著者
平島 由美子 鈴木 淳史
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.601-618, 2008 (Released:2008-10-24)
参考文献数
38

ヒドロゲルは水を含んで膨潤した希薄で複雑な三次元網目構造をもつ固体であり,それを構成する分子間に働く複雑な相互作用に起因して多様な物性を示す.さまざまな外的環境の無限小の変化によって,その体積を不連続にかつ可逆的に変化させることができる.30 年前にこの体積相転移が発見されてから多くの研究成果が報告されてきたが,水素結合が関与する系は複雑な相挙動を示し,その原理は現在でも十分に理解されているとは言えない.本報では,熱応答性のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)ゲルの相転移を基礎にして,純水溶媒の繰返し交換によるヒドロゲル内での水素結合の形成と温度変化による体積相転移について,筆者らの最近の研究成果をまとめて考察する.
著者
平山 文俊 小田切 優樹 上釜 兼人 和久田 徹 稲葉 光治
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.643-648, 1982-10-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
19
被引用文献数
2 5

水溶液中ならびに固体状態における16, 16-Dimethyl-trans-Δ2-prostaglandin E1 methylester (ONO-802) とα-, β-, γ-シクロデキストリン (α-, β-, γ-CyD) との複合体形成を溶解度法並びに粉末X線回折法により検討した. 複合体の安定度定数の大きさはβ-CyD複合体>α-CyD複合体>γ-CyD複合体の順であった. 溶解度相図に基づきモル比1: 2 (ONO-802: 2CyD) のβ-及びγ-CyD固体複合体を調製し, それらの溶解性, セロハン膜透過性, 坐剤基剤 (Witepsol H15) からの放出性を検討し, ONO-802の場合と比較した. ONO-802の見掛けの溶解速度並びに膜透過速度は包接複合体形成により著しく増加した. また, CyD複合体の坐剤基剤からの放出性はONO-802単独に比べて著しく優れていた. これらの知見はONO-802のバイオアベイラビリティの向上及び製剤化に際してCyDの有効利用を示唆するものである.
著者
足立 馨 手塚 育志
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.709-715, 2007 (Released:2007-11-30)
参考文献数
35
被引用文献数
1 4

単環状および多環状構造をはじめとする高分子のさまざまな「かたち(トポロジー)」の設計および合成に関する最近の研究成果を,国内外の関連研究とともに解説する.環状アンモニウム塩を末端または主鎖中に導入した直鎖状および分岐状高分子前駆体(テレケリクス)を多官能カルボン酸対アニオンと組合せると,静電相互作用によって希釈下で自己組織化イオン性高分子集合体が形成する.さらに環状アンモニウム塩基の開環または脱離反応に基づく共有結合変換によって,多様な単環状・多環状高分子の効率的合成が達成される.また,このプロセス(Electrostatic Self-assembly and Covalent Fixation)に特徴的なイオン性高分子集合体の動的平衡や,得られる環状テレケリクスのメタセシス反応を利用することによって,さらに精密な高分子トポロジー設計も実現する.
著者
柳原 久嘉 高橋 広敏 田頭 克春
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.364-370, 2002-06-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
15

本研究では, ポリプロピレン (PP) 製造用の第4世代触媒 (TiCl4/フタル酸ジエステル/MgCl2) のアイソ特異性をさらに向上させるため, 第4世代触媒の範疇で触媒調製法の改良を二つのコンセプトに従って行った. 2種類のコンセプトで調製した高性能改良触媒は, 既存の第4世代触媒に比較しアイソ特異性が向上し, 高活性で99.5%以上のアイソタクチシチーを有するPPを生成した. 生成したPPをTREF, DSC, GPCおよび13C NMRにより詳細に解析した結果, 本研究の高性能改良触媒は, 従来の第4世代触媒に比較して, 活性種の均質化が大幅に進んでいることが示唆された. さらに, 高性能改良触媒は, プロピレンエチレンランダム共重合においても, 特徴的であり従来の第4世代触媒に比較して, ランダム性が高く, 組成分布の狭いランダムコポリマーを生成した.
著者
宮内 信之助 下村 雅人 山内 健 大島 賢治 松本 洋一 迎 勝也
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.227-232, 2001-05-25 (Released:2010-11-22)
参考文献数
9

きのこ [マイタケ (Grifola frondosa: GF) ] の柄を粉末化し, それをアセトンと蒸留水で洗浄することによって, 少し透明感のある白色のGF粉末を得た. このGF粉末存在下で, 硝酸セリウム塩を開始剤として, 水溶媒でアクリルアミド (AAm) の重合を行った. 重合は温度を上げ, GF量を増加させると進み, 60℃で91%の重合収率を得た. 水に対する見かけの可溶化率を調べたが, アクリルアミドの重合がGFの可溶化を助けた. 洗浄前と洗浄後のGF, およびGFを水またはアセトンで洗浄した後の〓液, GF存在下でのGF-ポリアクリルアミド (PAAm) 複合物の水洗浄後の〓液について, 1HNMR測定を行った. その結果, アセトンによる洗浄では, 主として脂肪酸が抽出され, 糖質類は抽出されなかった. 一方, 水による洗浄では, α型の糖質類が抽出され, ポリアクリルアミドと複合化されてもβ型のものは抽出されにくかった.
著者
板倉 幸枝 大谷 亨
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
pp.2017-0011, (Released:2017-05-22)
参考文献数
13

ポリグリセロールデンドリマー(PGD)はL-アルギニン(Arg)と106 (M-1)オーダーの極めて高い結合定数を示す.この現象に着目し,がん細胞へのArgデリバリーの可能性を検証するため,葉酸(FA)もしくはBiotinをがん細胞標的リガンドとして修飾し,がん細胞表面上に存在するこれら受容体との相互作用を介してがん細胞へ選択的にArgを送達するキャリアとしての評価を行った.第三世代のPGD (PGD-G3)とFAもしくはBiotinをエステル化反応させたところ,PGD-G3一分子あたり一分子のリガンドが導入された.FA受容体過剰細胞,biotin受容体過剰細胞,どちらの受容体もない細胞を用い,Arg取り込み能を評価したところ,一部の細胞ではArg取り込みに伴う蛍光強度の増大がみられたことから,特異的なリガンド–受容体相互作用を介した取り込みの可能性が示唆された.
著者
三好 賢太郎 上江洲 一也 櫻井 和朗 新海 征治
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.451-457, 2006 (Released:2007-09-21)
参考文献数
25

地球上に豊富に存在する天然多糖の一つにβ-1,3-グルカンがある. この多糖は3重らせん構造をとり, その構造は水素結合によって安定化することが知られている. 近年, この多糖と核酸が特異的な高分子複合体を形成することが発見された. 本報では半経験的分子軌道法 (MOPAC) を用いてこのβ-1,3-グルカン/核酸複合体の構造検討を行った. その計算結果から, 複合体中において核酸鎖はβ-1,3-グルカン鎖の還元末端側に3'末端側が配置され, らせんの巻き幅が拡張していることがわかった. 一方, β-1,3-グルカン2重鎖には大きな構造変化は見られなかった. また, この複合体はβ-1,3-グルカンの2位のヒドロキシル基と核酸塩基との間で水素結合を形成し, 安定化していることが示唆された.
著者
鈴木 章泰 内藤 美保 功刀 利夫
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.500-503, 1994
被引用文献数
3

ポリメタクリル酸メチル (PMMA) フィルムのネッキングゾーン延伸における臨界ネッキング応力 (σ<SUB>c</SUB>) と延伸温度 (T<SUB>d</SUB>) との関係を調べた. その結果, ガラス転移温度 (T<SUB>g</SUB>=110.4℃) 以下の温度域で<SUB>c</SUB>T<SUB>d</SUB>の低下に伴いほぼ直線的に増加することが確認された. そこで, T<SUB>g</SUB>以下の温度域でのσ<SUB>c</SUB>をT<SUB>g</SUB>T<SUB>d</SUB>の差 (T<SUB>g</SUB>-T<SUB>d</SUB>) についてプロットしたところ, 次式で示されるような簡単な実験式を得た. σ<SUB>c</SUB>=C (T<SUB>g</SUB>-T<SUB>d</SUB>) (ただ, T<SUB>g</SUB>>T<SUB>d</SUB>) なお, この定数Cは0.490MPa・℃<SUP>-1</SUP>となり, ポリエーテル・エーテル・ケトン (PEEK) フィルムの0.539MPa・℃<SUP>-1</SUP>およびポリ (エチレンテレフタレート) (PET) 繊維の0.546MPa・℃<SUP>-1</SUP>に近い. 種々のT<SUB>d</SUB>でネッキングゾーン延伸して得られたフィルムのネッキング延伸倍率 (λ<SUB>n</SUB>) では, T<SUB>g</SUB>以下で延伸したフィルムのλnがT<SUB>g</SUB>以上で得られたィルムより大きく, また, T<SUB>g</SUB>以下の延伸ではT<SUB>d</SUB>が高いほどλnが大きくなる傾向にある. 負の複屈折 (Δn) を示すPMMAで, T<SUB>d</SUB>=80℃で延伸したフィルムのΔnは-16×10<SUP>-4</SUP>であるが, T<SUB>d</SUB>の上昇とともに負の値が小さくな, T<SUB>d</SUB>=132℃で延伸したフィルムはほとんど無配向である.
著者
An Jung Bum 斎藤 拓 井上 隆 扇澤 敏明 BONG SUP Kim
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.635-638, 1999-10-25
被引用文献数
7

鋭敏色板を挿入しないで高分子球晶を偏光顕微鏡観察すると, 白黒のコントラストでマルテーゼクロスが見られるのが一般的である. これに対して, ポリトリメチルテレフタレート (PTT) 球晶は色板なしでも緑色や青色などの美しい干渉色からなる偏光顕微鏡像を与えることを見いだした. Michel-Levyによる干渉色図を用いて複屈折△<I>n</I> (球晶の半径方向の屈折率と接線方向のそれとの差) を評価したところ, それが約0.065と極めて大きいための発色であることがわかった. さらに, 球晶の中心から半径方向への干渉色の変化が見いだされた. これは, 球晶内の△<I>n</I>が一定ではなく, 中心から離れるに伴い増大するためであり, 球晶が秩序性を増大しながら成長したことを示唆していると考えられる. これまでに例のないこのような鮮やかで美しい偏光顕微鏡像を与えるPTTは球晶組織形成機構の解明という未解決問題を研究する上での有用なモデル試料として注目される.
著者
守田 啓輔 彦坂 正道 米竹 孝一郎 増子 徹
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.54-59, 1995

ポリ [ビス (3, 4-ジメチルフェノキシ) ホスファゼン] の相転移に伴う球晶形態の変化およびその結晶形について, 偏光顕微鏡観察, 脱偏光強度測定, DSC, X線回折により検討した. メソモルフィック相 (δ相) から室温まで徐冷結晶化を行うと, マルテーゼ・クロスを有する小型のA型球晶と, より大型のB型球晶が混在して現れた. 昇温過程では, 96℃付近でA型球晶の輝度が減少し, 110℃でB型球晶は消失した. この変化はDSCの吸熱ピーク温度と一致した. 高温X線回折実験によると, 室温から90℃までは単純格子に帰属される結晶 (α型) が存在するが, 100℃以上ではα型結晶が存在せず, すべて底心格子を持つ結晶 (β型) になると推定した. 一方, δ相より徐冷し75℃で等温結晶化を行った場合, A型球晶は現れず, B型球晶だけが確認され, その結晶形はβ型であった. β型結晶はα型結晶に比べ熱的に安定であり, その発現はB型球晶の形成に関連がある.
著者
宝蔵寺 裕之 堀江 修 尾形 正次 沼田 俊一 金城 徳幸
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.483-490, 1990-06-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
13
被引用文献数
16 19

エポキシ樹脂に充填剤として球形のシリカを用いた成形品の機械強度, 樹脂と充填剤の界面の接着性に及ぼすカップリング剤の種類, 添加方法, 添加量の影響について検討した. インテグラルブレンド法でカップリング剤を添加した場合カップリング剤の種類や添加量を変えても樹脂と充填剤の接着性はあまり改良されず成形品の機械強度もほとんど向上しない. あらかじめ充填剤表面をアミノシラン系カップリング剤で処理した場合には, 樹脂と充填剤の界面の接着性が改良され, 成形品の機械強度が大幅に向上した. 成形品の機械強度は, 充填剤表面にカップリング剤の単分子層が形成された場合に最も高い値を示す.
著者
藤森 行雄 金子 隆司 西出 宏之 土田 英俊
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.485-488, 1993-06-25 (Released:2010-11-22)
参考文献数
12
被引用文献数
2 6

カンファーキノン (CQ) とジメチルアミノエチルメタクリレート (DMAEMA) は光重合型歯科用レジンに重合開始剤として応用されている. CQおよび各種アミンの存在下におけるMMAの重合をモデル系として, 光照射によるCQのカルポニル基の消費率, ラジカル挙動, ポリマーの収率からラジカル重合開始能を考察した. CQとDMAEMAは窒素下での光照射によりCQラジカルアニオンを生成した. 光照射によるCQのカルポニル基とCQラジカル信号強度の減少率はポリマーの収率に依存し, CQラジカルの水素引き抜き反応により重合が進行することが示唆された. 一方, 大気下での光照射ではCQのカルボニル基の消費率は少なく, ポリマーの収率は低下した. 大気中の酸素により開始反応が阻害されることが明らかとなった.
著者
高橋 清久 石川 直元 尹 興洙
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.757-762, 1990
被引用文献数
3

1, 1-ジアミノー3, 3, 5, 5-テトラ (パラクロロフェノキシ) シクロトリボスファゼン (ACPP) をエポキシ樹脂の硬化剤として用いた. 硬化物の力学的性質をねじり振子試験により測定し, 硬化剤として1, 1-ジアミノ-3, 3, 5, 5テトラフェノキシシクロトリホスファゼン (PC10) を用いた場合と比較した. ACPPはヘキサクロロシクロトリホスファゼンからKajiwara <I>et al</I>. の方法により合成した. ACPPは合成段階における収率がPC10より高く, またACPPはエポキシ樹脂を短時間で前硬化できる. PC10で硬化したエポキシ樹脂は, メタフェニレンジアミンで硬化した場合より室温付近で高い剛性率を示すが, 温度上昇に伴う剛性率の低下が著しい. これに対してACPPで硬化したエポキシ樹脂は150℃付近まで高い剛性率を維持する. またアルカリ浸漬によりPC10で硬化したエポキシ樹脂は劣化したがfACPPで硬化したエポキシ樹脂は優れた抵抗を示した. 以上の結果より, ACPPはエポキシ樹脂の150℃以下での剛性率と耐アルカリ性を高めるために効果的な硬化剤といえる.
著者
上出 健二 今中 明子
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.537-544, 1975
被引用文献数
2

ナイロン6分別区分 (数平均分子量<I>M<SUB>n</SUB></I>=830~43200) の融液からの等温結晶化現象を示差走査熱量法によって解析した. Avrami式θ=exp (-<I>kt<SUP>n</SUP></I>) (θ=未結晶化分率, <I>k</I>=速度定数, <I>t</I>=結晶化時間) のベキ係数<I>n</I>は結晶化の進行につれて6から1へ急激に減少する. これは分別結晶化によるのではなく, 結晶化機構の変化に原因する. <I>n</I>は結晶化温度<I>T</I><SUB>c</SUB>が高いほど, <I>M<SUB>n</SUB></I>が大きいほど大きくなる傾向がある. <I>M<SUB>n</SUB></I>が大きくなると結晶化速度は小さくなる. これは分子鎖の拡散の活性化エネルギーが過冷却度よりもより支配的であるとして説明される. 等温結晶化過程で生成した結晶の融解曲線は一次結晶化終了時には場合により3山ピーク (低温より, <I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (1) </SUB>, <I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (2) </SUB>, <I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (3) </SUB>と名付ける) を示す. 高温側の<I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (3) </SUB> ピークは<I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (2) </SUB> ピークが昇温過程において再配置したものの融解に対応する. <I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (2) </SUB> ピークは主ピークでラメラ結晶の融解に対応する. 低温側の<I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (1) </SUB> ピークは結晶化後期に発生し, <I>T</I><SUB>c</SUB>よりも常に数℃高い. <I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (2) </SUB> ピーク→<I>T</I><SUB>m</SUB><SUB>2 (3) </SUB> ピークへの転移は分子量が小さく, <I>T</I><SUB>c</SUB>が低いほど起こりやすい.
著者
佐藤 貞雄 斉藤 工 大柳 康
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.57-59, 1991
被引用文献数
1

ガラス繊維を30%充填した液晶ポリマー (以下LCP-GF30と呼称) とポリカーボネートなど汎用樹脂の<I>p-v-T</I>特性を独自に設計-試作した装置を用い, 温度20~325℃, 圧力0~150MPaの節囲で, 等温圧力変化法によって検討した. その結果, ポリカーボネートの大気圧下溶融温度領域の比容積は熱膨張によって7%増大し, 負荷圧力の増加とともに漸次減少する. これに対してLCP-GF30の比容積は0.15% (325℃において) 程度増大するだけでその変化量は前者に比べて著しく小さく, また, 圧力 (最大150MPa) を負荷してもその比容積は大気圧下室温のものとあまり変わらない. したがって, 定常状態におけるこの種液晶ポリマーの比容積は温度・圧力の影響をあまり受けないことがわかった.
著者
松葉 豪 辺見 幸大 辻 秀人 河井 貴彦 金谷 利治 豊原 清綱 遠藤 浩平
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
pp.2014-0039, (Released:2015-03-19)
参考文献数
29
被引用文献数
3 2

溶融混練でブレンドさせたポリ(L-乳酸)(PLLA)とポリ(D-乳酸)(PDLA)試料のガラス状態から昇温時および溶融状態からの降温時の結晶化(ガラス結晶化・メルト結晶化)でのモルフォロジーの変化を追跡した.ガラス結晶化では,PLLA(PDLA)の単体からなるHomo晶とステレオコンプレックス結晶(Sc晶)が観測された.昇温に伴い,長周期は約20 nmから約63 nmとなり,コンホメーションが変化していた.Homo晶の融解後は, Sc晶の間にHomo晶の融解物が存在するため広がった密度ゆらぎ(63 nm)と,Sc晶の長周期(23 nm)の二つの相関が観測された.ミクロンよりも小さい微結晶は粗い界面をもつクラスターを形成した.一方,メルト結晶化では,降温に従ってSc晶のみが成長し,長周期の長さは, 70 nmから40 nmと減少していた.また,非常に界面のなめらかな微結晶が成長していた.
著者
森作 俊紀 北澤 卓也 鈴木 光 由井 宏治
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.554-561, 2014 (Released:2014-11-25)

-0.01°Cから-1.0°Cの過冷却温度範囲において,形成される氷結晶形態の不凍糖タンパク質(AFGP)濃度に対する依存性を0 mg/mLから1.0 mg/mLの範囲で調べた.-0.01°CではAFGP濃度の増加につれて過去に報告された円盤→六角板→角柱への形態変化が再現性よく観測された.次に-0.3°Cから-0.5°Cで調べた所,1.0 mg/mLで先端がファセットな多数の板状結晶が放射状に成長する新しい結晶形態を見いだした.この氷形態に着目して濃度を固定しさらに温度を下げた所,-1.0°Cでシダ状星型樹状結晶になる事が観測された.シダ状星型樹状結晶は自然界では雪の結晶として約-14°Cで形成されるが,AFGP共存下では-1.0°Cの過冷却温度で観測された.比較的高温でもシダ状星型樹状結晶が観測された要因として,プリズム結晶面へのAFGPの吸着による結晶面間の成長速度差が,約-14°Cでたち現れる速度差と同程度まで大きくなった事が考えられる.
著者
高松 俊昭 和田 仁一 深田 栄一 松本 博志
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.781-787, 1980-12-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

放射線を用いて多孔質ポリテトラフルオロエチレン (EPTFE) の種々のグラフトポリマーを作り, それらの抗血栓性を調べた. EPTFEは内径10mm, 厚さ1mmの管状および厚さ0.79mmのシートを用い, ビニル系モノマーは酢酸ビニル (VAc), メタクリル酸メチル (MMA), スチレン (St) および2-ヒドロキシエチルメタクリラート (HEMA) であった. EPTFEはこれらのモノマー液中でγ線を照射し, グラフトポリマーを作製した. VAcグラフトポリマーの一部はビニルアルコール (VAl) に, Stグラフトポリマーの一部はスルホン化スチレンに変換した. これらのグラフトポリマーを室温で生理食塩水中で強制伸縮したときの吸水量を測った. その飽和吸水量はグラフト率や親水性の増加によって増加した. 生理食塩水に対する接触角は飽和吸水最の大きいものほど減少した. In vivoテストでの開存率はグラフト率が5%以下では良い結果を与え, VAl>MMA>VAc>St>スルホン化Stグラフトポリマーの順に低下した. スルホン化Stグラフトポリマーを犬の上大静脈に移植中, 溶血が起こり, 血栓による厚い内膜が早期に形成された.
著者
秋山 映一
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.204-216, 1999-04-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
41
被引用文献数
1

側鎖型液晶高分子 (SCLCP) においてスペーサー構造が液晶性およびメソゲン基の運動性に与える効果を調べるために, アルキレンスペーサー (AS), シロキサンスベーサー (SS), オリゴ (エチレンオキシド) スペーサー (EOS), およびEOSとASを組み合わせたセグメント化スペーサー (SegS) を有するポリアクリレートを合成し, それらの相転移挙動および誘電緩和挙動を比較検討した. その結果, SSおよびEOSのようにスペーサー構造の柔軟性を高めることでメソゲン基の運動性をより高めることができるが, この場合液晶性が発現するためには比較的大きなメソゲン基を必要とすることがわかった. さらにメソゲン基の運動性を高めるという点では, 小さなメソゲン基の導入が最も効果的であることもわかった. これらの結果に基づきSegSを考案した. SegSを有するポリアクリレートはそれ以外のSCLCPと比較して極あて低いTgを示し, メソゲン基の運動性も極めて高いことがわかった. また電場配向処理によって容易にメソゲン基を配向させることができた. このように低分子液晶と同様なメソゲン基の高い運動性をもつ側鎖型液晶高分子の開発には, セグメント化スペーサーの導入が効果的であることが示唆された.
著者
織田 ゆか里 田中 敬二
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.343-351, 2014-08-25 (Released:2014-08-22)
参考文献数
37
被引用文献数
1 3

高分子膜最外層の凝集状態は環境に依存して変化する.このような高分子の表面再編成は高分子多成分系を中心として検討が行われてきた.ここでは,単一の高分子においても環境に応じて膜最外層の構造再編成が起こることおよびそのダイナミクスを紹介する.また,膜最外領域における構造再編成と高分子の一次構造との関係についても議論する.