著者
半田 健壽
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-5, 2005-02-20

日本理学療法学術大会(以下大会)は今回で39回を迎えた。宮城県理学療法士会の担当で平成16年5月27日(木)から29日(土)の3日間にわたり, 「病気障害, そして健康-理学療法学の近未来に向けて」をテーマに行われた。大会開催は, 10数年前からの開催構想, 士会で開催のコンセンサスを得ることまで含めると5年間にわたる準備の一大プロジェクトであった。特別講演をはじめ多くの企画に加え, 一般演題もこれまでの最高の1,059題(応募数は1,070題)に昇り, 参加者総数は4,910名, うち有料参加者数2,782名を数え, 活発な学術交流が図られたことは喜ばしい限りである。 本稿は大会長基調講演の発表を元に加筆し, 作成したものである。 大会開催に当たって 日本理学療法士協会(以下協会)は会員数も3万名を超え, 大会への参加者も前述の通り増して来た。日本で理学療法制度の誕生より約40年の間に多くの変化があったが, 中でも理学療法の理論的背景は大きく変化している。
著者
宮川 哲夫 高橋 仁美
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.177-182, 2005-06-20

人口の高齢化, 喫煙, 環境の変化に伴い慢性閉塞性肺疾患(COPD)は, 世界的に増加の傾向にある。世界的なCOPDの治療ガイドラインもまとめられ, 呼吸リハビリテーションは包括的内科治療と供に治療の第一選択であり, そのエビデンスも十分に確立されてきている。一方, COPDを中心とした慢性呼吸不全の在宅呼吸ケアには, 在宅酸素療法(HOT)と在宅人工呼吸療法(HMV)があげられるが, いずれも生活支援を行い, 日常生活機能を改善させ, 健康関連QoL(HRQoL)を改善させる包括的な呼吸リハビリテーションの一環として実施されなければならない。ここでは在宅呼吸リハビリテーションについて概説する。COPDの疫学 2001年に行われたNICE(Nippon COPD Epidemiological)study(日本慢性閉塞性肺疾患疫学調査)によれば, 我が国でのCOPDの発症率は40歳以上で8.5%およそ530万人と推定されており, 2000年には初めて死亡原因の第10位となった。現在, COPDは世界の死亡原因の第4位であり, 有病率や死亡率は数十年の間にさらに増加し, 2020年には第3位と予想されている。
著者
望月 かほる
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.236-240, 1991-05-10

練馬区は, 東京都23区の北西部に位置し, 面積は48km^2で, 23区の中では世田谷区, 足立区, 大田区についで5番目の広さである。区の面積の90%は住宅地であり, いわゆる東京のベッドタウンとして発展してきた。平成3年1月1日現在の住民基本台帳に基づく人口は 612,975人, 世帯数は 247,600世帯であり, 65歳以上の人口は 59,866人で, 区内総人口の 9.8%を占めている。23区内では比較的高齢化率の低い方の区に属している。当区における脳卒中による死亡率は, 訪問指導が開始された昭和53年度は第2位の34%であったが, 昭和63年度は第3位の14.2%と減少してきている。区内にある医療機関は病院, 診療所を合わせて440所だが, そのうち150床以上の総合病院は2所しかなく, これら総合病院には常勤理学療法士は置かれていない。また, 運動療法の施設認可基準病院は, 47床規模の1施設のみである。大きな人口をかかえながら本格的な医療設備をもった病院の数が少ない練馬区において, 医療終了後の在宅住民に対して, 機能回復訓練など保健事業の実施主体である保健所は重要な役割を担っている。以下, 練馬区の保健所・保健相談所が行っている訪問指導, 機能訓練の状況をまとめてみた。
著者
古賀 稔啓
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.233-236, 2005-06-20

障害者スポーツの代表的なものとして車椅子バスケットボールがあるが, 最近は障害に応じた多種多様なスポーツの選択ができるようになり, 多くの障害をもった人たちが生活の中でスポーツを取り入れ, また日常生活において介助を必要とする重度の障害をもった人たちもスポーツに挑戦できる時代になってきた。重度脳性麻痺者がスポーツをするために必要となる競技用具が研究開発されるようになってきたことが重度障害者がスポーッ参加できるようになった要因である。本稿では, 個々の障害に応じた競技用具の工夫について紹介する。足蹴り用レーシング車椅子 脳性麻痺でも上肢機能が下肢機能よりも劣っている場合に, 下肢で車椅子を駆動させてスポーッを行うための車椅子である。下肢で地面を蹴って駆動させるために, 後ろ向きでの走行になる選手もいる。その場合の車椅子では, キャスター部分が背側に付けられており, ハンドル操作は体側部分に付けられたハンドルレバーの操作で行われ, キャスター部分と連結しており, ダンパーを取り付けることでハンドルレバーを触らない時は直進できるようになっている(図1, 2)。
著者
金谷 さとみ
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.285-287, 2005-06-20

社会情勢と臨床教育 地域で暮らす要介護高齢者, 障害者およびその家族は保健, 医療, 福祉にまたがるサービスニーズを持っており, 地域での関係機関, 職種間の連携は非常に重要なものとなる。介護保険制度の導入で要介護(支援)高齢者におけるものはかなり整備されたが, 介護保険対象外の障害者においても同様の整備がすすんでいる。現在, 保健, 医療, 福祉の方向性は, 入院期間の短縮と在宅ケアの推進へ, そして中央機関から地方機関へと大きく流れを変え, 理学療法は理学療法士の数が圧倒的に少ない現状と, 増加を見込まれる将来を踏まえ, 前述のような社会変化とともに, その役割も少なからず変化していくものと考えられる(図1)。生活支援系での理学療法は, 医療施設で一時的に提供される機能回復とは異なり, 長期的な経過の中で提供される機能回復, 機能維持(または低下の予防), 機能低下への適切な対応と捉えることができる。そして, その目的は対象者の生活全体を支援し, (本人の望む)社会参加や社会活動を促すことにあり, つまり, それは保健, 医療, 福祉のみならず, 教育, 雇用, 都市計画などを包括するノーマライゼーション(normalization)を目的とする考え方に到達する。
著者
西田 裕介 久保 晃 田中 淑子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.29-31, 2002-02-20
被引用文献数
3

日本人の20歳代健常成人105名を対象に, 前腕長および下腿長と身長との関係を検討し, 各肢長と身長との関係を分析した。測定方法は, 身長は, 背臥位にて頭頂から足底までを計測した。前腕長は, 端座位にて上腕骨外側上顆から橈骨茎状突起まで(以下 : 前腕長(1)), 肘頭から橈骨茎状突起まで(以下 : 前腕長(2))を計測した。下腿長は, 背臥位にて膝関節外側裂隙から外果下端まで(以下 : 下腿長(1)), 腓骨小頭から外果下端まで(以下 : 下腿長(2))を計測した。統計学的手法には, 各肢長の測定値と身長においてピアソンの相関係数の検定を用い, また, 目的変数を身長, 説明変数を前腕長(2)・下腿長(2)とする重回帰分析を行った。ピアソンの相関係数の結果より, 全体および男性においては身長と高い相関関係を示した(男性 : r=0.65〜0.85,全体 : r=0.76〜0.86)。一方, 女性では男性および全体と比較すると相関係数が低かった(r=0.57〜0.70)。重回帰分析では, 女性においても高い相関係数が得られ(男性 : r=0.89,女性 : r=0.81,全体 : r=0.92), 重回帰分析より求めた回帰式を用いることで, 身長の推定が可能であると考えられる。このことは, 身体に高度な変形を呈する症例や立位保持が困難で身長の測定が不可能な症例に対して, 栄養状態や体格を把握した上で理学療法を実践する際に有意義であると思われる。
著者
竹澤 実 佐々木 誠
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.128-133, 2002-06-20

今回我々は,高橋らが慢性閉塞性肺疾患患者の評価のために開発した非支持上肢漸増運動負荷試験(Unsupported Incremental Upper Limb eXercise test ; UIULX test)の妥当性と,上肢使用日常生活活動との関連を若年健常女性14名を対象に検討した。UIULX testは高橋らの方法に従って行い,クリアーしたstageを記録した。上肢使用日常生活活動は,「棚に物を載せる」動作,「洗濯物を干す」動作,「食毒動作」,「洗面動作」,「整髪動作」,「更衣動作」の6項目とした。それぞれ呼吸循環反応と上肢,全身の自覚的運動強度を測定した。UIULX testではstageと全てのパラメーター間に有意な正の相関を認め,運動負荷試験としての妥当性の一部が確認された。上肢使用日常生活活動の各項目間では酸素摂取量,酸素脈,上肢・全身の自覚的運動強度は,活動間に有意な差を認め,心拍数,呼吸数,一回換気量では差は有意ではかった。次に,UIULX testの結果から,各パラメーターをUIULX testのstage値に換算した上で,活動内で値を比較したところ,整髪動作はパラメーターに差は認めなかったが,他の活動はパラメーター間に有意な差を認めた。UIULX test使用により上肢使用日常生活活動の運動特性が示され,UIULX testの臨床応用への可能性が示唆されたと考える。
著者
岡西 哲夫 大橋 哲雄 梶原 敏夫 奥村 庄次
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.535-541, 1991-09-10
被引用文献数
2

肘関節拘縮著明な6症例(骨折3例, 授動術3例)に対し, 他動的ROM訓練として徒手による方法と, ターンバックル式肘装具による方法を筋電図学的に検索した。他動的ROMの目的は, 筋の防御的収縮を低下させ, 結合組織の因子まで到達することにある。筋の防御的収縮の因子により制限されたものは徒手の方法であり, 装具による方法は疼痛は少なく, この因子を比較的低下できた。ターンバックル式肘装具は, 徒手では限界である弱い伸張力と長い時間の組み合わせと, ROMの長時間の保持等の利点から, 訓練後のROMのもどりを減少できたものと考える。本装具は開始時期を従来より早め, 使い方をきちんと教育すれば最も理にかなった方法と言える。
著者
池添 冬芽 市橋 則明 羽崎 完 森永 敏博
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.59-63, 2001-03-31
被引用文献数
1

本研究の目的は, 段差昇降動作における昇降動作様式の違いおよび下腿の肢位によって, 膝周囲筋の筋活動がどのように変化するかを明らかにすることである。対象は健常女子学生18名であった。測定筋は右下肢の大腿直筋, 内側広筋, 外側広筋, 半膜様筋, 大腿二頭筋とし, 前方昇降動作と後方昇降動作をそれぞれ下腿中間位, 下腿内旋位, 下腿外旋位で行わせたときの筋電図を分析した。前方昇格および後方昇降動作の筋活動量を比較すると, 大腿直筋, 内側広筋, 外側広筋においては前方昇降動作より後方昇降動作の方が有意に大きな筋活動量を示した。また, 下腿の肢位による変化は, 内側広筋, 半膜様筋, 大腿二頭筋において認められ, 内側広筋, 大腿二頭筋では下腿外旋位, 半膜様筋では下腿内旋位で最も大きな値を示した。これらのことから, 段差昇降訓練を行う場合, 段差昇降様式の違いではハムストリングスに対する負荷は変化しないが, 大腿四頭筋に対しては, 前方昇降より後方昇降させる方が大きな負荷量が得られること, さらに内側広筋をより収縮させたい場合には下腿外旋位で段差昇降を行うことが有効であることが示唆された。