南極域においてはまだ大きく, 経度20°W~50°E域にZ>50nT/年の正異常, 70°E~180°E域にZ≲-50nT/年の負異常という規則的な分布を示す(図4a, b, c)。地球の中, 低緯度帯においては残余地球磁場変化の過半部分が, 非双極子地球磁場の西方移動に因る事実が知られているが, 南極域においては, 非双極子地球磁場西方移動の影響は検知できない。その代わり, 非双極子地球磁場が0.3%/年の割合で増大しつつあると考えると南極域残余地球磁場永年変化の約80%を解釈することができる。The annual mean values of the geomagnetic three components (X, Y, Z) at 20 stations located between the South Pole and the 30°S latitude circle during 15 years from 1960 to 1975 are examined to study on the geomagnetic secular variation in the southern polar region. In each of three periods, 1960-1965,1965-1970 and 1970-1975,the maximum positive annual rate, Z, over 150 nT/year, was located in a polar area of 70°-85°S in latitude and 20°W-60°E in longitude, as shown in Figs. 1(a), (b) and (c). The major parts of the geomagnetic secular variation in the Antarctic region can be attributed to a decrease of the centered geomagnetic dipole intensity and the northward shift of the geomagnetic dipole, both effects resulting in a decrease of the total geomagnetic force (F) and an apparent increase of Z (Z>0). In the north polar region, the two effects tend to cancel each other, but they are added to each other in the southern polar region. The two effects estimated from Yukutake-Cain's global analysis of the geomagnetic field (1979) are subtracted from the observed values of (X, Y, Z) at the Antarctic region stations. The residuals still show a considerably systematic regional secular variation pattern which can be represented by a positive anomaly of Z (Z>50nT/year) between 20°W and 50°E in longitude and a negative anomaly (Z≲-50nT/year) between 70°E and 180°E in longitude in the southern polar region (Figs. 4(a), (b), (c)). The geomagnetic non-dipole field in the southern polar region has a characteristic distribution pattern which has a focus of a positive anomaly of ΔZ>20,000nT in an area of 60°-70°S in latitude and 10°E-70°W in longitude and a focus of a negative anomaly of ΔZ~-15,000 nT around 30°S in latitude and 140°E in longitude. Roughly speaking, it appears that the non-dipole field is growing up gradually in the southern polar region.
著者
永田 武 Takesi Nagata
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.13-27, 1977-11

氷床の断面形状に関するNyeの理論を,氷床内の氷質量保存の原則に基づいて改訂した. Nyeの氷床模型,さらにそれを改変したHaefeliの氷床模型の双方とも,質量保存則を満足せず,したがって両氷床模型とも定常状態を保ち得ないからである.新たに提案する理論においては,氷床中の氷質量保存法則を[numerical formula]で表し,NyeおよびHaefeliの仮定bx=uhとは異なる。ここに,cosθ・dis=dx, -dh/dx=tanθ, またbとh(x)はそれぞれ氷集積速度および氷床面の高さを表す。理論的計算の結果,定常氷床断面形状は[numerical formula]で与えられる(図2).ここに,x=0でh=H,またx=Lでh=0を以ってHおよびLを定義してある.この新定常氷床模型は,もちろん氷床内の氷質量保存の条件を満足するし,積水域と剥水域の境に当たる定常点を量的に定め得るほか,氷床内の氷流の流線分布(図3)を求めることができる.現在,もっとも詳しく測定されているグリーンランドの氷床断面と新定常氷床模型を比べた結果,両者の一致は十分満足できると結論できる(図4).The Nye's kinematic theory of ice sheet profiles is revised on the basis of the conservation law of ice mass, because the Nye's ice sheet model or the revised Haefeli's model does not satisfy the ice mass conservation law and therefore they cannot have a steady state. In the present revised theory, the mass conservation condition is represented by [numerical formula] in place of Nye-Haefeli assumption that bx=uh, where cos θ・ds=dx, -dh/dx=tanθ, and b and h(x) denote respectively the ice accumulation rate and the height of ice sheet surface. Then, the revised ice sheet profile is expressed by [numerical formula], where h=H at x=0 and x=L at h=0. This ice sheet profile model satisfies the ice mass conservation within the ice sheet. In this model, the equilibrium point to separate the ablation area from the accumulation area is clearly defined, and the stream-lines of ice now within the ice sheet are explicitly determined. It seems further that the agreement of the present steady state theoretical model of ice sheet profile with the observed data in Greenland is satisfactory.

1 0 0 0 Foreword

著者
永田 武
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.58, 1977-03

1 0 0 0 IR Foreword

著者
永田 武 Takesi NAGATA
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.52, 1975-03
著者
国立極地研究所
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.152-153, 1974-01

国立極地研究所が昭和48年9月29日に創設された.この研究所は,高エネルギー物理学研究所等と同様の性格をもつ国立大学共同利用機関である.従来,南極地域観測事業への協力,その他極地研究を実施してきた国立科学博物館極地研究センターが発展的に改組されたものである.所長は,前東京大学教授(理学部)の永田武であり,次長は,前極地研究センター所長であった村山雅美である.
著者
兼岡 一郎 小嶋 稔 小嶋 美都子 鮎川 勝 永田 武
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.12-20, 1968-03

第7次南極観測隊により,南極Lutzow-Holm湾の東海岸およびオングル島の露岩中より,新たに数種の試料(片麻岩)が採集された.従来この地域の年代決定および古地磁気学的研究は独立に行なわれていたが,今回は同一試料についてK-Ar年代および自然残留磁気測定を行ない,次のような結果を得た.K-Ar年代は大体4億年前後の値を示すが,これらは従来のRb-Sr法,U-Pb法による5億年の値よりやや若い値を示す.しかし,この地域の地質が複雑なこと,今回用いられた試料と以前に年代決定が行なわれた際に用いられた試料との相対的関係が不明等のことにより,この差が試料の差によるものか,あるいは方法による差かは断定できない.ただこの地域が高度の変成作用を受けたという立見・菊地(1959)の報告を考慮すると,4〜5億年の値は,この地域における変成時期を示すと考えるのが妥当である.同一試料をmaficな部分(主に黒雲母,角閃石)とfelsicな部分(主に長石,石英)とに分けてK-Ar年代を求めると,前者が後者よりも古い値を示し,全岩による測定はそれらの中間の値を示す.Maficな部分のAr保持が高いということから,この場合にはmaficな部分による年代が最もその値に近いと考えられる.また,Lutzow-Holm湾を含むQueen Maud Land付近の年代測定結果をも考慮すると,この地域の大部分はCambrian以後の年代を示すことが予想される.この年代決定に用いられた試料についての自然残留磁気測定の結果は,この時期の磁極の位置はほぼ赤道上,西径約150°付近に存在することを示す.この結果は,以前永田・清水(1959;1960)および永田・山合(1961)によって得られたものとほぼ一致する.
著者
永田 武 小口 高 村石 幸彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1260-1266, 1962-04

昭和基地における地磁気永年変化は,この3年間に約⊿H=-60^γ,⊿Z=+340^γ,⊿D=-37'であることが知られた.なおここで注意すべきは,変化の割合が,1960年は前年よりかなり小さくなっているように見えることである.また,直視磁力計によって得られた昭和基地のK指数に,南極地域の他の7基地のK指数を加え,その平均値をK_pと比較した結果,先の論文に述べた結論,即ち1)小擾乱は昼間の極域に多く,大擾乱は夜の極域に多いこと,及び,2)昼間の小擾乱は夜の極域が極めて静穏なときにも現われていること,が再確認された.
著者
永田 武 山合 美都子
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.945-947, 1961-01

さきに永田,清水によるオングル島片麻岩による古地磁気学的研究の結果を報告した(南極資料第10号).第3次隊越冬期間に,ルュッツオホルム湾東岸及び南岸の露岩中から多数の試料が採集された.この試料を全部調べた結果,この地域の岩石の生成されたカムブリア紀(4.7×10^8年前)の磁極は赤道上西経約100°附近にあったという前報告の結果が再確認された.又付図は,我々の結果をもふくめて東南極大陸に関する古地磁気学的研究の成果を集めたものである.
著者
永田 武 国分 征
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.924-936, 1961-01

南極地域における地磁気活動の諸性質をそれに対応する北極地域の同時活動と対比して調べた.地球大気圏外から荷電粒子流が地球磁力線に沿って,地球の南北両極地域に侵入するのに際して,どの程度の均等性や同時性があるかという問題を調べるのが主目的である,得られた主な結果は次の如くである.(i)南極地域のSD-場の様相は,既に良く調べられている北極地域のSD-場の地磁気赤道に対する鏡像と考えて大差はない.(ii)昭和基地(地磁気座標-69.°7,77.°6)のK指数は,主として北半球高緯度地磁気活動を代表するK_p指数と殆んど平行して変動している.K指数でのちがいが3以上になることは全体の2%弱しかない.この2%程度の頻度でおきる昭和基地上空での嵐は,天頂の極光活動,電離層のBlackout等によって,局部的な擾乱であることが確められた.(iii)南極地域と北極地域における地磁気活動の相関を更に詳しく吟味する為に,地球磁場の磁力線に対して共軛な二点,即ち同一の磁力線が通る南及北の地磁気観測所について地球磁場変動の様子を調べた.完全な地磁気共軛点はないが,南極大陸のLittle America(地磁気座標,-74.0,312.0)とCanadaのBaker Lake(73.7,315.1)とがこの条件をほぼ満足している.この2点の他に比較として,CanadaのChurchill,南極大陸のByrd Station及びHalley Bay(位置は第1表に示してある)の地球磁場変動をも調べた.Little America(LA)とBaker Lake(BL)が共に地方時夜間時にある時は,独立な湾型変化の対応は非常によく,磁力変動水平成分変化の10分間平均値の相関は0.85に達し,又湾型変化極大値の時刻は読取誤差の範囲で一致する.然し地方時昼間時には,この相関は明瞭に減少する.BLの共軛点はLAより地磁気西方約600kmであるから,夜間時の微粒子流束の断面は600kmをほぼ覆うほど大きく,昼間時ははるかに小さいと結論される.しかし,上の何れの場合も,LAとBL間の相関はBLとその南方約500kmにあるChurchillとの相関よりもはるかに良い.この事実は,極磁気嵐を起す微粒子流束の断面が地磁気東西に延びた形をして居り,これが南極地域と北極地域との双方にほとんどいつも同時に侵入してくる事を表わしている.又磁気嵐時には,LAとBLとの相関は著しく悪くなる.当然のことながら磁気嵐場の中,大気圏外電流に因る磁場変動によって,LAとBLとの地磁気共軛性が阻害されるからであろう.(iv)平均直径400〜600km程度の微粒子流束の侵入による極磁気嵐は西方に移動する傾向がある.即ち微粒子流の運動を主として決定する要素は正荷電粒子であることが推定される.
著者
永田 武 清水 吉雄 Takesi NAGATA Yoshio SHIMIZU
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.661-668, 1960-03

第1次および第3次南極観測隊派遣の際,古地磁気学研究の目的をもって,東オングル島昭和基地附近の先カンブリア紀の片麻岩(biotite horn-blende granodioritic gneiss)を方向をつけて採集してきた.これらの岩石の自然残留磁気(NRMと略す)の測定結果から,岩石生成時の地球双極子の方向を計算すると,Lat.=19°N,Long.=167°Wとなる.また,岩石の片理面が岩石生成時には水平面であったと仮定し補正しても,Lat.=3°N,Long.=107°Wとなる.いずれにしても岩石のNRMの方向から推定される地球双極子軸の方向は,西太平洋赤道地域にあったこととなり,先カンブリア紀以来,地球磁極(すなわち地軸も)および南極大陸相互は,広範な移動および回転をしてきたことが示された.この論文では,以上の結論を確認するため,岩石のNRMが岩石生成時から,そのまま保存されてきたかどうかというテストを実験室で行なった結果についても同時に示されている.
著者
大野 義一朗 大日方 一夫 下枝 宣史 大谷 眞二 宮田 敬博 藤原 久子 三上 春夫 大野 秀樹 福地 光男 渡邉 研太郎 森本 武利
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.241-249, 2007-07

南極医学医療研究集会は,わが国の南極医学研究と医療問題についての研究成果を報告・討論し,次期の観測隊における医学研究に寄与することを目的として毎年行われている.2006年の本研究集会は8月26日,国立極地研究所講堂で行われた.27施設から42名が参加し18の演題報告がなされ,近年では最大規模の研究集会となった. 参加者は越冬経験医師をはじめ,共同研究を行っている大学や研究機関の研究者,関連領域の研究を行っている宇宙開発機構やスポーツ科学研究所などの研究者,南極に興味のある一般病院の臨床医など多彩であった. 2004年より昭和基地に導入されたテレビ会議システムを活用して,昭和基地の医師もリアルタイム映像で討論に参加した.また韓国,中国の越冬医師が初めて参加した.これは3カ国の極地研究所による事前の準備と連携により実現した.集会では各国の南極基地の医療状況や医学研究活動が報告され,活発な意見交換がなされた.南極医学医療研究分野におけるアジア連携の端緒となることが期待される.
著者
大野 義一朗 大日方 一夫 下枝 宣史 大谷 眞二 宮田 敬博 藤原 久子 三上 春夫 大野 秀樹 福地 光男 渡邉 研太郎 森本 武利 Giichiro Ohno Ichio Obinata Nobuhito Shimoeda Shinji Otani Takahiro Miyata Hisako Fujiwara Haruo Mikami Hideki Ohno Mitsuo Fukuchi Kentaro Watanabe Taketoshi Morimoto
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.241-249, 2007-07

南極医学医療研究集会は,わが国の南極医学研究と医療問題についての研究成果を報告・討論し,次期の観測隊における医学研究に寄与することを目的として毎年行われている.2006年の本研究集会は8月26日,国立極地研究所講堂で行われた.27施設から42名が参加し18の演題報告がなされ,近年では最大規模の研究集会となった. 参加者は越冬経験医師をはじめ,共同研究を行っている大学や研究機関の研究者,関連領域の研究を行っている宇宙開発機構やスポーツ科学研究所などの研究者,南極に興味のある一般病院の臨床医など多彩であった. 2004年より昭和基地に導入されたテレビ会議システムを活用して,昭和基地の医師もリアルタイム映像で討論に参加した.また韓国,中国の越冬医師が初めて参加した.これは3カ国の極地研究所による事前の準備と連携により実現した.集会では各国の南極基地の医療状況や医学研究活動が報告され,活発な意見交換がなされた.南極医学医療研究分野におけるアジア連携の端緒となることが期待される.A workshop on Antarctic Medical Research and Medicine 2006 was held at the National Institute of Polar Research (NIPR) on 26 August, 2006. Forty two participants from 27 institutes attended. The members consist of medical doctors with Antarctic experience, human biologists, research scientists in other fields, logistic staff members of the expedition and also medical doctors interested in Antarctica. The current resident doctor at Syowa Station joined the discussion through a telecommunication system. Doctors with Antarctic experience from China and Korea also participated in the workshop. They gave presentations on their Antarctic activities, followed by an active discussion session. Eighteen presentations were given on various topics, including the International Polar Year (IPY) 2007-2008 in medical research, space medicine, telemedicine, an international comparative study of medical operations, psychological surveys, Antarctic high-altitude medicine, Legionella surveillance and nutritional studies.
著者
半貫 敏夫 小石川 正男 平山 善吉 佐野 雅史 佐藤 稔雄
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.61-102, 1993-03

昭和基地建設の歴史的経緯をふまえて, 基地建物の現状と計画的な建物更新の必要性およびその概要を述べた。次いで昭和基地に建つ南極観測用建物の設計・製作に関する制約条件を整理し, これまでに昭和基地で試みられてきた極地建築システムについて概観した。国立極地研究所観測協力室の立案による昭和基地整備計画の最初の事業として企画された「管理棟」の基本構想をまとめるまでの経緯と基本設計の概要を紹介し, 建築・防災・構法などの新しい試みについて解説した。また, これからの南極観測用建築のありかたについても言及した。
著者
芳野 赳夫
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.233-248, 1980

最近の実用人工衛星の発達は著しいものがあり,特に応用範囲と多用性の拡大は,目を見張るものがある.南極においても,従来のように超高層物理現象観測・気象観測以外に,1979年1月のNHKによるTV中継伝送のように新しく開拓すべき分野が非常に多くなってきた.本論文では,今後の南極における人工衛星利用について現在考慮し得る数例について説明し,特に近い将来無人観測点のデータ収集めため,自動データ収集装置を搭載する人工衛星の観測方法について詳述する.
著者
芳野 赳夫 福西 浩
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.85, pp.84-95, 1985

南極観測が開始されて以来, 昭和基地の運営は常に通信連絡によって支えられ今日に至っている。この間, 基地規模の拡大, 隊員増, 研究内容の充実, 前進基地の設置などに伴っていろいろな問題点が指摘され, また通信の内容も拡大の一途をたどってきた。したがって, 最初は短波によるA1,FAX, PIXが対内地通信の主流であったが, 通信量の増加に伴って必然的に急激な回線量の不足を招き, マリサット経由の衛星通信の実用化, 南極大陸内の通信網の確保と改善, 基地近くの通信の問題, 特に300-500kmの通信の問題点など, 今日解決すべき点が増してきている。本論文では南極通信の現状と将来の解決案などについて述べる。
著者
大野 義一朗 宮田 敬博
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-13, 2000-03
被引用文献数
1

日本南極地域観測隊の越冬中の傷病について統計解析を行った。対象は1956年-1999年の歴代越冬隊(昭和, みずほ, あすか, ドームふじの4基地)で越冬報告をもとに集計した。のべ隊員1110名(女性2名), 出発時年齢は22-56(平均33)歳であった。傷病総数は4233件で, 1人あたり傷病数は3.8件であった。科別割合では外科整形外科疾患45.3%, 内科22.7%, 歯科12.7%, 皮膚科7.2%, 眼科5.9%, 耳鼻科3.8%などであった。死亡例はブリザードによる遭難死1例, 全身麻酔手術は行われたことはなく, 1966年腰椎麻酔で虫垂炎手術が1件行われた。感染症が極夜期に増加するなど疾患によっては特有な季節変動を認めた。第39次隊では39名中38名に何らかの傷病が発生し, 総数199件, 1人平均5.1件であった。観測部門と設営部門の間に差はなく, 年齢別では40歳代で最少, 50歳代で最多であった。傷病の31.7%は環境に起因し, 27.6%は仕事が関与していた。
著者
村尾 麟一 森脇 喜一 村越 望 大門 康祐 稲葉 稔
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.36-55, 1985-03

南極観測事業におけるホーバークラフトの有用性・適応性に関し, 南極用実用艇建造のための技術データを得ることを目的として, 実験用小型ホーバークラフトが開発建造された。ホーバークラフトは重量2.8tの周辺スカート圧力室型で, 揚力ファンより分岐されたダクト中に装備された方向舵とパフポートによって操縦される。艇は1981年に昭和基地に自力搬入され, 1981から1982年にかけて33時間の走行試験と氷状調査が実施された。計画最高速力55km/hが達成されたが, 走行中エンジンエアクリーナーへの雪の目詰まり, 駐機中ファン空気吹き出し部の凍結などのトラブルが経験された。実験用南極ホーバークラフトの計画, 設計, 主要目, 登坂推進性能, 走行試験の経過と結果が記述されている。