著者
浅野 紘臣
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.13-18, 2001-03-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
14
被引用文献数
6 6

神奈川県愛川町において1994-1996年の3年間にわたってアイガモ農法田と慣行農法田における表層土壌からの雑草の発生数を調査した。発生した雑草はヒエ類, コナギ, アゼナ類, ミゾハコベ, キカシグサ, カヤツリグサ類 (主としてタマガヤツリとコゴメガヤツリ), チョウジタデ, ヒメミソハギ, アブノメ, イヌホタルイ, ダネツケバナ, マツバイ, オモダカ, セリの14草種であった。雑草の発生総数をみると, アイガモ農法では土壌表層0-2cm層では少なく, 慣行農法は0-2cm層で多かった。この理由として, アイガモ農法は, アイガモによる抑草期間が8月上旬 (放飼日数50-70日) に及び除草剤のそれよりも2-3倍長く, アイガモ農法田はアイガモを引き上げた後に発生する雑草が少ないことによると考えられた。土壌表層2-10cm層では, 両農法間で発生総数に差がみられなかった (第2表)。アイガモ農法を連用することによりコナギ, キカシグサなどは減少したが, チョウジタデ, ヒメミソハギおよびカヤツリグサ類は減少しなかった (第2表, 第1, 2図)。1994年と1995年の調査では, 慣行農法に比べてアイガモ農法は発生総数が少なかった。アイガモ農法田は, カヤツリグサ類とアブノメが増加する一方, チョウジタデとヒメミソハギは減少しなかったため, 慣行農法田に比べて発生総数が増加した (第3図)。
著者
鶴内 孝之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.85-90, 1994-08-05
被引用文献数
1 1

ワラサバソウとオオイヌノフグリは百数十年、あるいはそれ以前に帰化した同属の類似種である。ワラサバソウの密な分布域は狭く、オオイヌノフグリとは対照的である。本報では両種の生殖生態を比較して、分布との関係を考察した。両種は自動的に自家受精した。また他殖も可能であった。単為結実はしなかった。筑紫野市原と、8 km離れた同市原田の自生群落(それぞれA、B群落とよぶ)で採取した両種の幼植物(A、B植物)を育て、袋掛けによって自殖種子S_A、 S_Bをえた。またA群落から放任採種した。さらにそれぞれ種内の人工交配によって他殖種子F_1(A×B)をえた。以下便宜上系統とよぶ。これら2雑草の各4系統を、それぞれラテン方格法で比較栽培した。生育量や種子生産数について、オオイヌノフグリでは4系統間に顕著な差はなかった。ワラサバソウでは、 S_A、 S_BはF_1(A×B)に比べ有意に少なく、近交弱勢を認めた。それ故、本種は1個体孤立して生じても、弱勢のために生存と繁殖ひいては定着に不利であろう。両種の自生群落で訪花昆虫を採集したところ、3目37種におよんだ。
著者
伊藤 一幸
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, 2002-09-30
著者
福見 尚哉
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-6, 2011 (Released:2011-09-09)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

冬季休閑水田において埋土位置および地表面被覆状態の異なる条件に置いたクサネム(Aeschynomene indica L.)種子の,休眠覚醒程度と夏季湛水条件下での発芽挙動を調査した。秋季に土中10cm深に埋土した種子は,地表面被覆状態にかかわらず,水稲移植時期である5月中下旬にかけてほとんど休眠覚醒が進まなかったが,地表面の種子は休眠覚醒が進行した。ただし,稲わらなどの被覆物の存在する条件では地表面の種子の休眠覚醒は遅延し,裸地条件では5月中旬までに95%以上の種子が休眠覚醒したのに対し,稲わら被覆条件では5月中下旬の時点でも50%以上の種子が休眠状態であった。裸地条件の地表面に置いた種子を5月中旬に水面に浮遊させると5日以内に80%以上が発芽し,7月初めの時点で生存種子は残存しなかった。土中や稲わら被覆条件の地表面に置いた種子からの水面浮遊条件での発芽数は少なく,半数以上の種子は7月初めまで休眠状態を維持して生存した。以上の結果から,稲わらを持ち出したうえで冬∼春季を休閑・不耕起状態で管理すれば,前年秋に散布されたクサネム種子の大部分は休眠覚醒し,水稲栽培期間中にほとんどが発芽等によって失われるものと推察された。
著者
萩本 宏
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.56-59, 2001-03-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1
著者
藤井 義晴 渋谷 知子 安田 環
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.362-370, 1990-12-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
19
被引用文献数
6 10

1) 発芽・生育試験に, ロジスチック関数をあてはめる生長解析法によるバイオアッセイ手法を用いて, 他感作用候補植物を代表的な雑草や作物から検索した結果, 従来他感作用の報告されているセイタカアワダチソウ, ヨモギ, ヒマワリ, クズ, ライムギ等には活性が見られたが, この他にムクナ, ヨウシュヤマゴボウ, ドクダミ, サトイモ等にも活性を見出した。このようにして検出された他感作用候補植物は, ドクダミ, クズ, ムクナ, ヨウシュヤマゴボウ, ヨモギ等, これまでに薬用植物として知られているものが多かった。2) 今回用いたRICHARDS関数による生長解析の手法を用いれば, 他感作用候補植物が, 発芽のどのレベルに作用しているのか (発芽の開始を遅らせるのか, 最終発芽率を阻害するのか, 発芽の速度=斉一性に影響するのか) が明らかとなる。
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.Suppl, pp.77-86, 1986 (Released:2010-02-25)
著者
酒井 博
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.151-159, 1978-12-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
43
被引用文献数
6 2
著者
村岡 哲郎 鴨居 道明 則武 晃二
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.227-232, 1997-11-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
8

水田における表層剥離の発生機構を明らかにするために, 外見的な土壌剥離膜の変化と剥離膜内における藻類の構成割合の変化との関係を経時的に調べた。さらに剥離膜形成の初期段階における珪藻類 (Bacillariophyceae) の役割を調べた。水稲栽培圃場において, 剥離膜は次のような段階を経て形成された。まず, 代かきによって地表面に浮上した微細な土壌粒子が, 珪藻類の運動によって速やかに凝集し, 淡い褐色を帯びた薄膜が形成された。その後, 珪藻類が急速に増殖し優占化することにより, 土壌粒子の凝集が更に進むとともに, 藻類の光合成作用によって生じた酸素が膜上で気泡となって浮力が生じ, 膜の浮上が始まった。次に, この浮上膜内でユレモ類 (Osillatoria sp.) 等の糸状の藍藻類 (Cyanophyceae) の増殖が始まり, やがて, これらが優占化した。その結果, 剥離膜の表面は緑色の繊維状を呈し, これら糸状の藍藻類が凝集した土壌粒子を緊縛することにより, 剥離膜の強度はさらに増加することが判明した。
著者
有井 彩 山根 精一郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.263-268, 2006-12-22
被引用文献数
1
著者
山下 伸夫
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.182-190, 2011 (Released:2011-11-10)
参考文献数
63
被引用文献数
6 1
著者
西田 智子 黒川 俊二 柴田 昇平 北原 徳久
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.59-66, 1999-04-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
20
被引用文献数
7 8

現在, 草地・飼料畑で大きな問題になっている外来雑草の侵入経路の一つとして, 雑草種子の混入した輸入濃厚飼料が家畜に採食され, 糞が堆廐肥として圃場に還元される過程で, 生存したままの種子が圃場に散布されることがあげられている。家畜の消化作用ではすべての種子を死滅させることは不可能なため, 堆肥製造過程で雑草種子を死滅させることが, 外来雑草を蔓延させないために必要である。堆廐肥中の雑草種子は, 堆肥の最高温度が約60℃以上になれば, 発芽力を失うことが明らかにされているが, 温度の持続時間と種子の死滅率の詳細は不明である。そこで, 本実験は, 55及び60℃において, 雑草種子がそれらの温度にさらされる時間と死滅率との関係について調査した。10種類の畑雑草種子 (ワルナスビ, アメリカイヌホオズキ, イチビ, ヨウシュヤマゴボウ, ハリビユ, ホソアオゲイトウ, オオイヌタデ, オオクサキビ, イヌビエ及びメヒシバ)を, 15℃暗条件で24時間吸水させた。種子の吸水率は6~60%の範囲であった (Table 1)。これらの種子について, 55℃及び60℃の処理で, 死滅率が100%となる時間を調査した。イチビを除く9種類の雑草は, 55℃で72時間, 60℃で24時間処理すれば全ての種子が死滅した。イチビ (休眠率80%) については, 55℃では120時間, 60℃では30時間の加熱が必要であった (Table 2)。調査した10種類の雑草の加熱耐性を, 短時間の熱処理に対する耐性 (SDHT) と, 長時間の熱処理に対する耐性 (LDHT) とを組み合わせて分類した。SDHTは60℃3時間処理での生存率により, 50%を境に低及び高耐性の2群に分けた。LDHTは, 60℃処理において1%の有意水準で生存率0%と差が無くなるまでにかかった処理時間により, 低, 中, 高耐性の3群に分類した。その結果, SDHT, LDHTともに低いオオイヌタデ, メヒシバ及びイヌビエ (第1群), SDHTが低くLDHTが中位のハリビユ及びオオクサキビ (第2群), SDHTが高くLDHTが中位のワルナスビ, アメリカイヌホオズキ, ヨウシュヤマゴボウ及びホソアオゲイトウ (第3群), SDHTが低いがLDHTの高いイチビ (第4群) の4群に分かれた (Table 3)。第1, 2及び4群は, 短時間の熱処理で高い死滅率を示すが, 100%の種子が死ぬまでにかかる時間はそれぞれ異なるといえる。また, 第3群は, 短時間の熱処理では生存率が高いが, 100%の種子が死ぬまでにかかる時間はそれほど長くない群である。調査した10種類の雑草種子を死滅させるための時間はイチビ種子の死滅を目安として設定すればよいと考えられたので, イチビについて, プロビット法によりLD90となる時間の95%信頼区間を計算した。その結果, 55℃では42~58時間, 60℃では10~17時間となった (Fig. 1)。本実験の結果と既往の堆廐肥の発酵温度に関する報告とからみて, 堆廐肥が順調に発酵した場合は, イチビを含むすべての種子が死滅する温度と時間を確保できるといえる。
著者
一前 宣正
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.85-86, 2007 (Released:2007-12-20)
被引用文献数
1 1
著者
程 岩松 堀内 孝次 大場 伸哉
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.153-160, 2002-09-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
14
被引用文献数
2

植物の他感作用を活用して, イネ科強害草のメヒシバの生育を抑制する目的で, 42種類のハーブの抽出液を用いた発芽実験を行い, さらに発芽抑制効果の大きかった数種ハーブについて, 植物体砕片を土壌に混入し, それをポットに充填してメヒシバを育成し, その生育抑制効果を調査した。その結果, 発芽実験ではバルサムギク, ローマンカミツレ, メボウキ, ミドリハッカ, ラベンダーの蒸留水抽出液とバルサムギク, スイカズラ, メボウキ, アマドコロ (地下茎) のメタノール抽出液が発芽を強く抑制した (第1表)。発芽後初期生育は, スイカズラ, ラベンダー, イチョウ (果皮) の蒸留水抽出液とバルサムギク, スイカズラ, キツネノボタン, ウコン, アマドコロ (地下茎) とイチョウのメタノール抽出液によって顕著に抑制された (第1表)。また, スイカズラとラベンダー砕片を土壌に混入したところ, メヒシバの乾物重と分げつ数は対照区に比べて大きく減少した (第3表)。これらの実験結果は, ハーブ類数種がメヒシバの生育を強く抑制し, 他感作用を有する可能性を示した。
著者
米倉 正直
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.64-68, 1979-08-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

カブトエビの自然発生数と水田雑草の除草効果との関係を究明するため, 1m2のコンクリート枠で, 前年に自然発生した土壌を添加して試験を行い, 次の結果を得た。1) 発生雑草はキカシグサ, ミゾハコベなどの広葉雑草が主体で, そのほかノビエ, カヤツリグサ科雑草などが混生し, 合計発生本数4,000本/m2以上の, きわめて雑草発生量の多い条件であった。2) カブトエビは雑草の出芽時期 (代掻き4~8日後) とほぼ同一時期に発生した。アジアカブトエビとアメリカカブトエビの二種が発生したが, アジアカブトエビが主体であった。3) 代掻き後16日におけるカブトエビ発生数は, 5~266匹/m2であった。カブトエビを背甲長によって分級し, 中個体 (背甲長10~13mm) に換算して換算個体数を求めた。代掻き後16日におけるカブトエビの換算個体数 (x) と残存雑草本数対無放飼区比率 (y%) との間にはr=-0.793という, かなり高い負の相関が認められた。草種別にみると, カヤツリグサ科雑草, キカシグサなどとの間で相関が高かったのに対し, ノビエ, コナギでは相関が小さく, 効果に変動がみられた。4) 前述したxとyとの間には, y=1/1.046×1.0518xの回帰式が適合した。この回帰曲線から推定して, 雑草発生本数を無放飼区の10%以下の発生数 (実用的除草効果) に抑制するには, 代掻き後約2週間の時点でm2当たり50匹程度 (背甲長1cm程度の個体) のカブトエビの発生が必要と結論された。