著者
友利 知子 金城 須美子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.493-503, 1970-12-01

1穀類の支出と収入要因との関係をみると穀類の支出(F)=6.992+0.0035I(収入)となり, 収入が$10.00増すごとに$0.035の割で支出し, 米, パン, 麺の順で増加する。これは, 野菜や蛋白質食品に比べるとはるかに小さい。2家族人数との関係をみると, 穀類の支出(F)=1.5324+1.26705N(家族数)となり, 家族人数が1人増えると$1.27の割で支出し, 収入要因より穀類に与える影響は大きく, なかでも米, 麺, パンの順に増える。3穀類の支出金額ならびに購入数量構成比についてみると, 1人1日当り, 穀類への支出金額は約$0.06でそのうち, 77%を米に9%をパン, 8%を麺に支出し, 小麦粉及び小麦加工品, 米の加工品, その他は僅かであった。又穀類の1人1日当り購入数量は265gでその構成は米が81%(216g)麺9%(24g), パン7%(18g)で小麦粉や, 小麦加工品, その他は少なく, 全体の3%(7g)程度であった。4主食の構成と調理法をみると, 米が多く, 1日平均の米食率は74%で, パン食が14%, 麺食率12%であった。朝, 昼, 晩を比較してみると, 米食は晩が最も多く, パン食は, 朝昼, 麺食は昼に多かった。調理法をみると, 米は米飯が多く, すし, 焼めしなどの調理法は少なかった。パンは朝食, 昼食とも, トーストが多く, サンドイッチは案外少ない。その他, 菓子パンが比較的多い。乾麺ではラーメンが最も多く, 沖縄でのインスタントラーメンの普及はかなり高いと思われ, 朝からラーメンを食している家庭もかなりある。そばも焼きそば, 汁そばの調理法が多く, これも意外と朝に多くみられた。その他, ソーメンは汁もの, マカロニーは夕食にサラダとして用いられている。茹めんの中では, 沖縄そばが多く, 調理法は汁そばが多く朝食にもみられる。昼食には焼そばが多く, うどんやスパゲッティーは大変少ない。これまで, 数回にわたって, 沖縄における主な食品(野菜, 蛋白質食品, 穀類)の消費構造を統計庁が行っている家計調査の原票をもとに, 1)各階級における支出金額と1人1日当り支出金額および支出構成比2)回帰線による支出の傾向的変動, 3)その支出弾力性より考察して下記のような結果を得た。[table]これより, 沖縄におけるそれらの収入弾力性は日本より遙かに小さく, 米国なみのところに来るのではないかと思われるが, 沖縄の場合は別の考察が必要となってくる。これは, 沖縄の住民栄養摂取状態や本研究における1人1日当り購入数量, ならびに金額からみてもうなづけることで, 決してアメリカのような満ち足りた食生活をした上での数字でなく, 沖縄の人々の生活意識や根強い食習慣が消費支出の伸びを停滞させ, 食生活の立ちおくれをもたらしているのではないかと考える。
著者
尚 弘子 新垣 博子 外間 ゆき 稲福 盛輝
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.214-232, 1968-10-01

1.1966年12月19日に完全給食実施後の那覇教育区立城西, 城南, 城北小学校の3校で満9才から11才までの4年, 5年生の学童256名(男133名, 女123名)について食餌調査と身体症候調査を併用した栄養調査を行った。2.食餌調査の結果からは, 先に報告した3報と同様, 総摂取食品量が非常に少ないため, 熱量素, 蛋白質等が所要量に較べ摂取%が低くなっていたが, 一方学校給食によるビタミンA, B_1,B_2,C等の強化, ミルクの供給, そして調査日の献立中の豆腐チャンプルーの食品の組合せへの考慮等によりミネラル及びビタミン類の摂取率が高かった。3.栄養比率は比較的よい結果が得られたが, 今後の学童の発育および体位の向上を考慮に入れ, 動蛋比50%, 脂質カロリー20%を目標とした場合, やはり改善の必要がある。4.平均蛋白価は城西, 城南, 城北小学校ともそれぞれ74,72,76で第1制限アミノ酸は含硫アミノ酸となっている。5.学校給食摂取状況では, 3校中, 城西小学校の摂取%が低く, 特にパンの場合は43∿45%となっている。3校平均で, パンの摂取%が男子70%女子66%, 豆腐チャンプルーが男子63%女子65%, ミルクが男女とも75%となっている。学童の発育にとって最も大切な動物性蛋白質や, ミネラル, ビタミン類が学童の1日総摂取栄養量に対し, 学校給食から42∿66%も供給されているという結果から, 家庭では児童の食事を考慮すると同時に, 今後もっと学校給食への理解を深め, その目的と特徴を充分に生かすよう協力すべきだと思う。一方学校でも学童の学校給食摂取%がもっと高くなるよう工夫と指導が必要であろう。6.体位においては身長では男女及び各年令共, 城西小学校が最もすぐれ, 体重では一部の年令を除いては, 城西小学校が最もよい。又胸囲では男子は城南小学校がすぐれているが女子では各年令によって夫々差異がある。有症者の発現率は城西小学校が最も少く次いで城南, 城北の順となっている。個々の症候別では毛孔性角化症が3校とも顕著な高率を示しているが, その他の症候群の発現率は学校によって差異があるが, 貧血, 口角炎は僅少を示していた。性別では女子は城西小学校に多く発現し, 男子は城南, 城北小学校に発現率が高い傾向がみられた。
著者
金城 須美子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.323-331, 1971-12-01

1 琉大の男子寮, 女子寮生を対象に食品の嗜好調査を行った。その結果, 肉料理, すし類, 果物, 野菜サラダの平均嗜好度は男女とも高く標準偏差も小さい。男子の肉料理に対する嗜好は女子より高い。特にビフテキは全食品中最も高い嗜好を示し偏差も1.04と非常に小さい。これは殆んどの男性が, 文句なしにビフテキを好んでいることが分る。これに対して女子は野菜サラダを最も好む食品としている。琉球料理のイリチーやチャンプルーはさ程好まれない。各食品に対する男女の嗜好の相違は顕著でないように思う。2 気候, 健康状態によって嗜好が異るかどうかを調査した。その結果, 夏と冬, それに疲れたときの食品に対する嗜好が異ることが分った。特に気候の影響が大きい。それ故, 食品の嗜好に及ぼす要因として性別よりも, むしろ季節, その他の要因が大きいと思われる。
著者
仲井 真治子 比嘉 美佐子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.183-193, 1967-10-01

本研究は, 環境, 年代の違いによる着用色の傾向を検討することを目的に, 沖縄の北部, 中部, 南部, における20∿50代代の沖縄婦人の街着を調査対象に, ルイス・チェスキンの色円板, 及び日本色研式の色彩統計盤を使用して行なった。更に, 沖縄における5カ年の着用色の動向を把握するために, 沖縄の中心都市, 那覇における20∿30代の婦人の街着を調査対象として行った。X^2検定, 標準偏差, 及び偏差積法による資料の分析から次項の結果が得られた。1.沖縄本島の三地域(南部, 中部, 北部)と着用色の関係を, 色相, 明度, 彩度の面から検討した。1)着用率の高い五色相と三地域をX^2検定したが, 有意差がみられた。南部においては寒色が好まれ, 中部においては, 暖色が多く好まれ, 北部においては無彩色に偏っている。という傾向がみられた。2)三地域の明度, 彩度を1から9段階に分けてそれらの分布度を標準偏差で求めた。明度, 彩度ともにσの数値に顕著な差がみられた。中部においては明度, 彩度ともにσの数値が低く, 南部, 北部の順に高くなっている。即ち, 南部, 北部の分布は, 明度は中明度, 高明度に偏り, 彩度は中彩度, 低彩度に偏している。中部における明度・彩度の分布は, 他の二地域に比べてこの傾向が低く, 低明度, 高彩度にも広がっていることがわかった。2.5カ年の着用色の変動をみるために1)14色相, 及びそれの明度, 彩度の5カ年の分布度を標準偏差で求めた。その結果, σの数値は年々減少していく傾向を示している。この傾向は色相において最も顕著で, その次明度, 彩度の順位でσの数値が減少の傾向を示している。全般的にみたσの数値, 及びσ値変動の度合も, 色相, 明度, 彩度の順に高くなっている。沖縄の婦人が色の三属性で一番むつかしいとされているのが彩度であることがわかった。2)5カ年を通しての色の安定度は季節に左右されるもので, 夏季の服色においては, 青緑, 茶, 白が安定度が高く, 黄緑, 青紫, 黒は低い。冬季の服色では, 橙, 茶, 黒が安定度が高く, 赤, 黄緑, 白が低い。季節に関係なく安定度が高い色相は茶で, 季節に関係なく低いのは黄緑となっている。3.年代と着用色の関係は, 20∿30代と40∿50代の間隔から着用色に差がみられた。年代弁別色は, 青, 白, 赤, 赤紫, 黒, 茶, となっている。年代と明度との関係にも差がみられた。年代と彩度の関係が最も顕著であった。今回の服色研究は, 地域差と年代差を1963年夏の資料に限り, 5カ年の服色の動向を那覇における資料に限った。更に20代と30代のみを5カ年の変動の対象とした。今後はそれぞれの要因を全て包含させた調査を各季節ごとに, 毎年継続していくことによって, 沖縄における服色を体系づけたい。
著者
新城 長有
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-57, 1975-12-01
被引用文献数
6

筆者はインド型イネChinsurah Boro II品種が雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子をもつことを発見し, 連続戻交雑法を用いて両因子を日本型イネの台中65号へ導入した。育成された上記isogenic系統を主材料にして, 雄性不稔の遺伝, 他形質に対する細胞質と稔性回復遺伝子の効果, 稔性回復遺伝子の座位, 雄性不稔イネにおける花粉退化の時期, 雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子の地理的分布, および雑種イネ育種に必要な三系統の育成法を研究した。結論の要約は下記のとおりである。A雄性不稔の遺伝インド型イネChinsurah BoroIIに由来する雄性不稔細胞質を(ms-boro), その稔性回復遺伝子をRfと命名した。(ms-boro)Rf Rfの遺伝子型をもつ系統は完全雄性稔, (ms-boro)Rf rfは部分雄性稔(花粉稔性約50%)で, (ms-boro)rf rfは完全雄性不稔であった。一方上記3系統の雌性配偶子は健全であった。正常細胞質(n-boro)をもつ個体は核内遺伝子型に関係なく, すべて完全雄性稔になった。(ms-boro)rf rf×(n-boro)Rf rfのF_1世代においては, 部分雄性稔と完全雄性不稔個体が1 : 1の比に分離したが, (ms-boro)rf rf×(ms-boro)Rf rfのF_1では稔性の分離は観察されず, すべての個体が部分雄性稔(花粉稔性約50%)になった。(ms-boro)Rf rf系統の自殖次代には完全雄性稔および部分雄性稔個体が1 : 1の比に分離した。したがって(ms-boro)Rf rf個体においては, 花粉形成期のある時期にrf遺伝子をもつ花粉は雄性不稔細胞質との相互作用で死滅し, Rf花粉のみが正常に発育するといういわゆる雄性配偶体不稔性と結論した。(ms-boro)rf rf×Rf RfのF_1個体の花分稔性は50%を示すが, 種子稔性は90%以上になる。したがって本雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子は雑種イネの育成に利用できるものと考えられる。なお, 雑種イネ育成に必要な3系統, すなわち雄性不稔系統, 雄性不稔維持系統および稔性回復系統の育成方法についても理論的に示した。B量的形質に対する細胞質と核内遺伝子の効果作出可能な6 isogenic系統を育成し, 5反覆の乱魂法を用いて, 1970年の第1期作と第2期作で栽培し, 出穂日, 穂数, 主稈葉数, 稈長, 第1節間長, 第2節間長および第3節間長(節間は最上位から数えた。)を測定し, 系統間の比較を行った。雄性不稔系統の稈長は他の5系統に比較して約7cm短く, 1%水準で有意であった。雄性不稔系統の短稈性は, おもに第1∿第3節間長の短縮に起因する。他の5系統の稈長間には有意差はなかった。雄性不稔系統の示す出穂日, 穂数, 主稈葉数は他の系統と同程度であった。雄性不稔系統のこのような特性は交雑圃における受粉体制に好影響をもたらすものと考えられる。C Rf遺伝子の座位まず三染色体系統を用いて, Rf遺伝子の座乗染色体を確定し, つぎに既2標識遺伝子系統との交雑を行ない座位を明らかにした。三染色体分析では3系交雑法を適用した。まずTrisomics×(ms-boro)Rf Rfの交雑F_1から三染体個体を染色体数の観察によって迸抜し, つぎにF_1の三染色体植物を父本にして雄性不稔系統へ交雑し, 次代植物の種子稔性を調査した。その結果Rf遺伝子はTrisomic C系統の過剰染色体, つまり岩田らの第7染色体に座上することが判明した。Rf fl間の組換価は約0.4%で, pglとRf間のそれは約12%, pglとfl間は約20%であった。したがって第7染色体上における遺伝子の配列順序はpgl-Rf-flである。D花粉退化の細胞組識学的研究本雄性不稔系統における花粉の発育過程を観察した。滅数分列は正常に進行し, 花分四分子も正常に形成される。しかし花粉1核期でその発育を停止し, 2核期以後は観察されない。タペート細胞は正常である。出穂期の不稔花粉はヨード・ヨードカリ液で染色されない。不稔花粉は球形で発芽孔を有するが, 形は正常花粉よりも小さい。E雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子の分布(1)日本の水稲奨励品種について細胞質と核内遺伝子型の検定法を考案し, その検定法に基づいて1962年度の日本水稲奨励品種150品種を検定した。19品種(12.7%)の品種は弱稔性回復遺伝子をもち, 他の131品種は非回復遺伝子をもっていた。弱回復遺伝子をもつ品種のほとんどは京都以南に集中的に分布した。これらの品種のほとんどは在来品種から分離育種法によって育成された品種であった。供試日本稲品種には雄性不稔細胞質は発見されなかった。(2)外国品種について本研究に用いたイネ品種は15国から蒐集した153品種でった。細胞質検定親に遺伝子型(n-boro)rf rfの6系統を, 核内遺伝子検定親には遺伝子型(ms-boro)rf rfの6系統を用いた。これらの検定親と153品種との交雑を行なった。主としてF_1の花粉および種子稔性から, それぞれの品種の細胞質型と核内遺伝子型を推定した。雑種不稔性の併発によって, これらの推定が困難であった組合せについては, B_1F_1か自家受粉による後代系統の稔性から推定した。細胞質の検定を行なった146品種のうち, 4品種がChinsur
著者
上里 健次
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-7, 1993-12-01
被引用文献数
1

沖縄諸島におけるヒカンザクラの開花期が,北部地域から始まって南下するという現象について一考してみた。同植物の開花に対しては主として温度要因が考えられることから,八重岳の山道に植栽されているものについて開花,出葉の様相を調べて標高差との関係を検討し,また那覇,宜野湾地区の調査を加えて,地域差も比較した。開花,出葉の程度の調査については,個体毎にその程度をそれぞれ10レベルに分けて行った。得られた結果の概要は,次の通りである。1. 標高290m以上の所では開花は1月下旬にピークを示してきわめて早く,ついで開花が早いのは標高100m以下の低いところであった。標高の中位部の所では総じて開花は遅く,開花期の標高差による傾向も不明で,むしろ標高の高いところほど遅咲きであった。2. 八重岳の山道に連続して植栽されているものすべてをまとめて標高差を見ると,標高の高いほど早く開花するという傾向は,かろうじて有意であった。3. 沖縄北部と南部における開花期の地域差については,八重岳の低標高地のものと比較すると明かに北部に早かった。しかし中位部標高地のものと比較すると有意な差はみられなかった。4. 低温の地域ほど早く開花することの理由については,ヒカンザクラの開花に必要な低温度域が沖縄の最低温期の温度より高いところにあり,そのために12月前後に低温に遭遇する機会の多い地域ほど開花が早くなることがあげられ,結果的に山頂ないし北部において早い開花となるといえる。
著者
上里 健次 比嘉 美和子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-8, 1995-12-01
被引用文献数
1

沖縄におけるヒカンザクラの開花期と地域差および標高差について, 1994年開花の同植物を対象に比較調査を行った。調査地域は八重岳山道の3ケ所の他, 那覇の2ケ所, 浦添, 宜野湾と名護, 今帰仁, 大宜味, 国頭の2ケ所である。調査は開花および出葉の程度を10レベルに分けて定期的に行い, それぞれのグループ毎の比較を行った。得られた調査結果の概要は次の通りである。1. 八重岳の低標高地と中南部における開花の地域差については, 中南部が遅い開花を示す中で嘉数区とは差がないが, 伊祖, 末吉とは差があり, 与儀とは大きな差が見られた。2. 北部地区内における地域差については, 喜如嘉では八重岳と同様の早い開花で, 他の地域についてはわずかな遅れが見られる程度であった。3. 八重岳の山道における標高差については, 山頂, 麓付近で開花が早く, 中腹付近は有意差のあるほどの遅れであった。4. 出葉は開花直後に始まって開花とほぼ同様の遅速の傾向を示すが, 八重岳の麓付近では開花終了前に出葉し始める個体が多く, 一般の発育の様相と異なる面も見られた。5. 名護, 那覇における最低温度は本調査年度の12月, 1月においてかなり大きく, 開花期の早晩における地域差, 標高差への関与が伺われた。
著者
篠原 武夫
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.309-322, 1971-12-01

1)森林資源 林型一気候条件からみた世界の林型は, 針葉樹林, 温帯広葉樹林, 熱帯広葉樹林の3つに分けられている。針葉樹林の95%は先進地域の北半球にあり, 温帯広葉樹林も北半球に偏在し, 熱帯広葉樹林は低開発地域の南アメリカと北アメリカに集中している。また別の分類によると亜寒帯針葉林, 温帯混交林, 温暖温帯湿林, 赤道雨林, 熱帯落樹湿林, 乾燥林の6つの林型がある。面積-世界の林地面積は約43億haで, 土地面積に対する森林率は30%である。森林割合を100%とすると, 先進地域に53%, 低開発地域に47%がある。個々の地域ごとにみると, 南アメリカ21%, ソ連19%, 北アメリカ18%, アフリカ18%, アジア13%,その他11%となっている。林相-世界の針・広葉樹の合計面積は約25億ha, そのうち針葉約9億ha, 広葉15億ha, 混交1億haとなり, 広葉樹が最も多い。推定による針・広葉樹面積は約37億haで, そのうち針葉樹は約12億ha, その主要分布地は北半球の温帯にあって, ソ連と北アメリカの先進地域で80%以上に達している。広葉樹は25億ha, その4分の3は低開発地域に散在し, 主に南アメリカとアフリカにある。蓄積-森林総蓄積は2,380億m^3,うち針葉1,141億m^3,広葉1,239億m^3となり, 広葉樹の蓄積が多い。蓄積の分布はソ連33%, 南アメリカ33%, 北アメリカ18%となり, これら3地域で84%にも達している。アジア, アフリカ, 南アメリカを合せても16%にしかならず, その原因は未調査・未報告の森林が多いためであるとされる。推定による世界の森林蓄積は3,400億m^3,うち針葉1,350億m^3,広葉2,050億m^3となっている。ha当りの蓄積は一般に針葉樹が高い。2)森林開発 採取-1960∿62年の年平均伐採量は約19億m^2,うち用材10億m^3,薪炭材9億m^3である。先進地域の伐採量は11億m^3で, その84%は針葉樹である。残余の8億m^3は低開発地域でなされ, その67%は広葉樹である。用材の75%が針葉樹からなり, 薪炭材81%は広葉樹で占められている。そして用材の83%が先進地域, 薪炭材の71%は低開発地域で生産されている。先進地域の用材粗見積は約9億m^3で, 低開発地域は1億m^3にすぎない。このように先進・低開発地域間の採取開発はきわめて不均等である。今日, 世界各地で人口増加に伴う木材需要の増大により森林資源不足の危機がさけばれつつある。そこでこの解決策としてすぐれた林業政策による更新計画や豊富な熱帯森林資源の高度利用などがとりあげられている。また近年では森林伐採の急激な進展から, 森林の保全的機能が強調され世界各地で自然保護の声が高まりつつある。つぎに各地域の採取的開発の状況をより詳しくみると, 先進地域のヨーロツパ, 北アメリカ, ソ連, 日本などの森林は今日まで経済的に開発され, 森林の利用は活発である。ヨーロツパでは針葉樹の成熟林はほとんど伐採され不良木が多いという。ソ連では広大な成熟林を有し政府の伐採計画にもとずいて伐出されている。米国の伐採量は増産の傾向にあり, 伐採木も原生林から第2次林に移行しつつある。カナダは現在未開発の森林が非常に多い。日本は年々の木材需要の増大で木材危機にある。ところが低開発地域の採取的開発はおくれている。南アメリカの豊富な森林は地理的原因で開発困難にあるのが多く, そのためユーカリ造林などが試みられている。西アフリカの伐採量の多い熱帯降雨林は, いずれ生産減少するといわれる。だがその他のアフリカ地域では保存林が多いので多量の生産が期待されている。ところによっては造林問題の発生しているところもある。東南アジアでは豊富な熱帯林が多く, 近年採取的開発が急速に活発化し, 最近では造林問題まで起っている。太平洋地域を除く地域では需要の増大で深刻な木材不足にある。終りに1961年の工業用材の過不足状況を述べると, たいていの先進・低開発地域が需要に対して供給不足にある。このことは日本のごときは一層深刻で最近ではパルプ用材確保のために南方地域での造林を計画している。育成-今日木材資源の減少問題は世界的傾向となり, それで世界の各地域では人工造林が着々と進められつつある。世界の人工林の大部分は北部温帯に属する先進地域の国々にある。公表国の人工林面積は約3,400万ha, 未公表国のを含めると約8,100万haとなっている。人工林の主要国面積を列記すると, 中国(本土)約3,000万ha, ソ連約1,100万ha, 米国約1,000万ha, 日本800万haとなり, これら国々の植栽樹種は, ほとんど針葉樹である。中国とソ連で世界の約半分を占めているが, その数字は推定による。公表国に広く植栽されている樹種は針葉樹であり, それは造林地の70%に達している。ヨーロツパの北部地方では広葉樹から針葉樹への林種転換をして森林の経済的価値を高める努力がはらわれている。南部地方では造林地が多く, 樹種はたいてい早成のポプラである。米国では早成のパインが植栽されている。日本では針葉樹の造林が推進され
著者
幸喜 善福
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.176-183, 1970-12-01

1)本調査は, 沖縄の海岸付近に生育している樹木はどの程度の塩分を付着するかを知る目的でおこなった。2)今回は, 南部一帯と久米島仲里村の海岸近くに生育しているモクマオウ(Casuarina equisetifolia J. et G. Forst)とリュウキュウマツ(Pinus luchuensis Mayr)について調査し, 1969年11月7日から12月30日までの間におこなった。3)付着塩分量の滴定はMohr法によって, 葉の直径は顕微鏡で測定した。4)細枝葉の単位表面積当り付着塩分量は, モクマオウが5.917×(10)^<-2>mg/(cm)^2で, リュウキュウマツが4.748×(10)^<-2>mg/(cm)^2であった。5)付着塩分量は, 主に風向, 風速および波高によって支配され, 地形や季節によっても差異を生じるものと考えられる。6)単位表面積当りの付着塩分量は, 同じ地域で, 同じ樹種ならば汀線から内陸へ進むにつれて減少する。
著者
徐 小牛 榎木 勉 渡嘉敷 義浩 平田 永二
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.195-208, 1998-12-01
被引用文献数
2

沖縄本島北部の琉球大学農学部附属与那演習林で, 天然生常緑広葉樹林のリターフォール量とそれによる養分還元量の季節変化を, 1996年5月から1998年2月までの2年間にわたって調べた結果, 以下のことが明らかになった。年間のリターフォール量は, 一年目には7328&acd;12700 kg ha^<-1>, 二年目に5577&acd;8073 kg ha^<-1>で, 年間の差が大きかった。これは, 台風の影響によるものと思われる。リターの内訳をみると, 落葉量, 落枝量, 生殖器官の落下量およびその他の平均割合が, それぞれ63.7%, 28.2%, 1.4%, 6.7%となった。リターフォールの年間量の平均値と林分構造との関係をみると, 平均直径, 平均樹高, ヘクタール当たり本数及び材積とは比較的高い相関が認められたが, ヘクタール当たり断面積との間には相関がなかった。リターフォールによる年間養分還元量は, 窒素61.3&acd;128.2 kg ha^<-1>, リン2.8&acd;6.0 kg ha^<-1>, カリウム20.8&acd;44.5 kg ha^<-1>, カルシウム40.0&acd;117.9 kg ha^<-1>, マグネシウム13.3&acd;28.3 kg ha^<-1>, いおう7.0&acd;14.6 kg ha^<-1>, ナトリウム8.4&acd;17.2 kg ha^<-1>, アルミニウム8.6&acd;16.6 kg ha^<-1>, マンガン2.6&acd;5.4 kg ha^<-1>, 鉄0.6&acd;1.4 kg ha^<-1>であった。しかし, 微量元素の銅, 亜鉛, モリブデン, コバルト及びホウ素の還元量は極めて少なかった。また, 養分還元量は8月に最も多く, 年間量の19.3%&acd;38.3%を占め, 1月には最も少なくて, 僅か年間量の1.2%&acd;2.0%であった。養分還元量は3月から8月までの間に集中し, この6か月間で年間総量の70%以上を占めた。リターフォールの養分含有率はプロット間に違いがみられたが, これは立地条件の違いのほかに樹種構成の変化とも関係しているものと思われる。
著者
徐 小牛 榎木 勉 渡嘉敷 義浩 平田 永二 Xu Xiaoniu Enoki Tsutomu Tokashiki Yoshihiro Hirata Eiji
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 = The Science Bulletin of the Faculty of Agriculture. University of the Ryukyus (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.45, pp.195-208, 1998-12-01

沖縄本島北部の琉球大学農学部附属与那演習林で, 天然生常緑広葉樹林のリターフォール量とそれによる養分還元量の季節変化を, 1996年5月から1998年2月までの2年間にわたって調べた結果, 以下のことが明らかになった。年間のリターフォール量は, 一年目には7328&acd;12700 kg ha^<-1>, 二年目に5577&acd;8073 kg ha^<-1>で, 年間の差が大きかった。これは, 台風の影響によるものと思われる。リターの内訳をみると, 落葉量, 落枝量, 生殖器官の落下量およびその他の平均割合が, それぞれ63.7%, 28.2%, 1.4%, 6.7%となった。リターフォールの年間量の平均値と林分構造との関係をみると, 平均直径, 平均樹高, ヘクタール当たり本数及び材積とは比較的高い相関が認められたが, ヘクタール当たり断面積との間には相関がなかった。リターフォールによる年間養分還元量は, 窒素61.3&acd;128.2 kg ha^<-1>, リン2.8&acd;6.0 kg ha^<-1>, カリウム20.8&acd;44.5 kg ha^<-1>, カルシウム40.0&acd;117.9 kg ha^<-1>, マグネシウム13.3&acd;28.3 kg ha^<-1>, いおう7.0&acd;14.6 kg ha^<-1>, ナトリウム8.4&acd;17.2 kg ha^<-1>, アルミニウム8.6&acd;16.6 kg ha^<-1>, マンガン2.6&acd;5.4 kg ha^<-1>, 鉄0.6&acd;1.4 kg ha^<-1>であった。しかし, 微量元素の銅, 亜鉛, モリブデン, コバルト及びホウ素の還元量は極めて少なかった。また, 養分還元量は8月に最も多く, 年間量の19.3%&acd;38.3%を占め, 1月には最も少なくて, 僅か年間量の1.2%&acd;2.0%であった。養分還元量は3月から8月までの間に集中し, この6か月間で年間総量の70%以上を占めた。リターフォールの養分含有率はプロット間に違いがみられたが, これは立地条件の違いのほかに樹種構成の変化とも関係しているものと思われる。Litter fall and the nutrient returns in a forest were studied. The results obtained from five plots in natural evergreen broadleaved forests at Northern Okinawa Island in the period May 3,1996 to May 1,1998. Annual rates of total litter fall ranged from 7328 to 12700kg ha^<-1> a^<-1> in the first year, and from 5577 to 8073kg ha^<-1> a^<-1> in the second year, with great variation between the two years being related to the effects of the stronger typhoon No. 12 from August 11 to 12,1996. And the foliage litter fall contributed the greatest amount, about 63.7% averagely ranging from 54.6 to 78.8% of the total litter mass, and peaked in March and August, respectively. The results from this investigation indicated that the annual mean litter fall rate was positively correlated with stem volumes, mean D.B.H. and mean height of the stand, however, was negatively correlated with the stand density and neither related to the stand basal area. The annual amounts of nutrient returned by litter fall in the sampling stands were, N from 61.3 to 128.2kg ha^<-1> a^<-1>, P from 2.8 to 6.0kg ha^<-1> a^<-1>, K from 20.8 to 44.5kg ha^<-1> a^<-1>, Ca from 40.0 to 117.9kg ha^<-1> a^<-1>, Mg from 13.3 to 28.3kg ha^<-1> a^<-1>, S from 7.0 to 14.6kg ha^<-1> a^<-1>, Na from 8.4 to 17.2kg ha^<-1> a^<-1>, Al from 8.6 to 16.6kg ha^<-1> a^<-1>, Fe from 0.6 to 1.4kg ha^<-1> a^<-1>, and Mn from 2.6 to 5.4kg ha^<-1> a^<-1>, respectively. However, the annual nutrient returns for microelements such as Cu, Zn, Mo, Co and B were very little. Within the annual cycle, monthly nutrient fall was the most in August and the least in January, and the former was 12&acd;31 times more than the latter. Spring and summer (from March to August) was most important, accounting for over 70% of the nutrients.
著者
外間 ゆき 稲福 盛輝 尚 弘子 新垣 博子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.324-337, 1969-10-01

1.1967年11月に献立調査, 同年12月に食餌調査, 身体計測・身体症候調査を東風平小学校の満9才から満11才の男女学童について実施した。2.献立調査の結果, 朝食は飯と汁物とおかずの型が多く, 夕食は飯と汁物が多い傾向がみられた。又, 献立の内容では, 汁物では味噌汁がよく食され, 汁物の約85%を占めていた。おかずは炒めものが多く, おかずの52%も占めていた。おやつの内容は小麦粉製品なかでもパンがよくとられていた。3.食餌調査の結果, 栄養別摂状況は脂質とビタミンは充分摂取されていて100%を越すが, その他の, 熱量, 蛋白質, カルシウム, 鉄は不足していた。食品群別摂取状況では, 充分摂取された食品群は一つもない。50%以下の摂取率になっている食品群は, 果物類, 乳類, 豆類, 砂糖類, 卵類, 淡色野菜類である。女子では更に, 魚肉類, 獣鳥肉類, 緑黄色野菜も加わり, 食品総摂取量が男女とも, 摂取めやすに対し52%と低値であった。栄養比率では動蛋比が40%前後であった。栄養素比率では熱量源の第1位が穀類, 蛋白質源も穀類, 脂質源は肉類, カルシウム源は乳類, ビタミンA源はミルク(A強化), ビタミンB_1源は穀類(パンにB_1強化), ビタミンB_2は乳類, ビタミンC源は乳類(C強化)となっていた。蛋白価は男子が80,女子が77であった。又, 一日の栄養素摂取取に対する。学校給食からの栄養素摂取量を比率でみた場合, カルシウム, ビタミンA, ビタミンB_1,ビタミンB_2は50%以上を占めていた。学校給食の給与量に対する摂取率をみると, パンは70%前後, ミルクは84&acd;97%, おかずは89&acd;100%であった。4.身体計測・身体症候調査の結果, 体位においては男子の発育は良好で, 全琉の体位に比して優れているが, 女子は僅かならが劣っている。身体症候発現率の有症者は調査人員の約1/4を占め, 特に毛孔性角化症が著明に多く, 他の有症率は少い。性別では男子が有症者が多い傾向であった。準都市地域学童との体位身体症候発現率の差異をみると男子では身長, 体重ともにまさっているが女子ではやゝ劣った傾向がみられた。
著者
松田 祐一 城間 定夫
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.271-280, 1974-12-01

沖縄産フェザー・ミールをブロイラー・ヒナに給与してブロイラー飼料としての価値を調べた。供試した品種は, 白色コーニッシユ×白色ロックのF_1で, 3回に亘り飼育試験を行なった。その結果 : 1.第1回試験では, 標準区(日本飼養標準による配合)は, 動物蛋白質を魚粉のみとした区とフェザー・ミールを前期飼料2%, 後期4%配合した区について発育を調べたが, ヒナの発育はフェザー・ミール配合区が魚粉区よりも良い傾向がみられた。高エネルギー区でも魚粉区を対照区としフェザー・ミールを前期に2%, 後期に5%配合した飼料を試験区として発育を調べたが, 8週齢体重は魚粉区1,909.4g, フェザー・ミール区1,842.5gで魚粉区が67.2gで重かったが有意差はみられなかった。飼料要求率は, 標準区でも, 高エネルギー区でも, フェザー・ミール給与区がやや大きい傾向にあった。2.第2回試験は, 沖縄の最も暑い6月下旬から8月中旬の間に行ない魚粉区を対照区とし, フェザー・ミールを前期後期とも5%配合した区を試験区とし, 発育を比較したが, 餌付後3週間は魚粉区が良く有意差がみられた(P<.01)。4週後は有意差がなく, 8週後の試験終了時にはほとんど体重差がみられなかった。飼料要求率は, フェザー・ミール区がむしろ小さい傾向にあった。3.第3回試験は, フェザー・ミールを前期6.5%, 後期5%配合し飼料の全蛋白質に占めるフェザー・ミール蛋白質の割合を前期24.6%, 後期23.6%とした。4週齢時の発育は, 魚粉区652.9g, フェザー・ミール区583.8gで明らかに有意差がみられた(P<.01)。しかし前期魚粉区飼料を給与したヒナは後期に魚粉区飼料を給与しても, フェザー・ミール区飼料を給与しても両区間に発育の差はみられず, 同様に前期フェザー・ミール区飼料を給与したヒナについても, 後期に魚粉区飼料を給与しても, フェザー・ミール区飼料を給与しても発育に有意差はみられなかったが, 前期魚粉区飼料を給与したヒナと前後期ともフェザー・ミール区飼料を給与したヒナの間には, 8週齢においても有意差(P<.05)がみられ魚粉区が良かった。以上のことからフェザー・ミールは, ブロイラー飼料として前期に5%以下(全蛋白質に対するフェザー・ミール蛋白質20%以下)の配合が適当で, 後期5&acd;8週は, 5%のフェザー・ミールを配合し全蛋白質に対するフェザー・ミール蛋白質24&acd;25%としても良好な発育をなすものと考えられた。なお, ブロイラー・ヒナは, 幼雛時よりも日が経つにつれてフェザー・ミールを良く利用し得るものと考えられる。
著者
城間 理夫
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.443-457, 1970-12-01

1.この調査は, 沖縄における干ばつの一つの要因としての少雨が, 1年のうちでいつごろ, どの程度の強さで起っているかを統計的に調べたものである。少雨期間の長さは数日程度のものから90日程度のものまでを扱った。なお, この調査のための資料としては, 琉球気象庁が那覇において観測した1891-1968の降雨量の値を使用した。2.この調査によって次のことが明らかになった。(1)夏と秋には, 降水日数は特に著しく少ないわけではないが, 雨の降り方にムラがあり, 時間的配分がよくないために沖縄では特に渇水が起りやすい。(本文中の第1表ないし第3表, 第1図)(2)1週間程度の長さの干天の続く頻度が, 1年を通じてかなり詳しく明らかになった。このような干天の頻度も夏と秋に大きいが, 特に梅雨明けの7月の初めには大きい。しかし, 8月および9月の台風期には干天の頻度が小さくなる。したがって7月にはじまる渇水は中断されて, 8月までには解消されるものが多い。(第2図)(3)かなり長期間(30日ないし90日間)にわたる少雨の頻度は10月-11月に最も大きく, 7月がこれに次ぐ。このことは, 夏に台風が沖縄に接近しなければ, 夏から秋にかけてかなり長期間の干ばつになりやすいことを示す。(第3図)(4)2月から3月にかけては, かなり長期間にわたる少雨の頻度が小さく, 干ばつになるおそれは比較的に少ない。(第3図)(5)沖縄におけるかなり長期間(30日ないし90日間)の干ばつの示数として, 非超過確率雨量, リターンピリオド, および少雨期間との関係が数量的に求められた。(第5表, 第5図)
著者
安田 正昭 山田 剛史 石原 昌信 当山 清善
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.125-134, 1992-12-01

酵素活性及び生酸性のバランスがとれた泡盛麹菌(Aspergillus awamori, Nakazawa IFO 4033)の生産するα-アミラーゼ及びグルコアミラーゼの酵素化学的諸性質を検討し,以下の結果を得た。(1)供試菌株の生産するα-アミラーゼの反応最適pHは4.5&acd;5.5,pH安定性は3.0&acd;6.0の範囲で安定であった。本酵素の反応最適温度は65℃,温度安定性は60℃まで安定であった。(2)供試菌株の生産するグルコアミラーゼの最適pHは5付近(4.3&acd;5.3)で,pH安定性は3.5&acd;6.0の範囲で安定であった。本酵素の反応最適温度は60℃,温度安定性は60℃まで安定であった。(3)供試菌株グルコアミラーゼの米(タイ国産砕米,うるち,もち),馬鈴薯,甘藷,小麦,とうもろこしの糊化デンプンに対する反応性を調べたところ,いずれも可溶性デンプンとほぼ同様の値を示した。(4)供試菌株グルコアミラーゼのタイ国産砕米デンプンに対する加水分解率は反応時間の経過に伴い増大し,反応24時間における値は82%であった。(5)供試菌株の生デンプン(タイ国産砕米)の分解活性の反応最適pHは3.2&acd;3.5であった。(6)供試菌株の各種生デンプン分解活性はウルチ米,タイ国産砕米及びもち米などで高い値を示し,小麦やとうもろこしにも比較的高い値を示した。しかし,生馬鈴薯デンプンに対する分解活性は著しく低い値を示した。
著者
大屋 一弘 渡嘉敷 義浩 高江洲 均 多喜 和彦 西垣 晋
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.165-176, 1976-12-01
被引用文献数
1

沖縄本島南部, 糸満市阿波根および西原村棚原に堆積する典型的な2つの"ジヤーガル"土壌断面を選定し, 各断面をおのおの5層に分け, 土壌断面中の理化学性, 粘土鉱物組成, および水溶性成分の移動・集積について調べた。粘土鉱物組成は主として選択溶解法とX線回折分析法を用い, 水溶性成分は蒸留水の浸出で溶出する成分中Siを比色法, Fe, Ca, Mgを原子吸光法, Na, Kを炎光法を用いておのおの測定した。典型的な"ジヤーガル"とその母材の土壌反応はいずれも弱アルカリ性反応を呈し, 粒径分布はシルト部分や細砂部分の含量が高く, 土性はSiCLあるいはLを示した。また, 有機炭素は1%以下で, CEC25&acd;34me/100gを示し, 置換性塩基中Caは31&acd;39me/100gで最も多量に含まれた。Kは1&acd;3me/100gで最上層と最下層に多く含まれ, Mgは1&acd;4me/100g, Naは1&acd;2me/100gでいずれも上層から下層へ漸次増加した。粘土部分の非晶質成分はジチオナイト可溶成分が4&acd;11%, そのうちFe_2O_3が2&acd;4%含まれ, 0.15Mシュウ酸ナトリウム可溶成分が8&acd;22%含まれた。後者の成分は上層から下層へ量的に漸次減少し, いずれもSiO_2/Al_2O_3分子比が2に近い値を示した。また, 粘土部分の結晶質成分は71&acd;85%含まれ, 上層から下層へ幾分増加した。断面中の鉱物組成は, 全層にモンモリロナイトが主体を占め他にイライト, Al-バーミキュライト, クロライト, カオリナイトがいずれも少量随伴した。一方, シルト部分は著しく多量の石英とごく少量の長石とが全層に含まれ, 両鉱物の他にごく少量のカルサイト, ドロマイト, クリストバライトが付随し, これらの鉱物の存否は各層間で異なった。"ジヤーガル"土壌断面での水溶性成分中Si, Feの溶出量および溶出の型は土壌断面の各層間で異なった。これに対しCa, Mg, K, Naの塩基類は溶出量および溶出の型に土壌断面の各層間でほぼ一定の傾向がみられた。Caは数10PP^m溶出し, 5mの深さの泥灰岩層に著しく多かった。Mg, Naの溶出量は1&acd;3ppmで上層から下層へ漸次増加し, 特にMgは最下層の泥灰岩層では5ppmに達した。Kは2&acd;4ppm溶出し最上層と最下層の泥灰岩に多く, 中間層ではMgとNaの溶出量の間にあった。なお, 連続的に抽出測定される水溶性塩基のMg, K, Naは或る比率をもって置換性部分から放出されるものと思われる。また, Caの大部分は遊離のCaCO_3として存在することが示唆された。
著者
中須賀 常雄 馬場 繁幸 伊藤 和昌
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.231-239, 1982-12-01

1.本論は八重山群島西表島船浦湾の海岸林における植生の配列について, 1978年10月および1980年8月に調査・研究したものである。2.本地の海岸林は海浜林, マングローブ林および縁取林の3林型に区分され, これらは地形と対応して更に小区分された。小区分された林型は地形と対応して複雑に配列しているが, 海岸から内陸への基本的な配列パターンは次のとおりである。海浜林(海浜草本帯&roarr;前浜堤低木林&roarr;浜堤低木林&roarr;後浜堤低木林&roarr;堤州低木林)⇒マングローブ林(ヒルギモドキ林&roarr;オヒルギ林&roarr;ヤエヤマヒルギ林&roarr;オヒルギ林)⇒海浜林(浜堤低木林&roarr;浜堤高木林)⇒マングローブ林(オヒルギ林&roarr;ヤエヤマヒルギ林&roarr;ヤエヤマヒルギ・オヒルギ林&roarr;オヒルギ林)⇒縁取林(アダン林)3.各林型の上層構成樹種は海浜林ではテリハクサトベラ, アオガンピ, イソフジ, ハテルマギリ, トベラ, クロヨナ, オオハマボウ, タイワンウオクサギ, ミズガンピ, シマシラキ, テリハボク, ヒメユズリハ, オキナワシャリンバイ, ヤエヤマコクタン, マングローブ林ではヒルギダマシ, ヒルギモドキ, ヤエヤマヒルギ, オヒルギ, 縁取林ではアダン, アコウ, ハマイヌビワ, アカギ, ハスノハギリ, オキナワキョウチクトウ, オオバギ, クロヨナ, サガリバナであった。
著者
幸喜 善福
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.429-554, 1978-12-01
被引用文献数
1

本論文は, 塩害の原因となる飛塩が, 地表物体にいかに付着し, 供給されているのかその実態と, これをどのように制御しうるかについて, 主として沖縄における測定値によってとりまとめ, 防潮林造成上に必要な基礎的諸問題の解明をはかったものである。1)モールの銀滴定法と比電導度法の関係は次式によって示される。Y=0.0269x+0.2625 (r=0.999) y=0.0527x+0.6002 (r=0.998)式中Y : 100ccの蒸留水中に溶出した塩素量(mg), y : 同塩分量(mg), x : 同比電導度の値(μ&mho;/cm)である。2)ガーゼヘの付着塩分は, ガーゼの重ね枚数は少ないほうが多量の塩分が付着する。また, 野外および室内実験によってガーゼの露出時間は2時間が最適であるが, 4時間まで露出してもたいした問題にはならない。3)なお, ガーゼヘの付着塩分量とブラシへの付着塩分量の間には良好な相関関係があり, ブラシはガーゼの約4.5%の付着塩分量である。4)ガーゼに付着する塩分量が, 海岸から500mまでの範囲でどのように分布しているか沖縄島の本部町備瀬崎, 宜野湾市大謝名, 沖縄市泡瀬の各地で実測し, 国内各地での測定結果と比較すれば, 海岸線近くでは備瀬崎だけが2g/m^2/hr程度で, 国内各地の砂浜での値と似たオーダーであるが, 大謝名, 泡瀬では完全に1桁小さい。しかし, 180&acd;200m以上内陸に入れば0.1g/m^2/hrのオーダーになって, 国内各地より1桁ないし2桁も大きくなる。沖縄ではエーロゾル状態の飛塩が多く, 砕波による大粒の湿った飛塩は, 沖のサンゴ礁で発生するのが多いため, 海岸に到達する部分が少ないことによるものと考えられる。5)植物体に付着する塩分量においては, 単位葉面積当り付着塩分量の平均的な値は, 針葉のものではモクマオウで5.92×10^-2mg/cm^2,リュウキュウマツで4.75×10^-2mg/cm^2,広葉のものではモンパノキが3.12×10^-2mg/cm^2,オオハマボウが3.17×10^-3mg/cm^2,タイワンウオクサギ, サトウキビ, アダン, テリハクサトベラ, フクギ, アオガンピの順に1.70×10^-3mg/cm^2から1.13×10^-3mg/cmに少なくなる。針葉のものは広葉に比較して5&acd;50倍も多く付着するが, 広葉のものでは葉の表面に短柔毛があり, しかも葉脈による凹凸の多いモンパノキとオオハマボウが顕著に多くなっている。当然のことながら海岸線から内陸に入るにつれて付着塩分量は減少し, 防潮林の風上林縁と風下林縁では前者に多い。各樹木については高いところほど付着塩分量が多くなるが, 吹きぬけのある場合は地面近くにも多くなる部分ができる。要するに風が強く(多く)吹きつける部分に付着塩分量が多くなっている傾向がある。6)降雨水に含まれる塩分については, 月平均では9月が最高で3.7×10^2μ&mho;/cmに達するが, 11月から2月までは2.6×10^2μ&mho;/cmの状態が続く。最低は6月で4.4×10μ&mho;/cm位と1桁近く低下し, 7月, 10月は7&acd;8×10μ&mho;/cm位, 年平均は約1.8×10μ&mho;/cmとなる。沖縄本島を横断しての分布は西海岸で3.0×10^2μ&mho;/cm, 東海岸でその2/3,内陸部では1/2から1/3位の平均値になる。東海岸では夏季に, 西海岸では冬季に多くなる傾向がある。台風と北西季節風に大きく支配されている。連続降雨については, 測定回数目盛の対数と含塩量の対数が逆比例し, 最初の含塩量の多少にかかわらずほぼ一定に減少し, 3&acd;4回目に半減し, 7&acd;9回目で約1/10になる。したがって降雨量が少ないほど含塩量は大となる。これに対し台風時の降雨では, 一般に台風が接近するほど含塩量が急増し, 最初の2&acd;17倍にも達し, その後漸減する。また, 樹幹流下水および樹冠滴下水中の塩分量の月別変化も, 降雨の場合と相似であり, その平均値は前者で降雨の9倍, 後者で5.7倍になる。海岸線近くでは内陸の約3倍になる。連続降雨では3回目で1/2ないし1/3になる。7)ガーゼおよびブラシヘの付着塩分量には数日ないし十数日周期の変動があるので, 観測結果は観測時刻ごとに毎月の平均値もしくは合計値で示した。全体の平均では13時の観測値は9時の値に対して, ガーゼ付着塩分量で50%, ブラシ付着塩分量では100%の増になる。風速は24%, 気温は8%の増となるが湿度は15%の減少となった。17時の観測値も大同小異であった。付着塩分量と平均風速との関係を任意に選んだ11ケ月の毎日のテーターを用いて直線・対数・指数の3つの相関係数を求めた結果, 対数回帰の相関が最もよく, ガーゼヘの付着塩分のほうがブラシヘのものよりすぐれ, 9時の観測値が13時, 17時のものより相関のよいことが示された。そこで9時の全観測値について回帰係数ならびに相関係数を求めたが, 3ケ月の特例以外は相関係数は高度に有意であったが, その法則性は明らかでなかったので, 毎日のテーターを予測に用いることは妥当でないことがわかった。毎月のそれぞれの観測値の合計においても対数関係が適用されることから次式をえた。ΣlogS_G=0.5628ΣV^^
著者
本郷 富士弥 川島 由次 多和田 真吉 砂川 勝徳 諸見里 秀宰
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.51-57, 1987-12-05
被引用文献数
1

沖縄在来種およびジアイアントタイプとして知られている高木型系統のギンネム3品種(K-8,K-28,K-72a)の成分上の特性を知る一端として, 一般化学組成とミモシン含量を調査し, つぎのような結果を得た。茎葉部4品種の一般化学組成は, 乾物量26.1&acd;28.1%(平均27.5%), 粗たん白質22.1&acd;23.4%(平均22.7%), 粗脂肪4.6&acd;6.1%(平均5.7%), 粗灰分5.9&acd;7.3%(平均6.6%), 粗繊維14.3&acd;16.0%(平均15.0%)および可溶性無窒素物43.4&acd;51.7%(平均50.0%)の範囲にあり, 品種間で著しい差異は認められなかった。木質部と樹皮部4品種の一般化学組成は, 木質部の90%以上, また樹皮部の70%以上は, 炭水化物系物質で占められており, いずれの品種においても木質部は粗繊維が62.2&acd;63.2%(平均62.8%)の範囲, 樹皮部では可溶性無窒素物含量45.4&acd;57.1%(平均511%)の範囲にありそれぞれ最も高い値を示していた。各成分の木質部における品種間の著しい差異はみられなかったが, 樹皮部においては粗たん白質含量でK-28が16.6%と最も高い値を示した。ミモシンは, すべての部位に存在し, 4品種のミモシン含量の平均値は約3.3%であり, 品種の違いによる目立った差異は認められなかった。また, 生長の盛んな若葉に最も多く含まれており8.6&acd;9.4%(平均9.1%)の含量範囲にあった。しかし, 根部や木質部の含量は極めて低い値を示しそれぞれの平均値は0.1および0.4%程度であった。
著者
幸喜 善福
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.559-569, 1972-12-01

1.樹木の葉の重量と葉面積の関係について調べた。2.その樹種はモクマオウ, サトウキビ, アダン, モンパノキ, アオガンピ, タイワンウオクサギ, ゲットウ, オオハマボウ, フクギ, テリハクサトベラの10種類である。3.各樹木の葉の重量と葉面積との関係を数式で示せばつぎのようになる。即ち, モクマオウY=77.70+52.14χ(γ=0.73)サトウキビY=3.74+32.23χ(γ=0.88)アダンY=45.83+13.48χ(γ=0.86)モンパノキY=-137.58+17.83χ(γ=0.93)アオガンピY=75.35+15.70χ(γ=0.92)タイワンウオクサギY=65.15+19.90χ(γ=0.97)ゲットウY=6.30+29.91χ(Y=0.97)オオハマボウY=6.20+32.01χ(γ=0.84)フクギY=17.71+14.20χ(γ=0.91)テリハクサトベラY=14.20+20.85χ(γ=0.91)ここで, Y : 葉面積χ : 葉の重量γ : 相関係数