著者
小林 繁子
出版者
法制史学会
雑誌
法制史研究 (ISSN:04412508)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.113-138,en7, 2016-03-30 (Released:2022-03-05)

本稿は、近年進展の著しい歴史的魔女研究の動向を整理し、その論点と課題を明らかにするとともに、隣接諸分野との接続、発展の可能性を提示することを目指すものである。魔女研究には、裁判・支配の実態と、魔女の表象という大きく二つの問題領域が互いに関連しあいながら存在している。前者においては、犯罪史研究の隆盛に刺激を受け、魔女犯罪を刑事司法一般に位置付ける試みがなされている。また魔女犯罪の政治性を巡って提唱された「道具化」論は、人類学的・民俗学的知見に基づいた近世社会・国家の魔術性という前提を得て相対化されつつ、これを支える地域研究の事例が蓄積されている。国家形成と魔女迫害との関連を問う研究においては、地域研究に基づき学識法曹の役割、共同体内における在地役人の位置づけなど、近世的支配をより立体的に描き出す指標として魔女研究が有効であることが示された。 後者の問題領域においては、知識人の悪魔学テキストのみならず絵画やビラ・版画などが分析対象となっている。作り手と受け手の相互作用に対する分析視角には、メディア学や社会学における転回の影響が認められる。ジェンダーを巡る研究においては、これまで等閑視されてきた男性魔女の存在も取り上げられるようになった。日本でも個別の研究成果は現れているものの、今後はそれらを研究プロジェクトとして統合・総括することが望まれよう。
著者
田口 正樹 佐々木 健 林 信夫 加納 修 大月 康弘 小川 浩三 松本 英実 鈴木 直志 新田 一郎 櫻井 英治 粟辻 悠 西川 洋一 佐藤 公美 小林 繁子 神寳 秀夫 佐藤 雄基 佐藤 彰一 石部 雅亮
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

前近代の西洋と日本について、法律家を中心に、公証人、弁護人、軍人、商人など多様な専門家を取り上げて、専門家と専門知を存立・機能させる環境、専門家と専門知が権力構造において占める位置、専門家間の組織形成とネットワークの広がりといった側面を検討して、専門家と専門知の発展を国制史に組み込んだ。ドイツの研究グループとの学術交流により、専門家に関する文化史的視点を補強して、その意味でも従来の国制史の枠を広げた。
著者
Rufus M. CLARKE 小林 繁
出版者
International Society of Histology and Cytology
雑誌
Archivum histologicum japonicum (ISSN:00040681)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.133-150, 1975 (Released:2009-02-20)
参考文献数
11
被引用文献数
4 7

ラットの空腸を分離 切断し, その先端は縫合され, 後端は腹壁に開口する袋を手術的に作製した. 次いで この袋の先端近くより, 量と成分の知られている種々の試験液を注入し, 粘膜の細胞学的変化を光線顕微鏡と電子顕微鏡を使って経時的に研究した.ポリエチレングリコール4000 (PEG) の等張液 (16.8%) を注入したものでは, 腸絨毛の上端部の腸細胞はすみやかに損傷された. しかし杯細胞と基底果粒細胞には変化が認められなかった. 等張PEG注入後6-72時間後に採取された標本では, 腸絨毛の上端に杯細胞と基底果粒細胞よりなる帽子状の細胞塊が形成されていた. 1% PEGと5.1%ブドウ糖の混合液を注入したものでは, 注入液が直接注ぐ袋の先端部の粘膜には変化がみられないが, 袋の中間部と後部では, 等張PEGを注入したときと同様の著明な変化が認められた. 蒸溜水の注入も, 腸細胞を損傷したが, このさいの粘膜の変化はPEG注入によるものとは 明らかに異っていた. 等張ブドウ糖液の注入では 粘膜の形態はまったく正常であった. PEG注入による腸粘膜の損傷は, PEG注入を止めてのち, 等張ブドウ糖液を6時間注入することによって正常に回復した.以上の結果が, 腸絨毛を被う上皮細胞の絶えざる更新の問題との関連において考察された.
著者
小林 繁子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

筆者は昨年度8月より継続して文書館史料や二次文献などを渉猟する調査を行った。具体的には、博士論文のテーマとして設定した「トリーア・ケルン・マインツ三聖界選帝侯領における魔女迫害の構造比較」のための史料としてとくに民衆からの「請願状」に着目し、これが魔女迫害においてどのような機能を果たしたのか分析し、そこから見られる君主一臣民間の複雑な関係を明らかにすることを目的としている。今年度は特に文書館の手稿史料の解読と分析に注力した。8月~9月には一時帰国し、それら史料調査の成果をまとめつつ、マインツ選帝侯領における魔女迫害について論文を作成し、2010年8月末に国内の学術雑誌に投稿した。さらにその後の史料調査によって得られた知見を加えた改稿を経て、現在審査中である。またトリーア大学のフォルトマー氏と同テーマに関する共同論文を現在準備中である。ここではフォルトマー氏がトリーア選帝侯領、ルクセンブルク大公領、聖マクシミン修道院領において行われた魔女迫害とそこでの請願状の役割について、また筆者はマインツ選帝侯領およびケルン選帝侯領レンス市における魔女迫害について執筆を担当することになっている。これは2011年中に発表される予定である。また、2010年9月にマルティン・ルター・ハレ・ヴィッテンベルク大学において行われた日独共同大学院秋季セミナーにおいて「近世における請願状の諸機能-マインツ選帝侯領における魔女迫害の事例から-」と題してこれまでの史料調査に基づきドイツ語での口頭研究発表を行った。
著者
藤本 潔 酒井 寿夫 森貞 和仁 古澤 仁美 中嶋 敏祐 布施 修 小林 繁男
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.83-90, 1998-12-25 (Released:2017-04-03)
参考文献数
20

1984年の長野県西部地震に伴い発生した御岳岩屑流は,森林域にも多大な被害をもたらした。この岩屑流発生から10年目の植生発達状況と立地環境との関係を明らかにするため,岩屑流堆積物が薄く堆積する標高約2000mの小三笠山北側の緩傾斜地(田の原)と,厚さ数10mの岩屑流堆積物で埋積された標高約950mの王滝川谷底部(氷ヶ瀬)にトランセクトを設け,地形断面測量,堆積物の粒径分析および植生調査を行った。波長数10〜100m程度,振幅10m程度の波状起伏がみられる田の原では,流水の影響を受けやすい谷部で粒径2mm以下の細土含有率や細土中のシルト・粘土含有率に顕著なばらつきがみられ,細土がほとんど存在しない箇所で出現種数・被度とも低い値を示すものの,細土含有率が5%程度以上ある地点では,微地形条件に関わらず,これらは同様の値を示した。氷ヶ瀬では岩屑流堆積面が現河床を含め3段に段丘化しており,岩屑流堆積後,河川による侵食作用を被ることなく安定した地形環境下にあった上位面が出現種数・樹高・被度のいずれも最も高い値を示した。これらの結果は,流水による侵食プロセスが初期植生発達過程に大きな影響を及ぼしていることを示す。岩屑流発生後,同じ期間を経ていると考えられる田の原と氷ヶ瀬上位面を比較すると,樹高およびそれぞれの種の被度百分率の合計値のいずれも標高の低い氷ヶ瀬上位面の方が高い値を示した。
著者
小林 繁夫 長島 利夫
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.34, no.389, pp.332-339, 1986-06-05 (Released:2009-05-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

Three subjects are studied for the vibration characteristics of laminated graphite-epoxy cylindrical shell. Firstly the eigen-value problem is exactly solved to obtain the natural frequency of layered composite cylindrical shell by use of Flugge type vibration equation. In the case of two layer crossply and angle-ply laminates the coupling effect decreases the fundamental natural frequency about 20%. For four layer antisymmetric cross-ply and angle-ply, the natural frequency is close to the one of the thickness-wise homogeneous cylindrical shell. However in the case of symmetric four layer crossply the lamination constitution unexpectedly affects the fundamental natural frequency. The natural frequency is explicitly obtained using Donnell type vibration equation of orthotropic cylindrical shell for the S2 boundary condition and the influence of lamination constitution is clarified. The optimum lamination constitutions for the highest fundamental natural frequency are disclosed. It is shown that the quasi-isotropic lamination is not optimal. The influence of lamination constitution on the nonlinear property of resonance curve for the fundamental natural frequency of the shell is analytically studied. It is concluded that the nonlinear property is softening for all laminations and the degree of the softening is stronger in the order of the circumferential layer alone, the ±45° angle-ply, the cross-ply, the quasi-isotropic and the axial alone.
著者
中野 博昭 大上 悟 西野 友朗 福島 久哲 小林 繁夫
出版者
The Mining and Materials Processing Institute of Japan
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.128, no.10_11, pp.590-595, 2012-09-25 (Released:2013-10-28)
参考文献数
15
被引用文献数
3 5

Electrodeposition of Cu was conducted in a synthetic electrorefining solution to investigate the effect of gelatin, thiourea and chloride ions on the polarization curve for Cu deposition, morphology, texture, surface roughness and the throwing power of the deposited Cu. In a solution containing both gelatin and chloride ions, the cathode potential for Cu deposition was significantly polarized at current densities above 200A/m2, while the thiourea depolarized the potential for Cu deposition at 200 to 1000A/m2. In a solution containing the three additives, i.e. gelatin, thiourea and chloride ions, the potential for Cu deposition was polarized at 500A/m2. It is supposed that the synergistic effect of gelatin and chloride ions on the polarization prevailed over the depolarization effect of thiourea. In the Cu deposited at initial stage, the chloride ions promoted the field-oriented texture with the orientation of direction. However, Cu deposited at initial stage from the solution containing gelatin, thiourea and chloride ions was composed of both the inclined texture type and the epitaxial growth type of crystals. The surface roughness and throwing power of the deposited Cu was most improved in the solution containing gelatin, thiourea and chloride ions, showing the synergistic effect of three additives. The thiourea had an effect on decreasing the surface roughness of the deposited Cu, and chloride ions improved the throwing power of Cu.
著者
小林 繁男
出版者
森林計画学会
雑誌
森林計画学会誌 (ISSN:09172017)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.159-170, 1991 (Released:2017-09-01)
被引用文献数
1
著者
原田 吉通 冨野 真悟 小川 和久 和田 忠子 森 進一郎 小林 繁 清水 徹治 久保 博英
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.13-18, 1989-02-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
16
被引用文献数
1

昭和53年から昭和61年までの9年間に放射線学実習で撮影された平均年齢24.3歳の男女1,353人の全顎デンタルX線写真のうち小臼歯部を目的としたものと大臼歯部を目的としたもの及びパノラマX線写真を使用し, 下顎第一大臼歯の3根の出現頻度について調査した。結果は次の通りである。1. 3根は右側歯数1,163本中240本 (20.6%), 左側歯数1,168本中200本 (17.1%) であった。2. デンタルX線写真による歯根数の確認は, 小臼歯部目的の写真のみで3根の確認できたもの274本 (11.8%), 小臼歯部ならびに大臼歯部目的の写真のいずれでも確認できたもの124本 (5.3%), 大臼歯部目的の写真のみで確認できたもの42本 (1.8%) であった。3. パノラマX線写真で3根の確認できたものは, 440本中70本 (15.9%) であった。4. 左右両側に第一大臼歯の存在している人1,070人のうち, 両側共3根の人は136人 (12.7%), 片側のみ3根の人は127人 (11.9%) であった。
著者
孫 仁俊 中野 博昭 大上 悟 小林 繁夫 福島 久哲 堀田 善治
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.892-898, 2005 (Released:2005-10-20)
参考文献数
13
被引用文献数
12 13

The effect of equal-channel angular pressing (ECAP) on the pitting corrosion resistance of Al and Al-Mg alloy was investigated by means of polarization curves in solutions containing 300 ppm of Cl- and by surface analysis. The potentials for pitting corrosion of Al and Al-Mg alloy were evidently shifted to the noble direction by ECAP process, indicating that this process improves resistance to pitting corrosion. SEM observation revealed that the pitting corrosion occurred near the impurity precipitates and the size of impurity precipitated decreased with ECAP process. The time-dependence of corrosion potential and the polarization resistance determined by AC impedance technique suggested that the formation rate of Al oxide films was increased with ECAP process. The improvement in pitting corrosion resistance of Al and Al-Mg by ECAP seems to be attributable to the decrease in the size of impurity precipitates and the increase in the formation rate of Al oxide films.