著者
成田 英器 前野 紀一
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.11-17, 1979-10

南極みすほ基地て掘削回収した雪試料を用い,その試料の薄片から結晶粒の平均断面積を測定し,深さ50mまての結晶粒の成長過程を調べた.結晶粒の平均断面積は時間に比例して増加した.しかし,結晶粒の成長曲線は深さ約35mて不連続となった.成長曲線のこう配から求められる結晶粒の成長速度は深さ35mより浅い所の値より35m以深の値の方が2倍も大きかった.この違いは,積雪の荷重による応力増加のためか,35m以深の雪の層て雪の年間蓄積量を過少評価したためと考えられる.35m以浅て得られた結晶粒成長速度をほかの観測結果と比較することにより,みずほ基地の年間蓄積量は約70kg m^<-2>a^<-1>と見積られた.結晶粒の成長曲線が深さ約35mて不連続になること,およびその層て成長速度が急に増加することから,この雪が蓄積した頃,雪の蓄積量の少ない寒冷な時期が襲来したことが示唆された.結晶粒成長曲線から,寒冷期は約340年前に約70年間続いたと推定される.
著者
吉田 栄夫
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.186-205, 1987-11

第27次南極地域観測隊は, 吉田栄夫隊長以下50名(うち内藤靖彦越冬隊長以下35名が越冬隊)で編成され, これに南極輸送問題調査会議の村山南極本部委員をはじめ, 運輸省船舶技術研究所, 海上保安庁からの調査者4名が夏期間同行した。1985年11月14日東京湾を出港した「しらせ」は, オーストラリアのフリマントル港に寄港中, エンダービーランド沖で40日余りにわたって厚い密群氷のため行動の自由を失った, オーストラリアがチャーターした観測船「ネラ・ダン」救出の命令を受け, 航路や観測の一部を変更して直行し, 12月14日氷からの解放に成功, 16日その任務を完了した。この後ブライド湾沖に12月10日に到着, 約110tの物資輸送, あすか観測拠点の発電棟建設, ブライド湾でのバイオマス観測などを行い, 8名のセールロンダーネ地学調査隊を残して, 「しらせ」は12月31日昭和基地へ向かい, 1986年1月4日昭和基地に到着し, 約760tの物資輸送, 鉄骨2階建て作業工作棟ほかの建設作業, 航空機の搬入と短期間の運航, 野外調査などを実施した。2月7日, 昭和基地近傍を離れて再びブライド湾に向かった「しらせ」は, リュツォ・ホルム湾の厚い密群氷帯の突破に2日間の苦闘を強いられたが, 2月11日ブライド湾に到着し, 第26次越冬隊の内陸調査隊, 第27次夏隊のセールロンダーネ調査隊を, 11日, 12日に収容し, その後係留ブイ揚収ほかのブライド湾バイオマス観測, グンネルスバンク, リュツォ・ホルム湾沖などの氷縁付近から北上航路での海洋観測などを天候の許す限り実施しつつ, ポートルイス, シンガポールを経て, 4月20日東京港に帰港した。
著者
福西 浩
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.93-110, 1983-01

第22次南極地域観測隊の夏期行動の概要を述べる。吉田栄夫隊長以下隊員44名と約450tの観測隊物資を搭載した砕氷船「ふじ」は, 1980年11月25日東京港を出航した。「ふじ」は12月31日に昭和基地より約200海里の氷縁に着き, パックアイス帯, 定着氷域を一気に進み1月1日昭和基地より21海里の第1空輸拠点に到達した。その後輸送, 建設作業, 野外調査とも当初計画通りきわめて順調に進行した。本格輸送は1月3日より開始され, 15日までには油以外の物資の輸送はほぼ終了した。そして28日までにすべての物資が輸送された。情報処理棟, 海事衛星地球局, 西オングル島超高層無人観測所, 大型ロンビック短波受信アンテナ等の建設作業も2月3日までにすべて終了した。野外活動では, 昭和基地周辺で生物潜水調査を15回実施した他, プリンスオラフ海岸の天文台岩, あけぼの岩, 新南岩の測地・地質調査, また大陸上での人工地震実験, 気水圏みずほ旅行等を予定通り実施した。2月6日「ふじ」は昭和基地をあとにし, 2月10日から13日の間, 日・ソ超高層共同観測のためマラジョージナヤ基地を訪問した。そして2月19日氷縁を離れ, ポートルイスまでの間, 13ヵ所で海洋物理・化学・生物の停船観測を実施し, 1981年4月20日東京港に帰着した。
著者
斎藤 尚生 三澤 浩昭 佐藤 夏雄 赤祖父 俊一 Sun W. Deehr C. S.
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.233-258, 2009-11-30

地磁気嵐とその発生起源である太陽現象をペアとして捉える太陽・地球電磁関係物理学の手法に従い,従来のフレア型急始(Sc)嵐,コロナホール型緩始(Sg)嵐,フィラメント消失型Sc嵐のほかに,本研究では新たに次のような赤道横断磁気ループ型Sc嵐が見出された. 太陽の赤道を跨ぐ大きな磁気ループ(Transequatorial loop:TELと略称)が急激に膨張,爆発して,大規模なコロナ質量放出(CME)を発生させる事実は半世紀以上前から観測され,太陽のふち(limb)現象として,太陽物理学分野で大きく注目されてきた.このTEL型爆発は太陽のふち(limb)で頻繁に観測されるからには,太陽正面でも発生するはずであると推定して調べたところ,ディスク中心付近でかすかな線条構造が認められてから数日後に,地球で磁気嵐が発生していることが見出された.この線条付近ではフレアもフィラメントもコロナホールも認められなかったことから,これは新しいTEL型Sc嵐であると認定した.このようなTELは南北両半球にある黒点群または黒点消滅後の残留磁域とつながっているので,磁気ループの軸磁場の方向が求められる.この軸磁場は惑星間磁場(IMF)の強いBz成分を生むので,その地磁気嵐構成への影響について調べた.TEL型Sc嵐については,将来様々な興味深い研究成果が期待されるが,現時点で考えられる様々な課題についての提言がなされた.
著者
渡邉 研太郎
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.9-54, 2009-03-30

第41次南極地域観測越冬隊(第41次越冬隊)は40名で構成され,全員が昭和基地で越冬し,所期の観測をほぼ実施して2001年3月28日,全員無事帰国した.2000年2月1日,第40次越冬隊より基地運営を引継ぎ,翌2001年2月1日に第42次越冬隊へ引き継ぐまでの間,第V期5カ年計画の4年次にあたる観測・設営活動を実施した.設営活動は,昭和基地整備計画(10カ年計画)の9年次として計画された,夏期隊員宿舎の増設,設備更新を主としたものだった.観測系ではみずほ基地滞在による吹雪観測,航空機による基地上空の大気採集や内陸大気観測等を行い,やまと山脈域での隕石探査では50 kgを超す鉄隕石を含む3554個の隕石を採集した.予想外の出来事としては試験的に持ち込んだ10 kWの風力発電装置が7月初頭の大型ブリザードにより倒壊したほか,12月中旬に発電棟内の燃料タンクから軽油が棟外へ漏れる事故があった.
著者
日高 秀夫 立川 涼
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.14-29, 1983-12

第22次南極地域観測(1980-1982)において採取した大気, 雪, 海水, 魚介類などの有機塩素化合物(DDT, PCB, HCH)を分析し, 昭和基地周辺の環境濃度と, 基地活動による汚染について検討した。昭和基地の風上方向約13kmのとっつき岬で採取した雪の有機塩素化合物濃度と組成は, みずほ基地の風上約0.6kmの雪とほぼ同じであった。とっつき岬と昭和基地近辺の海水では, 濃度は同レベルであったが, PCB組成が若干異なった。海氷下の水の動きも考慮し, とっつき岬には大気・海水経由での基地からの汚染はないと判定した。基地近辺で採取した底生魚のショウワギス中のPCB濃度は, とっつき岬で採取したショウワギスより約30倍高く(p<0.001), DDTは約2倍高かった(p<0.01)。基地近辺の底生生物は, 南極地域外の魚と比べると低濃度ではあるが, 基地から漏れたPCBによる汚染をかなり受けており, DDTにも若干の影響を受けていると結論づけられる。今後, 基地からの汚染をなくすための, より厳密な廃棄物対策が必要であり, とくに, これらの有機塩素化合物汚染の推移と新たな汚染物質に対応するため, 底生魚を中心とする計画的な試料の採取と保存が望まれる。
著者
星合 孝男
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.i-iv, 1991-07-30
著者
佐藤 健 東島 圭志郎 安ヶ平 一也 村方 栄真
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.409-471, 2003-11

昭和基地の地上気象観測装置は,第39・40次隊により1997年と1998年の2カ年計画で更新された. 新システムは,1999年2月1日より正式運用を開始したが,その後1年間は旧装置での観測も継続して行い,両装置の比較のためのデータを取得した. 比較観測の結果から,次のことが分かった.1) 両装置の観測データは,概ね精度の範囲内で一致し,新旧データの均質性が保たれていた.2) しかし,一部の要素については,観測値に僅かであるが無視できない差異が生じていた.3) これらの差異は,測器感部やデータ処理の方法,設置位置の変更など装置の仕様変更に起因していた. 本稿では,これら両装置の観測値の差異とその特徴,データの均質性などについて考察した結果を報告する.
著者
神沼 克伊
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.155-162, 1987-07

日本の1986-1987年の国際共同観測は「マクマードサウンド地域の地球科学的研究」を継続した。神沼克伊(国立極地研究所), 三浦哲(東北大学理学部), 和田秀樹(静岡大学理学部)の3名が1986年11月中旬から1987年1月中旬まで, ニュージーランドのスコット基地に滞在し, 共同観測を実施した。主なテーマは1) CIROS (Cenozoic Investigation in the Western Ross Sea) 2) IMEEMS (International Mount Erebus Eruption Mechanism Study)の二つである。CIROSはロス海氷上での掘削プロジェクトで702mの掘削に成功し, 日本の分担したガス分析を和田が実施した。IMEEMSはエレバス山の噴火機構の研究で, 神沼と三浦が日本の分担課題を実施した。
著者
芳野 赳夫
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.948-953, 1961-01

1.目的 万年雪,高圧気泡入氷からできた氷冠域において,雪氷の高周波誘電特性雪,表面の電波の反射吸収特性,比抵抗等を測定することにより,極地方の氷冠内における電波伝播特性の解析,氷冠上にて使用するアンテナの設計,通信回線の設計等のための資料を得ることを目的とし,1.5,10,100,250,300,400,3000Mcの各周波数毎に,(1)容量置換法,レッヘル線により,誘電率,誘電体損(tanδ)を,(2)ハイトパターン法により反射,吸収係数を,コーラウシュブリッジにより比抵抗を測定し,数種のアンテナにより通信を行ない電界強度を測定した.また気温逆転層による300,3000Mcのフェーディング特性,万年雪にまい没したアンテナと空間のアンテナとのインピーダンス,指向性パターン等も測定した.2.結果 実測の結果,万年雪および氷冠氷の比誘電率の値は非常に小さく,周波数の増加,密度の減少とともに減少する.誘電体正切特性の値も非常に小さく,周波数の増加とともに激減する.反射係数もHF帯では小さく,周波数の増加とともに増加する,従って氷冠の雪氷上で使用するアンテナは表面の雪の比誘電率が1に非常に近いので,雪面上に直接導線を置くだけの非常に簡単なアンテナで,ほぼ自由空間とみなし得る輻射が得られることが解り,秋春の大陸旅行において実証することができた.なお,測定に使用した機器は昭和基地にて製作したため帰国後検定中であり,期日の都合で今回は現在までに得られた較正データのみ中間報告として発表する.海氷上の電波伝播はVHF以下の周波数帯では大略海水面と同じ特性を示し,UHF以上はその表面の状態(氷,雪)の影響が大きい.なお偏波面は氷冠上が水平,海氷上は垂直が良いようであった.
著者
佐藤 夏雄 鮎川 勝 福西 浩
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.181-202, 1980-02

昭和基地のほぼ地磁気共役点にあたる,アイスランドのHusafelにおいて,1977年7月29日から約50日間,ELF-VLF放射の共役点観測を行った.共役性についていえば,(1)昼間出現するポーラコーラス,準周期的(QP)放射の共役性は良い,(2)バーストタイプのティスクリート放射,オーロラコーラスの共役性は悪く,おもに北半球側が強い,(3)オーロラヒスの共役性は悪く,南半球(冬半球)側が圧倒的に強い.これらの観測結果から共役性の良いポーラコーラス,QP放射は磁気圏内の赤道面付近で発生し,磁力線に沿って伝搬しているものと理解できる.またオーロラヒス,バーストタイプ放射の非共役性は,電離層内の電子密度,磁場強度,磁力線の伏角等の南北半球での非対称およびこれらの放射の発生領域に依存すると思われる.
著者
寺沢 敏夫
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.1-16, 1979-01

オーロラ粒子の加速機構について,最近の観測をもとに従来の結果を概観した.はじめに,粒子の加速をになうものとして,磁力線に平行な電場が存在していることの観測的な証拠についてまとめ,次に,電場エネルギーの供給源として外部起電力の必要性を示し,提案されているいくつかの起電力のモデルについて述べた.また,加速領域のモデルとして提案されている磁気ミラー理論について検討し,最後に,double layerをめぐる最近の話題として,室内実験,計算機シミュレーションにつき触れた.
著者
山岸 久雄
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-67, 2006-03

第45次南極地域観測隊越冬隊(45次越冬隊)は,隊員及び同行者42名が昭和基地で越冬し,第期5ヵ年計画の3年次にあたる定常観測,モニタリング研究観測を継続して行うと共に,宙空系,気水圏系,地学系,生物・医学系のプロジェクト研究観測を昭和基地とドームふじ観測拠点において実施した.また,設営関係では基地の運営を2004年2月1日から2005年1月31日まで担当し,電力, 上下水道,燃料,通信,食料,医療といった生活基盤の維持管理に加え,車両整備, 機械設備工事,航空機の運用ならびに滑走路のメンテナンス,LANの運用,野外観測支援など多くの作業を行った.またインテルサット衛星通信設備を建設し,本格的なデータ通信,インターネット,テレビ会議など多様な情報サービスの初年度の運用を行ったことは特記すべきである.昭和基地,及びオングル海峡の海氷が安定しなかったため,野外行動の本格的開始は極夜が明けた7月となった.8月以降,生物学,地球物理,大気観測に関する多くのリュツォ・ホルム湾沿岸調査旅行や航空機観測を実施した.45次越冬隊では朝日新聞記者2名が観測隊同行者として越冬し,南極の自然や隊の活動の報道を国内に送った.
著者
高橋 永治
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.65-72, 1969-12

1968年12月1日から1969年4月22日まで「ふじ」の航路に沿って,太平洋西部・インド洋・南極海の162地点の表面水中のクロロフィル-a量の定量を行なった クロロフィル-a量は,南極海が最も多く,インド洋の南緯32度以南,太平洋西部,南支那海の順に少なくなり,インド洋の南緯32度以北は最も少なかった クロロフィル-a量の変動の様子は,これまでの結果と似ているが,細部については必ずしも一致せず,論議のためには更に多くの観測結果が必要である.
著者
神山 孝吉 紀本 岳志 江角 周一 中山 英一郎 渡辺 興亜
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.30-40, 1994-03
被引用文献数
2

雪氷試料の化学的解析方法を, 現場運用環境を考慮しつつ検討した。現地で雪氷試料の化学的情報に接することができれば, 現場環境に応じてサンプリング間隔などを調整でき, 現場での研究活動に大いに貢献する。イオン交換性濾紙の利用は, 現場での雪氷試料の全ベータ放射能強度測定のための前処理方法の省力化・持ち帰り試料量の削減などに有効である。またイオンクロマトグラフィーを利用し, 微少量の試料で多種イオン(F^-, (CH_3COO)^-, (HCOO)^-, (CH_3SO_3)^-, (SO_4)^<2->, (C_2O_4)^<2->, (NO_3)^-)を分析する小型イオン分析システムを検討し, その機器構成と分析条件について議論した。さらに硝酸イオンの簡易測定システムについて問題点と有効性を考察した。このような方法を随時改良して行くことによって現場と同期した迅速な解析体制が確立可能である。
著者
福島 勲 久保 閲男
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.513-536, 1997-07

日本南極観測隊の通信部門では, 内陸調査旅行の際にブリザードなどの影響により深刻な雪雑音通信障害に遭遇してきた。その主たる原因は, バーチカルホイップアンテナの尖端で生じるコロナ放電と考えられてきた。本論では, 従前の各観測隊が経験した南極における雪雑音による通信障害の実例を調べ, その雑音発生のメカニズムと雪雑音障害の軽減方法について検討し, 雪雑音の影響が少ない調査旅行隊用のアンテナとして, 雪上車に取り付け可能な小型・高効率のトランスミッションラインアンテナの開発結果を述べる。
著者
阿部 豊雄 岩本 美代喜 祐川 淑孝 稲吉 浩 青野 正道
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.268-321, 1994-11
被引用文献数
1

この報告は第32次南極地域観測隊気象部門が, 1991年2月1日から1992年1月31日まで昭和基地において行った気象観測の結果, 1990年12月26日から1991年12月1日までのあすか観測拠点における気象観測の結果ならびに, 1990年11月から12月に行った「しらせ」船上でのオゾン観測結果をまとめたものである。観測方法, 設備, 結果の取扱い等は, 昭和基地及びあすか観測拠点とも第31次観測隊とほぼ同じである。なお, 昭和基地では, 紫外線B領域の観測を始めるなど地上放射観測の充実を図った。あすか観測拠点では, 南極気候変動研究計画の一環として気水圏研究部門が計画した, オメガゾンデによる高層気象観測を16回実施した。越冬期間中特記される気象現象としては, 次のものがあげられる。1) 昭和基地ではブリザードの襲来が34回あり, あすか観測拠点におけるブリザード日数は82日間あった。2) 昭和基地における年間の日照時間の合計値は観測開始以来最も少ない1684.9時間であった。3) 3年連続でオゾンホールを観測し, 日別値では9月30日のオゾン全量が159m atm-cmと観測開始以来2番目に低い値を記録した。4) 5月23日, 昭和基地付近でハイドローリックジャンプによる雪煙の渦塔が観測された。
著者
星野 孝治
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.29-38, 1974-12

1973年11月27日から1974年4月18日まで,第15次南極観測行動中の「ふじ」の航路に沿って.192地点で表面海水中のクロロフィルa量を測定した.クロロフィルa量は南極海で一番多く,次いで南東大西洋,セレベス海,マカッサル海峡が多く,インド洋,西太平洋,南シナ海では少なかった.また,マラジョージナヤソ連基地沖のクロロフィルa量は,南極海の中でもずばぬけて多かった.クロロフィルa量の水平分布は細部では異なる点もあるが,過去4回の観測結果とだいたい一致している.
著者
松田 達郎
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.84, 1985-03

みずほ基地(昭和基地より270km南東氷床上)の維持のために, 燃料や食糧などの物資を積んだそりを2-4台けん引した雪上車隊が, 年に2回以上往復旅行をする。往復旅行を春夏季, 秋冬季に分けて実際にかかった日数を算出し, 第11次観測隊(1970)から第23次観測隊(1982)までを比較した。冬は気温が低く, ブリザードなど悪天候が多く人間生存の限界と思われる環境になる。したがって夏季より冬季の所要日数が多くなってくる。次に, 各隊の平均往復日数を比較すると, 全体的にみて, 近年になるにしたがい早くなっている。それは道路標識の確立, ルートについて詳細な伝承がなされていることが一つの要因である。しかし, 第13次から第19次観測隊頃まではその速度はかえって遅くなっているが, その後急に早くなっている。それは雪上車の型式を新しいものにするまで, 旧型のしかも中古車を修理しつつ使用しなければならなかったことに原因がある。第21次観測隊からはレーダーも使用されるようになり, ますます早くなっている。以上, 雪上車旅行行動を分析し, 人々の伝承, 天候, 使用する道具によって往復の速度が変動していることを示した。