著者
加勢田 博
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.17-31, 2002-06

19世紀のアメリカにおける交通・輸送の発展は、世紀前半においては、河川や運河の航行改良によって、また世紀後半には鉄道によって、工業成長に伴う著しい輸送需要の増大に対応することができた。本論文では、河川輸送が鉄道時代の到来とともにその役割をどのように変化させていったのかを概観する。
著者
橋本 恭之 木村 真
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 = Economic review of Kansai University (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.303-321, 2015-03

本稿の目的は、夕張市における公営事業と国保事業の現状と課題をあきらかにすることである。本稿で得られた結果は、以下のようにまとめることができる。第1に、財政破綻後の観光施設の運営方法として採用された指定管理者制度は、さまざまな課題を抱えていることがあきらかになった。指定管理者制度のもとで観光施設の延命を図るよりも、民間への売却ないし無償譲渡を優先して考えていくべきだろう。第2に、夕張市の病院会計の赤字は、診療所に縮小することで解消が図られてた。しかし、老朽化に伴い移設計画が検討されているものの、市の人口中心地への移設はへき地医療の指定がはずれてしまうなどの課題を抱えている。第3に、夕張市の国保事業会計は、赤字が解消されている。ただし、2010年度以降、赤字解消により保険料が引き下げられ、受診率と 1人あたり医療費も上昇傾向にあることから今後注意が必要である。第4に、夕張市の下水道事業は、一般会計からの繰り出し不足、利用者の伸び悩みなどにより多額の累積赤字を抱えるに至った。地方都市においては、インフラ整備の優先順位を考える必要があることがわかった。
著者
高木 秀玄
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-17, 1969-04
著者
北原 聡
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.83-100, 2001-09

1919年に公布された道路法は我国初の体系的道路法規で、道路改良による自動車交通の促進を重要な目的としていた。自動車の通行と密接に関係する道路の構造は、道路法に付随した道路構造令で規格が定められ、幹線道路を構成する国道・府県道については、自動車2車線交通に必要な幅員が確保された。構造令に基づく国道・府県道の改良は、概ね構造令の幅員規格に則って実施され、戦間期に都市から地方へと広がり、鉄道輸送と競合した貨物自動車輸送の発展に、こうした改良が貢献した。
著者
植村 邦彦
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.17-33, 2010-03

英語の〈civil society〉は、16世紀末から使われ始めた言葉である。日本語では通常「市民社会」と訳されているが、この言葉は本来アリストテレス『政治学』における「国家共同体」の訳語として英語に導入されたものであり、17世紀のホッブズとロックにいたるまで、この意味で使われた。この言葉の前史と初出時の語義を確認することが、本稿の課題である。
著者
植村 邦彦
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.481-510, 1997-12

マルクスの数多い著作の中でも、1852年に書かれた『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』ほど、これまでに様々な読まれ方をしてきたテクストはないだろう。たとえばエドワード・サイードは、文学批評の方法を論じたエッセイの中で小説と「情況的現実」との関係を論じながら、やや唐突に次のように述べている。「しかしながら、いかなる小説家も、『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』を書いたときのマルクスほどに現実的情況について明確な態度を取ることはできないだろう。私から見れば、現実的情況が甥[ルイ・ボナパルト]を革新者としてではなくて、偉大な叔父[ナポレオン]の笑劇的な反復者として仕立て上げたことを示すときの筆法の正確さがこれほどに才気あふれ、これほどに圧倒的な力をもって迫ってくる著作はない(1)」。サイードが強調する第一点は、「マルクスの方法にとって言語や表象は決定的な重要性を持って」おり、「マルクスがあらゆる言語上の工夫を活用していることが『ブリュメール18日』を知的文献のパラダイムたらしめ(2)」ているということであり、第二は、ナポレオン伝説によって育まれた「実にひどい過ち」を修正するために、「書き換えられた歴史は再び書き換えることが可能であることを示」そうとするマルクスの「批評的意識(3)」である。こうして、マルクスにおけるレトリックという問題が設定される。あるいは、「オウムと世界最終戦争」という副題をもつ著書『虚構の時代の果て』の「あとがき」で、大澤真幸はこう述べている。「民主主義体制の下で極端な独裁が国民の広範な支持を獲得できたのはなぜか。マルクスは、この人物、ルイ・ボナパルト(ナポレオン三世)のク・デタが人民投票で承認された直後に、彼が政権を獲得するまでの過程を社会学的に考察する『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』を著している。今日でもなお、マルクスのこの議論は、ボナパルトが成功しえた理由についての、最も説得力ある分析であろう。ちょうどこのマルクスの分析のような、私たちが内属している『オウム』という文脈に対する透徹した考察が必要である(4)」。ここでは、マルクスのこの書は、「考察する者自身が内属している<現在>」に関する「社会学的考察」の模範例とみなされている。このような『ブリュメール18日』の読み方は、言うまでもなく、「マルクス主義」の側からの正統的な読み方とはかなり異なる。マルクスの死後まもない1885年に、エンゲルスはこの書の第三版に付した序文で、次のような位置づけを試みているからである。「マルクスこそ、歴史の運動の大法則をはじめて発見した人であった。この法則によれば、すべて歴史上の闘争は、政治、宗教、哲学、その他どんなイデオロギー的分野でおこなわれようと、実際には、社会諸階級の闘争の――あるいはかなりに明白な、あるいはそれほど明白でない――表現にすぎない。そして、これらの階級の存在、したがってまた彼らのあいだの衝突は、それ自体、彼らの経済状態の発展程度によって、彼らの生産、およびこの生産に条件づけられる交換の仕方によって、条件づけられているのである。……マルクスは、ここでこの[フランス第二共和制の]歴史によって自分の法則を試験したのであって、彼はこの試験に輝かしい成績で合格した、と言わざるをえないのである(5)」。この見方によれば、『ブリュメール18日』は「唯物論的歴史観の定式」の一つの例示だということになる。本稿の課題は、『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』に関する最近の注目すべきいくつかの「読み方」の批判的検討を通して、マルクスの思想の展開の中に占める『ブリュメール18日』の位置づけを明らかにすることにある。マルクスにおける歴史認識の方法、それがテーマとなる。
著者
西 重信
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.55-74, 2011-06

2005年以降、中国が主導する大図們江地域開発は着実に進んでおり、東北振興と北朝鮮開発を一体化して推進する中国の北東アジア開発戦略が具体化し始めている。北朝鮮は、東北三省での中国との経済協力を軸として、ロシア、モンゴル、韓国との直接、間接の連携によって経済の開放と自由化を進めている。大国の中央政府主導による広域、多国経済開発の最も重要な課題は、開発地域内の諸国、地域住民とりわけ辺境の少数民族の主体的積極性を引き出すことである。この視点は中国の辺境開放政策の意図とも基本的に合致している。大図們江地域の要である図們江地域は、国境に抗して持続している自然経済圏である。延辺朝鮮族と北朝鮮北東部の住民は、互いの困難、危機を自然経済圏を手段として生き抜いてきた。図們江地域の開発には、この自然的一体性に根差した考え方が最も大切である。開発の展望は、1930年代に日本で体系化された北朝鮮ルート論の主体的活用にかかっている。北朝鮮の先峰、羅津、清津の三港と中国東北の鉄道を結び付けた中継貿易輸送は、内陸の吉林省、黒龍江省だけでなくモンゴルをも日本に直結する。朝鮮族人口が急速に減少している延辺の民族経済の振興には、跨境民族の特性と中継貿易を活用した朝鮮族の地元での起業が何よりも必要である。そこでは十数万人とされる在外朝鮮族の主体的積極性に大いに期待できる。図們江地域を中心とした大図們江地域の経済、社会の発展に必ず貢献できるだろう。
著者
中屋 宏隆 河﨑 信樹 河﨑 信樹 KAWASAKI Nobuki
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 = Economic review of Kansai University (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.197-215, 2014-09

ドイツは、2011年に脱原発を再び宣言した。日本では、その政策実現に向けた動向が注目されている。また、多くの研究文献でも、ドイツの脱原発の動きは検討されており、本稿では、そうした研究史の吸収に加え、これまであまり検討されて来なかったドイツの原子力発電のエネルギー政策上の意義を考察するための研究材料を整理することを目的としている。その結果、ドイツはかつて十分に原発大国と言える状況に陥っていたという事実とドイツのエネルギー政策の中での原子力発電の役割を再検討する必要性が明らかになった。
著者
春日 淳一
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.287-298, 2000-12-15

市場経済においては,貨幣を支払えば原則としていつでも誰でも望む商品を手にすることができる(コミュニケーション・メディアとしての貨幣の一般化)。しかし,いったん購入した商品を返品し支払った貨幣を取り戻すことは通常できない。貨幣支払いのこの不可逆性はそれ自体なんら目新しい事実ではないが,本稿では(1)貨幣支払いとその不可逆性を社会システム論の文脈でとらえたうえで, (2)物理学的なイメージをも借りて,支払いの不可逆性が経済システムにおける時間の一方向性と結びついていることを示し,最後に(3)不可逆性の文明論的帰結を述べる。出発点となるのは,ルーマンが経済システムの基本的出来事(システム要素としてのコミュニケーション)とみなした支払い/非支払いという対概念である。ルーマンは支払いと非支払いの対称性を強調するが,両者には意思決定を伴うか否かをめぐって「対称性の破れ」 が見られる。筆者は出来事/反出来事という対概念を用いて非支払いを2種に区別したのち,支払いと同時に生じる反出来事としての非支払いに着目し,それが支払いの不可逆性発生の「現場」となる様子を明らかにする。
著者
佐藤 真人
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.515-527, 2006-03-10

完全雇用の制約を受けず、投資需要が主要に状況を決定する成長過程について「賃金主導型成長」(wage-led growth)が資本主義の一形態として注目され、また教科書でも大きな扱いを受けている。賃金主導型成長の第一印象は逆説的である。そこで基本的なカレツキー型モデルに拠って賃金主導型成長とは何か、なぜそういうことが起るのかを考察する。賃金主導型成長が起る条件として投資関数の形は重要であるが、より重要なのは分析の基礎にある、いわゆる「費用の逆説」である。この逆説にとって投資関数のパラメタが時間的に変化しないという分析便宜上の仮定の役割は大きい。したがって「費用の逆説」の問題性が浮上する。「費用の逆説」の経済的メカニズム、さらにカレツキー・モデルの検討が必要である。
著者
春日 淳一
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.133-151, 2005-06-15

「ゲマインシャフトとゲゼルシャフト」,「閉じた社会と開いた社会」といったように2項を対比させる説明図式は社会科学では昔からなじみ深いものであるが,2項対比をふたつ組み合わせた4次元の図式も,より精巧な分析用具としてしばしば用いられており,その代表例はパーソンズの理論に見られる。一方,衣・食・住,天・地・人,真・善・美といった日常的な3項対比はわれわれを3次元図式に誘う。4次元図式に勝るとも劣らぬ学問的な説得力をもつ3次元図式はいかにしてつくられるのか。これが本稿の中心テーマであり,ルーマンの図式を素材にして,レヴィ=ストロースの「料理の三角形」およびゴットハルト・ギュンターの「棄却値」(ないし「超言」)にヒントを得つつ3次元図式の強みを浮かび上がらせる。
著者
春日 淳一
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.403-418, 2007-03

本稿はルーマンの後期の著作に登場する新概念のひとつ「イリテーション」をとりあげ、その意味を明確にしようとするこころみである。まず、ルーマン理論の解説書等に手がかりを求めたのち、イリテーション概念を主題にした原典のいくつかにあたってみた。この概念自体のまとまった理論的説明は見いだせなかったが、時代状況とかかわらせた「イリテーションと価値」と題する論文が含蓄に富んでいるので、その内容を中心に関連概念を含めて解説した。「イリテーション」もまた、ルーマンのシステム論的思考法の枠組みにしっかり位置づけて理解することが肝心である、というのが得られた教訓である。
著者
北川 勝彦
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.123-142, 2004-06-15

本研究ノートでは、1930年代中頃において、日本商品のアフリカ市場への進出を可能にした国際的枠組、すなわち「コンゴ盆地条約」とその改廃をめぐる動向について考察した。中央アフリカにおいて通商の自由と外国人に対する均等待遇の原則が定められたのは、1885年のベルリン会議の一般議定書においてであった。本議定書は、1890年のプリュツセル会議の一般議定書および宣言書により追補され、1919年、サンジェルマン・アン・レーにおいて締結された条約により更に修正されたが、通商上の均等待遇の原則に関しては変更されなかった。こうした背景の下で、日本品市場としてのベルギー領コンゴの可能性が調査されている。『白耳義領コンゴー経済事情』では、タンガニーカのダルエスサラームを拠点とする通商戦略が提案された。というのは、日本品の販路としてコンゴ市場を確保するには、インド洋岸の東アフリカを切り離しては困難であると判断されたからである。ベルギー領コンゴでは、アフリカ人向け商品の大部分は綿布で、全体として見れば、日本品の競争振りには驚嘆すべきものがあったが、しかし捺染綿布キテンゲを主とするイギリスの地位は牢固たるものがあった。コンゴ盆地条約は、実施日から10年を過ぎると改訂が可能であり、イギリスより1935年7月には条約改訂会議を開催したい旨の提案がなされた。日本政府は、他の署名国に反対がない限りなんら異議がないとの回答を行なったが、コンゴ盆地条約は、植民地通商に関する理想的基準をなすものであり、平和を希望する関係各国政府の努力によって存続させねばならないとの立場に立った。
著者
植村 邦彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3-4, pp.337-354, 2004-11-11

ルイ・アルチュセール(1918-1990)は、1960年代に「重層的決定」や「構造的因果性」という概念をマルクス主義に導入することによって、ヘーゲル主義的マルクス主義や実存主義的マルクス主義を批判し、マルクス主義内部での「認識論的切断」を理論化しようとした思想家であり、フランスだけでなく世界的に大きな影響を与えた。しかし、この試みは、思想的言説空間では「構造主義」や「ポスト構造主義」へと向かうマルクス離れに棹さし、アルチュセール自身も、晩年には「偶然性」や「出会い」の理論化を模索しつつ、マルクス主義への批判を表明するにいたった。本稿は、このようなアルチュセールの理論的模索の全体像を明らかにし、その意味を確認しようとするものである。
著者
古賀 款久
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2-3, pp.115-164, 2019-12-20

本稿では、わが国の大企業約1680社における28年間 (1990-2017年度) のパネルデータを用いて、研究開発優遇税制の実効税率を推計した。実証分析の結果、次の三点が明らかになった。第一に、実効税率は、増加ベースの下では非常に低い水準に留まっていたが、支出ベースに転換した2003年度以降は法定税率に近い水準にまで上昇した。第二に、観測期間を通じて、非製造業の実効税率が製造業のそれよりも高かった。しかし、支出ベースへの移行は、製造業、とりわけ化学、医薬品などの研究開発集約的産業の実効税率を大きく上昇させた。第三に、反事実的な考察を通じて、法定税率の切り上げや控除限度額の拡大は実効税率を上昇させることが、反対に、法定税率の切り下げや控除限度額の縮小、繰越税額控除制度の廃止は実効税率を低下させることがわかった。ただし、実効税率の変化の大きさは施策によって異なり、法定税率の変更は、控除限度額や繰越税額控除制度の変更に比べると、実効税率の水準に大きな影響をもたらすことがわかった。
著者
中澤 信彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3-4, pp.173-205, 2012-03-10

本稿は、「人間の権利」をめぐるエドマンド・バークとトマス・ペインとの論争を、2つの新しい観点から考察することを試みる。1つには、バークが批判しペインが擁護に努めた人権(人間の権利)としての「生存権」、および、それによって基礎づけられている「福祉国家」の構想を、経済思想史および共和主義思想史の文脈上に位置づけたい。経済思想史研究と共和主義思想史研究は「貧困問題の解決」という論点を介して密接な関係を有していることを、近年の研究は強調しつつある。こうした関係を強く意識しながら、改めてこの有名な論争を振り返りたい。もう1つは現代的な観点である。バークとペインとの論争は、近年の議論を先取りするかのように、人間と国民(市民)、人権とシティズンシップ、現世代と未来世代、自由市場と福祉国家との緊張関係をあぶり出しており、人権という思想の偉大さと困難を見事に浮き彫りにしている。今日の日本において人権保障のあり方が直面している問題を考える際の有益なヒントが、この論争には数多く含まれているように思われる。本稿ではそのヒントをできるだけ広範に掘り起こしたい。
著者
杉原 四郎
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.1195-1207, 1992-03-15
著者
田口 方美
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.119-141, 2022-12

本稿の目的は、所得税制の所得控除の中で、人的控除に焦点を当てて、その現状と所得税負担への効果を考察し、今後の所得税制の方向性を探る一助とすることである。人的控除による世帯人員への配慮の考察では、OECD等で用いられている世帯所得の概念を用いる。具体的には、世帯人員の増加に伴う規模の経済を考慮した等価所得(Equivalent income)の概念を用いて、日本の人的控除を世帯人員への考慮という観点から評価する。扶養(世帯)人員に対する人的控除の効果の検証では、第1に人的控除の適用数が減少傾向であること、第2に給与収入ベースでの分析によると、扶養人員が多い給与所得者ほど高い再分配効果を示す負担構造に直面しているという結果になった。そして、第3に等価所得を用いた分析によって扶養人員による負担調整の効果をまとめると以下のようになる。等価所得は、世帯人員の増加による生計費についての規模の経済を考慮して求めるもので、人的控除は所得水準とは無関係に定額で設定されているものであり、所得水準が大きくなるほど所得に対する割合は小さくなる。等価所得を用いた考察から、現行の人的控除制度は、低収入層では扶養人員に対する規模の経済を小さく評価し、高収入層では規模の経済を大きく評価、つまり世帯人員が増えても生計費は増加しないという前提の税負担構造となっていることが示された。
著者
林 宏昭
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.563-573, 2018-03-10

日本では、戦後の税制の基礎となったシャウプ勧告で直接税中心主義が掲げられる。直接税は所得税と法人税であるが、シャウプ勧告では法人税については法人税を所得税の前取りと見なす法人擬制説の立場が示されたことから、基本的には所得税中心の税体系となった。個別間接税である物品税や相続税は所得税の補完と位置づけられた。1980年代の税制改革論では、「直間比率の是正」も大きなかけ声となり、物品税等の個別間接税に替えて一般的な間接税である消費税が導入される。税体系の中での間接税の比重は高まっているが、所得税は依然として重要な基礎税である。近年、配偶者控除などの控除制度のあり方を巡って、政府税制調査会でも集中的に議論が行われるようになった。
著者
木村 雄二郎
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1-2, pp.127-145, 1963-06-20