著者
真道 公雄
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.127-132, 1981

誘電体に一定の直流電圧を印加しながら加熱または冷却すると電流が流れる. これを熱刺激分極電流 (TSPC) と名付け, 誘電体の分子運動に関する情報を与える. 十分に熱処理した無配向のポリエチレンテレフタラートフィルムに直流の高電圧を印加しながら加熱すると, 初めはプラス方向の電流が流れるが, 適度な高温で電流はマイナス方向に流れ, 更に高温でプラス方向に流れる. この試料に高温から同じ電圧を印加したまま冷やしてゆくと, プラス方向の電流が流れるが, 低温から再び温めると電流はマイナス方向に流れる. この電流は高温での直流伝導電流の値が優勢になると隠ぺいされる. 熱刺激分極電流の方向が温度によって変化するのは, ポリマーの極々な分子運動の緩和による変位分極が温度の逆数に比例し, 冷却時にはその分極が増加するが昇温時には減少することで説明できる.
著者
真道 公雄
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.127-132, 1981

誘電体に一定の直流電圧を印加しながら加熱または冷却すると電流が流れる. これを熱刺激分極電流 (TSPC) と名付け, 誘電体の分子運動に関する情報を与える. 十分に熱処理した無配向のポリエチレンテレフタラートフィルムに直流の高電圧を印加しながら加熱すると, 初めはプラス方向の電流が流れるが, 適度な高温で電流はマイナス方向に流れ, 更に高温でプラス方向に流れる. この試料に高温から同じ電圧を印加したまま冷やしてゆくと, プラス方向の電流が流れるが, 低温から再び温めると電流はマイナス方向に流れる. この電流は高温での直流伝導電流の値が優勢になると隠ぺいされる. 熱刺激分極電流の方向が温度によって変化するのは, ポリマーの極々な分子運動の緩和による変位分極が温度の逆数に比例し, 冷却時にはその分極が増加するが昇温時には減少することで説明できる.
著者
井田 慎一郎 山本 紘子 照沼 真衣 伊藤 眞義
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.55-60, 2009 (Released:2009-02-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

PET/PEN/PET-PEN コポリマーからなる三元系ブレンドについて,系内で進行するエステル交換反応が,ブレンド系からコポリマーのみからなる一元系への変化に与える影響を検討した.エステル交換反応の進行度が小さい場合,PET/PEN/PET-PEN コポリマーブレンドは上部臨界溶解温度(UCST)型の相図を示した.エステル交換反応の進行に伴い,ブレンド系は一元系へと変化した.この変化が生じるために必要なエステル交換反応の進行度は,三元系のブレンド比や PET-PEN コポリマーのブロック性にほとんど依存せず約 1 mol%以上であることがわかった.
著者
佐々木 陽 久保田 史 高橋 亨 梅津 芳雄 成田 榮一 森 邦夫
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.316-324, 1997-05-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

硫化水素型合成温泉水 (湯花の抽出溶液) を用い木材を長時間煮沸処理すると, 蒸留水で処理した場合よりも, 重量の減少が大きく, 空隙率の高い木材が得られた. その時の抽出溶液を液体クロマトグラフで分析した結果, 針葉樹ではアラビノース, キシロースが, 広葉樹ではキシロースが確認され, いずれも合成温泉水処理した溶液で顕著に認められた. 抽出された糖類は木材の非晶部分であるヘミセルロースが加水分解されたもので, 合成温泉水処理によりさらに分解が進んだ結果と考えられる. スギの100時間煮沸処理では, ホロセルロースが蒸留水の場合約18%, 温泉水の場合22%減少し, また, リグニンはこれらの処理において, 見かけ上前者で18%, 後者で20%増加していることから, 熱水処理によるリグニンの分解溶出は認められなかった. 合成温泉水処理により, 水溶性の非晶部分が加水分解されるため, 水に対する木材の膨潤性が改善され, 寸法安定に優れた木材が得られることが分かった.
著者
松本 和也 宮田 隆志
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.125-142, 2014-04-25 (Released:2014-04-25)
参考文献数
91

刺激応答性ゲルは,温度やpHなどの外部環境変化に応答して体積変化を示すことから医療分野や環境分野に利用できるスマートマテリアルとして注目を集めている.最近では,疾病などのシグナルとなる生体分子を認識して体積変化する刺激応答性ゲル(生体分子応答性ゲル)も報告されるようになり,ドラッグデリバリーシステムや診断システムなどを構築するためのスマートバイオマテリアルとしての利用が期待されている.このような生体分子応答性ゲルを創製するためには,標的生体分子に対する分子認識とそれによってネットワーク構造変化する応答機能とを連携させなければならない.そこで,これまでは生体分子認識による高分子網目の親水性・疎水性の変化や荷電状態の変化に基づいて生体分子応答性を示すゲルが報告されてきた.最近では,可逆的に結合解離する分子複合体をゲル内の動的架橋点として導入することにより生体分子応答性ゲルが合成されており,タンパク質や糖類をはじめとしたさまざまな標的生体分子に応答するゲルの設計が試みられている.本報では,抗体の抗原認識能などの生体分子機能を利用することによりデザインされた生体分子応答性ゲルについて,国内外の関連研究とともに筆者らの研究を概説する.
著者
斎藤 恭一
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.211-222, 2014-05-25 (Released:2014-05-23)
参考文献数
32
被引用文献数
3 2

対象イオンや分子の高速での除去や回収のために,放射線グラフト重合法とその後の化学反応によって,無機化合物,酵素,および抽出試薬を市販の6-ナイロン繊維に担持した.小さな径の繊維担体は液との大きな外部接触面積をもつ.さらに,機能化された繊維は実用現場に応じてフィルターや組みひもといったさまざまな形状に成型できる.まず,フェロシアン化物イオンを吸着させたアニオン交換繊維を塩化コバルト溶液に浸漬することによって沈殿生成をさせて,不溶性フェロシアン化コバルト担持繊維を作製した.6-ナイロン繊維に接ぎ木した高分子鎖に担持させた不溶性フェロシアン化コバルトは海水中でセシウムイオンを特異的に捕捉した.同様に,カチオン交換繊維にチタン酸ナトリウムを担持させて海水中のストロンチウムイオンを選択的に捕捉した.つぎに,ウレアーゼをアニオン交換グラフト鎖に固定し,その後,ウレアーゼ間をトランスグルタミナーゼを使って架橋した.このウレアーゼ固定繊維は水中の尿素を高速で定量的に加水分解した.さらに,酸性抽出試薬HDEHPを6-ナイロン繊維に接ぎ木した疎水性高分子鎖に担持した.HDEHP担持繊維へのジスプロシウムおよびネオジムの分配係数が,n-ドデカンへの分配係数によく一致することを示した.
著者
眞弓 皓一 成田 哲治 Costantino CRETON
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.597-605, 2015-10-25 (Released:2015-10-23)
参考文献数
25
被引用文献数
1

高分子ゲルを高強度化する有効な分子設計として,共有結合などの強い結合と水素結合などの弱い結合を架橋点として導入する手法が提唱されている.弱い可逆な架橋点はゲルが変形した際に解離し,その時のエネルギー散逸によってゲルのマクロな破壊を防ぐことができる.また,変形したゲルから外力を取り除くと,強い結合に由来するネットワークの弾性によって,ゲルは元の形状まで復元し,可逆架橋点も再結合して元の状態まで戻る.筆者らは,このような自己回復性高強度ゲルのモデル系として,ポリビニルアルコール(PVA)を共有結合とホウ酸イオンによる可逆結合で同時架橋したDual Crosslink (DC)ゲルを開発し,その力学特性を調べてきた.本報では,可逆架橋点の解離・再結合ダイナミクスがDCゲルの線形粘弾性,ヒステリシスループを含む大変形挙動,および破壊挙動とどのように相関しているのかについて解説する.
著者
石井 宏寿
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.137-149, 2002-04-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
47
被引用文献数
1

代表的なエンジニアリング・プラスチックであるポリカーボネート (PC) は衝撃強度, 耐熱性などに優れた透明材料として広く利用されている有用な材料であり, 主にビスフェノールA (bis-A) とホスゲンとの重縮合により工業的に生産されている. さらなる生産コストの低減とホスゲン使用による潜在的危険性の回避を目的として, Pd触媒存在下一酸化炭素を用いる酸化的カルボニル化反応に基づくビスフェノールAからのポリカーボネート一段合成法の開発を行った. 最初にフェノールから炭酸ジフェニルへの酸化的カルボニル化反応をモデル反応として, 新たにPd錯体触媒系をデザインした結果, 従来の触媒系で大量に必要であったアンモニウムハライドが不要になるPd-Sn錯体触媒系を見いだした. また, アンモニウムハライドは必要ではあるが極めて高活性な触媒としてPd複核錯体, Pd-ジイミン錯体, Pd-ビピリジル錯体触媒系を見いだし, さらにPd錯体触媒系の固定化についても検討した. これらのPd錯体触媒系を目的のビスフェノールAからのポリカーボネート一段合成法に適用したところ, 6, 6'位に置換基を有する2, 2'-ビピリジルを配位子とするPd錯体を用いることにより, 従来の触媒系を用いた場合を大きく上回る数平均分子量5600, 重量平均分子量12900のポリカーボネートを, 高収率で得ることが可能となった.
著者
寺尾 憲 領木 研之
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.505-513, 2016-11-25 (Released:2016-11-25)
参考文献数
80
被引用文献数
2 1

アミロースカルバメート誘導体は,隣接した繰返し単位の置換基間の分子内水素結合,そして置換基のかさ高さ,さらには水素結合した溶媒分子によって,さまざまならせん構造や剛直性を発現する.これらのうち,とくに後者の剛直性は,ジメチルスルホキシド中のアミロースの2倍から20倍の範囲にわたる.われわれは最近,溶液中で比較的屈曲性の高い鎖として振舞う環状アミロースを原料としてさまざまな剛直性をもつ環状鎖が合成可能であることを提案した.本報では,アミロースカルバメート誘導体の剛直性の起源,そして剛直な環状アミロースカルバメート誘導体の溶液中での分子形態や分子間相互作用について報告する.剛直環状鎖の分子形態や分子間相互作用には線状鎖のみからは予想できない特徴がみられた.
著者
山田 健史 飯田 和則 山子 茂
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.329-342, 2007 (Released:2007-10-01)
参考文献数
106
被引用文献数
1 1

リビングラジカル重合(LRP)が基礎,および応用化学の両面から多大な注目を集めている.その理由は,このような重合系の開発が化学における大きな挑戦であるとともに,ラジカル重合とリビング重合の優れた特徴を併せ持つこの方法が,高度な機能を持つ高分子材料創製の基盤技術となることが期待されているからである.本報では,この 15 年弱の間に開発されてきた,代表的な LRP 法であるニトロキシドを介するリビングラジカル重合(NMP),原子移動ラジカル重合(ATRP),可逆的付加・脱離連鎖移動重合反応(RAFT),有機テルル化合物を用いるリビングラジカル重合(TERP)を中心として,それらを重合機構から比較することで,それぞれの方法らの特徴を明らかにすることを目的とする.これを通じて,LRP の現状を概観するとともに,この方法の将来の展望を図るものである.本報は 2 回にわたり掲載される予定である.初回の本報では,LRP の定義とその開発の歴史的な経緯,共通する反応機構,および NMP の機構について紹介する.次論文では,ATRP, RAFT, TERP の反応機構と,LRP における最近のトピックスを紹介する予定である.
著者
岩崎 博四 米津 潔
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.33-39, 1978-01-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

ガスバリヤー性樹脂として有用な, 高ケン化度のエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂 (EVA) を得る目的で, エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂 (EVAc) のMeOH溶液中でのアルカリ触媒によるケン化反応の諸条件を検討した. ケン化反応ではEVAc中の酢酸基とMeOHのエステル交換反応が主として起こるが, 直接ケン化反応および副生MeOAcの加水分解により触媒であるNaOHが消費され, 高ケン化度のEVAを得ることが困難であった。そこで多段蒸留塔を高圧ケン化器として使用し, EVAc-MeOH溶液およびNaOH-MeOH溶液を塔上部に供給し, 沸点または過熱下のMeOH蒸気を塔底部より吹き込んで, 塔頂部より副生MeOAcをMeOHとともに共沸組成で系外に追い出しながらケン化することにより, ケン化度99mol%以上のEVAを連続的に製造することが可能となった。
著者
石井 昌彦 原田 雅史 月ヶ瀬 あずさ 中村 浩
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.29-34, 2007 (Released:2007-09-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

単分散微粒子が三次元的に規則配列したオパール型コロイド結晶を作製するための単分散微粒子として,シリカ微粒子と並んでポリスチレン微粒子がよく用いられる.しかし,ポリスチレン微粒子を用いた場合にはクラックの発生が多いとの指摘もある.本報では,数 cm2 オーダーの面積にわたって面内での結晶方位が揃ったオパール型コロイド結晶の作製が可能な流体セルを用いて,ポリスチレン微粒子を用いた場合のコロイド結晶形成過程と作製されたコロイド結晶の構造を,シリカ微粒子の場合との比較において調べた.角度分解反射スペクトル測定などの分光的手法により,異なる光学特性を示す三段階の乾燥過程を経てコロイド結晶が形成されること,シリカ微粒子の場合と異なりポリスチレン微粒子の場合には,最後の乾燥段階において約 3%の粒子径収縮が生じることが明らかになった.この粒子径収縮のため,ポリスチレン微粒子からなるコロイド結晶では,シリカ微粒子からなるものに比べて,クラックの発生が多くなるものと考察した.
著者
玄 丞烋 車 源日 筏 義人
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.673-680, 1989-11-25 (Released:2010-11-22)
参考文献数
11
被引用文献数
30 40

ポリビニルアルコール (PVA) 濃厚水溶液を凍結させた後, 0℃付近の低温にて徐々に解凍させることにより高含水率で高強度なPVAハイドロゲルが得られる. 重合度1750, けん化度99.5mol%のPVA濃度30wt%の水溶液を-20℃で24時間凍結させた後, 5℃にて10時間かけて徐々に解凍させて得られたPVAハイドロゲルの強伸度はそれぞれ約60kg/cm2. と500%を示すのに対し, 同じ条件下で凍結させ, 室温下, 3時間で解凍させたPVAハイドロゲルの強伸度は35kg/cm2と400%であった. PVAハイドロゲルはPVA濃厚水溶液の凍結の際水相とPVA相とに相分離され, その後の低温結晶化により多孔質構造が形成される. X-線回折とSEM観察からPVAハイドロゲルは微結晶をもつミクロ多孔質構造であることが認められた.
著者
近藤 慶之 直井 正俊 小山 勝宏 藤井 敏弘 大木 幸介
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.467-471, 1985-07-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

ブタ脳カルモデュリン (CaM) の種々の界面活性剤によって誘起されるコンホメーション変化について, 螢光スペクトル, 円偏光二色性 (CD) の測定により検討した. Tween系, TritonX100などの非イオン性界面活性剤は, CaMのコンホメーション変化に影響をおよぼさなかった. 陰イオン性界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム (SDS) やドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム (SDBS) を加えた場合, 大きな構造の変化が観察された. Ca2+存在下および非存在下において, 1mMSDSはα-helix含量の増加を引き起こし, Ca2+存在下ではα-helix含量は42%であった. SDBSの場合, その濃度が増すとα-helix含量は減少し, 12mMではCa2+の存在, 非存在にかかわらずCDはランダムコイルの曲線を示した. 陽イオン性の塩化ベンザルコニウムは弱い変性作用を伴ってCaMの規則構造の破壌を促進する. これらの事は, 螢光スペクトルの測定によっても裏づけられた.
著者
指尾 稔 矢野 健一郎 角岡 正弘 田中 誠
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.793-796, 1987

酢酸ビニル-酢酸イソプロベニル共重合体の<I>p</I>-ベンゾキノンによる光橋かけ反応について検討した. 共重合体は光崩壊性でないため, 光橋かけ反応は容易に進行した. しかし, 水酸基を導入すると橋かけ効率は非常に悪くなった. ランダムに導入したポリマーの橋かけ効率はブロック的に導入したポリマーに比べ悪かった, 橋かけ反応による不溶化には, キノンタイプからヒドロキノンタイプに変化する反応の関与が推定された. また, 不溶化ポリマーはアルカリ水溶液中での加熱により可溶化することから, 橋かけ反応にはポリマーの主鎖間の反応ではなく, 側鎖のアセチル基が関与していることが推定された.
著者
杉山 保行 太田 雅壽
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.94-98, 2018-01-25 (Released:2018-01-25)
参考文献数
7

Because of shampooing, drying, brushing etc., hair twists, breaks or acquires split ends; furthermore the cuticle may come off. We tried developing a shampoo agent and conductive treatment agent which repairs hair damaged by washing, drying, brushing, coloring, or perming. The effect of both agents on repair of damaged hair was examined by transmission electron microscopy and electrical conductivity. We compared previous data of optical microscopy with transmission electron microscopy images. As a result, it is clear that a scale-forming material, like a cuticle, is deposited in the keratinization region, and the frizzled hair became straight, because of using shampoo agent and conductive treatment agent containing hematin. These facts suggest that components of shampoo, treatment and/or hair cortex are preferentially adsorbed to the asperities of fragments which are cut off from the cuticle and then these components produce the scale-forming material, like a cuticle, due to epitaxial growth.
著者
岸下 昭弘 堤 耀広
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.661-665, 1998

側鎖に極性基を有しないポリ (<SUP>L</SUP>-ロイシン) (PLL) は無極性ベンゼン溶液中で剛直な棒状のα-ヘリックス構造をとり分子軸方向に残基当たり3.6デバイユニットの大きな双極子メーメントをもつ. このため, 本研究ではこの系のゾルーゲル転移域で誘電緩和測定を行いPLL分子 (重合度500, 900) の動的挙動を調べた. 誘電率の実数部はゲル状態ではベンゼンと変わらないが, ゾルーゲル転移温度 (50℃) では110 Hz~100 kHzのいずれの周波数に対しても急激な増加を示した. これは, ゲル中で凍結されていたPLLの分子運動が架橋崩壊により協同的に解放されることを示す. ゾル状態で誘電率は濃度とともに増加するが, 或濃度域からは逆に減少した. また, 実測誘電率は会合のない希薄溶液に対する理論値に比べ極めて小さい. 以上のことから反平行配列型分子会合の存在が示唆された. 部分的にランダムコイルである, <SUP>L</SUP>-ロイシンと<SUP>L</SUP>-ロイシンとの共重合体 (PLDL) についても同様の測定を行った結果, 架橋形成には主鎖がα-ヘリックス構造をとり, 分子間会合することが重要であることがわかった.
著者
児玉 亮 広津 敏博 井島 宏 前田 肇 Marcel E. NIMNI
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.725-731, 1981-10-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
22
被引用文献数
3

血小板を凝集および粘着させない修飾コラーゲンをプラズマ処理により人工血管に結合させ, その生体適合性と抗血栓性を検討した. グルタルアルデヒド処理により線維状コラーゲンの血小板凝集能は低下した. また, コラーゲンの線維形成を阻害すると凝集能は喪失した. 線維状コラーゲンもコンドロイチン硫酸とイオン結合すると血小板凝集能を失う. ヒアルロン酸はコラーゲンの血小板凝集能に影響を与えなかった. コラーゲン線維・コンドロイチン硫酸複合体膜は, 血小板の変形も小さく, 血漿たんばく質の吸着も抑制した. ポリエステル製人工血管をプラズマ処理して, コラーゲンを結合させ, 次に, コンドロイチン硫酸をイオン結合させた. これを成犬静脈に置換した. 急性実験 (3時間) では, フィブリン形成や血小板付着が抑制されていることがわかった. 長期 (3~6か月) 開存例もあり, 安定な偽内膜形成が観察された.
著者
本塚 智 橋本 了哉 多賀谷 基博 小林 高臣
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.242-252, 2013-06-25 (Released:2013-06-25)
参考文献数
58
被引用文献数
4 7

炭素繊維を異種材料と接合化して,複合体を創製する技術が盛んに研究されている.しかし,炭素繊維の表面は疎水性であるため,親水性樹脂への分散性やセラミックスとの接合性が乏しい.高強度な複合体を創製するためには,接合界面を精密に設計し,接合性を向上させる必要がある.そのため,炭素繊維表面を改質・被覆する技術は,異種材料への分散化や複合化を改善・促進するため,重要なプロセス技術となりつつある.さらに,複合体の機能を向上させるためには,炭素繊維の表面技術だけでなく,界面接合技術が重要である.そこで,本報では,炭素繊維の表面改質および湿式法による無機高分子の被覆技術の特徴について紹介し,表面機能化について言及し,新しい複合材料としての応用の可能性について述べた.さらに,高分子樹脂と炭素繊維の界面接合技術を概説し,炭素繊維強化プラスチック創製における表面機能化の重要性について紹介した.
著者
杉山 保行 太田 雅壽
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.94-98, 2018

Because of shampooing, drying, brushing <i>etc.</i>, hair twists, breaks or acquires split ends; furthermore the cuticle may come off. We tried developing a shampoo agent and conductive treatment agent which repairs hair damaged by washing, drying, brushing, coloring, or perming. The effect of both agents on repair of damaged hair was examined by transmission electron microscopy and electrical conductivity. We compared previous data of optical microscopy with transmission electron microscopy images. As a result, it is clear that a scale-forming material, like a cuticle, is deposited in the keratinization region, and the frizzled hair became straight, because of using shampoo agent and conductive treatment agent containing hematin. These facts suggest that components of shampoo, treatment and/or hair cortex are preferentially adsorbed to the asperities of fragments which are cut off from the cuticle and then these components produce the scale-forming material, like a cuticle, due to epitaxial growth.