著者
佐藤 真人
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.101-142, 2008-12-05
著者
松尾 精彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
関西大学経済論集 = Economic review of Kansai University (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.93-114, 2016-10

2000年10月5日の第一回抽選から始まった番号選択式の宝くじLOTO6も,去年2015年9月7日には第1000回目の抽選を迎えた.この宝くじは,購入者が1~43の数字の中から6個の数字の組合せを選び,主催者が用意した抽選器が抽出する6つの番号(本線番号)のうち最低3個同じ番号が共有されれば賞金がもらえる.この抽選器を製作した業者や抽選器を操作する主催者が未熟であったり,不正を犯したりしない限り,この宝くじの本選番号を当てることは不可能である.ましてや,当選確率の高い組合わせを見つけることも同様に不可能である.それにもかかわらず,いくつかの雑誌やWebサイトで本選番号の予選法が述べられている.これらの予選法は,本選番号となりうるいずれの組合せも互いに独立で等しい確立で選ばれることを無視し,何らかの傾向があると主張するものである. 大抵は,ある種の性質を有する組合せを選ぶと当選する確立が高くなると主張する.しかしどの方法も,その事象の確立が高いだけのことで,その事象が数多く生起しても何ら不思議はないものである.これらの予測法は多岐に渡り,事象の起こる確率を計算することが困難であるものがほとんどであるので,このような俗説についてここでは述べない.あえて言っておくと,3回の異常な抽選を除いた997回の抽選で期待される1等の口数は2606口であるのに対し,実際の当選口数は2521口数でしかない.つまり,予想は役に立たないということだ.ここではあくまでも,抽選においては,どの本選番号も独立で同確立で選ばれることを仮定して計算を行う.この論文で議論するのは,ロト6購入者の番号の選び方に傾向があるのかを調べることである.雑誌の情報などではなく,購買者集団が自らの意思で,どのような組合せを選ぶのかを調べることである.機械(抽選器)には傾向はないが,人には傾向がある.その傾向を明らかにすれば,他の人々が選びそうな組合せを避けることができ,仮に1等が当たった場合には賞金を独り占めにする確立が高まる.
著者
中澤 信彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3-4, pp.249-271, 2015-03-10

本稿の課題は、ハイエクがバークをどのように読んだのか、その読解の詳細を追跡することによって、ハイエクの保守主義観の特質と意義を明確化することにある。ハイエクが残したバークへの言及は分量的に決して少なくないが、断片的なものばかりである。そこで本稿では、ハイエクがバークの膨大なテクスト群のうちの何を参照したのかにとりわけ着目しつつ、ハイエクの主要著作におけるバークへの言及の有様を時系列的に整理する。本稿の構成は以下の通りである。第1節では論文「真の個人主義と偽りの個人主義」におけるバークへの言及を検討する。第2節では壮年期の主著『自由の条件』を検討し、第3節では『自由の条件』の補論「なぜ私は保守主義者ではないのか」を検討する。第4節では『自由の条件』と並ぶ後年の主著『法と立法と自由』を検討する。最後にこれまでの議論を整理し、「つまるところ、ハイエクはバークをどのように読んだのか?」という問いに、できるだけ明快な答えを与えたい。
著者
上久保 敏
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.81-88, 2002-06-01
著者
加勢田 博
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.17-33, 2012-06-10

1670年にチャールズ2世によって与えられた特許に基づいて、毛皮貿易の独占のみならず行政権を含む種々の特権を有する植民地支配会社として設立されたハドソン湾会社が、1867年にカナダが自治領となって特許をはじめそのすべての特権を失った後、どのようにして今日まで生き残り繁栄してきたのかを概観したものである。本論文は、17世紀に設立された同様な植民地会社はすべてその姿を消してしまった中で、この会社だけが21世紀まで繁栄を続けることができた原因の幾つかを明らかにしている。
著者
鈴木 善充
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.101-124, 2012-06-10

相続資産が家計資産に占める割合はアンケート調査を利用した既存研究によると、3割から4割程度である。シミュレーション分析をおこなった場合、結果は経済想定や相続資産からの収益の現在価値をライフサイクル資産に含めるかどうかという解釈によって異なる。公開データからは、高所得層に資産が集中していること、現役サラリーマンよりも引退老人世帯が多くの資産を保有していること、高齢者世帯でも収入の増加にしたがって、また住宅・宅地資産が高くなるにしたがって貯蓄残高が増加していることがわかった。アンケート調査から、相続を経験している高所得層は、相続財産額が高い結果をえた。また教育投資額と親子間における職業連鎖による階層の固定化がみられた。高い相続をうけている家計が高い教育投資をおこない、子どもが高いレベルの大学に進学していることがわかった。これらをふまえると、控除額の引き下げという相続税強化の方向に改正された2011年度税制改正大綱は評価できる。今回の改正では、最高税率の引き上げが行われたが、改革の方向性としては、むしろ相続税の合法的な節税策を解消させるのが望ましい。世代間の所得・資産移転を通じた格差拡大を防ぐには、民主党の目玉政策であった子ども手当ては現金支給ではなく、現物支給に切り替えるのが望ましい。
著者
橋本 恭之 HASHIMOTO Kyoji 木村 真 KIMURA Shin
出版者
関西大学経済学会
巻号頁・発行日
2013-09-10

第2次安倍政権は、金融緩和、財政支出拡大と成長戦略を組み合わせた「アベノミクス」を推進しようとしている。アベノミクスに対する懸念のひとつが、財政の持続可能性である。本稿では、成長率、税収の伸び率を一定の値に仮定して財政収支を予測する「機械的試算」により財政健全化の可能性を検証した。本稿のシミュレーションでは、仮に名目成長率3 %、名目長期金利が2 % で成長率を下回るという都合のよいケースでも、2050 年度の対GDP 比でみた国債残高は200%を突破し、名目金利が成長率を上回る4 % のケースでは、300%を超えてしまうことがわかった。2020 年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)は、消費税率換算で6.6%程度の赤字が予想される。
著者
植村 邦彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.289-305, 2010-03-10

英語の〈civil society〉は、16世紀末から使われ始めた言葉である。日本語では通常「市民社会」と訳されているが、この言葉は本来アリストテレス『政治学』における「国家共同体」の訳語として英語に導入されたものであり、17世紀のホッブズとロックにいたるまで、この意味で使われた。この言葉の前史と初出時の語義を確認することが、本稿の課題である。
著者
中澤 信彦
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 = Economic review of Kansai University (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.249-271, 2015-03

本稿の課題は、ハイエクがバークをどのように読んだのか、その読解の詳細を追跡することによって、ハイエクの保守主義観の特質と意義を明確化することにある。ハイエクが残したバークへの言及は分量的に決して少なくないが、断片的なものばかりである。そこで本稿では、ハイエクがバークの膨大なテクスト群のうちの何を参照したのかにとりわけ着目しつつ、ハイエクの主要著作におけるバークへの言及の有様を時系列的に整理する。本稿の構成は以下の通りである。第1節では論文「真の個人主義と偽りの個人主義」におけるバークへの言及を検討する。第2節では壮年期の主著『自由の条件』を検討し、第3節では『自由の条件』の補論「なぜ私は保守主義者ではないのか」を検討する。第4節では『自由の条件』と並ぶ後年の主著『法と立法と自由』を検討する。最後にこれまでの議論を整理し、「つまるところ、ハイエクはバークをどのように読んだのか?」という問いに、できるだけ明快な答えを与えたい。
著者
佐藤 真人
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.105-128, 2011-03-10

本稿は、資本主義的蓄積の敵対的性格の一側面の分析として、戦後日本の資本主義的発展に伴う資本利益率格差の推移に実証面から第一次的に接近する。資本利益率は、経済学において伝統的な利潤率とは区別されるが、企業経営分析では一般的であり、当事者の意識により近い点で独自の意義を持つ。また資本利益率の中では、総資本営業利益率、税引き前当期純利益率、及び自己資本営業利益率に注目する。さらに自己資本営業利益率との関係で登場する自己資本比率(=資本/資産=1-負債/資産)、及びその格差にも触れる。 本稿の設問を直裁に表すと、戦後日本の資本利益率、及びその格差は、どのように推移しているか。またそれらは資本主義的発展と、どの様な相関があるかということである。この観点からの観察と分析の結果、資本利益率(及び格差)と経済全体の資本主義的発展を表す諸変数との間に多少の条件付で強い負の相関関係が確かめられる。その単純化した経済的意味は、経済全体の資本主義的発展が急速な時期は資本金規模別資本利益率 格差が縮小する(逆は逆)ということである。
著者
中屋 宏隆 河﨑 信樹
出版者
關西大学經済學會
雑誌
関西大学経済論集 = Economic review of Kansai University (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.197-215, 2014-09

ドイツは、2011年に脱原発を再び宣言した。日本では、その政策実現に向けた動向が注目されている。また、多くの研究文献でも、ドイツの脱原発の動きは検討されており、本稿では、そうした研究史の吸収に加え、これまであまり検討されて来なかったドイツの原子力発電のエネルギー政策上の意義を考察するための研究材料を整理することを目的としている。その結果、ドイツはかつて十分に原発大国と言える状況に陥っていたという事実とドイツのエネルギー政策の中での原子力発電の役割を再検討する必要性が明らかになった。
著者
東井 正美
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.619-635, 2004-11-11

『資本論』第3部第10章「競争による一般的利潤率の均等化。市場価格と市場価値。超過利潤」は、マルクスの草稿が未完成なものであったせいか、十分整理されたものとはいわれがたく、極めて難解な章として知られている。とりわけ、この章の大部分を占めている市場価値論に関して、叙述の順序も前後しているせいか、理解に苦しむ点が少なくない。したがって、市場価値論に関してこれまで種々論議されてきた。主たる論議の的は、市場価値規定に関するものである。すなわち、市場価値が諸商品の総個別的価値の算術加重平均として決定されるという「加重平均規定」と、大量商品の個別的価値によって決定されるという「大量支配的規定」のいずれが「市場価値の正当な規定」なのかという問題であり、もうひとつは「不明瞭の箇所」とか、「曖昧な箇所」とか呼ばれている箇所で、需給関係が市場価格の市場価値からの偏差を説明するとしながらも、需給関係が市場価値の決定に関与すると述べられてあることをどのように理解すべきかという問題である。わたしもこれらの問題についてこれまで試行錯誤を繰り返しながら解明に努めてきた。本稿で、わたしのこれまの理解を総括することにした。
著者
加勢田 博
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.17-31, 2002-06

19世紀のアメリカにおける交通・輸送の発展は、世紀前半においては、河川や運河の航行改良によって、また世紀後半には鉄道によって、工業成長に伴う著しい輸送需要の増大に対応することができた。本論文では、河川輸送が鉄道時代の到来とともにその役割をどのように変化させていったのかを概観する。
著者
若森 章孝
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.27-39, 2000-06

本稿は,第1に,「資本主義の黄金時代」(1945-74)をフォーディズムのロジックによって解明したレギュラシオン理論が,脱フォーディズムのさまざまな試みと冷戦体制の解体という1990年代の文脈の中で急速に進展した経済のグローパリゼーションとそれにともなう「勤労者社会の危機」をどのように理解しているか,グローパリゼーションの進行の中に資本蓄積の新しい源泉と新しい調整様式の萌芽を,それゆえ勤労者社会の新時代の可能性をどのように検出しているか,について考察する。本稿は第2に, 「勤労者社会の危機」をめぐるフランスの論争におげる4つの立場を検討し,グローパリゼーションの下で社会統合を確保するためには,公的討論による価値観の形成という意味での「政治的次元」と新しい市民権(市民権所得)が重要であることを指摘する。
著者
植村 邦彦
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.17-33, 2010-03

英語の〈civil society〉は、16世紀末から使われ始めた言葉である。日本語では通常「市民社会」と訳されているが、この言葉は本来アリストテレス『政治学』における「国家共同体」の訳語として英語に導入されたものであり、17世紀のホッブズとロックにいたるまで、この意味で使われた。この言葉の前史と初出時の語義を確認することが、本稿の課題である。