著者
山名 早人
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.343-348, 2011-09-01
参考文献数
22

近年のウェブサーチエンジンは,その検索結果ページに様々な情報ソースからの検索結果を統合して表示する。統合される情報ソースは,ウェブページだけではなく,ニュース記事,ブログ記事,画像,動画,Twitterなどのリアルタイム情報などである。しかし,こうした様々な情報ソースからの検索結果は常に表示されるわけではない。ウェブサーチエンジンは,どのクエリに対して,どの情報ソースを対象に検索し,どの検索結果を統合すべきかを判断している。本稿では,こうしたウェブサーチエンジンにおける統合検索で用いられている技術とその評価手法を紹介すると共に,統合検索の今後について述べる。
著者
鈴木 正紀
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.146-153, 2011-04-01
被引用文献数
1

大学図書館員の持続的成長に必要な要件について検討を行った。以下の3点に言及した。(1)どういった知識や技能が必要か,(2)それらをどういった方法で学んでいくか,(3)成長を可能とするための基本的態度。(1)については,LIPERの大学図書館班による知見とその構造的把握に資するCILIPによるBody of Professional Knowledgeおよび国立大学図書館協会人材委員会による「コンピテンシー・モデル」をとりあげた。(2)については,(i)外部の情報を積極的に取り込むこと,(ii)仕事に関連した資格取得,(iii)大学院での研究,(iv)そして身近なところでできる日常的努力の方法等について触れた。(3)については,仕事に対するビジョンを持つことと,人とのゆるいつながりを維持することの重要性を指摘した。
著者
小島 浩之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.42-48, 2010-02-01

資料保存を指す言葉にプリザベーション,コンサベーションがあり,これらは,戦略や戦術などと近似する意思や方向性の決定を伴う概念である。本稿では資料保存における意思決定プロセスに着目し,日本の図書館における資料保存について分析し,その留意点や問題点の整理を試みる。まず種々の保存に関する理論的枠組みのうち,主要なものをとりあげてこれらが現在の資料保存の枠組みに与えた影響の大きさを考察する。その後,実際の保存計画の立案や保存対策のおける意思決定プロセスに焦点を絞り,資料保存の理論的枠組みがどのように利用されているかを概観する。
著者
前田 朗
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.615-620, 2008-12-01

東京大学情報基盤センターが主催する「図書系職員のためのアプリケーション開発講習会」は,各受講生が企画・開発した図書館関連アプリケーションをWeb上で試行公開している。っまり,職員の学習の場に留まらず,新しい利用者向けサービスや業務効率化のツールを内製によりローコストで提供する場としても機能している。講習会成果のうち,情報のファインダビリティ向上を実現するサービスには「東大版LibX」「東京大学OPACウィジェット」「My UT Article Search」「東京大学OPAC Plus"言選Web"」などがある。大学図書館において,ローコストでも実現可能なファインダビリティ向上の機会は多く,取り組みの意義がある。
著者
木村 弘志
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.28-33, 2024-01-01 (Released:2024-01-01)

本稿では,特に研究支援の分野において,大学経営人材が担うことが期待されている業務と,そのキャリア・育成について考察した。大学経営人材が担う研究支援業務の範囲は,URAの中核業務以外にもわたり,より幅広くなっている。そのような業務を遂行するうえでは,「多様な専門性が必要となる業務を遂行する能力」「研究そのものや,研究に関連する諸活動の理解」が必要となる。そして,そのような能力を身につけるためのキャリア・育成について,事務職員出身者と教育職員出身者という出自の異なる2つのルートに分けて考察し,それぞれがキャリア内で身につけうる能力と,各種教育プログラムで補うべき能力について論じた。
著者
渡邊 淳司 七沢 智樹 信原 幸弘 村田 藍子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.331-337, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)

現代のウェルビーイング研究は,個人の主観的幸福や主観的満足度を対象としたものが多く,それに伴いウェルビーイングに関する情報技術の開発においても,前記のような主観指標の改善・最大化を目標とした「最適設計」がなされる傾向がある。しかし,このようなアプローチは,人間を制御対象として捉える人間観とも通ずる部分があり,その点においては,個人のウェルビーイングの達成と相容れないものである。そこで本稿では,ウェルビーイングの全体性・仮固定性に着目し,ソフトウェア開発の分野で取り入れられている“アジャイル(Agile)”という方法論に則ったウェルビーイングの支援技術の考え方と事例について述べる。
著者
今羽右左 デイヴィッド 甫 清水 智樹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.225-229, 2023-06-01 (Released:2023-06-01)

研究機関が学術情報を発信する場合,研究者・科学ジャーナリスト・一般市民など,多様な受け手に合わせて,研究ストーリーの語り方と伝達手法を柔軟に選択・実践する必要がある。本稿では,その具体的なアプローチとして,プレプリントサーバーやソーシャルメディアによる情報発信,研究助成金の申請,論文のプレスリリース(国際的な科学ニュース配信サービスの活用,報道を促す文章とイラストの制作)について概説する。こうした多角的な情報発信手法を重層的に実践する,いわば「厚み」のある研究広報を実践することによって,学術情報を効果的に伝えることができるであろう。
著者
木村 幹夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.378-384, 2012-09-01 (Released:2017-04-18)
参考文献数
3
被引用文献数
3

東日本大震災時にメディアが果たした役割を実証的に検証した。被災3県の地上波テレビ,ラジオは,津波からの避難時には放送の停波がほとんどなく,大津波警報や余震情報をリアルタイムで放送した。震災当日から特番編成を立ち上げ,以後CMなしの24時間放送を数日間継続し,被災状況に加え,ライフライン情報,生活関連情報,安否情報,避難所情報などを放送した。また,被災地では津波からの避難時および直後の時期にラジオを筆頭にマスメディアが大きな存在感を示した。東京など周辺地域ではSNSやストリーミング・サイトなどネット系メディアの役割も注目されたが,被災3県についてはマスメディアの貢献度,評価は,ラジオを筆頭にネット系メディアのそれをはるかに上回っていたことが実証された。
著者
渡邉 幸佑
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.358-361, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)

大学の広報活動として,大学をPRするキャラクター(大学キャラクター)が創作されている。最近では,大学キャラクターがTwitterで大学に関する情報をつぶやく取り組みがある。本稿では,大学キャラクターがどのようにつぶやかれているか把握するため,Twitterのツイートを分析した。その結果,東京都立大学の大学キャラクター「ミヤコロン」は,「かわいい」や「鳥」としてイメージされていることが明らかになった。本稿で示した一連の方法は,Twitterにおける大学キャラクターのイメージ分析に有用であることが確認された。他の大学の大学キャラクターも含めて調査を行うなど,分析の発展が期待できる。
著者
林 隆之 佐々木 結 沼尻 保奈美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.26-31, 2023-01-01 (Released:2023-01-01)

ジャーナルを中心とする学術流通の仕組みは出版指標に基づく研究評価の興隆を招き,科学界が質保証の自律性を失い,評価指標に適合するように研究者が自らの研究活動を束縛するようになってきた。近年,この状況の揺り戻しを図る動きが高まっている。その旗手である「研究評価に関するサンフランシスコ宣言(DORA)」は提言から積極的なキャンペーン活動へと役割を進化させ,欧州ではオープンサイエンス推進の動きと融合し,研究評価改革の国際的な協定が多くの機関間で結ばれる段階にある。本稿では,DORAや欧州の研究評価改革の動きを紹介するとともに,日本の研究評価指標の活用状況や,日本も参加するDORAの各国プロジェクトについて説明する。
著者
野村 紀匡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.408-413, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)

昨今プレプリントへの関心が高まっており,その動向が注目されている。また様々なプレプリントサービスが開設され,そのビジネスモデルも多様である。本稿では文献データベースを用いてプレプリントの動向を分析する。またプレプリントサービスの運営母体別にそのビジネスモデルを調査する。分析の結果,プレプリント投稿数は年々増加しており,特に2016年以降,急激に増えていることが分かった。またプレプリントサービスの運営には相応のコストがかかり,持続的な運営基盤の確保が課題である。今後も増え続ける新規投稿を受け付け,安定したサービスを利用者に提供するために,より安定した運営基盤が求められる。
著者
矢崎 裕一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.413-418, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)

大量のデータは,ただデータとして存在しているだけでは有効活用できない。データ可視化の価値について考察した。価値は人が感じるものである。そこでデータ可視化を発信者と受信者によるコミュニケーションの媒介と捉え,そのあり方を考察した。代表的なワークフローを選出し,発信者主体のものと受信者主体のもので二分し,概観した上で,そこから浮かび上がるニーズとコミュニケーションのあり方を考察した。データ可視化は人間社会において,人が人に何かを伝えたり,誰かの課題を解決することをサポートしたりと,今後も重要な役割を担うことは間違いない。
著者
羽渕 達志 駒形 仁美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.244-249, 2019-06-01 (Released:2019-06-01)

統計データの利用促進や社会の高度かつ多様な分析ニーズに対応するためには,利便性の高い提供基盤が必要とされている。統計データをオープンデータとして提供するだけではなく,課題を見つけたり,課題解決のために可視化し特徴や傾向等をとらえることが必要とされている。地図上に統計データをグラフ化する,統計データを集計すること等,地域分析ツールとして利用されている「地図で見る統計(jSTAT MAP)」について紹介する。
著者
長部 喜幸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.238-244, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)

知財の世界はデジタル化や標準化が比較的早く行われたことから,DX化に伴う価値創造の事例が多い。事例の一つとして,日本特許情報機構の知財AI研究センターの研究成果である,Japio-AI翻訳及び社会課題に対する自動分類を紹介する。特に,AI翻訳については中国特許文献の機械翻訳を中心に,我々の機械翻訳の特徴や強みを解説する。自動分類については,脱炭素(カーボンニュートラル)や持続可能な開発目標(SDGs)といった社会課題と特許情報とを接続することの意義,接続手法,及び,接続による新しい価値の創造について解説する。これら特許情報サービスにより,知財分野のDX化が促進されると考えられる。
著者
藤倉 恵一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.342-347, 2012-08-01 (Released:2017-04-18)
参考文献数
18

図書館においては,個人情報保護法の施行後も個人情報の流出・漏洩や紛失に関する事件・事故は後を絶たず,相当件数が発生している。個人情報の盗難や紛失だけでなく,図書館システムの不備に起因する情報流出事故も発生した。また,名簿などの個人情報を含む資料の扱いは図書館によって大きくゆれており,事件や報道の影響を受けて提供制限や受入停止をするなど図書館の根本的役割を自ら否定するような運用も少なくない。本稿では,図書館業務実務における個人情報保護のあり方について,図書館の基本理念である「図書館の自由に関する宣言」の視点を含めて検討する。