著者
岩崎 桂三 綿島 朝次 萩本 宏
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.104-110, 1981-09-10 (Released:2009-12-17)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

ホタルイ, イヌホタルイおよびタイワンヤマイの越冬性を, 越冬場所の土壌水分や越冬株の耐乾性との関係で検討すると共に, 越冬株からの出芽深度や越冬株から生育した植物に対するピペロホス・ジメタメトリン粒剤 (CG102) およびピペロホス・ジメタメトリン・ベンタゾン粒剤 (TH63) の効果を検討した。1. ホタルイ, イヌホタルイおよびタイワンヤマイは土壌水分状態に関係なくすべて越冬した。また, 3草種とも1978年1月6日以降まで屋外にあった株基部からの生育がおう盛であった。2. ホタルイの越冬芽の上部を2cmの厚さに覆土するとほとんど出芽せず, 出芽したものの生育は著しく阻害された。イヌホタルイは覆土深3cmでもすべて萌芽したが, 67%しか出芽しなかった。タイワンヤマイは覆土深4cmでもすべて出芽, 生育した。3. 越冬株の重量が, ホタルイおよびイヌホタルイでは68%以上, タイワンヤマイでは72%以上減少するまで風乾すると, 越冬株は風乾時の温度には関係なく死滅した。4. 越冬株から生育したホタルイ, イヌホタルイおよびタイワンヤマイに対して, TH63は極めて高い効果を示したが, CG102の効果はいずれの草種に対しても低かった。しかし, 両薬剤の3草種に対する効果は共に, ホタルイ>イヌホタルイ>タイワンヤマイの順に高かった。
著者
野口 勝可 中山 兼徳
出版者
The Weed Science Society of Japan
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.233-239, 1979

主要な畑雑草種子の発芽および出芽と水分条件との関係について, 普通作物, 牧草種子と比較, 検討した。<br>1) 土壌水分条件を変えて出芽との関係を検討した結果, 各供試植物とも含水比54.6% (pF 1.5) の条件で最も出芽率が高く, 含水比の低下とともに出芽率も低下し, また平均出芽日数が増加した。土壌水分の低下による出芽率の減少は普通作物より雑草と牧草で著しく, 出芽のための限界的な土壌水分条件は, 含水比で作物では20%前後, 雑草と牧草は25~30%と推定された。なお, 本試験の範囲では, 雑草間の異差についてははっきりしなかった。<br>2) 土壌水分の違いによる出芽率の差異は種子の吸水力が関与しており, グルコースモル濃度により浸透圧を変えて試験した結果, 種子の吸水力は作物で大きく, 雑草と牧草は小さかった。また, 浸透圧の高い条件では草丈・主茎長や根の伸長などの生育も抑制された。<br>3) 圃場において, 地表面 (0~1cm層) の土壌水分は, 灌水後数日で含水比25~30%以下に低下し, 雑草種子の出芽限界以下になるが, それより下層 (1~2cm層) では比較的安定しており, 種子位置のわずかの違いが出芽にとって重要な要因であることが明らかとなった。
著者
藤井 義晴 古河 衛 早川 嘉彦 菅原 和夫 渋谷 知子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.36-42, 1991
被引用文献数
9

薬用植物, および香料植物の一部から, 他感作用候補植物を, レタスに対する発芽・生育試験とフザリウムに対する抗菌性試験 (胞子発芽と菌糸伸長試験) から検索した。その結果, 作物や一般雑草よりも高い頻度で, 活性の強い他感作用候補植物が得られた。<br>植物発芽・生育阻害活性も抗菌性もともに最も強かったのは, キンポウゲ科のオキナグサとセンニンソウであった。これらは著名な毒草としてすでに知られており, とくにセンニンソウは牧草地に侵入する有害雑草として良く知られている。<br>これに次ぐものとして, オオグルマ, フレンチタイム, アンミビスナーガ, ゲッケイジュがあった。ユリ科のニラとニンニクは, 水抽出液の抗菌性が, カンゾウとクスリウコンはメタノール抽出液の抗菌性が強かったが, 植物生育阻害作用は小さかった。逆にヨウシュヤマゴボウ, ニッケイ, ペパーミントは, 抗菌性は小さかったが, 植物の発芽・生育阻害が強かった。
著者
浅野 紘臣 寺澤 輝雄 広瀬 昌平
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.88-92, 1980

窒素施肥量 (10a当たり0, 10, 50および100kg)がメヒシバおよびスベリヒユの生育と種子生産構造に及ぼす影響を調べた。<br>1) 窒素レベルの増加につれて2草種の生長量は一般に増大するが, 栄養生長期の調査で, スベリヒユは茎長, 葉数, 全乾物重およびがい果数がN-50区で最高値を示し, メヒシバでは稈長および全乾物重だけがN-50区で最高値を示した。<br>2) 一方, 成熟期の調査で, スベリヒユは千粒重を除いたすべての形質がN-50区で最高値を示したが, メヒシバでは穂当たりの種子粒数, 種子重および千粒重がN-10区で最高値を示し, 個体当たり穂数はN-50区に最高値がみられた。<br>3) 多数の形質について表現型可変性変異を調べたが, メヒシバはスベリヒユに比べて一般に大きく, 特に個体当たり穂数および種子粒数で顕著であった。そして, 両草種の千粒重はいずれも低い変異を示した。<br>4) 再生産効率については, 2草種とも窒素レベルの増加に伴い増加する傾向にあるが, メヒシバではN-50区, スベリヒユではN-100区で最高となり, その値は25.3%と28.2%であった。<br>5) 処理区内の個体変動を求めたが, メヒシバではN-0区, スベリヒユではN-0, N-100区で個体変動が増加した。すなわち, 一般の圃場条件とは異なる無窒素と窒素過多の条件下で個体間の反応に差が生じ, 生育が不均一になることが観察された。<br>6) 以上の結果をもとにして, 雑草の環境適応上の問題を考察した。
著者
寺澤 輝雄 浅野 紘臣 広瀬 昌平
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.10-16, 1980

雑草の環境適応のメカニズムを明らかにする一環として, 本実験ではメヒシバ, スベリヒユを供試し, 密度条件の差異がこれら2草種の生育と種子生産構造に及ぼす影響を調べた。密度条件はa/2,000ワグネルポットにメヒシバで5, 20, 50および100個体, スベリヒユで5, 20, 45および65個体のそれぞれ4条件とした。<br>1) 密度の増加によってスベリヒユは栄養生長期, 成熟期を通して, 10%前後の枯死個体が認められたが, メヒシバでは全く認められなかった。<br>2) 2草種とも, 個体当たりの生長量は密度の増加に伴って減少し, 最高・最低密度間の差異は栄養生長期より成熟期で増大した。<br>3) 種子生産量およびその構成要素のうち個体当たりの穂数 (メヒシバ) あるいははがい果数 (スベリヒユ), 種子重, 種子粒数は密度の増加に伴って減少したが, 1穂あるいは1がい果当たりの種子粒数, 種子重はメヒシバでは20個体区, スベリヒユは5個体区に最高値があった。<br>4) 各形質の表現型可変性の変異を密度に対する回帰係数によって比較したが, スベリヒユがメヒシバに比較して表現型可変性が大であった。<br>5) 2草種の再生産効率を求めたが, メヒシバがスベリヒユに比較して高く, スベリヒユで密度の増加によって減少する傾向が認められた。<br>6) 2草種の生長量について各密度区内の個体変動を調査したが, 密度の増加に従い個体変動は増大する傾向が認められた。<br>7) メヒシバは密度の増加に対し, 区内の個体変動は少なく, 平均的な個体と個体数を確保し, 一方, スベリヒユは個体間の競合によって生き残った個体の再生産力によって, それぞれ単位面積当たりほぼ一定の生産を維持しているのが認められた。
著者
寺澤 輝雄 浅野 紘臣 広瀬 昌平
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.14-18, 1981
被引用文献数
1

メヒシバ, スベリヒユを土壌の最大容水量に対して12, 25, 50, 100%の4条件下で全生育期間を通してa/2,000ポットで栽培し, 土壌水分の差異が両草種の生育と種子生産構造に及ぼす影響を調査した。<br>1) 栄養生長期, 成熟期を通して, 過湿と過乾に対する両草種の反応は異なっており, メヒシバは過乾条件で, スベリヒユは過湿条件で生長がより大きく抑制された。<br>2) 栄養生長期の地上部乾物重で最大生長を示す最適水分条件はメヒシバでは50%区であり, スベリヒユでは25%区であった。<br>3) 両草種の穂あるいはがい果当たりの稔実種子生産量は4処理条件下で, ほぼ一定であり, 土壌水分の変化による個体当たりの種子生産量の差異は個体当たり, 穂数あるいはがい果数の増減によるものであった。<br>4) 土壌水分の差異によるCREの変化は, メヒシバで3~4%の範囲にあり, 一方, スベリヒユでは15~20%であって, スベリヒユはメヒシバに比べCREが高かった。<br>5) 両草種の形質の土壌水分に対する表現型可変性は生長量の形質に関しては, スベリヒユの分枝数を除いて, 一般にメヒシバがスベリヒユに比べて高く, 成熟期の種子生産形質については, メヒシバの穂数を除いて, 一般に, スベリヒユがメヒシバに比べて高かった。<br>6) 最適水分条件下でメヒシバは穂数, スベリヒユはがい果の増加によって個体当たり種子数の拡大生産を確保し, 不適当な条件下でも, 両種は得られた穂あるいはがい果に稔実した種子を確実に着生し, 最低限の生存を確保していることが明らかにされた。
著者
藤井 義晴 渋谷 知子 安田 環
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.362-370, 1990
被引用文献数
10

1) 発芽・生育試験に, ロジスチック関数をあてはめる生長解析法によるバイオアッセイ手法を用いて, 他感作用候補植物を代表的な雑草や作物から検索した結果, 従来他感作用の報告されているセイタカアワダチソウ, ヨモギ, ヒマワリ, クズ, ライムギ等には活性が見られたが, この他にムクナ, ヨウシュヤマゴボウ, ドクダミ, サトイモ等にも活性を見出した。このようにして検出された他感作用候補植物は, ドクダミ, クズ, ムクナ, ヨウシュヤマゴボウ, ヨモギ等, これまでに薬用植物として知られているものが多かった。<br>2) 今回用いたRICHARDS関数による生長解析の手法を用いれば, 他感作用候補植物が, 発芽のどのレベルに作用しているのか (発芽の開始を遅らせるのか, 最終発芽率を阻害するのか, 発芽の速度=斉一性に影響するのか) が明らかとなる。
著者
市原 実 和田 明華 山下 雅幸 澤田 均 木田 揚一 浅井 元朗
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.41-47, 2007
被引用文献数
3

種子の乾熱処理および火炎放射処理が帰化アサガオ類(ホシアサガオ(<i>Ipomoea triloba</i>),マメアサガオ(<i>I. lacunosa</i>),マルバアサガオ(<i>I. purpurea</i>),マルバアメリカアサガオ(<i>I. hederacea</i> var. <i>integriuscula</i>)およびマルバルコウ(<i>I. coccinea</i>))の発芽に及ぼす影響と,火炎放射後の湛水が種子の生存に及ぼす影響について調査した。80&deg;Cで30分間乾熱処理した場合,5草種の発芽率(吸水,膨潤した種子の割合)は21.1&sim;97.8%であった。マメアサガオ(21.1%)とマルバアサガオ(47.8%)を除く3草種は,72.2&sim;97.8%と高い発芽率を示した。一方,火炎放射処理を3秒間行った場合,発芽率は94.4&sim;100.0%と5草種ともほぼ完全に発芽した。さらに火炎放射処理後の種子は湛水条件下に2ヶ月間埋土されることにより,5草種全てにおいて100%死滅することがわかった。本研究より帰化アサガオ類の防除において,種子散布後に圃場地表面を火炎放射処理し,その後湛水することが有効であることが示唆された。
著者
牛木 純 赤坂 舞子 手塚 光明 石井 俊雄
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.128-133, 2007
被引用文献数
4

国内に発生する雑草イネの生態的特性を明らかにすることを目的として,2003年に長野県から採取した74集団,岡山県から採取した40集団の発芽様式と休眠性の特徴について,出穂後100日目の発芽試験によって調査した。その結果,雑草イネ集団の約25%は休眠性を持ち,最高で播種後約200日目に発芽する種子を持つ集団も存在した。発芽様式は集団によって多様であったが,播種後30日目の発芽率と発芽率が95%に達するのに要した日数との関係から,大別して3タイプの発芽様式があると考えられた。最も多かったのは,栽培品種と同様に播種後30日以内に95%以上の種子が発芽する集団(以下,GP1,全体の約75%)であった。これに対し,GP1よりも発芽は遅延するが,播種直後から日数に応じて徐々に発芽が進む集団(以下,GP2,全体の約18%),あるいは播種直後はほとんど発芽しないが,一定期間を過ぎると急速に発芽が進む集団(以下,GP3,全体の約7%)も存在した。上記の発芽様式を持つ雑草イネ集団の割合を発生地区ごとに比較すると,GP2あるいはGP3の集団の割合が高い地区は,長野県と岡山県の雑草イネが高い密度で発生している地区であることが共通していた。以上の結果から,国内に発生する雑草イネの休眠性は概して栽培品種と同程度だが,一部地域には休眠性の深い集団も存在し,その集団の休眠性は発生密度と関連する可能性が示唆された。
著者
佐藤 光政 伊藤 一幸 宇佐美 洋三 小泉 博
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.377-384, 1990

日本国内における除草剤に抵抗性を示す雑草のバイオタイプの出現の状況を把握するため, 1989年3月にアンケート調査を実施した。<br>1. ハルジオン, ヒメムカシヨモギ, オオアレチノギク, ヒメジョオン, オニノゲシ, スズメノカタビラ, ノボロギク, オニタビラコ, イヌガラシの9種およびノエビ類において除草剤抵抗性のバイオタイプが見られた。比較的多くの地点で抵抗性バイオタイプが見られたのはハルジオン, ヒメムカシヨモギ, オオアレチノギクの3種で, ハルジオンの除草剤抵抗性バイオタイプは関東地方を中心に出現し, ヒメムカシヨモギとオオアレチノギクの抵抗性バイオタイプは関東地方から九州地方に至る比較的広い地域に出現した。<br>2. 除草剤抵抗性バイオタイプが見られるようになった時期は,「5年以上前から」または「2~3年前から」が多かった。<br>3. 除草剤抵抗性バイオタイプは果樹園, 桑・茶園, 路傍, 畑地および放棄地などで多く見られた。それらの場所で使用している除草剤はパラコートが多かった。
著者
松尾 光弘 坂本 美代 高砂 志織 本間 秀一朗 寺尾 寛行 小川 紹文
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.77-85, 2009 (Released:2009-07-08)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

ツユクサ科の一年生雑草であるマルバツユクサは,地上部および地下部にそれぞれ大きさの異なる大小2種類の種子を形成する。本研究では,南九州に発生した個体におけるそれら4種類の種子の発芽,出芽,生育およびそれらの種子から発生した個体の種子生産を比較した。  地上部あるいは地下部に形成された大型種子の発芽率は25°C∼40°Cで85%以上であり,発芽に要する平均日数は30°C∼40°Cで3日∼4日以内であった。また,斉一発芽係数は30°C∼35°Cで0.7∼1.1と最も大きな値を示した。小型種子の場合,地上部および地下部ともに発芽率は30°C∼35°Cで90%以上となり,発芽に要する平均日数は30°Cで約8日,35°C∼40°Cで約5日となって,大型種子よりも長くなる傾向にあった。また,小型種子の斉一発芽係数は35°Cで0.2∼0.5と最も大きな値となったが,数値は大型種子の半分以下であった。4種類の種子を自然条件下に播種した場合,地上部あるいは地下部に形成された大型種子から発生した個体の多くが3月∼5月に出芽したのに対して,小型種子の多くは4月∼9月に断続的に出芽した。また,それらの出芽深度は大型種子で0mm∼50mm,小型種子で0mm∼10mmであり,小型種子よりも大型種子由来の個体が土壌の深い場所から出芽した。完全展開した第1葉の葉長葉幅比は,いずれの種子から発生した個体においても約1.45であったが,葉幅は地下部大型種子>地上部大型種子>地下部小型種子>地上部小型種子由来の個体の順に有意に異なっていた。それぞれの種子から発生した個体の地上部における草丈,一次分枝数,葉数および生体重は同様の傾向に推移し,また地上部および地下部に形成された花序数あるいは大小の種子数についても,種子の形成位置と大きさによる有意差は認められなかった。以上の結果から,マルバツユクサに形成される4種類の種子,すなわち地上部あるいは地下部に形成された大型あるいは小型種子について,最適発芽温度,平均発芽日数,斉一発芽係数,出芽深度および出芽パターンは種子の大きさによって,また完全展開した第1葉の形態は種子の形成位置と大きさによって異なることが分かった。しかし,それら種子から発生した個体の生育,後の花芽形成あるいは種子生産については種子間に差異が認められなかった。
著者
野澤–竹田 努 閻 美芳 小寺 祐二 青山 真人 西尾 孝佳 小笠原 勝
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.129-139, 2020

<p>地域住民の雑草管理能力が過疎高齢化に伴い低下するなかで,一般市町村道から交通量の多い広域農道や土地改良事業で設置された農業用水路の畦畔に至るまで,地域自治体の雑草管理に関する負担がますます増加する傾向にある。また,イノシシなどの鳥獣害が中山間地域を中心に問題になっている。そこで,地方行政担当者が雑草や鳥獣害に対してどのような問題意識を有し,いかに対処しているのかを明らかにする目的で,栃木県全域の市町を対象としたアンケートを実施した。2018年7月にアンケート調査票を,栃木県内の全25市町の雑草と鳥獣害対策に関連する137部署に返信用封筒と共に郵送し,回答を83部署から得た。集計は複数回答の場合も単純に加算し評価した。また,回答した市町の部署を生活系部署,土木系部署,農業系部署に分けて,部署間における問題意識の共通性を解析した。これらの結果から,雑草と鳥獣害対策において,殆どの市町が人員,予算不足および土地の権利に関する問題を抱えており,限られた予算の中での問題解決には生活系部署を中核にした部署連携が有効であることが示唆された。</p>
著者
中谷 敬子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.158-165, 2015 (Released:2016-01-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1
著者
菅原 清康
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.16, pp.53-57, 1973-09-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
13

(1) 本研究は, 個々の雑草草種が原野, 新開墾畑, 未熟畑ならびに熟畑に単一群落を形成している位置の土壌pH値を群落の規模別に測定し, その草種が生育するための土壌の最適pH値の段階や範囲を究明しようとしたものである。(2) 同一草種では, 単一群落形成の規模の大小によって, 適応pH値の段階や範囲にさほど相異がみとめられない。(3) 個々の草種では適応pH値の段階に著しい相異があるとともに, その範囲にも広狭の相異がある。(4) 土壌のpH値が低く比較的適応範囲の狭い草種は原野に, 土壌のpH値が高く比較的適応範囲の狭い草種は熟畑に, また適応範囲の広い草種は未熟畑に多く発生するようである。また宿根性雑草の多くは, おおむね土壌pH値の適応範囲が広いようである。(5) 土壌pH値の段階や範囲の適, 不適によって個々の草種の発生および消滅が生起し, これらの現象が草種の転換としてあらわれるもののようである。(6) 適応酸度の強弱によって雑草を5段階に分類して1~5の序数をつけ, これを尺度として単位面積当りの平均反応数を出すことが可能である。一方, その場所の土壌酸度を測定し, 土壌酸度を顧慮して雑草を群落の形で土壌の指標としてあらわすことができる。
著者
渡辺 泰 広川 文彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.1969, no.9, pp.36-41, 1969-12-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
8

北海道の畑作雑草10種を対象に, 種子の休眠の程度とこれらの越冬条件に対する反応を調査した。(1) イヌタデ, シロザ, オオイヌタデ, タニソバは休眠が深く, 半年地中越冬すると覚醒したが, 5℃室内越冬によっても後の2種は相当覚めた。アキノエノコログサ, ツユクサ, ヒメイヌビエも休眠が深いが, これらの種子は5℃室内越冬によって休眠が覚めた。ナギナタコウジュは採種直後の種子で休眠を示した。地中越冬よりも5℃室内越冬の発芽率が高かった。ハコベは8~9月採種種子は休眠が浅く, 地中越冬で二次休眠に入り, 翌春変温下で覚醒した。11月採種種子は休眠がかなり深く, 低温湿潤処理しても覚めなかった。アキメヒシバは休眠が最も深く, 各種の処理でも覚めなかった。(2) 冬期間戸外の大気中で後熟したものはアキノエノコログサ, オオイヌタデ, ナギナタコウジュ, ヒメイヌビエであった。(3) 0~1℃の湿潤濾紙上で休眠が覚めた種類とその所要期間は, オオイヌタデとシロザが1か月, イヌタデが2か月, ナギナタコウジュが4か月, タニソバが6か月であった。その他の種類は6か月の処理期間中全く休眠が覚めなかった。
著者
手塚 光明 宮島 吉彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.66-70, 1978-08-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
11

多くの多年生雑草に有効な茎葉処理剤であるMCP-Na塩液剤の水稲の生育収量に及ぼす影響を明らかにするため, 出穂60日前 (-60日) から-5日までの処理について検討した。1) 穂数は-50日から-30日までの処理では減少し, その後は減少しなかった。一穂全籾数は全般に減少したが, -20日以降の処理で減少が著しかった。2) その結果, 単位面積当たり全籾数は全般に減少した。しかし, -30日までの5g処理ではこの全籾数の減少が登熟歩合と千粒重で補償されて, 減収しなかったが, -20日以後の処理では一穂全籾数の減少が大きく, 減収した。3) したがって, MCP-Na塩については, -30日までの5g処理を基準として多年生雑草に対する防除法を検討すべきであろう。