5 0 0 0 OA 弱いロボット

著者
岡田 美智男
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.503-507, 2022-08-01 (Released:2022-08-01)
参考文献数
11

かつてはアニメやSFの中にあったロボットも,今では街角でも目にするものとなり,お掃除ロボットなどに姿を変えて,多くの家庭にも入り込みつつある.自動運転システムや「メタバース」なども,数年後には現実のものとなるのだろう.ただ,筆者らの関心は,このところの高性能や利便性を謳(うた)うロボットや人工知能技術にあるのではない.改めて考えれば,ロボットや人工知能にも(そして,私たちにも),不完全なところはたくさんある.こうした弱さを隠すことなく,適度にさらけだしてみてはどうだろう.本稿では,周りからの手助けを上手に引き出しながら,ゴミを拾い集めてしまう〈ゴミ箱ロボット〉,モジモジしながらティッシュを手渡そうとする〈アイ・ボーンズ〉,子どもたちの昔話を語り聞かせようとするも,時々大切な言葉をモノ忘れしてしまう〈トーキング・ボーンズ〉など,どこか不完全で手のかかる〈弱いロボット〉たちのことを紹介しながら,お互いの「弱み」を補いつつ,その「強み」を引き出し合うような,人とロボットとの優しい共生の姿について考えてみたい.
著者
笠田 竜太
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.760-764, 2022-12-01 (Released:2022-12-01)
参考文献数
14

局所領域の機械的強度特性を評価することが可能な超微小試験技術であるナノインデンテーション試験の要点やTips,押込硬さとビッカース硬さの相関について説明します.試験規格や教科書では見落としがちな項目や,実際の測定における注意点について主に金属材料を対象とした測定に基づいて説明します.また,応用例としてマイクロピラー圧縮試験による評価の例も紹介します.
著者
大友 明 相馬 拓人
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.340-345, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)
参考文献数
40

電気化学反応は,エネルギーの変換や貯蔵に広く用いられている.リチウムイオン2次電池の基本原理は,電極活物質である遷移金属酸化物へのリチウムイオンの脱挿入であり,遷移金属酸化物はそれと同時に大量の電子を授受する.この電気化学なキャリアドープを強相関電子系の物質に適用すると,さまざまな電子相転移を引き起こすことができる.高い結晶性を有する薄膜を用いた場合,それらの電気伝導性,光学特性,結晶構造に関する情報が得られ,電子状態を詳しく調べることが可能となる.筆者らは,バンド絶縁体,モット絶縁体,重い電子系金属,超伝導体を対象に,電気化学セル中で薄膜試料の電子状態を可逆的に制御する手法を確立した.この手法は,単一試料における精密な電気化学ドープを実現し,それによって変調された電子状態をその場で計測するための強力なツールになりうる.超伝導ドームや量子臨界現象の観測にも適用することが可能になりつつある.本稿では,これまでの研究で得られた成果を紹介し,本手法の有効性と適用範囲を明らかにしながら今後の可能性を展望する.
著者
川北 宇夫
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.223-228, 1959-04-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
10

Our daily task of shaving is discussed in this article. Shaving touch, which is quite a vague notion and involves many factors, is very difficult to treat quantitatively. The writer, who reported informer articles a new method to measure bevel angle of razor blades, investigates the relationship between the actual shaving touch and the physical quantities such as top edge radius, top edge angle, paper-or string-cutting value and so on. The factors which dominate shaving touch are classified into three groups: physical factors, physiological factors and pre-shaving treatments. “Pulling” effect in shaving is desired to be possibly small, which means that the top edge radius of blade should be small. “Planning” effect is also very important in actual shaving. If the top edge angle is large, the “planning” is diminished and the shaving touch to the skin is mild. But if the top edge angle is too large, the touch to the skin is slack and we can not get satisfaction in such a shave. “Stropping”effect of shaving was found by the writer in this investigation: the edge which had been deteriorated artificially by repeated paper cutting tests was found sharpened after actual shaving. The rough-hone angle is not an important factor in shaving touch. Concerning the holder of blade, the shaving angle is of much importance. Sound effect, resistant feeling to the hand, sensation of pain by “pulling” and distribution of string cutting value are also discussed in this article.
著者
武者 利光
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.429-435, 1985-05-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
10
被引用文献数
1

心拍周期の変動,打鍵運動をするときの時間間隔のゆらぎ,アフリカマイマイの自励発振ニューロンの発振周期変動は,すべて1/f型のパワースペクトル密度をもっている.さらに,神経軸索にリンダムに励起された活動電位スパイク列は軸索の非線形性により1/ƒ型の密度変調を受けて安定化する.このように1/fゆらぎは生体と深い関係をもっているが,1/ƒゆらぎは情報の不確定さを一定に保つという特別な機能をもっている.
著者
原 乙未生
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.11, no.12, pp.600-601, 1942 (Released:2009-02-09)
参考文献数
2
著者
村田 和美
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.763-770, 1971-07-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
41
著者
森田 隆二
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.352-356, 2010-04-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
4

コヒーレンスという言葉は,物理の多くの分野で使われる言葉である.「可干渉性」を表すことは知っていても,どうもその物理的意味のイメージがわかない読者もおられよう.光を題材として,さまざまなところに現れるコヒーレンスについての定量的な定義,コヒーレンス時間,コヒーレンス長さ,物質(量子系)のコヒーレンスについて,その概要を説明する.
著者
山口 彦之
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.412-417, 1975-04-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
27
著者
宇佐美 光雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.73, no.9, pp.1179-1183, 2004-09-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
6

広範囲な個別認識応用に向けて,0.4mm角の超小型無線認識(RFID)ミューチップを開発した.このチップの厚さは0.06mmであり,有価証券や各種金券などの紙媒体に適用することを考慮している.適用した半導体プロセスは0.18µm CMOS技術であり,配線総数は3層である.チップ内の128bitのメモリーデータを2.45GHzのマイクロ波で読み取ることができる.最小チップ動作電圧は0.5Vである.このチップは薄型の外付けアンテナに異方導電性接着剤(ACF)にて接続される.今回はさらに,0.4mm角の超小型アンテナを内蔵したミューチップについても述べる.
著者
山田 良隆
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.360-367, 1993-04-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
27

最近のカラーフィルムの画質向上の進歩は著しい.色再現性の面でも鮮やかな色再現が可能なフィルム,忠実な色再現を目指したフィルム,肌色再現の良好なフィルムなど従来にない特長ある製品が最近開発されている.本稿では主にカラーネガフィルムーカラー印画紙系の色再現の進歩をまとめ,どのような技術が開発されてきたかを解説する.
著者
鈴木 達朗
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.508-512, 1982-05-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
20

戦後の光学設計は微分補正法から始まり,次いで電子計算機の発展に伴い自動設計へと続いた.自動設計では,まず単一評価関数なるものが考えられた.これは,例えば収差の螢乗和といったものであり,これを最小にするように,各屈折面の曲率半径,間隔,屈折率,分散等を決めるものである.この最小化の方法として各種の方法が提案された.また個々の収差をそれぞれ独自に指定された値,あるいは範囲の中に収めようとする方法も提案された.これら種々の提案に対して実験,実用化の工夫が続けられ,今日に至っている.さらに評価関数自体の見直しなども行なわれた.
著者
武者 利光 北原 和夫
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1688-1695, 1989-12-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
32
被引用文献数
1

本稿では, 1/f; ゆらぎの実験・理論の現状を概説するとともに,非平衡統計物理としての問題点を指摘する.特に,線形応答係数のエネルギー損失に関わる部分が1/fゆらぎをしていることに注目する.また, Hooge の式の解釈として,電子は独立にフォノンによって散乱されるが,フォノン自体は長距離相関をもって1/f ゆらぎをしていることを述べる.
著者
佐藤 勝彦
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.880-885, 1999-08-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
4

応用物理学研究者に興味あると考えられる宇宙物理学の2つの話題, (1) 中性子星などの超高密度天体の物理とその形成,および (2) 力の統一理論に基づいた宇宙の量子的創生論,および現在,初期宇宙研究のパラダイムとなっているインフレーション理論について解説する.
著者
池上 英雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.212-219, 1991-03-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
11

制御熱核融合研究は今日大きな転換期にある.それを刺激するかのように, 2年前,フライシュマンとポンスによって常温核融合が発表され,科学界の大きな話題となった. 21世紀のエネルギー源に確かな見通しをもたない人類にとっては,わらをも〓む思いのひと筋の可能性である.制御熱核融合研究の現状と対比させて,常温核融合の意味を考察する.発表より2年を経た常温核融合の現状を中性子やトリチウムなど核反応生成物の検出を中心に紹介し,問題点の指摘と検討を行う.常温核融合現象のカギは水素吸蔵金属の物性にある.今後の研究推進には,現象の再現性をもたらす要因の見極めが不可欠である.
著者
前田 弘
出版者
The Japan Society of Applied Physics
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.524-530, 1989

1987年クリスマスイブに,新しいBi-Sr-Ca-Cu-O系高温超伝導体がこの世に現れた.この物質は,超伝導遷移温度, <i>T</i><sub>c</sub>が初めて100Kの大台を超えたため,応用的観点から多くの注目を集めた.と同時に,超伝導を支配するCu-O面を積み重ね,その枚数を増やすことによって処を上昇させることが可能となる,という高温超伝導発現機構に関する理論的展開にも新しい知見を与えたといえよう.さらにこの発見は,当時漂いかけていた「Y-Ba-Cu-O系以上の高温超伝導体はもうないのではないか」という暗雲を払いのけるとともに,「まだまだ高温超伝導体はあるよ」という希望と勇気を多くの人に与えたように思われる.本稿では,この発見に至った経緯とそれに関連して研究に対する考え方,取り組み方について私見を述べる.