著者
東風谷 太一 Taichi Kochiya
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.161-189, 2020-02

1844年バイエルン王国の首都ミュンヒェンにおいて、ビール価格の高騰をきっかけに発生したビール騒擾は、その2年後にビール・ボイコットへと運動形態を変容させる。ドイツ地域では最初期の事例と考えられるボイコットへと、民衆運動が移行した歴史的要因を、18/19世紀転換期に頻発した職人蜂起・食糧騒擾との連続性、およびビールをめぐる都市の言説空間という視点から検討する。論説(Article)
著者
村上 亮 Ryo Murakami
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.133-159, 2020-02-28

第一次世界大戦の直接的な契機となったサライェヴォ事件の犯人,セルビア人青年ガヴリロ・プリンツィプの評価については「英雄」と「テロリスト」のあいだで一致をみていない。これは、長年にわたり続いている第一次大戦の開戦責任問題に深く関わる問題といえる。本稿は,このようなプリンツィプの捉え方の変遷をたどるとともに,近年,開戦責任論争において批判的に論じられるセルビアの動きを分析するものである。
著者
中井 義明
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.17-44, 2006-09

スパルタの覇権がレウクトラ以降解体していく政治過程を分析した。スパルタと同盟諸国、スパルタと正面から対立し自らの影響力を中部ギリシアやペロポネソスに拡大しようとしたボイオーティア、ペロポネソスにおけるスパルタの伝統的な競争国アルゴス、テーバイの台頭に不信感を募らせスパルタとの提携に傾いていったアテーナイ、の外交行動の分析を通じてその背後にある党派の問題を解明しようとした。スパルタと同盟諸国を結び付けていたのはそれぞれの政治指導者間の個人的な友情と同志意識、民主派に対する敵意と民主革命に対する恐怖感の共有であった。スパルタが民主派に対する安全を保障している限り、スパルタの覇権のもとにあることは意味があった。しかしレウクトラ以降スパルタがそのような保障を提供し得なくなった時、同盟諸国は独自に安全保障の道を模索するようになる。そのことが同盟と覇権の解体をもたらしたのである 。 スパルタの能力の欠如が帝国の解体の原因であった。ボイオティアではエパメイノンダスの政策に反対するメネクレイダスが緊張をもたらしていたし、アルゴスではスキュタリスモスの革命騒ぎによって大混乱が生じていた。アテーナイでは重要な政策を指導したのはカッリストラトスであった。彼はテーバイへの不信からスパルタとの提携を推奨し、スパルタとの連携によってテーバイを抑制しようとしたのである。This paper has treated the political process of the demolition of Spartan hegemony since Leuctra. Sparta, her allies, Argos, Athens and Boiotia are searched for. Relations between diplomacy and factional strife in these states are analized. Spartans like Agesilaos had friendship and comradeship with oligaichic leadres of her allies, and shared their distrust and hostility toward the democrats and fear of democratic revolution. Sparta was the guardian of the oligarchs and gave them shield. But she had decreased her power and prestige since Leuctra. Epameinondas's two invasions made clear her inability. She could not offer her allies enough support any longer. So the oligarchs of her allies had to search for another way. Epameinondas offered them such way. Boiotia allowed oligarchic constitution of Spartan allies and leadership of the oligarchs. He requested them peace with Boiotia and did not demand the other. Therefore, allies seceded from the alliance with Sparta. The lack of ability of Sparta has destroyed her empire. In Athens, the victory of the Thebans stirred up the caution of the Athenians who had fought severely against Sparta during the Boiotian war. Athens has inclined to cooperation with Sparta to control the threat from the north. It was Kallistratos to have guided this new policy. In Argos, for the revolution which is called Skytalismos, pandemonium was caused in Argos. Demos of Argos killed rich people first, and executed leaders who had agitated the murder next. This incident astonished coetaneous people. In Boiotia, Epameinondas and his companions were obtaining full trust among the Boiotians. The oligarchs as a political power had disappeared. However, the opposition existed. Menekleidas criticized Epameinondas' act on his own authority. His voice had the influence. Thus, the faction and the factional strife had exerted a strong influence on the policy of states.
著者
植田 知子 Tomoko Ueda
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-16, 2013-05-31

杉浦家は寛文3年(1663)創業の、呉服太物小間物類を取扱った京都の商家(屋号、大黒屋)である。同家には江戸期に作成された2種類の家法がある。1つは3代杉浦三郎兵衛利軌(法名、宗夕。1702~44)が記した「定目」で、もう1つは4代杉浦三郎兵衛利喬(法名、宗仲。1733~1809)が記した「家内之定」「家業之定」である。これらはこれまでに、岡光夫・宮本又次・藤田彰典氏らが商家の家訓として紹介しているが、三氏の紹介した家法にはその条目数や内容に違いが認められる。本稿はその理由について検討したものである。
著者
森田 雅憲 Masanori Morita
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.3-30, 2020-08-31

私的所有権の成立過程に対しルーマンの社会理論に基づきながら推測的説明を与えたものである。社会契約論との比較を行った後、環節分化社会から組織システムを経て社会システムとして私的所有権が成立する過程を説明している。
著者
矢野 環 福田 智子 ヤノ タマキ フクダ トモコ Yano Tamaki Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.23-31, 2020-05-31

本稿は、「《資料》 竹幽文庫蔵『香道籬之菊』の紹介―和歌を主題とする組香(一)―」(『社会科学』第46巻第3号、二〇一六年一一月)、「同―同(二)―」(『社会科学』第46巻第4号、二〇一七年二月)、「同―同(三)―」(『社会科学』第47巻第1号、二〇一七年五月)、「同―同(四)―」(『社会科学』第47巻第2号、二〇一七年八月)、「同―同(五)―」(『社会科学』第47巻第3号、二〇一七年十一月)、「同―同(六)―」(『社会科学』第47巻第4号、二〇一八年二月)、「同―同(七)―」(『社会科学』第48巻第1号、二〇一八年五月)、「同―同(八)―」(『社会科学』第48巻第2号、二〇一八年八月)、「同―同(九)―」(『社会科学』第48巻第3号、二〇一八年十一月)、「同―同(十)―」(『社会科学』第48巻第4号、二〇一九年二月)、「同―同(十一)―」(『社会科学』第49巻第1号、二〇一九年五月)、「同―同(十二)―」(『社会科学』第49巻第2号、二〇一九年八月)、「同―同(十三)―」(『社会科学』第49巻第3号、二〇一九年十一月)、「同―同(十四)―」(『社会科学』第49巻第4号、二〇二〇年二月)に引き続き、竹幽文庫蔵『香道籬之菊』所載の組香について、とくに和歌を主題とする組香を対象に、翻刻と考察をおこなうものである。本稿では、数の巻から、花睡香を取り上げた。これにて、「竹幽文庫蔵『香道籬之菊』の紹介―和歌を主題とする組香―」と題する一連の資料紹介を終える。資料(Material)
著者
瀬岡 和子
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-34, 2014-05

論説(Article)戦後日本の小売業態革新に貢献したひとりとして、昭和30年代における吉田日出男の意識と行動に焦点を当てて、彼が日本初のスーパーマーケット「丸和フードセンター」を誕生させていく経緯と,その後、スーパーマーケットのボランタリーチェーン活動=「主婦の店」運動を展開していく過程を、長戸毅(日本NCR)や喜多村実(公開経営指導協会)との関係に注目しながら,ミクロの視点から明らかにした。また、ダイエー創業当時の中内功と吉田との交流関係や、中内が吉田の主婦の店運動をどのように見ていたのかについて考察した。タイトル、主題、内容記述中の「功」は「工」と「刀」
著者
加納 啓良 Hiroyoshi Kano
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.1-28, 2019-08

1998年5月のスハルト政権崩壊後20年間の民主化(レフォルマシ)時代におけるインドネシア経済の変容を、農林水産業、鉱業、製造工業の各分野について概観したうえ、建設業、運輸・通信業、金融業に代表される新しい高成長部門の内容に触れ、対外貿易、外国直接投資、国際収支などの推移についても検討を加えて、その構造的特徴を解明する。論説(Article)
著者
矢野 環 福田 智子 ヤノ タマキ フクダ トモコ Yano Tamaki Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.25-45, 2019-08-30

資料(Material)本稿は、「《資料》 竹幽文庫蔵『香道籬之菊』の紹介」(『社会科学』第46巻第2号、2016年8月)を受け、「同―同(三)―」(『社会科学』第47巻第1号、2017年5月)、「同―同(四)―」(『社会科学』第47巻第2号、二〇一七年八月)、「同―同(五)―」(『社会科学』第47巻第3号、二〇一七年十一月)、「同―同(六)―」(『社会科学』第47巻第4号、二〇一八年二月)、「同―同(七)―」(『社会科学』第48巻第1号、二〇一八年五月)、「同―同(八)―」(『社会科学』第48巻第2号、二〇一八年八月)、「同―同(九)―」(『社会科学』第48巻第3号、二〇一八年十一月)、「同―同(十)―」(『社会科学』第48巻第4号、二〇一九年二月)、「同―同(十一)―」(『社会科学』第49巻第1号、二〇一九年五月)に引き続き、竹幽文庫蔵『香道籬之菊』所載の組香について、とくに和歌を主題とする組香の翻刻と考察をおこなうものである。本書は、礼・楽・射・御・書・数の6巻6冊から成り、177の組香が掲載されているが、その半数近くは、和歌および歌集の序文など、特定の作品を素材として組み立てられている。そこで、本稿では、書の巻から、三舟香、小町香の、計二つの組香を取り上げた。
著者
福田 智子 フクダ トモコ Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.23-41, 2019-02

研究ノート(Note)『古今和歌六帖』は、約四千五百首の歌を、二十五項目、五百十七題に分類した類題和歌集である。収載歌には、『万葉集』『古今集』『後撰集』など、出典の明らかな歌もある一方、現在では出典未詳と言わざるを得ない歌もある。本稿では、「鳥」から「鶴」までの題に配されている出典未詳歌、十首について注釈を施す。
著者
金 杭
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.109-122, 2014-08

記録(Proceeding)「植民地主義のなかの帝国」同志社大学人文科学研究所国際学術シンポジウム「磁場としての東アジア」第2回記録Empires at the heart of colonialism, Proceedings of International Symposium "East Asia as a Magnetic Field" (2)翻訳:沈正明
著者
鍛冶 博之 カジ ヒロユキ KajiHiroyuki
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.159-188, 2016-02

論説(Article)本稿は、商品史の事例分析のひとつとして、近世以来の徳島の代表的な特産品である阿波藍を取り上げることを目的とする。第1章では、藍の起源、阿波藍の出現経緯、阿波藍の生産方法、近世に大量生産された諸要因、阿波藍をめぐる商業活動、消費方法について言及する。第2章では、徳島藩による阿波藍の保護奨励政策を概観する。第3章では、阿波藍が近世の徳島社会に及ぼしたさまざまな影響を10項目列挙し考察する。The purpose of this paper is to analyze the detail of the Awa-Indigo from a view-point of Commodity History (For example, studies on the process of the appearance and spread, the way of production and consumption, the factors of mass production, and social influence), which has been the one of special products since the modern times in Tokushima.
著者
矢野 環 福田 智子 ヤノ タマキ フクダ トモコ Yano Tamaki Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.1-26, 2018-11-30

資料(Material)本稿は、「《資料》 竹幽文庫蔵『香道籬之菊』の紹介」(『社会科学』第46巻第2号、2016年8月)を受け、「同―同(三)―」(『社会科学』第47巻第1号、2017年5月)、「同―同(四)―」(『社会科学』第47巻第2号、二〇一七年八月)、「同―同(五)―」(『社会科学』第47巻第3号、二〇一七年十一月)、「同―同(六)―」(『社会科学』第47巻第4号、二〇一八年二月)、「同―同(七)―」(『社会科学』第48巻第1号、二〇一八年五月)、「同―同(八)―」(『社会科学』第48巻第2号、二〇一八年八月)に引き続き、竹幽文庫蔵『香道籬之菊』所載の組香について、とくに和歌を主題とする組香の翻刻と考察をおこなうものである。本書は、礼・楽・射・御・書・数の6巻6冊から成り、177の組香が掲載されているが、その半数近くは、和歌および歌集の序文など、特定の作品を素材として組み立てられている。そこで、本稿では、御の巻から、小男鹿香、高砂香、待乳山香、月宴香、花野香、白梅香、隅田川香の、計七つの組香を取り上げた。