著者
江夏 幾多郎 平野 光俊
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.67-79, 2012-03-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
44

近年の日本企業で普及しつつある社員格付原理としての役割主義について理論的に定式化し,その機能要件を明らかにした.統計的分析の結果によると,能力主義と職務主義の性質を併せ持つ役割主義が業績に負の影響を与える傾向は,人事権が人事部に集中するほど弱くなる.また,対正規従業員比でスタッフ数が少ない,少数精鋭的でありうる人事部ほど,「役割主義×人事部集権」の機能性の向上に貢献できることが示された.
著者
徐 恩之
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.22-34, 2012-03-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
33

本研究の目的は,同じ職能部門内のメンバー間におけるコンフリクトが他の職能部門のメンバーとのコミュニケーションに影響を与えるコンフリクトのトランスファー現象を定量的に検証することである.既存のコンフリクト研究では,この関係が十分議論されなかったが,本研究では,職能部門内メンバー間の資源や役割の配分に関するプロセスコンフリクトが他の職能部門メンバーとのコミュニケーションを促進することが明らかになった.
著者
真鍋 誠司
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.35-48, 2012-03-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
52

本研究は,日産自動車株式会社における研究開発拠点の分離と集約を事例に,物理的近接性(コロケーション)の逆機能が発生するメカニズムついて考察するものである.考察の結果として,「物理的な近接性がある場合,部門間パワーの格差があればあるほど,また,部門間に信頼がないほど,コロケーションによる部門間の連携よりも,パワー優位部門の業務が優先されてしまうコロケーションの逆機能」が発生する論理を提示する.
著者
松本 陽一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.95-109, 2012-03-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
56

自らが競争する領域(ドメイン)を決めることは経営戦略の重要な構成要素である.これまで様々な研究者がドメインの領域あるいは範囲を問題としてきたのに対して,本稿ではドメインが階層性をもち,たとえ同じ領域を選んだとしてもその階層性に対する認識は組織間で異なることを主張する.この分析視角の有効性を示すために,ここでは液晶テレビ分野におけるシャープとサムスン電子のドメインの階層性を比較分析する.
著者
伊藤 一頼
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.4-15, 2011-12-20 (Released:2022-08-27)

近年,二国間投資保護協定と投資仲裁が普及したことで,投資保護に関する国際的なルールや紛争処理手続が整備され,外国投資リスクが大幅に低減した.しかも,仲裁では,国家の制御を離れた自律的な法の発展が進行している.しかし,公益的な規制権限の侵食への懸念から,国家の側は様々な手段で仲裁の法解釈に対するコントロールの回復を試みており,投資保護ルールにおける公私の利益のバランス確保が今後の重要な課題となる.
著者
イアンシティ マルコ 椙山 泰生 羅 嬉頴
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.17-34, 2011-09-20 (Released:2022-08-27)

IT産業におけるイノベーションの相互依存的性質を考慮し た時,3つの中核的な原理,すなわち選択,機会,そして相互運用性の原理が,エコシステムの原理として指摘できる.本稿では,PCを中心とした時代のソフトウェアのイノベーションから,近年のウェブを中心としたソフトウェアのイノベーションに移行していく際に,これらの原理が継続して重要であったことを確認する.
著者
小阪 玄次郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.74-86, 2011-12-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
31

本稿の目的は,多様な技術基盤を持たない企業が,いかにしてより広い技術基盤を持つ多角化企業と類似の研究開発成果を持続的に生み出しうるのかを明らかにすることである.セラミックコンデンサ業界を事例に特許情報の分析を行った結果,多角化企業のように集団としての技術的多様性を持つことが難しい,事業範囲の狭い企業においても,個々の技術者が関与する技術分野の幅を広げ,個人として多様性を保持できる可能性が示される.
著者
加護野 忠男 上野 恭裕 吉村 典久
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.4-14, 2006-12-20 (Released:2022-08-19)
参考文献数
15

本社は小さければ小さいほど良いという常識がある.小論はこの常識が正しいかどうかを確かめようとしたものである.本社は,ガバナンス,戦略調整,資源配分,共通サービス提供という4つの機能を果たしている.日本企業の本社は海外,特にイギリスと比べると大きい.しかし,その大きさが日本企業の業績にマイナスの影響を及ぼしているのではない.日本企業のデータからは,本社を小さくすれば高い成果が得られるということを支持するデータは得られなかった.むしろ,本社規模を縮減した企業は業績を低下させているという事実が明らかになった.
著者
竹田 陽子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.66-77, 2007-03-20 (Released:2022-08-19)
参考文献数
36

本研究では,情報システム導入におけるコミュニケーションのユーザー企業の満足度への影響について質問票調査(N= 687)をおこない,部門間・企業間コミュニケーションがどの ような経路でユーザー企業の満足度に影響しているのか,情報システムの種類(新規開発システム,カスタマイズ有/無のパッケージ・ソフトウェア)によって差が見られるのかを見た.
著者
安田 雪 鳥山 正博
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.18-32, 2007-03-20 (Released:2022-08-19)
参考文献数
34

コンサルティング企業A社の業務用電子メールログから,社員のコミュニケーションネットワークを抽出し,ハイパフォーマーに特徴的な語句及び,ネットワーク構造上の位置特性を検討する.電子媒体に残された記録よりコミュニケーションのネットワークを抽出・可視化する際の問題点,関係特性の計量と管理に付随する諸課題を検討する.
著者
稲水 伸行
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.82-94, 2009-03-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
35

壁・パーティションをなくし,個人席を共有化したノンテリトリアル・オフィスが注目を集めている.このオフィスが効果を発揮するには,「自由に動き回り,所属するプロジェクト・チームを越えて様々な人とコミュニケーションすること」「プロジェクト・メンバー同士で集まり,密にコミュニケーションすること」の両方が重要となる.そのためには「適切な空間密度」が必要だということが本研究の事例分析から示唆された.
著者
岡田 正大
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.16-30, 2009-03-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
64

本論では,日本企業における実際の戦略策定とその執行に求められる能力を念頭に置きながら,戦略理論研究がそれらの能力向上にいかに貢献可能か,そして実学的見地から新たに求められる有望な研究領域は何かを明らかにしようとするものである.
著者
加藤 俊彦 軽部 大
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.4-15, 2009-03-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
20

本稿では,大手企業を対象とする質問票から得た定量データの分析を中心として,日本企業の事業戦略の現状とその問題点を検討する.データ分析を通じて明らかにされるのは,戦略目標や市場環境などの事業戦略にかかわる項目と経営成果との関係である.その結果の考察を通じて,日本企業の事業組織には,事業戦略の基本的な組み立て方をはじめとする課題が存在している可能性が示唆される.
著者
小野 善生
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.27-37, 2009-12-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
28

リーダーシップの発揮において,フォロワーが果たす役割は大きい.フォロワーがついていくか,いかないかでその成否は決定する.近年,リーダーシップ研究において,フォロワーの存在意義は増している.本稿では,フォロワーの視点からこれまでのリーダーシップ研究を再検討し,フォロワーの語りに注目した事例研究の調査結果もふまえてフォロワーの視点によるリーダーシップ研究の可能性を探る.
著者
服部 泰宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.75-88, 2008-12-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
29

今日,多くの日本企業が雇用制度の変化に直面している.ただ,そうした変化の下で,従業員が雇用組織との関わり合いをどのように捉えているのかについては,明らかにされていない.本論文は,心理的契約という観点からこの問題を検討する.128名の社会人大学院生を対象とした質問票調査の結果,日本企業における心理的契約の内容,および各契約内容の履行/不履行が企業への信頼に与える影響が明らかになった.
著者
谷口 勇仁 小山 嚴也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.77-88, 2007-09-20 (Released:2022-08-19)
参考文献数
20

本稿の目的は,雪印乳業集団食中毒事件のきっかけとなった大樹工場での汚染脱脂粉乳製造・出荷のプロセスを分析し,⑴事故原因に関する従来とは異なる新たな解釈体系を提示することと,⑵事故防止のための新たな知見を導出することの2つである.分析の結果,事故の原因となった「殺菌神話」の存在が確認された.この発見事実に基づき,事故防止のために,社内における神話の存在を確認することの重要性が指摘された.
著者
長瀬 勝彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.58-68, 2005-09-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
16

意思決定の規範的研究には,人間の意思決定は事前に設定された何らかの理由に基づいておこなわれるという前提がある.しかしながら,そのような認識は多くの実験研究によって修正を迫られている.人間は意思決定に際して必ずしも事前の理由を必要としないし,事前と事後とで理由が入れ替えられたり,事後的に想起された理由が誤っていたり,他人に理由を説明するときにはそうでないときと異なる理由が採用されたりする.
著者
根来 龍之 後藤 克彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.40-51, 2005-12-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
10

本稿では,技術革新をきっかけとした既存品と代替品の代替構造を分析し,代替戦略の構築方法を提案する.まず,代替品と既存品の関係を4つに分類し,各分類毎に代替品企業の攻撃戦略と既存品企業の防衛戦略の定石を示す.次に,提案するフレームワークをICタグの事例に適用して,方法の有効性を例示する.代替品と既存品は,買い手のニーズをそれぞれの製品機能によって取り合う構造になっている.この機能に着目する考え方が本稿に一貫する着想である.
著者
恩蔵 直人
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.19-26, 2006-03-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
15

市場のコモディティ化に伴い,従来の市場参入戦略は大きな見直しを迫られているように思われる.特に経験価値など,顧客にとっての新たな価値に関する研究成果が蓄積されることにより,単に市場参入順位が遅いというだけで,後発ブランドとして処理できない状況に直面しつつある.本稿では,経験価値,品質価値,カテゴリー価値,独自価値といった4つの顧客価値に注目し,市場参入戦略の新しい枠組みについて考察した.
著者
小川 進
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.27-39, 2006-03-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
32

本稿は,近年台頭してきているユーザー起動法(User driven method:UD法)が持つ潜在力を引き出す条件につい て考察した.本研究は株式会社良品計画の事例を分析し,UD法を使って開発した製品が高い新規性と販売実績を実現できること,そのためにはいくつかの補完的資源と仕組み上の工夫が必要であることを明らかにした.最後に,UD法の実践においてブランド・コミュニティが重要な役割を演じる可能性があることを指摘した.