著者
橘 雅明 渡邊 寛明 伊藤 一幸
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.235-241, 2002
被引用文献数
3

ヨーロッパ原産の帰化雑草ハルザキヤマガラシ (<i>Barbarea vulgaris</i> R. Br.) の東北地域における発生実態について, 農業改良普及センターを対象としたアンケート調査および観察調査を実施した。1993年と1996年のアンケート調査では, 東北全県からあわせて29件の発生確認の回答があった。2001年に実施した観察調査においても全ての県で発生が確認されたことから, 東北地域において本種が広く分布し, 定着していることが明らかとなった。特に発生数の多い地域は, 青森平野, 秋田県横手盆地, 岩手県北上盆地, 雫石盆地, 遠野盆地であった。<br>ハルザキヤマガラシの発生が多かった秋田県横手盆地の仙北地域では, 1994年と比べて2001年には高密度で発生している地点数は減少したが, 発生地点数は増加し, 分布は拡大していた。ハルザキヤマガラシの種子は2年間の水中貯蔵後も3割程度が生存し, 発芽力を有することが明らかとなった。また, 河川周辺および用排水路周辺の水田畦畔・道路端に発生が多く, 河川の中州や用水整備などで畦畔に上げられた用排水路の底土において発生が確認された。これらのことから, 河川や用排水路がハルザキヤマガラシの拡散経路の一つであると考えられた。
著者
嶺田 拓也 沖 陽子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.81-87, 1997
被引用文献数
8

埋土種子集団は防除体系や耕起法など圃場に対する過去の人為的働きかけを反映する。そこで農生態系における雑草種の管理戦略を組み立てるために, 雑草防除法, 耕起法, 作付け様式などの管理の異なる岡山県南部の水田8圃場の土壌を, 入水前の6月に地表から0-5, 5-10, 10-15, 15-20cmの4層に分けて採取し, 炭酸カリウム50%溶液を用いた比重分離法で埋土種子を回収した。埋土種子総数は, 手取り除草中心の圃場よりも除草剤連用の水田で少なかった。そして休耕田や粗放管理の圃場では, ノビエ類を中心に埋土種子数が除草剤連用水田の3倍以上であった。また不耕起田では, 種子の分布は表層部に偏り, 反転耕を行っている圃場では地下20cm近くまで種子の分布が多くみられた。草種別ではコナギ・アメリカコナギの種子数が, 手取り除草を続けている圃場で多くなる傾向を示した。そしてイネ単作圃場より, 麦やレンゲを栽培し秋から春にかけての耕起回数が少ない圃場で, スズメノテッポウを中心とする冬生雑草が多くなった。また主な草種において比重分離法で回収された種子と発芽法にて発生してきた本数との間には有意な回帰式を導くことができた。
著者
阿部 拓也 栗林 健一 露木 寿 小笠原 勝
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.159-163, 2012 (Released:2014-01-08)
参考文献数
8
被引用文献数
2
著者
古原 洋 内野 彰 渡邊 寛明
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.175-184, 2001-09-28
参考文献数
13
被引用文献数
7

要約:北海道および東北で採取されたスルホニルウレア系除草剤抵抗性イヌホタルイ(Scirpus jun-coides Roxb.var.ohwianus T.Koyama)8集団および感受性6集団の1998年産種子を供試し,15℃および30℃の温度条件,湛水土壌および密栓水中条件下での発芽について検討した。その結果,15℃湛水土壌の低温条件下で,抵抗性イヌホタルイの多くは感受性イヌホタルイよりも発芽率が高く,発芽速度も速やかであった。上記供試イヌホタルイのうち,抵抗性3集団および感受性1集団について,1999年産種子を用いて再試験を実施したところ,1998年産種子と同様の結果が得られたことから,種子の発芽にみられる集団間差異は遺伝的な差異と考えられた。抵抗性および感受性イヌホタルイが混生する現地水田において,発生時期毎にイヌホタルイ実生の抵抗性検定を行った結果,抵抗性個体の発生が感受性個体よりも速やかであり,移植後10日までに大部分の個体が発生を終えていることが明らかとなった。代かき後の雑草発生時期が低温で推移する北海道においては,低温発芽性に優れる抵抗性イヌホタルイの発生は,感受性イヌホタルイよりも速やかである場合が多いと予想される。したがって,抵抗性イヌホタルイ発生水田では,除草剤の処理時期を逸しないように,水稲移植直後より注意深くその発生を観察することが重要であると示唆された。
著者
冨永 達
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.36-40, 2007-03-30
著者
高柳 繁
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.372-379, 1991-12-26
被引用文献数
2

本研究の最終目標は、雑草と作物の光競争過程を数学的にモデル化し、シミュレーション操作を通して雑草害の早期診断法を開発することにある。本報では、その第一段階としてメヒシバとダイズを対象とし、それぞれの種の単植群落の成長・発育モデルをシステムダイナミックスの手法で策定した。モデル策定のための情報は、主として圃場試験および文献から収集した。モデルの妥当性の検証に用いた実測データは、モデル作成の際に情報を収集した試験成績以外の結果を用いた。実測値とシミュレーション値とは両種とも概ね良好に一致し、改良すべき点についても明らかにされた。
著者
寺澤 輝雄 浅野 紘臣 広瀬 昌平
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.14-18, 1981-07-26
被引用文献数
1

メヒシバ,スベリヒユを土壌の最大容水量に対して12,25,50,100%の4条件下で全生育期間を通してa/2,000ポットで栽培し,土壌水分の差異が両草種の生育と種子生産構造に及ぼす影響を調査した。1)栄養生長期,成熟期を通して,過湿と過乾に対する両草種の反応は異なっており,メヒシバは過乾条件で,スベリヒユは過湿条件で生長がより大きく抑制された。2)栄養生長期の地上部乾物重で最大生長を示す最適水分条件はメヒシバでは50%区であり,スベリヒユでは25%区であった。3)両草種の種あるいはがい果当たりの稔実種子生産量は4処理条件下で,ほぼ一定であり,土壌水分の変化による個体当たりの種子生産量の差異は個体当たり,穂数あるいはがい果数の増減によるものであった。4)土壌水分の差異によるCREの変化は,メヒシバで3〜4%の範囲にあり,一方,スベリヒユでは15〜20%であって,スベリヒユはメヒシバに比べCREが高かった。5)両草種の形質の土壌水分に対する表現型可変性は生長量の形質に関しては,スベリヒユの分枝数を除いて,一般にメヒシバがスベリヒユに比べて高く,成熟期の種子生産形質については,メヒシバの穂数を除いて,一般に,スベリヒユがメヒシバに比べて高かった。6)最適水分条件下でメヒシバは穂数,スベリヒユはがい果の増加によって個体当たり種子数の拡大生産を確保し,不適当な条件下でも,両種は得られた種あるいはがい果に稔実した種子を確実に着生し,最低限の生存を確保していることが明らかにされた。
著者
村岡 哲郎 鴨居 道明 則武 晃二
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.227-232, 1997-11-25
参考文献数
8

水田における表層剥離の発生機構を明らかにするために, 外見的な土壌剥離膜の変化と剥離膜内における藻類の構成割合の変化との関係を経時的に調べた。さらに剥離膜形成の初期段階における珪藻類(Bacillariophyceae)の役割を調べた。水稲栽培圃場において, 剥離膜は次のような段階を経て形成された。まず, 代かきによって地表面に浮上した微細な土壌粒子が, 珪藻類の運動によって速やかに凝集し, 淡い褐色を帯びた薄膜が形成された。その後, 珪藻類が急速に増殖し優占化することにより, 土壌粒子の凝集が更に進むとともに, 藻類の光合成作用によって生じた酸素が膜上で気泡となって浮力が生じ, 膜の浮上が始まった。次に, この浮上膜内でユレモ類(Osillatoria sp.)等の糸状の藍藻類(Cyanophyceae)の増殖が始まり, やがて, これらが優占化した。その結果, 剥離膜の表面は緑色の繊維状を呈し, これら糸状の藍藻類が凝集した土壌粒子を緊縛することにより, 剥離膜の強度はさらに増加することが判明した。
著者
猪谷 富雄 平井 健一郎 藤井 義晴 神田 博史 玉置 雅彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.258-266, 1998-10-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
13
被引用文献数
3 7

サンドイッチ法は寒天培地中に包埋した供試植物の乾燥葉から浸出する物質のアレロパシー活性を, 寒天培地上に播種した検定植物の種子根等の伸長抑制程度から判定する方法である。この方法によって, 広島県立大学キャンパスおよび広島大学医学部薬用植物園内で採取した雑草・薬用植物計152種のレタスに対するアレロパシー活性を検定した。その結果, カタバミ, ヒメスイバ, イシミカワ, ヤブラン, メギ, ショウジョウバカマがレタス根長の伸長程度 (対照区比) 10~20%と強いアレロパシー活性を示した。上記のような強いアレロパシー活性の認められたもの23種を供試植物とし, 検定植物としてレタスの他にアカクローバー, キュウリおよびイネの4種を用い, サンドイッチ法によって供試植物のアレロパシー活性を検討した。得られたデータの主成分分析の結果, 50%の寄与率を持つ第1主成分は4種の検定植物が共通して示すアレロパシーに対する感受性を表し, かつ検定植物中レタスで最も高い第1主成分の因子負荷量が得られた。これより, サンドイッチ法の検定植物として従来用いられているレタスが適当であることが示唆された。また, 26%の寄与率をもつ第2主成分は, 検定植物のレタス・アカクローバーとキュウリ・イネとで同一物質に対して異なる感受性の方向を示すと考えられた。このことから検定植物間で選択性をもつアレロパシー物質の存在が推定された。
著者
井貝 敬太郎 西 静雄
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.212-214, 1980-10-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1
著者
堀江 秀樹 根本 正之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.340-345, 1990-12-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
19
被引用文献数
1

アレチギシギシ, ナガバギシギシ, ギシギシ, エゾノギシギシの4種におけるリンおよびアルミニウムの生育への影響を比較した。1) リンを4水準で施肥し, 栽培試験を行った結果, 4種はすべて無リン条件での生育は極めて不良であるが, リンを与えるとその生育量は著しく増加した。土壌中の可給態リン濃度が低い場合の全乾物重はギシギシ, エゾノギシギシ, アレチギシギシ, ナガバギシギシの順であった (Figs. 1, 4)。2) ナガバギシギシではT/R比は最小であったが (Fig. 2), 側根の占める割合が小さく, 根長は最も短かった (Fig. 4)。ナガバギシギシでの低リン耐性が低い要因は根長が短いことによると考えられる。3) アルミニウムを20ppm添加して4種を水耕栽培した結果, エゾノギシギシの全乾物重は他の3種より有意に大きかった (Table 1)。4) 日本の人工草地ではリン欠乏やアルミニウムの害が問題になるが, このような土壌条件下では低リン耐性および高アルミニウム耐性にまさるエゾノギシギシがナガバギシギシよりも生育しやすいと考えられる。
著者
鈴木 光喜 須藤 孝久
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.105-109, 1975-11-25
被引用文献数
6

発生予測の基礎資料を得るため,代かき時期を想定して4月20日から8月2日まで8回にわたって12科19種の雑草種子を播種し,温度と発生との関係を検討した。(1)各播種期を通して,出葉始めまでの日数は,畑地埋蔵種子および畑地埋蔵後湛水地中埋蔵種子が最も短く,戸外風乾貯蔵種子が最も長かった。したがって,温度と発生との関係の検討は,畑地埋蔵種子を対象にして行なった。(2).出芽始期はミズハコベなどの3草種が最も早く,平均気温で8℃,平均水温で13℃であった。一方,コナギ,アセトウガラシは最も遅く,同じく,それぞれ15〜16℃,19℃であり,他の草種は両者の中間に位した。(3)播種から出葉始めまでの積算気温,積算水温は,低温期の播種では高い値を示したが,ある時期以後では各雑草ともほぼ一定の値に達した。各草種の積算温度値の高低は出葉始期の早晩と逆の比例関係を示した。(4)播種から出葉始めまでの日数(y)と,その間の平均気温(x_1)および平均水温(x_2)との間に,y=ax^bの曲線回帰式が,各草種で得られた。(5)単子葉類7草種の生育初期における出葉速度は規則性をもち,草種ごとにほぼ一定の出葉間隔のあることが分かった。
著者
橘 雅明 伊藤 一幸 渡邊 寛明 中山 壮一 山口 裕文
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.175-184, 2008-12-24
被引用文献数
2

東北地域の転作コムギ畑で問題となっているハルザキヤマガラシ(Barbarea vulgaris R.Br.),カミツレモドキ(Anthemis cotula L.)および侵入が危惧されるイヌカミツレ(Matricaria inodora L.)の防除法を策定するために,出芽を中心にこれらの生活史を調査し,除草剤と中耕による管理について検討した。カミツレモドキは,青森県の秋播きコムギ畑では,主に秋季に出芽する越冬個体が雑草害の原因となっていた。カミツレモドキは春季と秋季の年2回種子より出芽していた。コムギ畑に発生したハルザキヤマガラシ,カミツレモドキおよびイヌカミツレの帰化雑草3草種に対しては,播種直後のリニュロン水和剤土壌処理,秋季の出芽終期にあたる11月上旬のアイオキシニル乳剤処理,5月上旬の条間中耕またはアイオキシニル乳剤処理に高い除草効果がみられた。上記の3つの除草管理時期のうち,いずれか2つの時期に適切な除草管理を実施すれば各草種の収穫期乾物重は無除草区の4%以下となり,帰化雑草3草種のいずれでも防除できる。カミツレモドキとイヌカミツレについてはチフェンスルフロンメチル水和剤による茎葉処理でも高い除草効果がみられた。
著者
高村 斉治 松中 昭一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.46-51, 1972-09-30

除草剤U-18は,ヒル反応,呼吸,およびジベレリン誘起α-アミラーゼ生成に影響せず,クロロシスによってタイヌビエを枯死させる。新葉分化の停止が殺草の要因である可能性もあるが,現在の段階では決定的ではない。 U-18がクロロシスを発生させる機構としては,タイヌビエのプロプラスチドの形成阻害への影響は小さく,クロロフィルの生合成をも含めてその後の葉緑体への生長を阻害するためと考えられる。U-18によるクロロフィル分解促進はみとめられなかった。水稲においては,毎目薬液を交換してU-18処理を続けても,葉令が進むにつれてクロロシスの程度が軽くなり,第4葉以後ではほとんどみとめられないので,この時期に何らかの質的内部変化が対応していると考えられる。
著者
輪嶋 正隆
出版者
日本雑草防除研究会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.252-255, 2009

2001年7月31日の完成後翌日から埼玉スタジアム2002で天然芝ピッチの管理を開始し8年が経過した。我々が管理しているスタジアム内の特殊な環境と日照条件の良い外のグラウンドとの比較の中でのサッカープレーに供する芝管理への取り組みと、雑草管理についてほんの一部であるが記してみた。