著者
北原 聡
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.71-86, 2008-09

戦間期の日本では、外資系自動車会社である日本フォード、日本GMによる自動車製造および全国的道路改良による道路状況の改善を背景に、貨物自動車の利用が大都市圏から地方へと拡大した。迅速かつ機動的な戸口から戸口への輸送という鉄道輸送には無い特徴をもつ貨物自動車は、輸送時間と輸送費の点で鉄道より優れていたことから、鮮度の維持が欠かせない生鮮食料品の輸送などに活用され、鉄道の補助輸送のほか鉄道と並行する輸送にも進出して、短距離輸送を中心に国有鉄道と自動車の競合が発生した。貨物自動車輸送業は車両1台を所有する小規模経営が一般的で、荷主の指示により随時随所で輸送を行う貸切営業が大宗をしめ、貨物自動車の急増に伴う競争の中で、輸送業者は種々の営業努力を行いつつ経営を成り立たせていた。
著者
森岡 孝二
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.521-544, 2004-11-11

1980年代以降、19世紀後半から1世紀余り続いた労働時間の短縮の時代が終わり、世界的に労働時間の増加が生じている。アメリカではJ.B.ショアが『働きすぎのアメリカ人』(1991年)において包括的な統計分析を踏まえて、働きすぎの時代が到来したことをいち早く明らかにした。その後、ショアの提起は経済学や社会学における労働時間論議に火をつけ、労働統計や生活時間研究の専門家を巻き込んだ論争を引き起こした。本稿では、ショアの問題提起に始まるアメリカにおける労働時間論争を跡づけ、日本との対比に留意して、アメリカ人の働きすぎの実態とその主要な原因について検討する。その作業からアメリカにおける労働時間の増大は、長時間労働者と短時間労働者への二極分化、女性における職場と家庭のタイム・デバイド、働きすぎと浪費の悪循環などの特徴をもっていることが浮かび上がるだろう。
著者
角山 幸洋
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.665-707, 1988-03-15
著者
加勢田 博
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.17-31, 2002-06-01

19世紀のアメリカにおける交通・輸送の発展は、世紀前半においては、河川や運河の航行改良によって、また世紀後半には鉄道によって、工業成長に伴う著しい輸送需要の増大に対応することができた。本論文では、河川輸送が鉄道時代の到来とともにその役割をどのように変化させていったのかを概観する。
著者
樫原 正澄 赤井 洋子 石川 友美 伊藤 佳代子 佐保 庚生 辰己 住子 森 正子
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.403-460, 2022-03-10

第2次世界大戦以降における大阪府内学校給食の変遷について考察を加えた。それを踏まえ、今後の課題を解決するための視点について論述した。第1としては、「学校給食法」の趣旨に基づいて、学校給食を子どもの成長に資するものとするように、関係者は努めることである。第2としては、学校給食の調理業務の民間委託によって、調理現場において起こっている変化について正確に把握して、必要な対策を講じることである。第3としては、学校給食を考える主体の形成である。
著者
関 弥三郎
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4-5, pp.461-479, 1977-01-25
著者
荒井 政治
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.115-138, 1989-04-30
著者
松尾 精彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
関西大学経済論集 = Economic review of Kansai University (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.87-105, 2017-09

この論文では、結果的にどのチームが効率的に得点をし失点を防いでいたかをグラフィカルに表す方法を提案する。具体的には、同一対戦チーム間の得点を、ランダムに並べ替えて勝敗を再計算する。この作業をすべての対戦について行い、セリーグ・パリーグでの順位を決定する作業を各シーズン10,000回行い、順位の分布を求める。この順位の分布と実際の成績とを比較すれば、どのチームが効率的に得点し失点を防いだかを観察できる。得点をランダムに並べ替える根拠としては、同一対戦チームの得点の相関係数が、150件中3件しか5%有意ではないことが挙げられる。ここでは、各年の得点の相関係数とそのp-値を計算し、得点の並べ替えに意味があることを示し、その並べ替えた結果の順位分布と実際の順位を比較する。
著者
浜野 潔
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3-4, pp.433-444, 2004-11-11

富士川游の古典的著作『日本疾病史』(1912)に掲載された疾病事例に『日本災異誌』(1894)「疫病の部」の事例を加え、古代から近世までの疾病史データベースを作成した。このデータから近世以前の伝染病発生頻度について、次の観察結果が得られた。8世紀から15世紀までは、データの性質を考慮すると頻度に大きな変化はなかったと推定される。16-17世紀には伝染病の頻度が低下しており、この要因については、さらなる分析が必要となろう。一方、18世紀以後、伝染病の発生頻度は大きく上昇するが、これは主に流行性感冒の増加によるものと考えられる。
著者
北川 勝彦
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.53-75, 2006-06-15

1930年代、日本品は新市場アフリカへ進出した。日本品にとって重要な市場となったのは、エジプト、南アフリカ、イギリス領東アフリカ、フランス領アフリカおよびモロッコであった。本研究ノートでは、モロッコ市場への日本品、とくに綿織物と日本茶の進出状況について考察した。日本品の進出を可能にしたのは、カサブランカに開設された領事館における市場調査と通商情報の提供であったが、モロッコをめぐる国際秩序が関係していた。しかし、1938年7月にイギリスとフランスの間で締結された通商条約は1930年代中頃における日本品のモロッコ市場への進出を可能にした国際秩序に影響すると考えられた。
著者
大塚 忠
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.311-345, 2013-03-10

ドイツの公的職業訓練制度を基準に、戦後日本で試みられた技能工養成制度に焦点を当てドイツの制度に近くなるには、どんなところが制度設計上欠けていたのかを「技能工養成規定」と58年職業訓練法を中心に検討した。すでに職業訓練法の体系が構築される時点で、日本の職業訓練は大きくドイツからは離れてしまっていた。企業内養成制度の域を超えるような社会的規制は高度成長の中で失われていったのである。技能向上のために長期のオールラウンドの徒弟的訓練をする必要がなくなったことが背景になっていた。TWIプログラムの企業内定型訓練化がそれを可能とした。
著者
浅田 正雄
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.113-132, 2005-06-15

戦後の日本経済・産業の急成長は大きな謎であった。この要因としては、欧米では、通産省と企業とが一体となる官民協調体制、いわゆる「日本株式会社」によって成し遂げられたものであると批判された。OECDが70年代はじめに、その要因として日本の産業政策に注目し始めて以来、欧米では日増しに産業政策への関心が高まり、わが国以上に実証的・理論的研究が大きく進んだ。ところが、戦後我が国の高度経済成長に果たした通産省の産業政策の評価について、最近、三輪・マークライザーの両氏による『産業政策論の誤解』なる書物が発表された。本稿では、彼らの通説に対する徹底した産業政策論批判論を題材としながら、従来から行われてきた産業政策論の再検討と議論の整理を行うこと主目的にする。そして、産業政策の定義・政策手段に焦点を合わせて、従来からの議論をレビューし産業政策の有効性を検討した。その結果、三輪・ラムザイヤーの彼らの言う通説に対する批判や主張は、一部正しいが、問題があることも判明した。
著者
野坂 博南 NOSAKA Hiromi
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.129-149, 2011-03

本稿では、日本の生産性低迷に伴い、雇用形態別の労働市場がどのように変化し、日本の景気循環にどのような影響を与えたかを一般均衡サーチモデルの枠組みで分析した。カリブレーションの結果、長期的な生産性低下は相対的に解雇費用の低い非正規雇用の増加をもたらすものの、非正規雇用の労働市場の求人倍率は正規雇用に比べて悪化することを示した。また、長期的な生産性低下に伴い景気の変動幅が増幅されることを確認したが、特に非正規雇用の雇用や失業の変動幅が大きくなることが分かった。また、正規雇用と非正規雇用の補完度の上昇は全体の景気変動に大きな影響は与えないが、相対的に変動の大きい非正規雇用の変動を安定化させる効果があることを示した。
著者
中澤 信彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3-4, pp.249-271, 2015-03-10

本稿の課題は、ハイエクがバークをどのように読んだのか、その読解の詳細を追跡することによって、ハイエクの保守主義観の特質と意義を明確化することにある。ハイエクが残したバークへの言及は分量的に決して少なくないが、断片的なものばかりである。そこで本稿では、ハイエクがバークの膨大なテクスト群のうちの何を参照したのかにとりわけ着目しつつ、ハイエクの主要著作におけるバークへの言及の有様を時系列的に整理する。本稿の構成は以下の通りである。第1節では論文「真の個人主義と偽りの個人主義」におけるバークへの言及を検討する。第2節では壮年期の主著『自由の条件』を検討し、第3節では『自由の条件』の補論「なぜ私は保守主義者ではないのか」を検討する。第4節では『自由の条件』と並ぶ後年の主著『法と立法と自由』を検討する。最後にこれまでの議論を整理し、「つまるところ、ハイエクはバークをどのように読んだのか?」という問いに、できるだけ明快な答えを与えたい。
著者
橋本 恭之 呉 善充
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.499-513, 2006-03-10

本稿では、子育て支援税制として政府税調で議論ざれている扶養控除の税額控除化の意義とその実現可能性を検証することにした。5万円ないし10万円の扶養税額控除への移行は、所得階級別には高所得層への増税、低所得層への減税効果を持つ。年齢階級別には5万円の扶養税額控除のケースでは、45歳から60歳の年齢層以外の年齢層で税負担軽減につながる。10万円の扶養税額控除のケースではすべての年齢層において税負担軽減につながる。世代別の税負担の計測では、大卒の場合では1960年生まれも1980年生まれも5万円の扶養税額控除化では増税となるが、10万円の扶養税額控除化ではわずかながら減税となる。高卒の場合では1960年生まれも1980年生まれも、5万円の扶養税額控除化では増税となるが、10万円の扶養税額控除化では減税となる。マクロ的には減税となる10万円の扶養税額控除新設のケースですら、子育てに直面する家計への税負担軽減効果はそれほど大きくない。扶養控除の全面的な税額控除化は、子育て支援策としてはあまり期待できないであろう。