著者
井上 史子 林 徳治
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.3-14, 2004-03-20 (Released:2017-05-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1

先行研究より,これからの子どもたちには情報を批判的に読み解き活用する力が必要であり,その力を育成することにより,主体的に学ぶ態度の変容も期待できると考えた.本論文では,小学校におけるメディアリテラシーを育成する授業での児童の主体的学習態度に着目し,児童による自己評価と教師による観察を基に,学習者の主体的学習態度の変容をめざした授業のあり方について,量的,質的な分析を行った.その結果,主体性は関係的であり,学習内容や使用する教材,学習者の心身の状態や学習環境に影響されやすいものであること,主体性を発揮するには自己表現力の向上が欠かせないこと,主体性を生かす授業形態として個別学習が有効であることなどが示唆された.
著者
神田 光啓
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.7-15, 1994-09-30 (Released:2017-06-01)
参考文献数
67

80年代に教育・学校問題から自殺・殺人を含む深刻な社会問題となった今日の学校におけるいじめの問題について,どのような研究が進められてきたのかを教育研究情報検索によって得られた学会誌,大学紀要掲載論文等63編を検討してみた.心理学,社会学,体育学,精神医学,教育学研究論文である.85年に森田が提起した,いじめの定義,いじめの4層構造,いじめの4形態などが80年代後半の各分野でのいじめ研究に影響を与えたきたのが分かった.しかし,いじめの実態把握,いじめの性格を解明するには森田の提起は役割は果たしているが,いじめの実践的解決,いじめが生み出す病理の実際的解決への論理においては,必ずしも十分ではない.臨床心理学の立場からの高石の「少年期それ自身の独自の人格修復機能」等に注目しつつ,教育学,精神医学,臨床心理学等の学問の実践性が問われる諸分野でいじめを実践的に解決していく鍵概念の提起が待たれているといえよう.
著者
佐原 恒一郎
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.29-38, 2014 (Released:2017-03-08)
参考文献数
6
被引用文献数
1

重度知的障害児2名に対して行ったタブレット端末による学習の様子を,学級担任経験教員および事例児と異なる他の特別支援学校教員が評価した.この結果,「注意集中を長時間持続できた」「弁別や認知を促す学習を可能にすることができた」「これらの変化は従来のコンピュータでは同様の結果を期待できない」という評価がされた.重度知的障害児のICT利用教育について,タブレット端末を利用することは「通常のコンピュータに比べ学習の有効性が高い」「注意集中の長期的な持続が期待できる」「因果関係の理解など認知・弁別学習の促進が期待できる」「教科的な学習にとどまることなく,自立を促す教材としてタブレット端末を利用することが望ましい」の4つの方向性を見いだした.
著者
北澤 武 永井 正洋 加藤 浩 赤堀 侃司
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.35-42, 2008
被引用文献数
1

本研究は,小学校理科教育を対象として運用しているeラーニングサイト「理科ネット」の電子掲示板「質問コーナー」に,用語間の関係の強さに着目した検索支援システム「PRIUM (Portfolio Retrieval for Investigating Useful Material)」を構築し,それを運用した効果について検証した.その結果,児童は電子掲示板に理科に関する質問を投稿する前に,自分が質問したい内容と同じ質問があるかどうか,PRIUMを使って調べるという情報探索行動を示すことが分かった.さらに,PRIUMを構築する前よりも,構築後の方が過去に投稿された質問と同じ質問をする割合が減少し,「質問コーナー」の利用頻度や質問の投稿数が増加するなどの効果があることが示唆された.
著者
田島 祥 坂元 章
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.3-13, 2013

本研究では,教育番組の中で推奨される価値観の特徴を探ることを目的に,親や教員に対する調査(研究1)と教育番組の内容分析(研究2)を行った.価値尺度として,The Rokeach Value Survey(Rokeach,1973)の手段価値を用いた.研究1より,親や教員は,正直さ・責任感の強さ・礼儀正しさ等の価値観が子どもにとって必要だと考えていることが明らかになった.また教員は,自己制御していることも重視していた.研究2において69の教育番組を分析した結果,全体的にみると,知的なことや陽気なことが多く推奨されていた.また,番組の対象年齢が異なると推奨される価値観も異なるという特徴が見いだされた.さらに,研究1で親や教員が重視していた価値観は,いずれの年齢向けの番組においてもほとんど推奨されていないことも明らかになった.
著者
五十嵐 敏晴
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.99-109, 1988

今回の試みは、入学前に基礎的な実力をつけることと一斉授業でCAIソフトを使う場合の利用方法の研究をその目的として実施した。その際、学習者こ対してアンケートをとり、その結果を次のようにまとめた。なお、今回便用したソフトは本校開発の「簿記入門編」と「簿記3級編」(第2巻4号48頁参照)である。
著者
須藤 崇夫 藤井 春彦
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.15-26, 2012

本研究では教科「情報」における教員研修の改善のため,協調的な学習の一つの技法であるジグソー法を導入した参加型の教員研修のカリキュラムを開発,実践し,研修受講者への質問紙の回答結果と授業実践者へのインタビューを通してその有効性と課題を明らかにすることを試みた.その結果,参加型の研修の有効性が示唆されるとともに,ジグソー法の指導方法を習得や授業に利用したいという意欲を意識化させ,また,教員研修を踏まえてジグソー法による学習指導を授業で実践できたことが明らかになった.また,教科「情報」のいくつかの学習分野や問題解決の学習において,協調的な学習方法は,有効な学習方法である可能性が指摘された.一方,研修時間の確保等について課題が残った.
著者
矢野 陽子 新地 辰朗 荒木 賢二 河南 洋
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.3-13, 2008-01-21 (Released:2017-04-18)
参考文献数
21

本研究では,ユビキタス社会の授業を想定して,インターネットと校内LANを用いて学生と教師がそれぞれのPC (=Personal Computer)を双方向に使用する教室での授業を試みたものである.ユビキタス社会ではメディアはシンプル化し,形状も縮小化してくる.学生の学習と教授方法には主にネットワークが用いられる事が予測される.そうした社会により近い環境を設定し,ペーパーレスで授業の完全ICT (=Information and Communication Technology)化の検証を大学の情報教育の授業で行った.本検証によりユビキタス社会の授業での問題点と効果及び課題について研究した.また,ユビキタス社会へ向けて授業のICT化が効果的に実施されるためには,学生側より教師側のメディアリテラシーの習得環境を整備する必要性が示唆された.
著者
大隅 紀和 乾 和雄 林 和志
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.14-22, 1988-07-11 (Released:2017-06-16)
参考文献数
4

筆者らは、暫定的に市販されているポータブルワープロを使って、小学生と中学生を対象に基本操作練習に取り組んでいる。その結果、ワープロの基本操作に必要な時間が明らかになった。、また、基本操作練習に続いて、中学校での理科実験での活用事例を報告する。あわせて、この種の新情報技術(EIT)を活用する情報教育(インフォマット)の実践の一つの提案をする。
著者
芦葉 浪久
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.3-16, 1996-07-30 (Released:2017-05-31)
参考文献数
12

第1部では, 筆者が国立教育研究所在職中, 科学研究費補助金を受けて行った種々の研究領域とテーマを示し, それらの研究において用いた方法を紹介した. 研究に用いる方法論については, これらの研究の過程で恩師から特別の指導を受けたため, 第2部に方法論の重要事項をとりまとめた. その方法論の主なものは, 問題の明確な認識の方法, 問題の全体像の把握方法(問題の論理構造の分析), 事実の把握の方法, 仮設設定の方法, 仮設検証法(科学的方法, 実験的方法, 数量的方法, 質的方法, 実験法), 科学的推論(帰納法, 演繹法, 類推法, 因果律法)問題解決の非合理的要素(経験, 想像力, 直観力)である.
著者
宮地 功 岸 誠一 小孫 康平
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.33-44, 1994-01-31 (Released:2017-06-06)
参考文献数
7

人間関係を育成する上で,ソシオメトリーは貴重な資料を提供できる.この技法を有効に機能させ,テストの信頼性と妥当性を高めるために,構成員全員を対象にした間隔尺度データに基づくソシオメトリックテスト法を提案する.この方式によって得られる指標を提案する.このテスト法によって得られるデータを処理加工し,分析結果を図表化するシステムを開発した.従来得られていた図表に重みを含めて,選択と排斥データ表,選択と排斥関係表,被選択児童とその理由リスト,被選択の理由と度数,被排斥児童とその理由リスト,被排斥の理由と度数,相互選択児童とその理由リスト,相互排斥児童とその理由リスト,矛盾選択関係の児童とその理由リストが得られる.また,提案した方法の特徴である重みを考慮した重み付き選択と排斥関係表,個人の友達関係図,選好度表,学級の友達関係図,友達関係伝播図のような従来得られなかった情報が得られる.この間隔尺度法を実際に活用した結果,利用した教師からかなり有効でわかりやすい加工情報が提供されるという良好な評価が得られた.
著者
井上 史子 沖 裕貴 林 徳治
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.13-20, 2006-02-28 (Released:2017-05-19)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本研究は,自主性をはじめとする教師の主観に頼りがちな情意的教育目標の達成度を客観的に測定することにより,それらを育成するための有効な方法論を確立することをめざした実証研究の第一弾である.中学校教育現場においては,教育目標としてしばしば主体性や自主性という言葉が用いられる.主体性とは,学校教育の中で,子どもたちが何ものにもとらわれずに自らの言動の主体として自己決定する態度や,自ら課題を選択・判断する力を意味する.しかし,これまでの先行研究[1]において,これらの力を学校教育の中で育成することは極めて困難であることが明らかにされてきた(井上・林,2003).学校社会で子どもたちに求められるのは,教師があらかじめ設定した課題や役割に対して積極的に取り組む姿勢や態度である.それはむしろ主体性と言うより,自主性と呼ぶ方が適切であると考えられる.本論文では,中学校において,生徒の自主性を測定するため,20の質問項目からなる100点満点の尺度を構成した手続きと,今後の研究の方向性について述べた.
著者
荻布 優子 川崎 聡大
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.41-46, 2016 (Released:2017-05-01)
参考文献数
11

学力と基礎的学習スキル(読み書き困難リスク)の関係について,学年,学力低下の有無といった観点から検討を加えるとともに,学力向上に向けたICT有効活用のための基礎的データを得ることを目的とした.対象は小学校2年~6年生297名である.結果,低学年では国語で読み流暢性,算数で書き正確性が学力に対する独立変数として有効であり,学力維持群・低下群の間に顕著な差は認められなかった.高学年では低学年に比して書き正確性の影響がやや強く,特に学力維持群に比して学力低下群で特に音読流暢性が学力に及ぼす影響が強いことが明らかとなった.学力低下群ではいわゆる基礎的学習スキルの課題が学力向上の妨げとなっていること,学力維持群では学年上昇に伴って読み書きスキルが学習の手段=「書いて覚える」へ移行していくことから,ICT活用によって学力向上を図るには学力や基礎的学習スキルの状況に応じたコンサルテーションが重要である.
著者
庭井 史絵
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3-4, pp.3-14, 2014 (Released:2017-03-08)
参考文献数
16

小中学校で用いる検定教科書には,図書館利用指導と同様の項目が多数取り上げられている.これは,学習指導要領が示した「学び方」の中に,学校図書館が利用指導として扱ってきた内容が含まれていることによる.「学び方」の指導は,教育課程上,教科の領域に位置付けられており,学校図書館や利用指導との関係は明らかではない.本研究の目的は,小中学校の検定教科書の記述を分析し,利用指導に関連する項目の特徴を明らかにすると同時に,教科教育の中で利用指導を行う可能性と意義について検討することである.教科書の記述と利用指導の項目を比較した結果,両者には共通する点が多い一方で,取り上げる内容や方法に相違点があることも明らかになった.つまり,図書館利用指導は「学び方」指導の一環として教育課程に位置付けることができ,学校図書館と教科がそれぞれの専門領域に基づく指導を行うことによって教育効果を高める可能性があると言える.
著者
山本 利一 本郷 健 本村 猛能 永井 克昇
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.3-12, 2016

本研究は,プログラミング教育に関する教育的意義やその効果を先行研究から整理し,今後それらを推進するための基本的な知見を得ることを目的とする.そのために,初等中等教育におけるプログラミング教育の位置づけを学習指導要領で確認した後,先行研究を整理した.その結果,プログラミング教育の教育的意義や学習効果は,①新たなものを生み出したり,難しいものに挑戦しようとする探究力,②アルゴリズム的思考,論理的思考力,③物事や自己の知識に関する理解力,④自分の考えや感情が発信できる表現力や説得力,⑤知恵を共有したり他者の理解や協力して物事を進めたりする力,⑥プログラミングを通して情報的なものの見方や考え方を身に付けることができる,ことであることが示された.
著者
山本 利一 佐藤 正直
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.45-53, 2013

本研究は,中学校技術・家庭科(技術分野)の生物育成に関する技術を指導する際,タブレット端末を学習支援に活用した授業を構築し,実験授業を通してその効果を検証するものである.タブレット端末の特徴である,モバイビリティを活かして,栽培活動の場面において生育方法に関する情報を収集したり,カメラ機能を活用し栽培記録を取りそれらを整理することができる.実験授業では,中学3年生233名を対象にタブレット端末を4時間活用し,その教育効果を検証した.その結果,タブレット端末を利用することで栽培学習に関する興味・関心が高まると共に,栽培技術に関する知識の定着に効果が示された.
著者
掘野 緑 市川 伸一 奈須 正裕
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.3-7, 1990
被引用文献数
3

自己学習力が強調される今日の教育において, 学習者自身のもつ「学習観」は極めて重要である. 現在の学校教育で形成されがちな学習観として, 失敗は悪いことであり, 正答さえ良ければ良いといった「結果主義」があげられよう. 本研究では, 「失敗に対する柔軟的態度」, 「思考過程の重視」という2つの側面に着目し, 基本的な学習観の尺度を作成した. さらに, 学業成績との関連について検討した結果を報告する.
著者
阪東 哲也 市原 靖士 森山 潤
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.25-32, 2015 (Released:2017-03-03)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究の目的は,健康維持に関する情報モラル意識として,情報機器使用時の身体疲労への配慮及びインターネット依存傾向を取り上げ,個人内特性との関連性について検討することである.大学1年生136名を対象に,個人内特性として自己効力水準を取り上げた調査を実施した.その結果,健康維持に関する情報モラル意識の形成には,自己効力の高さが個人内特性として重要な役割を果たしていることが示唆された.とりわけ,自己効力水準の低い男性は,情報行動時の健康維持に対する配慮意識が低下しやすいと共に,インターネット依存傾向に陥りやすい傾向を有することが明らかとなった.
著者
沖 裕貴 宮浦 崇 井上 史子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.17-30, 2011-02-15 (Released:2017-03-30)
参考文献数
14

国立大学法人を中心に中期目標・中期計画の第二ラウンドが始まり,多くの大学で学士課程教育の一貫性構築のための3つのポリシー(DP:Diploma Policy,CP:Curriculum Policy,AP:Admission Policy)の明確化が最初に取り組むべき課題として浮上してきた.「カリキュラム・マップ」,「カリキュラム・ツリー」というチェック表をどのように作り,どのように使うのか.また何に役立ち,どのような課題があるのか等,これまでの先進大学での事例に基づいてその具体策を考察する.