著者
城間 理夫
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.20, pp.169-190, 1973-12

この報告は沖縄におけるパインアップルの蒸発散量について熱収支法による1つの測定実験結果をまとめたものである。測定は琉球大学構内においてライシメーターに栽培してあるスムースカイエン種の株について1972年の夏に約1か月間にわたって行なった。各株は植付後15か月ないし16か月経過していて葉面積指数は4.1∿4.3であり結実期に入ったものであったが, これらの株に対するかん水は常にじゅうぶんに行なわれていた。全測定期間のうちで降雨や強風などがなくて測定条件の比較的によかった9日間の測定結果をまとめると次のとおりである。1.夏期, 結実期に入ったパインアップルの蒸発散量はくもりの日に約1.3mm/day, 晴天の日に約2.7mm/dayで, 全平均は2.1mm/dayであった。2.パインアップルの植被上における昼間の各熱収支項の平均の大きさは, 純放射100に対して潜熱伝達量40,顕熱伝達量56,地中伝熱量4のオーダーであった。3.パインアップルの植被上におけるアルベドは日出, 日入のころを除き平均0.15で他の作物に比べて小さい方であった。4.熱収支法によるとパインアップルの夜間における蒸発散量はほとんどゼロになる。
著者
四方 治五郎 江川 義和 宮良 生金 知念 功
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.25, pp.p185-193, 1978-12

オニヒトデ胃部に存在するコラーゲナーゼ, 酸性プロテアーゼはいずれもその至適pHは2.0附近にある。両酵素を硫酸アンモニューム沈澱, セファデックスG-150カラムクロマトグラフィに依り分離を試みたが成功しなかった。又CM-セルロースに依り両酵素活性は吸着されず, DEAE-セルロースに依っては両酵素とも若干吸着され, 吸着の程度においてコラーゲナーゼの方が強く(殊にpH5.0において)吸着された。EDTAを外液とする透析に依る両酵素活性の失活の程度, Ca^<++>イオン, Zn^<++>イオンに依るその賦活において両酵素において著しい差は認められなかった。然しコラーゲナーゼの方がその金属イオン要求度において強かった。以上よりして両酵素が同一タンパクではないにしてもその性質が著しく似ていることが明かとなった。ペプシンに特異的阻害剤によりオニヒトデ胃部酸性プロテアーゼが阻害されない所から, 本プロテアーゼはペプシン様酵素ではなく, この酸性プロテアーゼ標品に含まれるコラーゲナーゼ活性は酸性プロテアーゼがペプシン様酵素であるが故のものでないことを明かにした。
著者
平山 琢二 田崎 駿平 藤原 望 眞榮田 知美 大泰司 紀之
出版者
琉球大学農学部
巻号頁・発行日
no.59, pp.25-27, 2012 (Released:2013-12-26)

西表島周辺におけるジュゴンの定着の可能性について調査する目的で、ジュゴンによる食痕調査およびジュゴンに関する伝聞や目撃情報などの聞き取り調査を行った。食痕調査では4地域を行った。また、聞き取り調査では石垣島および西表島で計41名を対象に行った。ジュゴンの食痕調査では、いずれの地域においてもジュゴンによる食痕は確認できなかった。また、ジュゴンの目撃に関する情報は、石垣島および西表島ともに全くなかった。伝聞に関しては30件の情報を得た。このようなことから、今回のジュゴンの食痕調査および聞き取り調査から、現在は西表島周辺にジュゴンは定着していないと思われた。しかし、かつてジュゴンが棲息していた地域における海草藻場の広がりは極めて良好であり、南西諸島海洋の生物多様性の面からも非常に重要な地域である。西表島西岸は、定期船の往来も少なく、良好な藻場を有していることから、西表島におけるジュゴン定着の可能性は極めて高いものと推察された。
著者
日越 博信 宮城 寿満子 諸見里 淳子 平川 守彦
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.45, pp.35-41, 1998-12

沖縄県内のヤギ飼養農家22戸, 73頭の糞便由来大腸菌合計822株について, 7薬剤に対する感受性試験を, また耐性菌については伝達性Rプラスミドの検索も行った。これらの成績を給与飼料別(野草のみと野草+穀類), 地域別(北部と南部)に比較した。7薬剤のいずれかに耐性の大腸菌は, 全体では147株(17.9%)であった。給与飼料別の検出率では野草のみが17.2%, 野草+穀類が18.7%でほぼ同率であった。しかし, 野草のみでは北部31.8%, 南部5.7%で, 前者が高率であったのに対し, 野草+穀類では北部17.8%, 南部19.2%でほぼ同じであった。薬剤別ではCTC耐性が11.3%で最高, 以下SA, ABPC, SM, KM, CP耐性の順であり, NA耐性は検出されなかった。野草のみでは, CTC耐性が両地域とも1位の検出率を示したが, 野草+穀類では, 北部でCTC耐性が1位を, 南部でABPC耐性とSA耐性が同率1位を示すなど, 若干異なった。耐性型の種類は, 全体では5剤型を除く単剤型から6剤型まで17種類認められた。野草のみでは北部6種類, 南部8種類, 野草+穀類ではそれぞれ3種類と6種類であり, いずれも南部が多かった。また6剤型は南部の野草+穀類でのみ検出された。野草+穀類では2剤以上の薬剤に耐性の多剤耐性型が大多数を占め, 特に南部の全株が多剤耐性型であったが, 野草のみでは50&acd;56%が逆に単剤型であった。耐性菌147株のうち, 17株(11.6%)が伝達性Rプラスミドを保有し, 野草のみ9株(北部8株, 南部1株), 野草+穀類8株(南部のみ)であった。これら菌株の伝達耐性型は, 野草のみの9株がCTC単剤伝達性, 野草+穀類では5株がSM単剤伝達性, 3株がSM-SA2剤伝達性であった。
著者
東 清二
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.125-140, 1976-12-01

イワサキクサゼミMogannia minuta Matsumuraの生活史と, 1963年以来サトウキビ圃場において発生密度が増加した原因について調査した。その結果次のことが判明した。(1)25℃, 30℃における卵期間は, 平均でそれぞれ42日, 32日であった。(2)鉢植えサトウキビで飼育した幼虫の1齢終了日はふ化後33&acd;36日, 2齢は63&acd;66日, 3齢は165&acd;170日, 4齢は300&acd;305日, 5齢は640日以後と推定された。また幼虫期間は個体間差が大きいこともわかった。(3)鉢植えサトウキビ及びススキで幼虫を飼育した結果, サトウキビでは2年で羽化する個体が多く, ススキでは3年で羽化する個体が多かった。(4)サトウキビ圃場の更新により幼虫個体数が約95%も減少することがわかった。(5)サトウキビ圃場の成虫は羽化直後平均541個の卵を有しているが, 死後の卵巣内残存卵数は125個で, 約400卵産下することがわかった。ススキ原の成虫はそれぞれ504個, 204個で約300卵産下する。サトウキビ圃場の成虫は産卵数が多いと推定された。(6)天敵は25種類確認された。農薬散布によりアリ類は19&acd;33%の個体数に減少し, クモ類の個体数は26&acd;55%に減少する。(7)これらのことからイワサキクサゼミがサトウキビ圃場において発生するようになったのは, セミの発育経過日数が個体により差があること, 及び株出栽培の増加によりサトウキビ圃場が耕起されずにセミの1世代期間以上も安定した状態で続いたことによるものと考えられた。一度サトウキビ圃場で発生するようになったセミは, 1世代期間が短縮したこと, 産卵数が増加したこと, 株出サトウキビにおいて産卵数が多いこと, 農薬散布によって天敵が減少し, セミの生存率が高くなったことなどで個体数が増加したと判断された。すなわち品種の変遷や栽培方法の変化によってイワサキクサゼミは重要害虫になったものと判断された。
著者
平川 守彦 日越 博信 及川 卓郎 宮城 悦生 糸満 裕 平山 一浩
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.79-84, 1988-12-05
被引用文献数
1

本試験は野草地を蹄耕法で放牧地化し低コスト肉牛生産の可能性と問題点を探ぐることをねらいとした。約5ヘクタールの野草地を3牧区に分け平均体重350kgの黒毛和種去勢牛3頭を輪換放牧し放牧牛の食草行動を観察した。また, 数種野草の化学成分や乾物消化率を測定した。野草地におけるエネルギーの流れも調べた。その結果, 沖縄にはいまだ第2次大戦後の不発弾が数多く残っているため大型機械や火入れによる草地造成はひじょうに危険で牛による蹄耕法のほうが安全性や環境保全, 低コストなどの点でもっとも適した方法であると思われた。放牧牛の食草行動から有用な野草と思われるのはいくつかあったがその中でもハイアワユキセンダングサやノアサガオは他の野草と比べ嗜好性, 栄養価, 乾物消化率が著しく高く有望と思われた。野草の嗜好性順位は粗蛋白含量と正の相関, 粗繊維含量と負の相関関係が認められた。試験期間中の体重1kg当たりの採食量は1.8&acd;3.9%であった。乾物消化率は著しく低く35&acd;46%の範囲であった。日増体量は最高値0.88kgを示し, 平均値0.52kgであった。野草地における光エネルギー利用効率は植物蓄積エネルギーと可消化エネルギーの段階で低かった。その結果, 増体蓄積エネルギーはオーチャードグラスやバヒアグラスより低い値であった。以上のことより野草地における光エネルギー利用効率の低い箇所とその原因が推察された。これらの点を改良すれば野草地放牧での低コスト肉牛生産は可能であると思われる。
著者
米盛 重友 田盛 正雄
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.439-447, 1976-12-01

近年, 日本において分布が急速にひろがりその撲滅対策が大きな社会問題となっているセイタカアワダチソウ(Solidago altissima L.)の沖縄における分布状況, 生態的特性および他の雑草との共存関係などについて調査研究を行なった。その結果を要約すると次のとおりである。1.分布状況 那覇市天久外人住宅地周辺 具志川市平良川県道10号線沿い2.生態 那覇市天久の群落を4つの母集団に分けて調査を行なった。本数は, Aプロットでは1550±295本, Bプロットは13000±980本, Cプロットは14600±1520本, Dプロットは1290±141本であった。草丈は, Aプロットでは平均173cm, Bプロットは29.8cm, Cプロットは152cm, Dプロットは148cmであった。種子数について, Aプロットの花枝数は9本, 総包数1951個, 総種子数29265個, Bプロットの花枝数は9本, 総包数72個, 総種子数1008個, Cプロットの花枝数は23本, 総包数1541個, 総種子数23115個, Dプロットの花枝数は21本, 総包数1365個, 総種子数19110個であった。花の期間は, A, CおよびDプロットでは9月中旬から11月上旬まで, Bプロットでは9月中旬から翌年1月上旬頃までであった。萠芽数は, 1株当り4.6本である。地下茎の芽数は, 1株当り4本である。地下茎から出芽した株数は, 前年度開花した株数33本から162本出芽し, 1株当り4.9本である。生活型は, Ch, D_1,R_3,Prである。
著者
城間 理夫
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.63-72, 1988-12-05

沖縄県宮古島では収穫時のサトウキビブリックスが, 1984/85と1985/86の両収穫年期に異常に低かった。この低ブリックスの一つの原因として気象現象の影響があったか否かをみるために, サトウキビのほ場ブリックスと第1汁ブリックス総刮値の資料および気象資料を使って単純相関解析, 相関図解析, および重回帰解析を行った。解析に使用できた資料は十分ではなかったが, 入手できた範囲の解析から次の傾向が見出された。1. 1985/86年期の10月上旬のほ場ブリックスが低かったのはその直前の7月-8月の多雨と風向変化の激しかった台風との二つの影響も大きかったためであると考えられる。しかし, この多雨と風向変化とのそれぞれの影響を別々に量的に推定することはできなかった。2. 1984/85年期の10月上旬のほ場ブリックスは低いほうであったが, その原因をその直前の9月以前の気象の推移(台風, 降雨量など)によって説明することはできなかった。3.上記二つの収穫年期連続の低ブリックスに関連して, 両年期とも収穫期直前の10月以後のブリックスがあまり上昇しなかったが, これはこの10月以後の気象の影響もかなりあったことがある程度説明できる。4.この解析は従来の栽培方法によって生育したサトウキビについて行ったものである。さらに良い栽培方法の下で生育したサトウキビは, ある程度の気象のマイナス面に対しても本報告におけるほどのブリックス低下に至らなくなる可能性がある。これについては今後資料の蓄積を待って調査したい。5.さらに精度の高い調査研究結果を得るためには, 降雨量, 台風, およびこれらと関連したサトウキビの生理生態のおのおのについて一層の研究と資料の蓄積が必要と思われる。
著者
張 琳 米盛 重保 上里 健次
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.41-48, 2005-12-01

本調査研究では、ヒカンザクラの開花性における同一地域内の個体間差、地域間差および花芽の発育と花部器官の個体間差について比較検討した。調査は奥国道沿い、八重岳の高位、中位、低位所、嘉数公園、琉球大学内、与儀公園、八重瀬公園で実施した。得られた結果の概要は次のとおりである。1.同一時点の各調査地域における個体間差は幅広く見られた。また各調査樹の開花開始、満開、開花終了日および開花期間の長さにおいてもかなりの個体間差が確認された。2.沖縄におけるヒカンザクラの開花は、地域間では北部から南部へ移行することが認められ、また山地においては標高の高い所で早く咲くことが明確であった。これらのことは、北部および高所では開花に重要な低温遭遇の条件をより早い時期に満たされることを意味し、亜熱帯性サクラ特有のやや高い温度に反応する習性が早期開花の主要因と考えられる。3.花部器官の形態的な特徴にも標準とは異なる6枚の花弁、2本の雌ずいなどの変異が見られ、ヒカンザクラの花部器官もより多様であることが確認された。4.花色濃度の判別に対して、Adobe PhotoShopのRGB三原色分析をもとに、花色濃度指数を規定して花色の濃度差を比較した。この花色濃度指数は実際の花色の濃淡に即しており、利便性が高いと判断された。5.ヒカンザクラは早期開花を示すにもかかわらず、花弁形成、雄ずい形成、雌ずい形成時期は遅く、これには花芽の後半の発育が短期間になされることが考えられる。6.調査対象としたものはすべて実生由来ものであり、遺伝的には雑種であることから、開花性、花部器官における個体間差が生ずるのは当然のことで、その発現に当たってはむしろ環境要因よりも植物側のもつ遺伝性がより重要であると考えられる。
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 = The science bulletin of the College of Agriculture, University of the Ryukyus (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.56, pp.49-54, 2009-12

沖縄におけるアリの生物的害虫防除への利用に向けた第一歩として、沖縄島の7ヶ所の圃場(そのうち6つはハウス)におけるアリ相と個体数の季節変動を約1年間調べた。ピットフォールトラップ法を用いて圃場の中とすぐ外の屋外環境で調査を行った。栽培作物はラン、ドラゴンフルーツ、ナス、ゴーヤ、サトウキビ、ピーマンであった。屋外、ハウスに限らずアリ類は気温が低い1月から3月は採取個体数・種数ともに少なく、気温が高い5月〜10月にかけて採取個体数・種数ともに多かった。栽培作物によるアリ相に大きな違いはみられず、オオシワアリ、タロヒメアリ、ブギオオズアリ、ミナミオオズアリの遍在性が高く個体数も多かった。沖縄島の圃場でアリを害虫防除資材として利用する場合、これらの種が高温期に利用できる可能性があると考えられる。その一方で優占種の多くは外来の放浪種であり、利用時にはその侵略性のリスクの検討も必要である。
著者
新城 俊也 宮城 調勝 小宮 康明 島袋 進
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.183-190, 1990-12-05

3種類のさんご砂について排水せん断試験を実施した。結果を要約すると次のようである。1) さんご砂はさんご,貝類,石灰藻,有孔虫,うになどのさんご礁に棲息する生物の石灰質遺骸であり,場所によって粒度,粒形などの粒子特性が異なるが,炭酸カルシウム含有量が95%以上の石灰質砂である。2) 同じ相対密度でも砂ごとに密度に差があり,大きな間隙を形成する砂は緩詰め砂に類似した挙動,また小さな間隙を形成する砂は密詰め砂に類似した挙動を示し,応力&acd;ひずみ挙動は粒子特性によって決まる間隙比の大きさに支配される。3) 同じ相対密度でも大きい間隙比を形成する砂はせん断過程での粒子破砕が顕著であり,粒子破砕はダイレイタンシーなどの変形挙動に影響を及ぼす。4) 粒子破砕は側圧による強度増加の割合を減少させ,強度特性にも影響を及ぼす。5) 排水ヤング率E'は拘束圧σ'_cの増加とともに増大し,これらは式(3)の関係で表せる。一方ポアソン比νは拘束圧の増加に伴って減少し,これらは式(4)の関係で近似できる。
著者
秋永 孝義
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.325-329, 1975-12-01
著者
石嶺 行男
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.95-185, 1987-12-05

沖縄県の基幹産業の首位は依然として糖業によって占められ, 糖業は県経済の安定維持を図る上で極めて重要な役割を果している。イネ科作物のサトウキビは糖業の唯一の原料として県内のほとんど全域にわたって栽培されており, 栽培面積は総耕地面積の70%を超える。サトウキビを栽培している農家世帯は総農家数の85%以上におよび, その生産は農業粗生産額の30%前後に相当する。他方, 沖縄県は高温多湿な亜熱帯に位置し気候が海洋性であるため雑草の生育に好適な環境が形成されており, 至る処に多種多様の雑草の発生・繁茂がみられ, 植生の様相は国内の他の地方とは著しく異なる。本研究で扱ったサトウキビ畑の雑草は一年生草と多年生草を合わせて233種を数えたが, このうち最も大型で, 繁殖・散布が極めて旺盛であることから雑草害の大きい草種として注目されるのはイネ科の多年生草タチスズメノヒエとキク科の多年生草タチアワユキセンダングサの2種である。タチスズメノヒエは1,2,3月を除き常時発生し, タチアワユキセンダングサは周年発生する。このため両草種の防除には多くの時間, 労力, 費用を必要とし, 蔓延が広範囲におよんだ場合は, サトウキビの栽培上由々しい問題となることが予想される。また, 両草種に関する限り従来の除草剤, 機械力または人力に依存する防除対策には自ら限界があり, これらの慣行的方法と併せて新たに有効適切な防除体系を組み立てることが強く望まれている。本研究は, まずサトウキビ畑に発生する雑草群落の実態を把握し, 次に代表的な強害雑草と判断されるイネ科のタチスズメノヒエとキク科のタチアワユキセンダングサの生育と環境要因との関係を追究し, 更に研究の最終段階でサトウキビと両草種の競合関係を検討し, 生理・生態学的観点から両草種の効果的な防除につながる基礎的知見を得ることを目的として1981年から1985年にかけて県内の主なサトウキビ栽培地域と琉球大学農学部附属農場において行われたものである。以下, その結果を総括し, 結論とする。1雑草群落と雑草相群落調査の結果, 調査地点のサトウキビ畑で確認された雑草は, 18亜種22変種を含む59科181属233種であった。これを科別にみると, イネ科とキク科が最も多く, 次いでカヤツリグサ科とタカトウダイグサ科が主なものであった。確認された雑草の生活形を休眠型でみると, 総じてTh(1&acd;2年生草本)とH(接地植物)の比率が高い。新植畑におけるThの比率は南大東島で最も高く67.9%, 久米島で最も低く49.6%, Hの比率は久米島で最も高く32.8%, 南大東島で最も低く19.8%であった。出現種数は沖縄本島北部で最も多く158種, 南大東島で最も少なく83種であったが, このような地域による差異は土壌の種類, 土壌水分などの環境条件と栽培方法などの人為的要因の違いに基づくものと推定される。全調査地域に共通する種類は39種で, 局地的に出現する草種は沖縄本島北部が34種で最も多く, 次いで石垣島23種, 南大東島15種, 久米島14種, 沖縄本島南部と宮古島それぞれ11種, 沖縄本島中部4種の順となっている。全調査地域に共通して出現回数の最も多い雑草はハルノノゲシ, ルリハコベ, ハマスゲ, ムラサキカタバミ, メヒシバ, イヌホウズキ, ハナイバナ, オニタビラコ, オオアレチノギク, ヤエムグラの10種で, ハマスゲ, オニタビラコ, ムラサキカタバミ以外は一年生雑草で占められている。なお, 主要強害雑草と判断されるタチスズメノヒエとタチアワユキセンダングサは今のところ出現は局地的であるが, これは両草種が沖縄県に帰化後日が浅いことによるもので, 両草種の極めて旺盛な繁殖力, 散布能力その他の特性から推すと, 将来全域で発生する可能性がある。調査地点のサトウキビ畑に生育する雑草群落を分類すると, ハマクワガタールリハコベ群集とその下位単位である18亜群集, 22変群集, 5ファシスにまとめることができる(第42表)。雑草群落を作型でみると, 新植・株出畑両方に共通して出現する群落はツボクサ亜群集, ヤブジラミ亜群集, ヒメビエ亜群集, 典型亜群集の4亜群集とタチスズメノヒエ変群集, チガヤ変群集, オガサワラスズメノヒエ変群集の3変群集であった。新植畑だけに出現する群落はタチアワユキセンダングサ亜群集, ヒエガエリ亜群集, ヤエヤマコウゾリナ亜群集, コメツブウマゴヤシ亜群集, コギシギシ亜群集, ハリビユ亜群集, 典型亜群集の7亜群集とヒエガエリ変群集, トウダイグサ変群集, ノミノツヅリ変群集, タガラシ変群集, 典型変群集の5変群集であった。一方, 株出畑だけに出現する群落はカラスビシャク亜群集, ホシダ亜群集, ハイキビ亜群集, ツルソバ亜群集の4亜群集とインドヨメナ変群集, タイワンコモチシダ変群集, ススキ変群集の3変群集であった。チガヤ変群集は新植畑, 株出畑のいずれにもみられた。なお, 新植畑だけに出現する群落のうち2地域にわたって分布しているのはタチアワユ
著者
石嶺 行男 仲田 栄二 仲間 操
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.621-631, 1983-11-19

1本研究は琉球列島におけるサトウキビ畑の雑草群落を植物社会学的方法によって分類することを目的とし, 本報はその一環として沖縄本島北部地区の調査結果をまとめたものである。2沖縄本島北部地区のサトウキビ畑から37個の植生調査資料が得られた。これらの資料をチューリッヒ・モンペリエー学派の方法で表操作した結果, 次の植生単位が明らかになった。ハマクワガタールリハコベ群集Aホシダ亜群集a.典型変群集b.タイワンコモチシダ変群集B典型亜群集Cヤブジラミ亜群集i.ヘビイチゴファシースDヒエガエリ亜群集c.典型変群集d.ヤナキタデ変群集e.ハマヒエガエリ変群集3ホシダ亜群集は株出畑に, ヒエガエリ亜群集は新植畑に生育する。また, ヤブジラミ亜群集と典型亜群集は両方の畑に生育している。
著者
宮城 調勝
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.23, pp.p281-286, 1976-12

国頭マージから選別したシルト試料と, 前の報告による粘土試料についての膨潤圧, 膨潤量, 収縮量を, 土の表面積を使って比較検討してきた。この中で, 比表面積の異なるシルト, 粘土試料の膨潤圧が単位表面積当りに換算した場合, ほぼ等しい値を示したことは興味深い。また膨潤収縮時における平均空げき半径は, 全く自由な湿潤状態における比表面積&acd;水膜厚さの関係とは逆に, 土層中においては細粒子ほど大きな値を示す結果を得た。このようなことから, 土粒子表面の活性を論ずる上で, 土の比表面積の果す役割が大きいと思われる。In this paper, the distance of soil particles in swelling and shrinking samples, has been stadied. The distance of soil particles is obtained by dividing the air-void in soil by the surface area of soil particles. The results obtained from these experiments are as follows : I. Comparing swelling pressure of silt and clay, it was found that silt has smaller values than clay in it's unit weight, but in unit surface area of particles, they have same values of swelling pressure. 2. In the swelling and shrinking samples, silt has smaller values in the average distance of soil particles than clay.
著者
米盛 重保
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.31, pp.p201-205, 1984-12
被引用文献数
1

(1)pHが8.15&acd;9.2の強アルカリ性の沖縄の海砂を培地に使用して過去4年に亘りトマトの砂栽培を試みた。(2)肥料はOKF-1の500倍液(PH6&acd;7,EC2.1)を5l/m^2で, 週2&acd;3回施用した。(3)栽培ベットは第1図の通り舟底型の隔離ベットで底部に砂利を敷きその上に15&acd;20cm厚の砂を敷き詰め栽培床とした。(4)排水が良くなり湿害は皆無でアルカリ障害や微量要素欠乏症の発生が全く認められなかった。(5)茎・葉の生育や果実の着果肥大は順調に行なわれ各果房の平均着果数は4.6個, 平均果重は237gで尻ぐされ病等の発生は全く認められなかった。(6)強アルカリ性の海砂でのトマト栽培が可能となり, 土耕に比較して湿害, 塩類集積, 連作障害が解消され, また養液栽培に比較して培養液調節, 培養液温度調節, 酸素補給が不要である。したがって本栽培法は土耕栽培法および養液栽培法の問題点を補う新しい栽培法と言えよう。(7)本栽培は土壌が不要であるため劣悪土壌地帯や市街地のベランダや屋上での栽培, 施設園芸の新しい培地として有望である。
著者
宜保 清一
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.183-272, 1979-12-11
被引用文献数
3

残留強度を求めるには, セン断破壊を生じた後の大変位に対するセン断抵抗を測定できる試験が必要とされる。この範ちゅうに入る試験方法や装置がSkemptonやBishop等によって提唱されているが, 結果の解釈や装置になお多くの問題がある。それゆえ, 著者は今までの研究を基礎にして次の二つの手法を考えた。(1)完全に形成されたすべり面に沿ってセン断移動がおこるのであれば, 平衡状態のもとで発揮される応力はヒズミの大きさにかかわらずある一定値を示すはずである。この条件を満足する試験方法として, 予想セン断角で切り離された上下供試体と, 上部供試体の側方移動を可能にする圧縮セン断機構(BBピストン, 3-2-1参照)を用いて三軸圧縮試験を行ない, その破壊面における応力解析から残留強度を求める。(2)過圧密粘土では, 応力履歴によってτ&acd;ε曲線が種々変化し, 特にピークの位置とその後の曲線の形状が残留強度の大きさを左右していることに着眼して, τ&acd;ε曲線を式化し, その利用を試みる。なお, (2)においてはτ&acd;ε曲線が重要となってくるので, 過圧密比が変化する場合τ&acd;ε曲線が如何なる特性を示すかについて実験研究を行うと同時にτ&acd;σ特性についても考察を加えた。また沖縄における農地保全上, 重要な課題となる第三紀の島尻層泥岩(過圧密粘土)斜面の安定問題には未解明な点が多いため, 安定解析に進行性破壊や完全軟化の概念の導入を考え, Skempton法を用いて軟化泥岩の残留強度を求めた。そして実際の地すべり事例の安定解析に適用して, 地すべり機構解明の一助にした。まず, 一般的なSkemptonの試験法を用いて島尻層軟化泥岩の残留強度定数を求めた(2-2)。島尻層泥岩でみられる破壊面には鏡肌が形成されており, 残留強度に達していることがうかがえる。しかし泥岩について鏡肌が認められるほどの変位を与えるセン断試験はいままで行なわれておらず, 残留強度に関する知見は皆無である。したがって, すべり面付近の新鮮軟化泥岩と完全軟化粘土, 自然分離面, および作成分離面についてSkempton法による長期繰返しセン断試験を行ない, 残留強度やブリトル指数を求めた。新鮮軟化泥岩のピーク強度定数はC_<df>=1.20&acd;1.55kg/cm^2,φ_<df>=19&acd;22°, 同一の事前セン断面における残留強度定数はC_dr=0,φ_<dr>=17&acd;19°の範囲にある。さらにセン断破壊面が十分発達した自然分離面ではC_<dr>=0,φ_<dr>=17°, 作成分離面ではC_<dr>=0,φ_<dr>=15°となる。完全軟化粘土の場合, C_<Nf>=C_<Nr>=0は言うまでもないが, φ_<Nf>=23°, φ_<Nr>=19°は新鮮軟化泥岩や分離面のφ_<dr>よりも大きい。軟化泥岩のブリトル指数(I_B)は, σ'_n=1&acd;5kg/cm^2の応力範囲でI_B=80&acd;50%となる。またφ'_r&acd;粘土分の関係から島尻層泥岩はOxford Clay, Jari Jakfield, London Clayの過圧密粘土と類似していることが明らかになった。つづいて, τ&acd;ε特性を用いて残留強度を求める著者の手法について述べた(2-3)。すなわち, 長期セン断試験結果を式化し, その最大値および最終値を, それぞれピーク強度, 残留強度とみなすものである。これには排水条件を満足する緩速なセン断強度が要求される。しかし, 急速セン断結果(非排水)から残留強度を推定する場合はτ&acd;ε曲線の最大値と最終値を時間効果で補正し求めることができる(2-3-3)これらの結果をSkempton法による試験と対比させた。すなわちτ&acd;ε曲線を利用する手法は, Skempton法よりσ=0.1&acd;0.7kg/cm^2の範囲において1&acd;17%程度大きめの残留強度が与えられるが, 作成分離面により求める場合と同様, 短時間に残留強度をえようとする場合有効な方法といえよう。一面セン断試験によるSkempton法に対し, 著者は三軸圧縮試験による残留強度決定法を提案した(3)。その試験における圧縮機構は, 圧縮時に上部供試体が作成セン断面に沿って滑動できるようにBBピストンを通じて負荷するものであり, 残留強度を計算するための式は破壊面の応力解析によって導びいた。すなわち[numerical formula](3-2-18)式のτ^^^-(η)は, BBピストンのもとで上下供試体が相対的なすべり変位を起こすときに軸圧が偏心荷重として作用することによって実際にすべり面に生じるセン断応力(3-2-12)平均値で与えられ, 有効セン断面積(3-2-21)とゴムスリーブの拘束による軸差応力の増分(3-2-31)が考慮されている。そして完全に形成されたすべり面, すなわち作成セン断面に沿うセン断移動において, 定常状態に入った後に発揮される応力はヒズミの大きさにかかわらず一定値を示すので, τ^^^-(η)&acd;ε関係においてdτ^^^-(η)/dε=0になったときのτ^^^-(η)値を残留強度τ_rと考えればよい。この手法を鳥栖試料に適用した結果, C'_f=0.569kg/cm^2,φ'_f=23°50
著者
小田 一幸 仲宗根 平男
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.343-353, 1980-11-29

樹冠の生長と木部形成の間には密接な関係があり, 樹幹での木部形成を理解するためには, シュートの生長と発達について知る必要がある。ここでは, 沖縄本島に生育しているリュウキュウマツを対象に, シュートおよび針葉の伸長パターンについて述べ, 芽の形成過程, シュート頂の形態, 伸長期の観察結果を報告した。1.シュートおよび針葉の伸長パターンをそれぞれFig.1とFig.2に示した。2.芽の形成は2月から始まり, 2月から6月にかけてはえき芽をつくらないりん片葉だけが形成された。えき芽をつくるりん片葉の形成は7月から始まり, 7月から12月にかけての期間に短枝の原基が, 翌1月に長枝の原基が形成された。したがって, 芽の形成期は2月から1月までで, 明らかな休止期は認められなかった。3.シュート頂の形態は芽の形成過程の各段階に応じて変化し, シュート頂は芽の形成の最盛期には突出したドーム状となり, 直径に対する高さの比は0.42&acd;0.45であるが, 緩慢な時期には平らなドーム状となり, その比は0.15&acd;0.18に減少した。4.シュートの伸長期は9月から10月と2月下旬から5月上旬の2回認められ, 9月から10月にかけての期間にはえき芽を持たないりん片葉の部分が伸長し, 2月下旬から5月上旬にかけての期間にはえき芽を持つりん片葉の部分が伸長した。
著者
仲宗根 洋子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.51-55, 1984-11-19

登熟甘蔗茎には, パラニトロフェニルリン酸を加水分解する酸性ホスファターゼが存在することを確認した。蔗汁より, 硫安塩析したのちに酸処理した酵素タンパク画分を, ホスファターゼ酵素標品として用いその性質をしらべた。本酵素は至適pHを5.5にもつ酸性ホスファターゼであった。他の植物起源の酸性ホスファターゼとことなって, 本酵素は1mMのEDTAやカルシウムイオンによりほとんど活性を失なった。本酵素は1mMの水銀イオンおよびフッ素イオンの阻害をうけたが, 銅イオンによっては全く阻害されなかった。また, 至適反応温度は50℃にあって, 10分間保持の40℃までは安定であった。