著者
横尾 義貫 松岡 理 中村 恒義
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.62, pp.20-24, 1959-07-20

曲げモーメントと捩りモーメントの作用する部材断面の降伏条件についてはHeymann,Hill & SiebelおよびGadon & Nuttallの研究があり、実用上充分な程度まで各種断面形について結果がでている。後の四者の研究によれば、すべての形状の断面について曲げモーメントMと捩りモーメントTを受ける場合の降伏曲線の極めて良好かつ便利な下界曲線は[numerical formula](1・1)で与えられる。ただし、M_0,T_0は夫夫単純曲げおよび単純捩りの場合の降伏モーメントである。たとえば、円形断面の場合の真の降伏曲線は第1図左で示すように、(1.1)の下界曲線からわづかに上にあるだけである。ここでは、次の(1.2)のように近似化した降伏条件を採用する。[numerical formula](1・2)なお、円形断面において、(1.1)と(1.2)の関係を図で示すと第1図右のようになる。(本文Fig. 1.参照)本研究は(1.2)を降伏条件として、等分布横荷重をうける両端固定アーチの載荷能力特性をlimit alnaysisにより求めたものである。えた結果を要約すれば次のようになる。上・下界荷重m_kP,m_sPは一致した。半開角ψの値によつてその表示式はことなるが、上・下界全荷重mP,スパン中央の曲げモーメントM_m,捩りモーメントT_m,両端の曲げモーメントM_e,捩りモーメントT_eは次の値であらわされる。(1)[numerical formula](2)[numerical formula] collapse modeは(1)と(2)でことなる。(2)は両固定端の中心を結ぷ軸のまわりに回転する。(1)のmodeは両固定端を結ぷ軸のまわりの回転と、その軸に垂直、かつアーチ構面に含まれる軸のまわりの回転とが加つたものである。全荷重は(1)、(2)ともにmP=(4M_0/L)ξψsinψであらわされるが、L, M_0を一定とする場合、ψに対するξψsinψの関係を第4図に示す。ψが増加すると載荷能力は単調に減少する。なお、ψを零に近づけた極限として本結果は両端固定梁の降伏全荷重16M_0/Lに一致する。(本文Fig. 4.参照)スパン中央のM_m=cM_0を定めるcとψとの関係を第5図に示す。固定端におけるM_e/M_0,T_e/M_0とψとの関係を第6図に示す。ψ=67.5°でM_e/M_0は最小、T_e/M_0は最大となる。即ち、捩りモーメントは載荷能力にψ=67.5°で最も大きく役立つ、がしかし、M_e/M_0はψの値にかかわらず常に1に近いことを考えると、曲げ抵抗が載荷能力に支配的役割を演じていることを知る。(本文Fig5. Fig. 6.参照)式、図の番号は本文のをそのまま用いた。
著者
六車 熙 岸本 茂規
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.172, pp.1-6, 75, 1970-06-30

In the reinforced concrete flexural member, the stress distribution over the cracked section becomes unstable just after occuring the flexural crack and the resistant moment decreases temporarily until reaching the stable state. Especially, in a case of extremely smaller amount of tensil reinforcement as well as the use of reinforcement having extremely weak yield strength in comparison with the concrete strength, the flexural failure moment is mathematically smaller than the initial cracking moment and as a result the member suddenly fails in flexure just as the applied load reaches the initial cracking strength. Of course, such a sudden flexural failure should be avoided in the design. In this paper, from such concept the minimum amount or the minimum yielding strength of the tensile reinforcement is discussed theoretically in correspondence to the variable combinations of steel yielding strength and concrete compressive strength.
著者
梅干野 晁 乾 正雄 龍谷 光三
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.309, pp.115-126, 1981-11-30
被引用文献数
9

都市における熱環境解析の第一段階として, 前報で物理的裏付けをはかった航空機リモートセンシングデータを用い, 夏季・晴日における住宅地の熱環境の実態を示した。さらに, 各種タイプの住宅地を中心にして, それらの熱環境を比較検討するとともに, 熱環境と土地被覆率との相関・回帰分析を行い, 両者の関連性を考察した。すなわち, 住宅地の熱環境要素である可視域と近赤外域の分光反射率, 昼と夜の表面温度などは, 住宅地のタイプと使用されている材料によって異なる, 材料も考慮した土地被覆の実態を知ることによって, それぞれの熱環境要素が回帰できる, ことなどを明らかにした。今後の問題としては, 熱環境の日変化, 季節変化の解析, さらに住宅地から一般の都市環境への拡張などがあげられよう。また本報ではMSSデータの解析の中で, 建物立面の補正など手作業によったが, 計算機による補正方法も検討する必要があると考える。おわりにあたり, 本研究は「財団法人 日本造船振興財団日本海洋総合学術診断プロジェクト」に参加して得られた成果の一環であることを記すとともに, 東京大学教授豊田弘道先生, ならびに愛甲敬氏をはじめとする財団の方々に感謝の意を表します。
著者
沼田 明樹
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.341, pp.37-45, 1984-07-30
被引用文献数
2

本実験で明らかになった点を要約する。1)摩擦面処理RおよびSRの摩擦面に繰り返しすべりが生じると, 初すべり時の摩擦係数が広い範囲の値をとる場合でも, 2〜10回の繰り返しすべりにおける摩擦係数は, 狭い範囲の値に集中する傾向がある。2)摩擦面処理Sの摩擦面に繰り返しすべりが生じると, 数回の繰り返しすべりによって摩擦係数が急上昇し, 0.75程度の高い値となる。3)摩擦面処理Rの場合, 荷重周波数が大きい程, 繰り返しすべり後の摩擦係数は小さい値をとる傾向がある。従って, 準静的載荷実験の結果が, 実際の動的な現象に対して危険側の評価を与える場合がある。4)摩擦面処理Rの場合, ボルト軸力低下量が導入ボルト軸力の20%程度までであれば, 摩擦係数変動特性はボルト軸力低下の影響をほとんど受けず, また, ボルト軸力を一定に保持した条件の場合, 本実験の範囲では, ボルト軸力の大きさは摩擦係数変動特性に影響を及ぼさない。5)摩擦面処理SRの場合, 摩擦係数変動特性に及ぼす荷重周波数およびボルト軸力の影響には, 本実験の範囲では, 摩擦面処理Rの場合との著しい矛盾は認められない。6)繰り返しすべりを生じる高力ボルト摩擦接合部の復元力特性を, 実用上ほぼ妥当な精度で定量的に把握することを目的とした場合の, 摩擦係数の評価方法を提案し, その妥当性を示した。
著者
安岡 正人 橘 秀樹 田中 洪 田村 明弘
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.345, pp.218-225, 1984-11-30
被引用文献数
1

在来工法による木造試験家屋を用いた今回の実験的検討の結果の概略は, 以上に述べたとおりであるが, これらを要約すると, (1)外壁については, 外装材の下地に合板など板材料の挿入や内壁の多層化(板材料二重張り, あるいは遮音シートの挿入など), あるいは中空層内部に多孔質吸音材料を挿入することなどにより, 中高音域では大きな遮音性能の増大が期待できる。しかし, 低音域(125Hz帯域)については, 中空層厚が100mm程度となる一般の軸組構造壁では, 二重壁の低域共鳴透過現象により, 遮音性能の改善には限界(125Hz帯域で内外音圧レベル差20dB程度)がある。それに対して, W/5(二重軸組壁)のような構法をとれば, 125Hz帯域でも30dBに近い内外音圧レベル差を得ることができ, 特に低音域についても大きな遮音性能が必要とされる場合に有効である。また平面計画上, 外壁に押入などの収納部分を組合せることができれば, 全帯域にわたって高い遮音性能を得ることができる。(2)窓などの開口部を含む外周壁の遮音性能は, 開口部の性能によって決る。中空層が外壁の厚さ(約100mm)と同程度の二重窓では, 気密性を高めることにより, 高音域の遮音性能は十分大きくすることができるが, 低域共鳴透過現象により, 低音域での遮音性能の改善には限界がある。したがって道路に面した場所など, 低音成分が優勢でレベルも大きな騒音環境下では, 出窓形式の二重窓などを採用し, 中空層をできるだけ大きくすることが必要である(図-10, 11参照)。その際, 気密性の高いサッシを二重窓の少なくとも一方に使用することにより, 高音域においても高い遮音性能とすることができる。面積が大きく, 遮音上の弱点となりやすい掃出し窓についても, 大きな中空層をもつ二重構造とすることが望ましい。その場合, 中空層を前室として空間的にも利用できる程度とし, 気密性の良好なサッシを用いることにより, 外壁と同程度の遮音性能(D35〜40以上)を得ることができる。このような点からみると, 我が国の伝統的な縁側形式のプランは, 内部建具にもガラス障子などを用いた場合には遮音上きわめて有利と言える。(3)屋根-天井部分については, 天井ふところの空間を利用し, その間に断熱も兼ねて十分な吸音材を付加することにより, 外周壁にくらべてはるかに良好な遮音性能が得られる。その際, 天井面を遮音層と考えて, 石膏ボード等の遮音材料を下地材として使用することが望ましい。(4)遮音性能の向上のためには, 音響的には気密性を高めることが必要であるが, 当然のことながらそれと同時に室内の換気についても十分な考慮が払われなければならない。その場合, 図-13に示した結果からも明らかなように, 在来の簡易な換気設備を不用意に設置すると, 外周壁の遮音性能を特に中高音域で著しく損なう結果となるので, 防音型住宅を考える場合には, 少なくとも熱交換型あるいは減音効果の大きいダクト引き形式の換気設備が必要である。また今後, 遮音効果の大きい住宅用換気設備あるいは換気口などの開発・普及が望まれる。
著者
土橋 由造 井野 智
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.272, pp.41-51, 1978-10-30
被引用文献数
4

1100枚を越える既存のRC床スラブの沈下撓みを実測し, 大撓みをもつ障害スラブの実態を明らかにすると共に, 調査結果を分析・総合して, 大撓みの発生する限界寸度の推定を試みた。以上を要約し, その内容を列挙すると次の如くである。(1)RC床スラブにおける大撓み障害は, その亀裂パターンと大撓みに至る経年変化から推測して, 曲げ応力に他の要因(例えばコンクリートの乾燥収縮, クリープ, 温度応力等)が複合的に作用して生じたものと考えられる。(2)現行設計法によれば, 曲げ材は引張側コンクリートの亀裂を許し, 引張力は鉄筋が負担するものとしているが, 設計荷重程度の段階では曲げ補強筋の効果はそれ程大きくはないようで, 大撓みの発生を防止するためには, 曲げ応力による縁応力度を一定限度内に納め, 曲げ亀裂を許さぬようにする必要がある。(3)RC床スラブの調査結果から, 大撓みの発生する限界縁応力度は, 履歴における最大荷重(通常の建物では施工時荷重)による最大縁応力度が, 大凡コンクリートの引張強度に当る20kg/cm^2内外と推定できる。但し, 調査することのできた建物は昭和20年代の後半から昭和40年代の前半に施工されたものであって, 現在ではコンクリート強度の向上と品質の均一化を考慮して, 上記の縁応力度の限界値を引き上げ得るものと考えられる。(4)設計及び施工に際しては, 施工誤差による版厚の不足, 並びに上端鉄筋の沈下に対しての配慮が必要である。以上は主として, 曲げ亀裂の発生防止を意図したものであって, コンクリートの乾燥収縮, クリープ等に対して, 沈下撓みを小さくするためには, (5)現在までの慣用設計寸度では大撓み防止上, 床版面積を大凡, 平版で24m^2, 中央部薄肉版で36m^2以内に納めることが望ましい。(6)コンクリートの調合決定に当っては, 可能な範囲で単位水量, 及びセメント量を少なくする。(7)スラブ下の型枠支柱の存置期間の適正をはかる。以上のような配慮によって, 健全な床スラブの施工を期待することができるものと思われる。
著者
岡田 光正 吉田 勝行 柏原 士郎
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.169, pp.79-86, 95, 1970-03-30
被引用文献数
1

In this paper, we report such results of time studies about hospitals, parking places and railway stations as follows. 1. a. At Osaka Univ. Hospital, the number of patients entering this hospital is 1, 929. The peak of arrival is between 9 : 30 and 9 : 35 and the ratio of concentration in 30min. is about 20%. Here, the ratio of concentration is proportion of number of persons entering in 30min. to total accumulation in one day. b. At Osaka City Univ. Hospital, the number of patients entering this hospital is 658. The ratio of concentration in 30min. is about 26%. 2. a. At Nagahori parking place in Osaka, the number of cars entering this parking place is about 1, 500. The ratio of concentration in 60min. is about 13%. b. At Azuchimachi parking place in Osaka, the number of cars entering this parking place is about 500. The ratio of concentration in 60min. is about 14%. 3. a. At. Osaka City underground railway stations, the ratio of concentration in 60min. is about 25%. b. At Japan national railway stations, the ratio of concentration in 60% is about 17%.
著者
菊地 弘明
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.97, pp.42-47, 1964-04

i)日常の諸施設利用にみられる地域的拡がりは,それぞれの施設によって異なる。先ず利用圏域が最小の拡がりを示す例として理髪店・美容院・購入頻度週・月単位の調味料・魚・学用品などの購買関係施設および農業関係施設のほとんどが挙げられる。これらはいずれも施設までの所要時間20〜30分・3〜4kmを境にして利用率は50%以下を示す。その圏域は部落中心または副市街地的な単位で集落全体に均等に分布する。ii)更にその圏域がこれらを上廻る拡がりを示す例として病気の場合の通院,高校・和洋裁学校などへの通学,映画観賞の場合,購入頻度月1〜年5・6回程度の下着・本雑誌・履物・化粧品などの購買関係施設の利用が挙げられよう。いずれも施設の選択性がある程度重要視きれる性格のもので所要時間40〜50分程度を越えるとその利用率は50%以下を示す。その圏域は中心市街地的な単位のまとまりを示すが,地域中心都市への依存もみられる。一般に農村地域においては,日々の通学などにみられる地域的拡がりはまた映画観賞や通院の場合の施設利用の範囲であるともいえよう。iii)更に大きな地域的拡がりを示す例として病気の入院の場合,購入頻度年1回〜数年に1回程度の時計・晴着などの購買施設が挙げられる。いずれも利用の頻度は低く施設または品物の選択性が最も重要視きれる傾向のもので,地域中心都市への依存度が顕著で概ね所要時間1時間・30km程度を境にして利用率は50%以下を示すようになるが,2時間を越えても10〜20%程度の利用が認められる。その他これらと同じ傾向を示すものとして祭・盆・正月などの祝祭日に帯広に出かけるものの地域的拡がりが挙げられる。iv)全体的にみると現状での主要な交通方法がバスから汽車にとって代る30km・所要時間1時間前後を境にして地域中心都市に対する利用率は50%以下となり,町村の中心市街地または近くのより大規模な市街地により多く依存する傾向が知られる。また地域的にみて以上の諸施設の利用に共通して指摘される一般的傾向は,それらの利用圏域が同心円的なものではなく,より充実した施設をもった大規模な市街地の反対方向に大きく偏った拡がりを示すことである。v)通院・通学・映画観賞など数ケの日常の主要な行為で代表きれた諸施設の利用にみられる人の動きについて,とくに所要時間と利用率との関係から例えば農村地域においては,利用対象となる施設までの所要時間が30分以内であれば,病気の通院・入院の場合などでは80%以上の高い利用率を期待し得ることが知られる。また購入頻度月単位〜年数回程度の履物・薬・本雑誌などでは所要時間30分以内では50%以上の利用率,1時間以内であれば購入頻度年1回〜数年に1回程度の時計・晴着でも50%以上の利用率を期待し得ることが知られよう。逆に例えばこれらの品目について80%以上の高い用利率を期待するためには,これらの関係施設が少なくとも所要時間20分程度の範囲内に立地しなければならないことが推定きれよう。vi)次に施設までの所要時間を尺度として利用者側からの主観的な感じ方をみる。先ず医療関係では助産婦の利用および出産入院の場合に妊婦が通ったり,出産時に急を要する点などを反映してか施設までの所要時間の増大と共に不便を感ずる傾向が大きくあらわれ,所要時間30分を越えると利用者の50%以上が不便を感じている。次いで通院の場合が挙げられる。これは小中学校への通学の場合と類似した傾向を示し,いずれも所要時間30〜35分を越えると50%以上が不便または遠いと感じている。このように所要時間別にみて利用者の50%以上が不便を感ずる限界は例えば散髪・パーマおよび入院の場合では40分,農業関係の施設では40〜45分,郵便局の利用および映画観賞の場合などでは50分〜1時間となっている。vii)集落内において対地別に身近かに立地が要望される施設についての調査結果をみると,一般に部落中心に対しては日常生活に密接した施設への要求が大きく現われている。すなわち,医院・診療所に対する希望が最も多く,次いで公衆電話・保育所・季節保育所・助産婦・小中学校などが挙げられている。全体的にみると部落中心的な単位で少なくとも診療所もしくは医師の定期出張診療のみられる健康相談所的な施設・季節保育所などの設置が望まれよう。副市街地に対しては,部落で顕著にみられた医院・診療所・公衆電話への要望は比較的少なくこれに代って病院と共に歯科医院に対する希望が大きくみられる。現在,医院・診療所の立地傾向に較べ歯科医院の立地は比較的少なく,連たん300戸以上にならなければ平均1程度の立地がみられないが,利用する側からは少なくとも副市街地単位で,この施設に対する要望が大きく現われている。その他役場出張所・映画館に対する希望が顕著である。中心市街地に対しては部落などにみられた施設への要望は比較的少なく,施設の充実に伴って図書館・公民館・高校などに対する希望も多く,幼稚園などへの要求もみられる。viii)以上の諸行為にみられる一般的傾向は農村地域における日常諸施設の配置に際して,その段階的構成を示唆するものであろう。更に日常の主要な施設個々についてある割合以上の高い利用率を期待するためには少なくとも施設よりの最大の拡がりをどの程度にすべきか,施設または所要時間と共に低減する一般的傾向の中にこれからの施設配置計画上の一つの基準を見出し得るであろう。また主要な日常の諸行為について所要時間別にみた主観的な感じ方などから例えば利用者の5割以上が不便を感じていない限界を利周者側からみた計画上の1指標としてとり挙げることもできよう。一般に時間を尺度としてみるとき農村地域の日常生活においては,施設に密接なつながりをもち近親感を示す限界が30分,更に購買に限らず通勤・通学・医療・慰楽などの目的の場合でも生理的な因子をも含めて充分な余裕をもった日帰り行程の限界は1時間と見做される。現在では徒歩・自転車利用30分で到達し得る範囲は3km程度であるが,交通手段め発達と共に利用機関の頻度的制約が解消され,自家用車・バスなどが徒歩・自転車に代るようになれば,同じ所要時間でも利用者側からみた望ましい圏域は空間的により拡大されようし,これに伴って農村地域でも医療・購買などに限らず慰楽的な面でも望ましい圏内により充実した施設の立地が可能となろう。集落形態的な立場からは完全な散居型式よりも,少なくともある単位で段階的なまとまりをもって住居群が構成きれる場合に公共施設は経営上より効果的に配置きれ,利用者の立場からみて各戸より各施設へのつながりもより能率的にまとめることが可能となろう。おわりに本研究を進めるに当って絶えず御指導をいただいた横山尊雄教授に深く感謝すると共に,この研究は北海道科学研究費の補助を受けたものであり,北海道大学新制学位学論文の一部をなすものであしることを付記します。
著者
北浦 かほる
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.275, pp.75-86, 1979-01-30
被引用文献数
2

建築空間内におけるテクスチュアの視知覚現象については, (その1)で明らかにした。ここでは, その見えの現象を支配すると想定される主な要因, 粒子の断面形粒度面での輝度をとりあげ, 箇々の知覚現象について検討した。最終的には, これらの見えの現象の場である実空間内の視知覚に, より近似されるため, 擬似完全拡散光状態における見えのあらさを求め, その傾向を把握した。これらの分析より明らかになった主要な事項は, (1)粒子の断面形と視知覚現象とは密接に結びついており, 断面形によって, 誘因されやすい知覚型が存在する。例えば, 多角形断面では, 視知覚現象は, A型知覚(暗部図視型)を中心に展開され, それに比して円形断面では, B型知覚(明部図視型)をとりやすい。又, 粒子のあらさと知覚型の関係では, 両断面形とも, 粒子があらい程B型知覚をとりやすい傾向がある。断面形による知覚現象の支配の強さは, 個人の知覚特性よりも強く働いている。(2)同じ知覚型に属していても, 断面形により, 視知覚量に大きな差異が認められる。即ち, 多角形断面粒子では, 明部が多様に分化し, ハイライトをもつ面が特に強調して知覚されるため, 小さな粒子のように理解される。そのためB型知覚の粒子の見えは, ハイライト部分の面積と相関し, A型知覚よりも小さな値をとる。円形断面粒子では, 明度が漸次, 連続的に変化するため, 明部は1つにまとまりをもって知覚される。見えのあらさは球表面積と強い相関をもっている。その結果, B型知覚の見えの大きさは, A型知覚よりも大きな値を有する。(3)見えのあらさにおいて, 10点平均あらさが有効となる閾値は約100μである。それ以下では, 10点平均あらさ, 又はあらさ幅の中, より大きな値を示す方が, 見えのあらさとして判断される。60μ以下の細かい粒子では, 反射グレアの影響がみられる。ハイライト部分を「図」と認識するため, B型知覚が増加する。あらさの知覚尺度の上限については, (その1)の結果とも併せて考えれば, 照射角別の回帰式が一点に集中し, 見えのあらさが, 照射角の影響をうけなくなる値であるといえる。(4)見えのあらさは, 表面あらさ粒子の細かいもの程, 面の明るさに影響されている。明るさによって, 継時的場が構成され, その誘導効果もみられる。即ち, 暗順応の場では, 見えのあらさの誤差率が大きく, 明順応の場では小さい。あらいものでは, 粒子の実像とその上に投影されている明, 暗部分とを分離して知覚出来るため, 輝度による「継時的場」の影響を直接的に受けない。(5)面の明るさと見えのあらさとの関係を実験で求め尺度化した。見えのあらさは輝度による場の誘導効果を除去すれば, 粒度とは関係せず, 輝度との相関のみで表わせる。(6)完全拡散光状態における, 視知覚現象をとらえ定量化した。完全拡散光状態における見えは, 照射角15°におけるA型知覚とほぼ類似した傾向を示している。しかし, 視知覚量は, 粒度の小さい範囲では, 照射角15°のものより大きく, 粒度の大なる範囲では, 幾分小さい値をとる。あらさによる見えの変化率は完全拡散光下の方が幾分小さい。 終りにあたって本研究について, 御指導, 御助言いただいた大阪市立大学, 上林博雄教授に深く感謝致します。又, 実験にあたっては, 丹原, 河原, 畠田, 荒蒔, 福知, 各氏, 及び被験者として協力いただいた大阪市立大学学生諸氏に対し, 心から感謝の意を呈します。 尚, 本研究の一部は文部省化学研究費補助金によってなされた事, 実験用試料の一部は, 天辻鋼球, 田中寛治氏の御厚意によるものであることを付記します。
著者
宇田川 光弘 木村 建一
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.265, pp.125-132, 1978-03-30
被引用文献数
3

1) 多数室の室温, 除去熱量の計算に壁体の熱伝導を含んだ形で室についての熱平衡式よりなる連立方程式を室温あるいは除去熱量を未知数として解く方法を用いた。この方法では収束計算は不要であり, 室数の次元の連立方程式を解けばよい。また, 熱伝導, 室温変動の計算には後退差分を用いたので計算途中に部材の熱的性質や計算時間間隔の変更が可能であり, 応答係数を用いる方法に比べより広い条件についてのシミュレーションを行なうことができる。2) 室温の計算に必要な連立方程式は対象室数の次元であるため冷暖房システムと室とを組み合わせたシミュレーションにも適用しやすい。この場合, あらかじめ自然室温を計算しておき, 自然室温と除去熱量との関係を用いれば室についての方程式を簡単することができ, シミュレーションの実行上便利である。3) 室温, 除去熱量と外乱との関係をそれぞれの外乱別に表現したが, これを用いて気象条件の室内に及ぼす影響を建築全体について定量的に把握することができる。4) 屋根10cm, 外壁5cmの外断熱を施し, 2重ガラスとしたタウンハウス中間住戸について断熱戸のある場合とない場合の暖房の状態をシミュレートした。断熱戸のない場合でも晴天日は夜間においても南室は暖房が不要であり, 北室でも約500kcal/hの暖房を行なえば室温20℃の設定を保つことができた。また, 断熱戸は負荷を60%程度に減少させ, 室温を0.5〜1.5℃高める効果があることが示された。5) 室内相互ふく射は連立方程式には含まれていないが, 計算精度を高めるためには考慮する必要がある。相互ふく射の扱いは壁体での熱平衡式に線型化したふく射の項を入れれば可能であるが, 各壁面の温度が相互に関連するため室数のみの方程式とするのは困難であり, 方程式が建築全体の壁の総数+室数の次元となる。このため実用的には何らかの簡略化を行なう必要がある。6) 計算時間間隔はここでは1時間としたが, 時間間隔と計算精度との関係を明らかにし, 計算目的, 精度に応じ適切な計算時間間隔を選定する必要があろう。
著者
立川 正夫
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.159, pp.17-24, 89, 1969-05-30
被引用文献数
1

屋上に壁面を組上げ, Re数が10^6台において風圧の測定を行なった。結果は次のように要約出来る。1)水平断面周囲の風圧分布は, 負圧の値はやや小さいが, 迎え角の増大にともなうその変化は, 今までの結果と一致する。上端付近の側面負圧は下より大となることがある。2)台風時の測定で, 突風時において風上面に変動量の大きな正圧を記録した。風上面の風圧は各点間の相関も高く, 構造体に作用する変動風力を考える場合, 背面の負圧に比べてはるかに重要である。3)風上壁面上の風圧変動を, 小さな平板上のそれと比較すると, 高い周波数成分が明らかに少なく, 風上面の風圧変動が, 構造体自身の影響を受けていると思われる結果を得た。4)頂部の一隅にはった平板上で, 迎え角が45°付近のとき, 円錐状渦の発生が認められ, 縁に沿って-3.0をこえる高い負圧の, 間歇的な発生が記録された。
著者
西村 敏雄
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.249, pp.93-101, 1976-11-30

The main purpose of this paper is to recompose the geometrical non-linear theory of thin elastic shells with the aid of the improved generalized variational principle into which we introduced the expression of Kirchhoff-Love assumptions and the generalized boundary conditions. As the stationary conditions of the functional in this principle, we obtained unifyingly the non-linear basic equations for general shaped shells with terse expression. For those application, we formulated the approximate method on the basis of the principle of virtual work for rotational shells with edge rings subjected to axisymmetrical loads. The effect of edge rings was considered as statically indeterminate forces on the boundary, which derived with the aid of the linear beam theory.
著者
伊藤 行 田尻 道昿 中村 直
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.70, pp.75-81, 1962-03-25

We examined positively the Moon-Spencer's color harmony theory, especially as to the area effect of color. The sabjects of the examination were pupils of elementary, junior, senior high school, and students of university, in all, about 540 persons. We made 40 samples of 4 colored arrangements. It was so difficult to make the samples in comformity with the Moon-Spencer's theory, that we painted as we liked in the fixed area-ratio, and showed the samples to the boys and girles. The answers about the harmony or the disharmony of colors were obtained by investigation. We ascertained one by one wether the samples which were judged as harmonious by the majority were conform to the theory. The conclusion of the research in our case, did not come out very clearly: it was rather a denial of the Moon-Spencer's theory. We consider that the examination of 4 colored samples has many factors and therefore the focal point of the problem becomes vague.
著者
和田 一郎 鈴木 一元 黒坂 五馬
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.115, pp.31-37, 1965-09-30

This research was carried out one of the information-act to make a dicision of shop for the project of shopping facilities. For this, research was carried out to clear out to clear up the relation between the selection of shop-design and personality. Dec. 1964, The field work was operated by the group interview to the students of Tokyo Dress-making School. The progress of research was devided into two stages, one was to try Yatabe-Kibler, personal inventry, another was Siheffe's Sensory test by means of color fiem that had photographed the shopfacade (Coffee-Shop) Analisis 1st stage was to compute the standard-deviation-σ-of Yatabe-Kibler test, and in this result, we decided to make two groups ; over+σ-we called it "C" group (Circulate type group), under-σ-called it "S" group (Shizopherenia type group) 2nd stage was to check the statiscal significant between C group (Sheffe's test) and S's by means of "F test". As a result, about, the selection of a facade design we can't see auy relation. The fact made clear that between the selection mechanism of facade design and personality have nothing to do.