著者
吉見 宏
出版者
北海道大学經濟學部
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.155-167, 1997-12
著者
佐々木 憲介
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.15-27, 2010-12-09

1870年代から20世紀初頭にかけて, イギリスにおいても歴史学派と称される一群の経済学者が現われ経済学上の有力な潮流となった。歴史学派は古典派の理論的・演繹的方法に対して歴史的方法を対置し, 古典派の方法論をさまざまな角度から批判した。しかし, 古典派を代表する経済学者の一人であったJ.S.ミルは, その『論理学体系』においてすでに歴史的方法について語っており, それ以外にも歴史学派のものとされる主張を展開していた。はたして, ミルの経済学方法論はイギリス歴史学派とどのような関係にあったのか。クリフ・レズリーは, ミルとリカードウとの違いを強調したが, 歴史学派の多くはむしろ両者の共通性に注目した。ミルは, 経済学の原理に関してはリカードウ派の立場を堅持しており, 新しく示された観点は観点の提示に留まっていて歴史研究の先駆的な業績があったわけではなかった。そのような意味で, 歴史学派にとってのミルは旧学派の一員であった。しかし, 実践的な意味では, ミルの学説は社会改良主義への突破口の一つになった。何人かの歴史学派がミルを評価したのはむしろこの点であった。
著者
竹野 学
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.207-224, 2013-02

本稿は, 1918年から始まるシベリア出兵の最中の1920年春に発生した尼港事件への対抗措置として, 同年から1925年まで日本軍によって行われた北樺太(北サハリン)保障占領について, その日本領土化を期待して同地に移住した日本人移住者(居留民)に焦点を当てて, 日本軍政下の北樺太社会の動向を分析したものである。 保障占領開始後に同地へ到来した日本人は, 主に商工業者から構成されており, 近代日本における対外膨張の過程で各地においてみられた「一旗組」のパターンと軌を一にしていた。しかし同地での営業には限られた商機しか存在せず, 交通インフラの未整備や中国人商人の台頭なども重なり, 居留民は同地から撤退を始め, 最終的には1925年1月の日ソ基本条約締結によって総員の北樺太引揚げを余儀なくされる。 このような北樺太の経験は, 近代日本における対外膨張の過程においては例外的な逸脱事例であることを指摘した。
著者
小山 光一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.49-78, 2003-06-10
著者
多田 和美
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.27-77, 2010-09-09

本稿は,多国籍企業の内部環境と外部環境(現地環境)の要因が,海外子会社の製品開発活動に及ぼす影響とそうした活動がいかなる成果を生成するのることを目的としている。そこで,失敗事例(日本ペプシコ社)との比較分析に向けて,成功事例に相当すると考えられる日本コカ・コーラ社の事例研究を行った。本稿では,先行研究の課題およびこれまでの研究課題を踏まえ,Schmid & Schurig(2003)を出発点とした枠組によって,(1)内部環境要因と外部環境要因の各構成要素が製品開発活動に及ぼす影響,(2)その過程において生じる構成要素間の相互作用,(3)それらの影響に基づく製品開発活動が成果に及ぼす影響を分析した。その結果,内外環境要因の各構成要素とその相互作用が,海外子会社の製品開発活動に及ぼす多様な影響と成果との関係などが新たに明らかになった。
著者
多田 和美
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.35-83, 2010-06-10

本稿は,多国籍企業の内部環境と外部環境(現地環境)の要因が,海外子会社の製品開発活動に及ぼす影響とそうした活動がいかなる成果を生成するのか解明することを目的としている。そこで,成功事例との比較分析に向けた予備的研究として,失敗事例に相当すると考えられる日本ペプシコ社の事例研究を行った。本稿では,先行研究の課題を踏まえ,Schmid & Schurig(2003)を出発点とした枠組によって,(1)内部環境要因と外部環境要因の各構成要素が製品開発活動に及ぼす影響,(2)その過程において生じる構成要素間の相互作用,(3)それらの影響に基づく製品開発活動が成果に及ぼす影響を分析した。その結果,内外環境要因の各構成要素とその相互作用は,海外子会社の製品開発活動と成果に多様な影響を及ぼすことなどが新たに明らかになった。
著者
岡田 美弥子
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.45-64, 2013-06-11

本稿の目的は,日本のマンガビジネスを牽引し,アニメやキャラクター商品,およびマンガ以外のエンターテイメントに素材を提供してきたコミック事業に焦点を当て,コミックのビジネスシステムがどのように誕生し,どのような機能を有するのかを解明することである。日本におけるコミック事業の歴史および代表的な少年コミック雑誌編集部の事例から明らかになったのは,日本のコミック事業におけるビジネスシステムが2つの仕組みから成り立っていることである。1つめの「マンガ家の発掘・育成の仕組み」は,誌上で実施される作品公募や編集部への作品の持ち込みによって,誰にでもマンガ家になれる機会を与えて潜在的マンガ家の裾野を広げるという機能をもっていた。2つめの「競争による選別・淘汰の仕組み」は,コミック誌上で行われる人気投票すなわち読者の評価にもとづいて,マンガ家を競争させ,質の高い作品を生み出していた。また,これらの仕組みには,コミック雑誌と読者の双方向関係における,読者の評価や読者から生まれるマンガ家志望者の存在が欠かせないことも解明された。
著者
宇田 忠司 阿部 智和
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.75-95, 2015-12-10

本稿の目的は,聞き取り調査および公表資料をもとに,コワーキングスペースの運営プロセスを記述することである。具体的には,2012年12月に開設され,国内最大規模の利用者を誇るコワーキングスペース7F(さいたま市大宮区)という場の運営過程について,前史,揺籃期,確立期,転換期という4つのフェーズに分けて詳述していく。
著者
吉野 悦雄 塩谷 昌史
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.41-61, 2007-09-06

筆者たちは2005年にベラルーシの東部でポーランド国境から15キロメートル圏内にある中規模都市のグロードノ市とブレスト市 を訪れ,そこの企業を4社づつ,合計8社で企業聞き取り調査を行った。業種は裁縫業,煙草工場,牛乳工場,ガス器具工場,百貨店,自転車工場,ゼネコン,壁紙販売業である。調査の目的はベラルーシにおいてEU経済の影響がどの分野でどのように及んでいるかを調査することであった。イタリア服飾企業の下請の例と,EU向けへ安売り自転車を製造している例を除くと,EU経済の影響はさほど強くなかった。ガス器具工場はロシア資本の支配下にあった。しかし百貨店ではコンピュータ・システムをEU企業が設計するなど,いずれの企業でも何らかのEU経済の影響は発見できた。この<資料>はベラルーシの現地企業を直接聞き取り調査した日本で最初の試みの調査報告である。
著者
田中 愼一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.9-18, 2005-03-10

近代日本の人傑をとらえ、これを論評するのは容易であるはずはないだろう。高尚偉大なる人物にして且つ文筆家であれば、その一代の文業に精通することが期待されるだけに、余計そうなるであろう。1984 年制定の五千円札以来にわかに族生の感ある新渡戸稲造研究家、その一員に達していない私としては、いわゆる群盲象を評す、にとどまることを危惧しつつ書いたのがこの小論である。焦点は新渡戸稲造の朝鮮(韓国)観、それが年代を経るなかでどのように推移していったのか、を追跡しようとした。しかも、関連する事柄で興味が湧いた際には、追求していく本来の大通りから、時には註をステップ台にして横町へ飛び込み、場合によってはさらに横町から左右の細い路地を覗き込みながらあわただしく出入りしたかのごとき叙述もしたのであった。文化的架橋者たらんことを使命にしていたとおぼしき新渡戸稲造は、その生きた多端な時代の運命をよく担っていた方なのではないか、というのが私の擱筆感の一つである。
著者
田中 嘉浩
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.177-183, 2006-06-08

ジョージ・ダンツィーク(George Bernard Dantzig)は修士号修得以降にワシントンの労働統計局に勤務していたが,ふとしたことでカリフォルニア大学バークレー校に行ったネイマンの下で Ph.D. を目指すことになった。本稿ではその時代に遅刻が原因で黒板に書いてあった未解決問題2問を宿題と思って解いた彼の若き日の統計学への貢献について述べる。一つはt検定の改良が不可能であること,もう一つは Neyman-Pearson の補題の必要十分性に関する問題である。 ダンツィークは後の空軍時代に考案した線形計画に対するシンプレックス法で有名で「線形計画法の父」と呼ばれているが,スタンフォード大学教授以降も晩年迄温和,研究熱心な人として知られている。昨年5月にパロ・アルトの自宅で惜しまれながら逝去された。
著者
浅田 政広
出版者
北海道大学經濟學部
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.79-101, 1987-06
著者
園 信太郎
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.1-3, 2012-03-08

なぜサヴェジ氏の思索が重要なのかを簡潔に述べた。
著者
松井 憲明
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.81-96, 2007-12-06

ソ連では農業社会の伝統的社会制度である課役(ロシア史に即していえば,農奴制時代の賦役や貢租)が1930年代に大規模に再建され,60年代まで存続した。 この課役には,①労働課役(夫役),②物納課役,③金納課役がある。①夫役の中核はコルホーズの共同農場での労働義務であり,その法令化は39年の年間労働ミニマムの導入に始まる。これはまもなくコルホーズ員ばかりか年少者をも対象とするに至る。夫役の徴発はその他,木材調達と泥炭採取,道路の建設や補修などの領域でも広く行われた。②物納課役はコルホーズ農民の現物給付義務であり,農家の多様な作物の国家供出という形でこれまたきわめて大規模に賦課された。③金納課役は貨幣給付義務であり,農業税,馬匹税,独身税,戦時税,建物税,家畜税の納付,自己課税,国債購入等々の多種多様な形態をとった。これらの課役は全体として第二次大戦中とスターリンの晩年に激増した。コルホーズでは一貫して労働強化が図られた。木材調達や地方の道路建設,農畜産物の国家調達などでも課役は大きな役割を演じ,他方,農民生活にとっては重い負担となった。 こうした課役は経済外的強制の広範な適用を特徴としていた。コルホーズの労働への不参加は矯正(強制)労働や遠隔地への追放を含む各種の措置により罰せられ,その他の課役の忌避に対しても罰金が科せられ,財産の差押えや没収が行われ,さらに刑事責任が問われた。 課役の制度は,ソ連が1930年代から60年代にかけて農業社会から工業社会へと転換を遂げる上で最も重要な要素であった。したがって,それはこの転換の進行とともに必要性を減じ,60年代後半までには解消された。