著者
本岡 拓哉 Takuya Motooka
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.25-53, 2015-11-26

戦後日本の都市の河川敷には居住地が存在していた。しかし,戦後復興や都市化が進展する中で,いつしかこうした地区は消滅していくことになった。本稿は,こうした河川敷居住地のうち、行政からの土地の払い下げという形で集団移転を成し遂げた,広島市を流れる太田川放水路沿いに存在した旭橋下流地区を取り上げ,集団移転を可能とさせた居住者の連帯の状況やその背景についてアプローチするものである。
著者
友寄 元樹 Motoki Tomoyose
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.151-176, 2023-02-28

本稿の目的は,ニューカレドニアの日本人移民史を再考することである。とりわけ,19世紀フランスの流刑と日本人移民を連続した歴史的出来事として捉え,近代世界システムの形成に伴う余剰労働力の「放逐」のプロセスとして描写する。本稿では,19 世紀フランスにおける都市問題を取り上げ,流刑へと発展する過程を見ていく。同時に,フランスが太平洋に帝国領土を拡張する流れを辿り,ニューカレドニア流刑地が誕生するプロセスを明らかにする。この時,フランスの都市問題と帝国拡大の思惑が重なるのである。そして,ニューカレドニア流刑の理想と現実を確認し,日本人移民到着に至る歴史を示す。第一回移民の募集は,明治政府の後ろ盾のもと,九州の男性を対象に約一ヶ月という短期間で行われた。本研究はこれまで個別に扱われてきたニューカレドニア流刑と日本人移民の歴史を接合させ,一国史的に認識されてきたニューカレドニア史を描き直す試みである。
著者
岩坪 健 Takeshi Iwatsubo
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.1-17, 2014-02-28

楽器の中には、男性向け(または女性向け)の楽器がある。ジェンダーの考えによれば、男性性の楽器と女性性の楽器である。源氏物語には四種類の絃楽器が描かれている。それらを考察すると、男性性と女性性の楽器に分類できる。
著者
鍛冶 博之 Hiroyuki Kaji
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
no.78, pp.23-47, 2007-03-15

28兆円近くの市場規模を誇るパチンコ業界は、今や日本を代表する巨大産業のひとつである。しかしその成長・発展の産業史は、法的規制や偏見を含めた数々の課題を抱え込みながら、時にそれらを克服し、時に妥協点を見出しながら形成されてきた歴史でもある。そしてそれらの課題のなかには、今なお未解決のまま残されているものが少なくない。パチンコ業界全体が「業界の健全化」をいっそう推進し、業界改革を実現するためには、個別ホール企業による経営改革のほかに、業界全体が長年にわたって抱え続けてきた諸問題に真正面から取組んで解決して聞く積極的姿勢が必要とされるのである。筆者は、特に1980年代以降のパチンコホール業界における経営改革に関する研究を進めているが、本稿はこの研究を補足する役割をもつ。つまり、ホール業界が経営改革を実現させていくうえで解決すべき従来からの課題を取り上げてその問題点と対策法を、本号と次号の2回に分けて論じていきたいと考えている。ただし業界が抱える課題は多岐にわたるので、本稿では「経理の不透明性に関する課題」「換金システムに関する課題」「パチンコ依存症に関する課題」「ゴト師と不正機器に関する課題」「競合の激化に関する課題」「『パチンコ』という言葉自体に関する課題」の6点に絞って分析を進める。
著者
福田 智子 Tomoko Fukuda
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1-21, 2021-11-30

『源氏物語色紙画帖』(請求記号:721.2/G9216、資料番号:166700140)の名称で、同志社大学文化情報学部に所蔵されている本書は、『源氏物語』の本文と画が、一帖につき一枚ずつで計十二帖分、二十四枚収められている。取り上げられている帖は、桐壺・若紫・紅葉賀・花宴・明石・蓬生・絵合・初音・若菜下・夕霧・橋姫・早蕨であり、『源氏物語』の帖の順序に沿っている。本稿は、これらの帖の本文と画について、他の『源氏物語』伝本および源氏絵と比較検討しながら、本書を紹介、考察するものである。資料(Material)近世から近代に至る日本伝統文化の分野横断的研究とデータサイエンス教材への活用
著者
植村 正治 Shoji Uemura
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.49-81, 2021-08-31

日本の経済発展の要因の一つである技術移転にとって工学系高等教育機関が重要だという観点から,工部大学校と,同校と併存していた東京大学理学部における機械工学教育を検証してきた。今後,両者の合併により設立された工科大学における教育について検証していくが,本稿は,工部省を巡る政治史や経済史で利用されてきた多数の建言書などを顧みることにより,工部省解体と工科大学設立の経緯と政治・社会的背景を検討した。研究ノート(Note)
著者
岩坪 健 Takeshi Iwatsubo
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.19-33, 2021-02-28

同志社大学所蔵「源氏物語色紙」を翻刻して、現代語訳と解説を付けた。資料(Material)
著者
北村 陽子
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.55-75, 2010-05

第二次世界大戦後のドイツにおける戦争障害者をめぐる状況を確認することは,大変困難な作業となる。なぜなら,第二次世界大戦直後のドイツは,四つの国によって分割統治されており,それぞれの占領地区では戦争障害者を含む戦争によって損害を被った犠牲者への対応が全く違っていたことに加えて,こうした違いに起因して,1949年に成立した二つのドイツ国家の政策が異なっていたためである。これらの方針の違いを理解するには,それ以前の,戦間期における戦争犠牲者(おもに第一次世界大戦の戦争障害者・戦没兵士遺族)をめぐる援護政策や彼らの置かれた境遇をふまえた上で精査し評価することが必要である。本稿では,第二次世界大戦後の戦争障害者をめぐる状況を理解するための準備作業として,戦間期の戦争障害者の社会的な位置を描き出すことを課題とし,先行研究の成果を整理することとする。その際には,戦争障害者援護を規定する法令,戦争障害者の意見を代弁する組織,戦争障害者の自己意識と他者からの認識という三つの分野に限定して行なう。
著者
福田 智子 Tomoko Fukuda
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1-25, 2020-11-30

本書は、「寳暦十年秋 藤原忠晟」という奥書をもつ百首歌である。外題・内題もない。『新編国歌大観』を検する限り重複する歌はなく、また、『類題和歌集』にも同じ歌は見当たらない。近世の百首歌については、未だ紹介されていないものが少なくないことが想定される。本書もその中の一書に過ぎないが、本百首歌の題が、おおむね宝治百首題に一致すること、宝暦十年(一七六〇)秋という年代が明記されていることなどから、宝治百首の近世における享受の一端を垣間見る史料にはなり得よう。そこで、本書を仮に藤原忠晟『百首』と称して紹介する。資料(Material)
著者
鍛冶 博之 Hiroyuki Kaji
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.121-146, 2018-05-31

1980年代以降、ベトナムは著しい経済成長を遂げ、多くの商品がベトナム国民の日常生活に普及するようになった。特にオートバイは日々の移動手段として購入され利用されており、ベトナム社会におけるランドマーク商品のひとつとして位置づけられよう。本稿は、発展途上国を対象とする商品史 研究の一例として、1990年代よりベトナムで急速に普及し、今日もなお生活者の不可欠な生活必需品として位置付けられるオートバイに注目し、オートバイが1990年代以降に急速に普及した経緯と背景を明らかにすることを目的とする。
著者
柴田 広志
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.93-114, 2014-11

セレウコス朝の第6代国王アンティオコス3世(位:前223〜187年)は,その治世初期に多くの内憂と外患への対処を迫られた。そのひとつが,小アジアで反旗を翻した王族小アカイオス(以下アカイオス)の反乱である。この有力王族は,アンティオコス3世の兄セレウコス3世の暗殺時の混乱収拾後に王に推戴されたが辞退,後に反乱を起こした際には麾下の軍の反対によって頓挫した。同時代に類例をほとんど見ないこの事例から,以下の事実が指摘できる。まず,王族による王国統治の分担という,セレウコス朝の支配体制が抱えていた問題である。このため,傍系の王族であっても,王家直系の男子の経験や年齢が不足とみられた時,他の王族が推戴される,あるいは反乱を起こす可能性があったのである。推戴直後にアカイオスが王位を辞退したのは決して忠誠心のあらわれではなく,王家直系のアンティオコス3世に取って代わる意志を当初から有し続けたものと思われる。後の王位宣言は,その現れである。これに対して,王位を継いだアンティオコス3世の軍事能力,とりわけ北方の蛮族に対する軍事的功績は,アカイオスが獲得し得なかったものであり,若い王の権威確立を可能にするものだった。アカイオスとアンティオコス3世の決定的な差は,セレウコス朝王家内における直系・傍系の差のみならず,バルバロイすなわち蛮族とされた集団に対する戦果の有無にあったことを推測し得るのである。
著者
김 혜영 김 태성 キム ヘヨン キム テソン 金 惠英 金 泰成 Kim Hye-young Kim Tae-seong
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.5-29, 2014-05

記録(Proceeding)北に渡った言語学者・金壽卿 (キムスギョン) (1918-2000)の再照明 : 人文科学研究所国際学術シンポジウム「磁場としての東アジア」第4回記録Revisiting North Korean linguist Kum Sugyǒng (1918-2000) : proceedings of International symposium "East Asia as a Magnetic field" (4)
著者
矢野 環 福田 智子 ヤノ タマキ フクダ トモコ Yano Tamaki Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.1-22, 2020-02

資料(Material)本稿は、「《資料》 竹幽文庫蔵『香道籬之菊』の紹介―和歌を主題とする組香(一)―」(『社会科学』第46巻第3号、二〇一六年一一月)、「同―同(二)―」(『社会科学』第46巻第4号、二〇一七年二月)、「同―同(三)―」(『社会科学』第47巻第1号、二〇一七年五月)、「同―同(四)―」(『社会科学』第47巻第2号、二〇一七年八月)、「同―同(五)―」(『社会科学』第47巻第3号、二〇一七年十一月)、「同―同(六)―」(『社会科学』第47巻第4号、二〇一八年二月)、「同―同(七)―」(『社会科学』第48巻第1号、二〇一八年五月)、「同―同(八)―」(『社会科学』第48巻第2号、二〇一八年八月)、「同―同(九)―」(『社会科学』第48巻第3号、二〇一八年十一月)、「同―同(十)―」(『社会科学』第48巻第4号、二〇一九年二月)、「同―同(十一)―」(『社会科学』第49巻第1号、二〇一九年五月)、「同―同(十二)―」(『社会科学』第49巻第2号、二〇一九年八月)、「同―同(十三)―」(『社会科学』第49巻第3号、二〇一九年十一月)に引き続き、竹幽文庫蔵『香道籬之菊』所載の組香について、とくに和歌を主題とする組香を対象に、翻刻と考察をおこなうものである。本稿では、数の巻から、曲水香、寿浮木香、春日山香の計三つの組香を取り上げた。
著者
矢野 環 福田 智子 ヤノ タマキ フクダ トモコ Yano Tamaki Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1-27, 2019-11

資料(Material)本稿は、「《資料》 竹幽文庫蔵『香道籬之菊』の紹介」(『社会科学』第46巻第2号、2016年8月)を受け、「同―同(三)―」(『社会科学』第47巻第1号、2017年5月)、「同―同(四)―」(『社会科学』第47巻第2号、二〇一七年八月)、「同―同(五)―」(『社会科学』第47巻第3号、二〇一七年十一月)、「同―同(六)―」(『社会科学』第47巻第4号、二〇一八年二月)、「同―同(七)―」(『社会科学』第48巻第1号、二〇一八年五月)、「同―同(八)―」(『社会科学』第48巻第2号、二〇一八年八月)、「同―同(九)―」(『社会科学』第48巻第3号、二〇一八年十一月)、「同―同(十)―」(『社会科学』第48巻第4号、二〇一九年二月)、「同―同(十一)―」(『社会科学』第49巻第1号、二〇一九年五月)、「同―同(十二)―」(『社会科学』第49巻第2号、二〇一九年八月)に引き続き、竹幽文庫蔵『香道籬之菊』所載の組香について、とくに和歌を主題とする組香の翻刻と考察をおこなうものである。本書は、礼・楽・射・御・書・数の6巻6冊から成り、177の組香が掲載されているが、その半数近くは、和歌および歌集の序文など、特定の作品を素材として組み立てられている。そこで、本稿では、書の巻から、牡丹香、和歌浦香、観菊香の、計三つの組香を取り上げた。