著者
波部 雄一郎 ハベ ユウイチロウ Habe Yuichiro
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.43-68, 2017-02

論説(Article)1963年に発見された「バシレイア競技会優勝者録」碑文は,紀元前267年にプトレマイオス2世の誕生日の祝賀行事として開催された体育競技会の優勝者が記録されている。本稿では,碑文の校訂にコメントを加えた上で,1)プトレマイオス朝のエジプト支配における王朝祭祀としてのバシレイア競技会の意義,2)優勝者録からのエジプトにおけるギリシア系入植者の動向,3)紀元前3世紀のエジプトにおけるギリシア文化の浸透について考察した。The Victors list of Basileia Game, found in 1963, was held at 268 BC for celebrating the birthday of King Ptolemy II Philadelphus. After adding some commentaries to the Victors list, I considers the social-economic conditions of military settlers in Hellenistic Egypt and the cultural policy of the Ptolemies.
著者
矢野 環 福田 智子 ヤノ タマキ フクダ トモコ Yano Tamaki Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.1-24, 2017-11-28

資料(Material)本稿は、「《資料》 竹幽文庫蔵『香道籬之菊』の紹介」(『社会科学』第46巻第2号、二〇一六年八月)を受け、「同―同(三)―」(『社会科学』第47巻第1号、二〇一七年五月)、「同―同(四)―」(『社会科学』第47巻第2号、二〇一七年八月)に引き続き、竹幽文庫蔵『香道籬之菊』所載の組香について、とくに和歌を主題とする組香の翻刻と考察をおこなうものである。本書は、礼・楽・射・御・書・数の6巻6冊から成り、177の組香が掲載されているが、その半数近くは、和歌および歌集の序文など、特定の作品を素材として組み立てられている。そこで、本稿では、射の巻から、五月雨香、時雨香、白菊香、夕暮香、水無月香、蓮葉香、花香の、七つの組香を取り上げた。
著者
朱 然 シュ ゼン Zhu Ran
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.31-49, 2016-11

論説(Article)蜷川府政期の京都府は,「革新」を掲げたゆえに,福祉ばかり力入れ,行政投資が少ないというのは通説となっている。しかし,先行研究が皆無の中,京都府の行政投資は検証されたことがなく,実状は不明のままである。本稿は京都府における行政投資額が,全都道府県に占める割合の変化に注目する。その上,国,府,市町村と施行主体別にわけて分析し,変化の原因をつきとめて,また事業決定の政治過程を検証する。
著者
矢野 環 岩坪 健 福田 智子 ヤノ タマキ イワツボ タケシ フクダ トモコ Yano Tamaki Iwatsubo Takeshi Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.1-30, 2015-11

資料(Material)竹幽文庫蔵『源氏千種香』は、『源氏物語』五十四帖にちなんだ五十四種類の組香の作法を記した、安永二年(一七七三)の自叙をもつ伝書である。本稿では、まず、幻香から総角香を翻刻し、次に、これらの巻の内容について、先行する菊岡沾涼著『香道蘭之園』所収本(元文二年〈一七三七〉頃成立)と比較して、『源氏物語』およびその梗概書や注釈書との関わりを考察する。巻末には、当該箇所の影印を付す。
著者
黒川 伊織
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.133-158, 2010-11

「第一次共産党」とは,1992年7月に創立され,1924年春に解党したとされる日本共産党を指す呼称として使用されている。しかしながら,この呼称の含意は,この呼称が成立する歴史的な経緯とあわせて,いまだ十分に検討されていないままである。 そこで本稿では,徳田球一の予審訊問(1930年)に端を発する「第一次共産党」という「記憶」が流布してゆく過程を,日本共産党公判闘争(1931年-1932年)に即して跡づけたうえで,敗戦後はじめて合法化された日本共産党が,「第一次共産党」以来の連続性を誇示するべく行った「党創立記念日」確定の過程と,これに連動した「党史」成立の過程を,「記憶」の再構築という視点から整理する。そして,日本共産党第6回全国協議会(1955年)を契機とした党内言論の開放空間の成立と,そこにおいてわきあがった「党史」再検討の動きが開放空間の閉塞化によって途絶する経緯を,「記憶」の神話化という視点から整理する。そのうえで,学問的な「第一次共産党」史という研究領域の成立過程を,党内における「記憶」の神話化が進められる過程との連動に注目しつつ跡づけ,この両者の関係がのちの「第一次共産党」史研究に決定的影響をおよぼしたことを明らかにする。
著者
岡本 真希子
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.95-131, 2010-11

本稿では,日本の植民地統治下におかれた台湾在住者の政治参加要求をめぐる,植民地社会および本国における相剋の過程を検討する。対象は,1914〜1915年の間に台湾人の権利獲得を目的とした「台湾同化会」成立から壊滅までで,台湾人・内地人双方の動向を視野に入れ,とりわけ在台湾内地人(総督府および民間内地人)の動向を明らかにしながら,政治参加と民族問題,植民地統治体制の相関関係について考察する。
著者
矢野 環 福田 智子 ヤノ タマキ フクダ トモコ Yano Tamaki Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.27-53, 2016-11

資料(Material)本稿は、「《資料》 竹幽文庫蔵『香道籬之菊』の紹介」(『社会科学』第46巻第2号、二〇一六年八月)を受け、竹幽文庫蔵『香道籬之菊』所載の組香について、とくに和歌を主題とする組香について、翻刻と考察をおこなうものである。本書は、礼・楽・射・御・書・数の六巻六冊から成り、一七七の組香が掲載されているが、その半数近くは、和歌および歌集の序文など、特定の作品を素材として組み立てられている。そこで、本稿では、楽の巻から、桜香・二哥香・残月香・蝉丸香・八重垣香・長月香・待宵香・雲井香の八つの組香を取り上げた。
著者
矢野 環 岩坪 健 福田 智子 ヤノ タマキ イワツボ タケシ フクダ トモコ Yano Tamaki Iwatsubo Takeshi Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-13, 2016-05

資料(Material)竹幽文庫蔵『源氏千種香』は、『源氏物語』五十四帖にちなんだ五十四種類の組香の作法を記した、安永二年(一七七三)の自叙をもつ伝書である。本稿では、まず、蜻蛉香から夢浮橋香を翻刻し、次に、これらの巻の内容について、先行する菊岡沾涼著『香道蘭之園』所収本(元文二年〈一七三七〉頃成立)と比較して、『源氏物語』およびその梗概書や注釈書との関わりを考察する。巻末には、当該箇所の影印を付す。
著者
福田 智子 フクダ トモコ Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.19-33, 2015-08

研究ノート(Note)『古今和歌六帖』は、約四千五百首の歌を、二十五項目、五百十七題に分類した類題和歌集である。収載歌には、『万葉集』『古今集』『後撰集』など、出典の明らかな歌もある一方、現在では出典未詳と言わざるを得ない歌もある。本稿では、「酢漿草」から「苔」までの題に配されている出典未詳歌、八首について注釈を施す。
著者
鍛冶 博之
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.59-84, 2008

パチンコホール業界では、1980年に登場した「フィーバー機」が第3次パチンコブームを引き起こす一方で、遊技者に対してさまざまな弊害をもたらすことになったため、1981年から85年にかけて、警察による指導とパチンコ業界による自主規制が行われた。それによりホール業界では遊技機の射幸性に依存した経営方針を改善する必要に迫られた。こうして先進的ホール企業では、これを契機にしてサービス業としてふさわしいホール経営のあり方を模索するようになる。ずなわちホール企業による「経営改革」が進められ、1990年代に本格化し、今日に至る。とはいえ、経営改革のい重要性と必要性が強調されるようになって10年以上が経過した今日でも、その重要性を認識し実行するホール企業は一部に限られているのが現状である。本稿ではホール業界において、今日でもなお経営改革がホール企業全体では十分に実施されているわけではないという事実に着目し、なぜパチンコ業界の健全化に向けた取組みであるはずの各ホール企業による経営改革が全体的に浸透していないのか、つまり経営改革の抑制要因を探ることを目的としている。
著者
福田 智子 フクダ トモコ Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.35-56, 2015-02-18

研究ノート(Note)『古今和歌六帖』は、約四千五百首の歌を、二十五項目、五百十七題に分類した類題和歌集である。収載歌には、『万葉集』『古今集』『後撰集』など、出典の明らかな歌もある一方、現在では出典未詳と言わざるを得ない歌もある。本稿では、「朝顔」から「葵」までの題に配されている出典未詳歌、九首について注釈を施す。
著者
矢野 環 岩坪 健 福田 智子 ヤノ タマキ イワツボ タケシ フクダ トモコ Yano Tamaki Iwatsubo Takeshi Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.57-85, 2015-02-18

資料(Material)竹幽文庫蔵『源氏千種香』は、『源氏物語』五十四帖にちなんだ五十四種類の組香の作法を記した、安永二年(一七七三)の自叙をもつ伝書である。本稿では、まず、蛍香から藤袴香を翻刻し、次に、これらの巻の内容について、先行する菊岡沾涼著『香道蘭之園』所収本(元文二年〈一七三七〉頃成立)と比較し、『源氏物語』およびその梗概書や注釈書との関わりを考察する。巻末には、当該箇所の影印を付す。
著者
鍛冶 博之 カジ ヒロユキ Kaji Hiroyuki
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.75-104, 2014-08-29

論説(Article)本稿の目的は、レジャーの商品史的考察のひとつとして日本における代表的なレジャーであるパチンコを取り上げ、パチンコの出現と普及の経緯、日本社会で普及した背景(海外で普及していない背景)、日本社会にもたらした影響を考察し、ランドマーク商品としての可能性を模索することである。第1章では、戦前期に注目し遊技機の起源とパチンコが日本社会で誰によって、いつ頃、どこで登場したのかを考察する。第2章では、戦後期に注目しパチンコ産業史の動向を主要な出来事に注目して概観する。第3章では、なぜパチンコが日本社会で普及したのか(逆になぜ海外では普及していないのか)について考察する。第4章では、パチンコが日本社会に及ぼした影響を考察する。そして最後に、パチンコがランドマーク商品とみなせるのか否かについて検討する。Pachinko is one of Japanese leisure activities and is regarded as the typical Japanese culture. The market scale of Pachinko industry in Japan amounts to about twenty trillion yen. It occupies about thirty percent in Japanese leisure industry. The purpose of this paper is to clarfy the detail of Pachinko's appearance, the reason why Pachinko can spread in Japan (in other words ; the reason why it can't spread in foreign countries), and the influence which it has on Japanese society, and to study whether Pachinko can be regarded as the Landmark Commodity or not.
著者
福田 智子
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.19-37, 2014-02

『古今和歌六帖』は、約四千五百首の歌を、二十五項目、五百十七題に分類した、我が国初の類題和歌集である。古来、兼明親王や源順が編者に想定されており、貞元・天元年間(九七六〜九八二)頃の成立かと考えられている。作歌の手引き書を意図した歌集であるが、和歌のみならず、『源氏物語』をはじめとする物語などの文学作品にも、少なからぬ影響を与えたと見られる。収載歌には、『万葉集』『古今和歌集』『後撰和歌集』や私家集・歌合など、出典の明らかな歌もある一方、現在では出典未詳と言わざるを得ない歌も多く、それらの歌数は、収載歌の約四分の一を占める。本稿では、それらの出典未詳歌のうち、第六帖の「芹」から「青葛」までの題に配されている歌、九首について注釈を施し、表現のあり方を考察する。なお、底本は、『新編国歌大観』の底本である書陵部蔵桂宮本を用い、江戸期の流布本である寛文九年(一六六九)版本を含めた九本の伝本を視野に入れた本文異同を示す。
著者
中山 俊
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.83-108, 2014-02

1887年3月30日,フランスにおいて建造物と美術品の保護にかんする法律が初めて成立した。歴史的,美術的見地から「国民の利益」を有する不動産と動産,いわば歴史的記念物を指定することで,中央政府の許可のない修復工事,譲渡等を抑止することが立法の目的であった。以後,地方の学術団体は,指定するに値する文化遺産を推薦するよう求められた。トゥールーズでは,郷土史家団体のフランス南部考古学協会(SAMF)がそれに対応した。彼らは芸術の町としての過去の栄光を誇り地元の作品を保護するため,トゥールーズ独自の建造物,美術品をも指定しようとした。しかし,とくに動産にかんしては,指定に対する所有者の消極的な態度によりSAMFは情報を十分に収集することができなかった。「国民の利益」にこだわる政府と地方の連携もまた容易ではなかった。それでも,指定された建造物,美術品はSAMFが推薦したものであった。1887年法に基づいて行われた指定事業は,文化遺産を「大きな祖国」の国民芸術として保護するためのものでは必ずしもなかった。郷土史家は指定を通じて,「小さな祖国」に特有の文化遺産の保護に貢献したのである。
著者
夫 鍾閔 Jongmin Boo
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.57-84, 2021-11-30

本論文は,丸山眞男の思想をめぐる言説を取り上げて,そこにおいてどのような観点から,何が問題とされてきたかを検討するものである。まず,国民国家の問題点に積極的に取り組んで丸山を批判する議論を検討し,そこで丸山が国民国家論の思想家の代表として標的にされた理由を考察した。その後,国民国家批判の潮流と距離を置きながら丸山思想の意義を見出す諸解釈を検討したが,こうした議論が〈国民国家批判としての丸山批判〉から丸山をどのように救い出しているのかを確認した。これらの解釈は国民国家の問題性を認識しながらも,丸山と国民国家を分離させようとするが,そこには,自由主義と民主主義の対立という契機が働いている。しかし,それらの主張を丸山のテキストに即して検証したところ,その解釈には論理的な難点がある。その点,丸山のテキストの読解としては,丸山の国民国家論を一貫したものとして捉えたということで,国民国家批判論者たちによる丸山論のほうがより適切だったと結論付けると同時に,丸山の国民国家論に再解釈の余地があることも明らかにした。
著者
鍛冶 博之 Hiroyuki Kaji
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.49-76, 2013-05-31

パチンコホール経営では、遊技球一球あたり4円で貸し出す「4円パチンコ」が主流であったが、2000年代半ば以降、遊技球を一球当たり4円未満で貸し出す営業形態として「低貸玉営業」が登場し、特に遊技球一球あたり1円で貸し出す「1円パチンコ」が注目を集めるようになった。今や低貸玉営業はホールの経営戦略にとって不可欠な要素であり、4円パチンコに続く強力な市場を形成しつつある。本稿では、パチンコホール企業が2006年頃より展開するようになり今日のホール企業経営の主要戦略のひとつと位置付けられる低貸玉営業に注目し、低貸玉営業が登場して全国に普及した経緯とその背景を明らかにすることを目的とする。第1章では史的経緯、第2章では普及背景について考察する。
著者
鍛冶 博之 Hiroyuki Kaji
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
no.83, pp.99-125, 2009-02-28

本稿の目的は、第1に、小売・流通業界の大手企業であった株式会社ダイエーがパチンコホール事業を展開するようになった歴史的経緯を解明すること、第2に、1980年代後半からパチンコ業界の健全化の一環として展開される、ホール業界での「経営改革」にもたらした影響を考察すること、以上二点である。なお本稿では、ダイエーが日本ドリーム観光への経営支援と買収を行った時期(1980年代)と、株式会社パンドラを子会社化し、ホール業界への本格的参入を果たした時期(1990年代前・中期)に着目する。