著者
児玉 利朗 三辺 正人 古郷 辰二 田村 利之 山下 修 大場 正道 堀 俊雄 渡辺 是久 宮田 暉夫
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.1121-1131, 1987-12-28 (Released:2010-11-29)
参考文献数
25

本研究は, 歯周外科手術後の創傷治癒を促進することを意図してコラーゲン膜を作製した。そして, その性状が, 創傷治癒過程におよぼす影響を知る目的で基礎的検討を行った。2種類のコラーゲン (アテロコラーゲン, テンドンコラーゲン) について, 架橋処理方法 (紫外線, ヘキサメチレンジイソシアネート) および, 架橋の程度を変化させた材料を試作した。そして, ラット上顎臼歯部口蓋歯肉を剥離根面を掻爬後, コラーゲンを移植し, 経時的な治癒反応を病理組織学的に検索した。その結果, コラーゲンを移植することにより, 接合上皮の根尖方向への移動が抑制され, 速やかな線維性結合組織が生ずることが明らかとなった。特に, 架橋処理されたアテロコラーゲンは, 組織親和性に優れ, 接合上皮の根尖方向への移動を最も著明に抑制した。
著者
大森 みさき 今井 理江 佐藤 修一 堀 玲子 長谷川 明
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.43-48, 2000-03-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
6 5

日常, 特に口臭を認めない日本歯科大学新潟歯学部の学生および職員30名の口臭の変動を口腔内の揮発性硫黄化合物の濃度を測定するポータブルサルファイドモニター (Halimeter RH17®Interscan社, アメリカ) を用いた揮発性硫黄化合物量測定と官能試験によって1日5回 (朝食前, 朝食後, 昼食前, 昼食後, 夕食前) 経時的に測定しその日内変動を調べた。また, そのうち8名に対し経時的に口腔内診査を行い, 安静時唾液量, 唾液pH, プラーク, 舌苔の付着などを調べ, 口臭と臨床的パラメータの関連についても検討を行った。その結果, 性別による口臭に差がないことが明らかになった。また, 朝食前では何らかの口臭を認めることが示され, 食事の摂取によって減少する傾向がみられた。臨床的パラメータと口臭との関係では朝食前において舌苔付着量とハリメーター値との間に有意な関係が認められたが, 他のパラメータとでは有意ではなかった。これらの結果から舌苔が生理的口臭に影響を与えていることが示唆された。
著者
小森 英世 姫野 宏 加藤 熙 石川 純
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.246-259, 1978-09-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
48
被引用文献数
3 3

It has been well recognized that tooth brushing has an important role to prevent and treat gingivitis and periodontitis. Clinically, the effect of tooth brushing for gingival inflammation may be classified into the following two elements, one is plaque control and another gingival massage. However, it has never been experimentally demonstrated.The purpose of this study is to make clear the effect of plaque control and gigival massage in an experimental animal.An adult female monkey, Macacca irus, was used for this study. Its mouth was divided into four quadrants; upper right quadrant for a gingival massage, upper left for a plaque control, lower right for a control, and lower left for a brushing.To cause chronic gingivitis, this monkey had been fed with soft food for four months as a preliminary period. In order to make each study at a corresponding quadrant independently, the following precise plastic covers were used whenever tooth brushing was carried out. One is a gingival cover for plaque control quadrant and another is a coronal cover for gingival massage quadrant.During the experimenpal period of 38 days, tooth brushing was done carefully for each quadrant for one minute and once per every day. Gingival index, plaque score, gingival exudate, pocket depth were measured reqularily and gingival biopsy specimens were taken before and after the experimental period.The results of this study were as follows:1. Inflammation of the gingiva in the control quadrant showed the worst about all examinations.2. The brushing quadrant showed most rapid improvement.3. Inflammation of gingiva in gingival massage quadrant was improved clearly, especially on gingival contour, consistency, pocket depths and gingival inflammation was apparent at the plaque control quadrant, but not so definite as at brushing quadrant.5. It was considered that the reduction of pocket depths is due to the effect of gingival massage.6. Tooth brushing, with the combined effect of plaque control and gingival massage, showed the maximum effect.
著者
石原 匠 松岡 紘史 長澤 敏行 古市 保志 辻 昌宏 千葉 逸朗
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.47-60, 2021-06-30 (Released:2021-07-08)
参考文献数
32

歯周病が循環器疾患の発症に影響を与えることを示唆した報告はいくつかあるが,交絡因子となる幅広い因子を一度に調整した研究は殆どない。本研究の目的は,多数の交絡因子を調整するために健康保険の大規模なレセプトデータを用い,歯周病の病態や歯周治療が循環器疾患の発症に及ぼす影響を明らかにすることであった。全国健康保険協会(協会けんぽ)北海道支部に所属し,2014年に特定健康診査を受診し歯科受診をしていない者235,779名を対象とし,特定健診データ,医科及び歯科レセプトデータを用いて分析を行った。2015年の歯科レセプトを使用し「歯科受診なし」,「歯科受診1~4回」,「歯科受診5回以上」の3つの対象者分類に区分した。2015年と2016年における脳梗塞と心筋梗塞の新規発症の有無を目的変数,2015年の対象者分類と交絡因子を説明変数とするロジスティック回帰分析を行った。2015年の脳梗塞の発症を用いたロジスティック回帰分析の結果,歯科受診なしを基準とした場合,1~4回及び5回以上の脳梗塞発症に関するオッズ比が有意であり(1~4回:1.95,5回以上:1.63),歯周病によって脳梗塞の新規発症リスクが高まる可能性が示唆された。また,2016年の脳梗塞の発症を用いた場合でも同様の結果が得られており(1~4回:1.63,5回以上:1.61),歯周治療の開始から1年が経過しても脳梗塞発症のリスクは変化していない可能性が示唆された。
著者
大場 堂信 赤沢 佳代子 二宮 洋介 桐野 晃教 明丸 倫子 石本 智子 戸野 早由利 中村 輝夫 片岡 正俊 篠原 啓之 木戸 淳一 永田 俊彦
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.307-313, 2000-12-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

わが国で腎不全により人工透析を受けている患者は現在約18万人いると言われている。透析処置では腎臓のすべての機能を補うことはできず, 例えばエリスロポエチンの産生やビタミンD3の活性化といった生体にとって重要な反応が行われなくなる。これらの腎機能障害に由来した骨病変は透析患者にみられる主要な副作用の一つである。著者らは人工透析処置を受けている慢性腎不全患者は歯周病に対する感受性の高い集団ではないかと考え, その関連を追求するために透析患者38名の歯周組織診査を行った。対照群として同年代の健常者42名を選び, 同様の歯周組織診査を行った。CPITN (歯周治療必要度指数) を調べた結果, 透析患者群は対照群より高い値を示した (2.4±0.1 vs. 1.9±0.1; p<0.05)。CI-S (簡略化歯石指数) では, 2群間に有意差は認められなかった。欠損歯数では, 透析群の方が2.2倍多かった (6.1±1.3 vs. 2.8±0.8; p<0.05)。次に, 透析期間の違いによって患者を4グループに分けて分析したところ, 指標値に差は認められなかった。また, 透析患者の血中PTH (副甲状腺ホルモン) 濃度と歯槽骨レベルならびにCPITNとの相関を調べたが, 有意な相関は見い出せなかった。一方, 透析患者38名のうち7名が糖尿病由来で人工透析に至った患者 (糖尿病性腎症) であり, これらの患者のほとんどに重度の歯周炎が認められ, 残り31名の透析患者と比較すると, 欠損歯数の増加 (15.9±3.6 vs. 3.9±1.1; p<0.05) および歯槽骨レベル (%) の低下 (58±60 vs. 79±1; p<0.05) が認められた。さらに, 糖尿病性腎症以外の透析患者31名と対照群とを比較した場合, CPITNにおいて有意差が認められ (2.3±0.1 vs. 1.9±0.1; p<0.05), 糖尿病性腎症を除いた透析患者においても健常者より歯周病罹患度が高いことが示された。以上の結果から, 人工透析処置を受けている慢性腎不全患者の歯周病罹患度は健常人より高く, 慢性腎不全が歯周病のリスクファクターになりうる可能性が示唆されるとともに, 人工透析処置を受けている糖尿病性腎症患者はそれ以外の疾患由来の患者よりも重度の歯周病を有する傾向が強いことが示された。
著者
吉永 英司 玉沢 修 鴨井 久一
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.684-695, 1984-12-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
19

歯肉炎と診断された患者16名に対し, 初診時とブラッシング指導後14日目において歯肉溝滲出液を採取し, 一部被験者については採血も行ない, 免疫複合体と IgG 量を定量した。併せて臨床所見の評価を行なった結果, つぎの結論を得た。1. 歯肉溝滲出液中免疫複合体量は血清中量に比較して高濃度に含まれ, ブラッシング指導後では増加傾向にあった。2. 歯肉溝滲出液中IgG量は免疫複合体と比較して血清中量との差が少なく, ブラッシング指導後では減少傾向にあった。3. 臨床所見との相関性は, 歯肉溝滲出液中免疫複合体量とGIとの間にのみ認められた (p<0.1)。4. ブラッシング指導後においては, 歯肉溝滲出液中免疫複合体量とIgG量との間に相関性が認められた (p<0.01)。
著者
西田 哲也 佐藤 秀一
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-8, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
19

歯周病患者は歯を喪失することが多いため,歯周治療において欠損補綴は比較的頻度の高い治療である。また,歯周病により歯を喪失した場合,十分な残存歯数や咬合支持組織量がないばかりか,歯冠歯根比など力学的なバランスも悪化する傾向にあるため,欠損補綴は難症例となることをしばしば経験する。欠損補綴には様々な手法がある。従来型の欠損補綴であるブリッジや有床義歯は,欠損した歯が担っていた咬合負担を残存歯や顎堤に分散させるが,インプラント治療では残存歯に負担をかけることなく,また,連結することによる再治療の確率の上昇,非生理的な咬合負担,口腔清掃の煩雑さなど様々なリスクやディメリットを回避し欠損補綴を完了することができる。すなわち,インプラント治療は歯周治療の欠損補綴に多大な恩恵をもたらす治療法といえる。しかしながら,歯周病患者のインプラント治療は,細菌因子,宿主因子,環境因子などの影響を受けるため,厳密な管理や処置が必要となる。そこで本論文では,歯周病患者におけるインプラント治療の上部構造体の装着法について考察する。
著者
高橋 直紀 山縣 貴幸 峯尾 修平 加藤 光太 多部田 康一
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.171-182, 2021
被引用文献数
1

<p>世界中で猛威を振い続ける新型コロナウイルスの感染経路のひとつにエアロゾル感染がある。歯周治療で頻用される超音波スケーラーから発生するエアロゾルが交差感染のリスクとして懸念されているが,そのエアロゾル特性については十分に知られていない。本研究の目的は,微粒子可視化システムを用いた流体工学的検討と,感水試験紙およびパーティクルカウンターを用いた模擬臨床試験から,超音波スケーラーから発生するエアロゾル特性およびエアロゾル感染予防策を検討することである。流体工学的検討から,超音波スケーラーから発生するエアロゾルの平均粒子径は約40 μmで,液滴速度が3 m/sであった。また感水試験紙を用いた模擬臨床試験から,超音波スケーラーの向きによるエアロゾルの飛散距離の違いが観察された。パーティクルカウンターを用いた解析において,1-10 μmの粒径のエアロゾル飛散量は距離とともに減少し,口腔内外バキュームの使用によりエアロゾル量が大幅に減少することが確認された。これらのことから,超音波スケーラーから様々な粒子径のエアロゾルが発生するが,吸引装置の適切な使用によって超音波スケーラーから発生するエアロゾルを介した交差感染リスクを抑制できる可能性が示唆された。</p>
著者
八島 章博 五味 一博 大島 朋子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.17-27, 2006 (Released:2006-08-07)
参考文献数
39
被引用文献数
2 3

歯周疾患は歯周病関連細菌が引き起こす感染症疾患であり, 治療法として最も有効なのはブラッシングやスケーリング·ルートプレーニング (SRP) である。特にSRPは歯肉縁下プラークをコントロールする上で重要な位置を占める。しかし, SRPは通常数回に分けて行われ, SRPを終了した部位にまだSRPを行っていない部位から歯周病関連細菌が伝播し, 処置した部位が再細菌感染を起こし, 歯周疾患の再発を招く危険性が考えられる。そこで我々は, 抗菌内服薬としてアジスロマイシンを術前投与することで細菌数を減少させ, 薬剤濃度が維持された状態で, 全顎のSRPを1回で行うone-stage full-mouth SRPを行い, 通法に行なわれる1/3顎ずつのSRPと検出可能な総菌数, 黒色色素産生グラム陰性桿菌数 (BPRs) および各種臨床パラメーターを術後3カ月まで比較検討した。その結果, 総菌数の変化に差は見られなかったが, one-stage full-mouth SRPを行った群ではBPRsが検出されなかったのに対し, 1/3顎ずつのSRPを行った群では術後3カ月以内に検出された。また, 臨床パラメーターは術後3カ月まで, one-stage full-mouth SRPを行った群が1/3顎ずつのSRPを行った群よりも良好な状態を示した。以上の結果から, アジスロマイシンを用いたone-stage full-mouth SRPは臨床的にも細菌学的にも優れた術式であることが示された。
著者
首藤 明日香 首藤 謙一 麻生 由莉江 田仲 美咲 福岡 拓郎 松井 正格 牧草 一人
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.190-204, 2021-12-28 (Released:2022-01-14)
参考文献数
16

本症例は,歯周治療に伴う異常所見を見逃さなかったことで,医科への受診や血液検査では看過されていた重篤な甲状腺機能低下症を伴う橋本病(慢性甲状腺炎)の発見・治癒に至り患者の健康に寄与することができた1症例である。あまり周知されていない橋本病と歯周疾患との関連,特に出血傾向について考察し報告したい。広汎型重度慢性歯周炎患者に対し全顎的な基本治療の過程において,歯肉溝からの易出血を認めた。かかりつけ医・二次医療機関の血液内科・口腔外科専門医など3医療機関への対診を繰り返すも,出血性疾患の存在は否定され続けた。上顎前歯部歯周組織再生療法(エナメルマトリックスデリバティブ・EMD応用)の翌日,歯肉溝からの異常出血ならびに血餅形成を認めた。根気強く対診を繰り返した結果,ようやく4番目の医療機関において自己免疫疾患である橋本病(慢性甲状腺炎)と診断された。初診より1年以上が経過していた。重篤な甲状腺機能低下症を伴い,生命の危険がある状態であった。甲状腺ホルモン補充療法後,全身浮腫の改善により運動や食事制限をすることなく体重は90 kgから30 kg減少した。甲状腺機能低下症改善後の歯周組織再生療法(EMD応用)では術後出血は認めなられなかった。歯周組織所見は改善しSPT移行後6年が経過するが良好な歯周組織を維持している。本症例は,日常的に観血的治療を行う歯周治療の特殊性が,異常所見の早期発見に繋がり,ひいては患者の全身的健康に大きく寄与する可能性を示唆している。
著者
南崎 信樹 桜井 千里 栗原 千佳子 大竹 徹 宮下 元 長谷川 紘司
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.681-688, 1990-06-28 (Released:2010-11-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本実験では, 歯肉縁上のプラークコントロールとポケット内洗浄が歯肉縁下細菌叢や臨床的な各指数に及ぼす影響を検討した。被験者は9人の成人型歯周炎患者を用いた。各々の患者から5mmの歯周ポケットを選択して, 実験に供した。細菌数の検査は, 位相差顕微鏡を用いてスピロヘータ数, 総細菌数を算定した。臨床的には, PL-I, GI , Probing PocketDepthを計測した。診査時期は0, 2, 4週目に行なった。歯肉縁上のプラークコントロールはスクラッビング法によるブラッシングと歯問ブラシやフロスを徹底させた。また, 実験群には1週間に2回Perio-Pik ® によるポケット内洗浄を行なった。その結果, 歯肉縁上プラークコントロールが良好にできた群と, ポケット内洗浄を行なった群ではポヶット内の総細菌数, スピロヘータ数とGIを除いた臨床的な診査項目において, 初診時と比較して著明な減少をしていた。さらに, ポケット内洗浄は歯肉縁下の細菌叢を洗い流していること, また歯肉縁上のプラークコントロールとポケット内洗浄の併用効果も示唆された。
著者
牧野 智彦 大島 朋子 川崎 文嗣 五味 一博
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.303-315, 2009-12-28
参考文献数
40
被引用文献数
1

現在, インプラント治療が広く行われているが, その一方でインプラント周囲炎を発症する症例が増加する傾向がある。インプラント周囲炎は歯周ポケットからインプラント周囲溝へ歯周病関連細菌が伝播することにより生じると考えられることから, 一口腔単位での治療が必要である。重度歯周病患者に対して一口腔単位で細菌をコントロールする治療法としてアジスロマイシン(AZM)を用いたfull-mouth SRP (FM-SRP)が報告され, 早期に病態が改善し長期間維持されることが示されている。そこで本研究はインプラント周囲炎を伴う歯周病患者に対し, AZMを併用したFM-SRPを行い, 通常行われる1/3顎ずつのSRPと比較し, インプラント周囲炎ならびに歯周炎における効果を臨床的, 細菌学的に評価した。その結果, 実験群ではインプラント・天然歯ともに対照群と比較し臨床症状が有意に改善し,3ヵ月間維持された。また, PCR-Invader法により歯周病関連細菌5菌種の定量測定を行ったところ, 実験群においてインプラント・天然歯ともに細菌数は対照群と比較し3ヵ月間低く保たれていた。さらに, FM-SRPが細菌叢全体に与える影響を検索するため, T-RFLP法を用いて多菌種解析を行い, Cluster解析したところ, インプラント・天然歯とも治療前後で統計学的に細菌叢の変化が認められた。以上の結果から, 病態の改善には細菌叢の変化が深く影響していることが考えられ, AZMを用いたFM-SRPはインプラント周囲炎に対して臨床的かつ細菌学的に有効な治療法であることが示された。<BR>日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(4) : 303-315,2009
著者
大森 みさき 今井 理江 佐藤 修一 堀 玲子 長谷川 明
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.43-48, 2000-03-28
参考文献数
18
被引用文献数
11 5

日常, 特に口臭を認めない日本歯科大学新潟歯学部の学生および職員30名の口臭の変動を口腔内の揮発性硫黄化合物の濃度を測定するポータブルサルファイドモニター (Halimeter RH17&reg;Interscan社, アメリカ) を用いた揮発性硫黄化合物量測定と官能試験によって1日5回 (朝食前, 朝食後, 昼食前, 昼食後, 夕食前) 経時的に測定しその日内変動を調べた。また, そのうち8名に対し経時的に口腔内診査を行い, 安静時唾液量, 唾液pH, プラーク, 舌苔の付着などを調べ, 口臭と臨床的パラメータの関連についても検討を行った。<BR>その結果, 性別による口臭に差がないことが明らかになった。また, 朝食前では何らかの口臭を認めることが示され, 食事の摂取によって減少する傾向がみられた。臨床的パラメータと口臭との関係では朝食前において舌苔付着量とハリメーター値との間に有意な関係が認められたが, 他のパラメータとでは有意ではなかった。これらの結果から舌苔が生理的口臭に影響を与えていることが示唆された。
著者
大串 勉
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.307-318, 1980
被引用文献数
1

The purpose of this investigation was to find out the relationship between volatile sulphur compounds in incubated whole saliva and that in mouth air, and between the former and cellular elements in whole saliva in periodontal patients.<br>The subjects were divided into the following three groups based on clinical findings and intensity of odour measured by olfactory panel of trained judges; the periodontal patients with halitosis (P-H group), the periodontal patients without halitosis (P-N group) and the normal subjects (N group)<br>The test samples used this investigation were unstimulated whole saliva and that were incubated at 37&deg;C.<br>The amount of valatile sulphur compounds produced from incubated whole saliva and that in mouth air were measured by gas chromatograph equipped with flame photometric detector, while the number of leucocytes and epithelial cells in whole saliva were counted by Klinkhamer's technique.<br>The degradation of leucocytes and epithelial cells in incubated whole saliva were observed using smear speciments staind with hematoxylin and eosin.<br>Results were as follows<br>1. The average number of leucocytes in whole saliva were 11764/cmm in P-H group, 3085/cmm in P-N group and 434/cmm in N group. Obvious differences were observed among three groups. The average number of epithelial cells in whole saliva were 1381/cmm in P-H group, 1157/cmm in P-N group and 310/cmm in N group. There were no differences between P-H group and P-N group.<br>2. The methyl mercaptan produced from incubated whole saliva in P-H group was detected earlier in time and largier in quantity than other two groups.<br>3. In P-H group, obvious correlation was observed between number of leucocytes in whole saliva and methyl mercaptan contents in mouth air, however, no correlation was observed between number of epithelial cells in whole saliva and methyl mercaptan contents in mouth air. In all subjects, obvious correlation was observed between number of leucocytes and the highest value of methyl mercaptan contents produced incubated whole saliva, however, no correlation was observed between number of epithelial cells and the highest value of methyl mercaptan contents produced incubated whole saliva.<br>4. Number of leucocytes in whole saliva were observed high correlation with gingival score, bleeding, discharge of pus and pocket depth, but no correlation between plaque score.<br>5. Leucocytes in incubated whole saliva degraded rapid and they were almostly not observed in 4 hours after incubation, however, degradation of epithelial cells were observed about 8 hours after incubation.